司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

2011年6月

6月 27 2011

過去の特定調停と過払請求

 現在は取引履歴の開示が義務化された為、特定調停で取引履歴が途中までしか出てこないということは、恐らくないでしょう。ところが、昔は(5、6年以上前)取引履歴が全て出るということの方が、むしろ珍しかったのです。

この頃に特定調停をされた人は、取引履歴が途中までしか開示されていない状態で支払計画を決められたケースが少なくありません。場合によっては、実は過払いになっているにもかかわらず、それが分からずに、分割払いをしていた人もいるのです。

このケースに該当する人は今まで諦めていましたが、最近では、過去に特定調停を行った業者に対して新たに取引履歴の開示を請求して、自分の本当の債務額を確かめる人が増えてきました。当然、その中には、開示請求してみたら過払いになっていたという人が存在します。

そこで問題ですが、果たして、一旦、特定調停を結んでしまった取引に対して過払請求を改めて出来るのかということです。

結論から言うと、最近、認められるケースが少しずつ増えてきています。この場合、裁判所が認める根拠は「錯誤」というものが多いです。簡単に言うと、「過去の特定調停は取引履歴が全部出ていなかったのだから実際の金額が分からないまま思い違いをして結んでしまったものであるから無効である。無効なんだから、もう一度、正確な金額を明らかにして、やり直せ」という理屈になります。過払いの場合は、この理屈で過払請求訴訟を争うことになります。

まあ、取引履歴を出さなかったのは業者側の責任ですし、その結果として金額が分からなくなって間違った特定調停になった訳ですから当然と言えば当然かもしれません。いずれにしても、このような請求が少しずつでも認められるようになったのは喜ばしいことでしょう。

しかし、何分、訴訟ですから100%勝てるとは限りません。裁判官によっては、特定調停の訂正を認めないケースもあります。

しかし、物は考えようです。特定調停は既に終了している訳ですし、一旦は、納得して支払っていた訳ですから、仮に裁判に勝てなくても現状より悪くなることはありません。今までどおりになるだけです。一方、裁判に勝った場合は過払金が戻ってくる訳ですから、これは大きなメリットです。

負けた時のリスクは無いと言ってよく(特定調停の結果が維持されるだけです)、勝った時のメリットは大きい訳ですから、これは、チャレンジする価値があるのではないでしょうか。該当する人は一度、考えてみるべきでしょう。

 

 

6月 22 2011

報酬規定

 現在、司法書士の報酬は弁護士と同様に自由化されています。ところが、一部の司法書士・弁護士と依頼人の間で債務整理に関する報酬のトラブルが増えていました。そこで、日本司法書士会連合会(日司連)という全国の司法書士を束ねている組織が「債務整理に関する報酬の上限規定」を発表しました。今後は定められた上限を破ったら規定違反ということになります。(もっとも内容を見ると、かなり余裕を持たせた規定になっていますので、今時、この上限を破っている事務所は少数派だとは思います)

私は個人的には報酬は自由である方が望ましいと思っています。依頼する側にとっても選択の自由はあった方がプラスになることが多いと考えています。しかし、日司連の規定として決まってしまった以上、司法書士は規定を守る必要があるでしょう。これから依頼を考えている人は頼もうとしている事務所が規定違反になっていないかどうかチェックした方が良いでしょう。以下、具体的に報酬基準を列挙します。(この報酬基準には消費税は含まれません。あと、印紙代や切手代などの実費も含まれません)

1 任意整理事件を受任したときは、定額報酬として債権者1社あたり5万円を超える額を請求し、または受領してはならない

2 減額報酬を受領するときは、減額され、または免れた債務を経済的利益として、その経済的利益に10%の割合を乗じた金額を超える金額を請求し、または受領してはならない

3 減額報酬における経済的利益とは、引き直し計算により算出された金額を債権者が認めた場合(その金額を債権者が積極的に争わない場合を含みます)は、その引き直し計算により算出された金額から減額され、または免れた債務の金額を指す。(この規定は大変に重要ですが、要するに専門家に相談に来る前に貸金業者から請求された金額から、利息制限法に引き直して減額したとしても、その減額分から報酬を取ってはいけないと解釈できます)

4 過払金を回収したときは、その回収した金額を経済的利益として、その経済的利益に次の割合を乗じた金額を超える額を過払金返還報酬として請求し、または受領してはならない。

(訴訟によらずに回収した場合) 20%

(訴訟により回収した場合) 25%

と主なものを挙げておきました。(一般の人に分かりやすく書いています)

先にも書きましたが、現在、上記の報酬規定を超える基準を設定している事務所は少ないと思われます。ただ、ゼロではありませんので、ひっかかる事務所は今後は報酬基準を下げる必要があります。

上記の規定の中で最もひっかかる事務所が多いだろうと思われるのが、3番です。この規定では利息制限法による引き直し計算による減額は今や、ほとんど全てと言っていい貸金業者が争いませんので、経済的利益には含まれなくなります。要は、債務整理で減額報酬を取っている事務所は報酬基準を変更せざるを得ないということになります。(変更しなければ今後は規定違反ですから、依頼人は変更するように要求することが出来ると考えて良いでしょう)

ちなみに上記の規定は債務整理限定です。債務整理以外の業務には適用されません。他の業務を依頼している時に、この規定を振りかざして注意したら恥をかくことになりますので注意して下さい。また、この規定には5年間という期限も付いています。いわゆる時限立法というもので、「報酬自由化という大枠の規定は変更していない。あくまでトラブルの増えている債務整理に限って、しかも5年間という期限も決めて限定的に運用するものである」ということです。

 

 

6月 13 2011

SFコーポレーションの控訴

 SFコーポレーション(旧三和ファイナンス)は何度も、このブログで取り上げていますが、ひょっとして状況が変わったかもしれない出来事があったので再び取り上げます。

この業者は非常に支払が悪く、かつ悪質な対応をしてくることで有名です。ところが、今回、ちょっとマシな対応をしてきたのです。(あくまで、ちょっとです)

ここは訴訟をすると徹底的に引き延ばし工作をしてくることで有名で、ようやく勝訴判決を取っても控訴してくることが非常に多いです。今回も相変わらず控訴されて、「やれやれ、またか」と思っていたところ、控訴第1回期日の3週間くらい前にSFから電話がかかってきて、「簡裁での勝訴判決の金額を満額払う。控訴も、すぐに取り下げる。」と言ってきたのです。

今までは、支払う場合でも連絡なしで、いきなり依頼人の口座に振り込んできたりしたので、「口座は代理人の口座でいいんですね」と聞いたら、「構いません」と担当者は答えました。

それなら、なんで控訴したんだと言いたくなりますが、一体、この変化は持続するものなのか、それとも一時的なものなのかは、まだ分かりません。おもいきり否定的に考えると倒産が近いのか、という可能性もゼロではありません。まあ全ては予想になりますので、SFが何故このような処理をしてきたのか本当のところは分かりません。

私は常々、業者の対応は変化するので、依頼人の方には最新の情報で判断するように話していますが、変化のスピードが上がってきたように感じます。

まさに風雲急をつげる貸金業界と言えそうです。(こんな状況ですから、結果について「必ず」とか「絶対」とか言う事務所は、ますます気をつけた方が良いでしょう。)

6月 07 2011

臨時ニュース 丸和商事倒産 その3

 丸和商事の民事再生につき手続の日程の詳細を、お知らせします。

1 再生債権(このブログの読者の皆さんにとっては過払金請求権のことだと思って下さい。)の届出期間は6月30日まで

2 債権の一般調査期間(この部分は分からなくても構いません。)は8月5日から8月12日まで

3 再生計画案の提出期間は8月19日まで

となっています。

以前お伝えしたように、民事再生の場合は「やむを得ない事情」で届出期間に間に合わなかった場合でも、配当を受ける権利を失いません。だから期間を過ぎてから丸和に対して過払いであることが分かったら請求できると考えて良いでしょう。(もちろん配当率に従ってカットされます) しかし、過払いであることが分かっていても債権届をしなかったとしたら、それは「やむを得ない事情」と言えるかどうか微妙です。過払いが分かっている人は今月末までに債権届をしておきましょう。

あと、上記3番の再生計画案とは配当率に従って減額した債権を債権者に分配する計画を示した書類です。これの提出期限が8月ということは、少なくとも8月には配当率が明らかになるということです。クレディア(現フロックス)は4割という高配当でしたが、果たしてどれだけの配当になるのでしょうか。

最近になって事務所に続々と丸和の債権届出書が郵送されてきました。これを見ると、武富士よりも、かなり債務者に有利な扱いがされているという印象を受けました。

例えば、武富士の場合は裁判所で若干、利息等の減額をして和解決定をもらっていた場合は、裁判所の決定は覆さないという建前の元に、最初の請求額を認めていません。(元金50万プラス利息10万円の訴訟をして55万円で裁判上の和解をした場合、武富士は元の60万円の請求は認めない訳です)

ところが、丸和の場合は、例え裁判上の和解であっても、元の請求額よりも和解金額の方が低ければ、元の請求額で債権届が出来るようになっています。この点は評価しても良いと思います。