司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

3月 16 2016

どうしても自己破産はしたくない人へ

「借金が高額になって返すあてがない。もう、司法書士や弁護士に相談するしかない。でも、自己破産だけは、どうしてもしたくない。自己破産をすすめられるかもしれないので、相談に行く勇気がわかない。」こんな風に悩んでいる人は大勢いるかもしれません。

私は、このような人に対して、「個人再生が可能かどうかを確かめてから決断しても遅くないですよ」と言いたいです。

債務整理をうたっている多くの事務所で、個人再生も可能であるにもかかわらず選択肢として提示せず、自己破産や任意整理を提案されているケースが非常に多いという現実があります。これには以下のような理由があると思われます。

(1)自己破産や任意整理の方が手間がかからない
債務整理の中で個人再生が最も手間がかかります。出さなくてはならない書類も多いですし、手続期間も長めです。大量の案件を抱えて短時間で効率的な処理をしたい事務所にとっては、出来れば個人再生は避けたい手続なのです。

(2)そもそも経験が少ないので手続に慣れていない
上記のような理由で個人再生が避けられているからかもしれませんが、個人再生の件数は自己破産の10分の1以下です。実際には破産には無いメリットがあるにもかかわらず、この少なさは異常だと私は思います。結果として、経験者が少ないという現実があります。債務整理を売りにしている事務所でも、実際には個人再生の経験は非常に少ないのです。経験が少ない手続は、やりたがらない傾向があるのは、ご想像のとおりです。(医者でも、経験の少ない治療法はやりたがらないものです。法律家も同じです)

(3)個人再生に偏見がある
私は一部の司法書士や弁護士から、「個人再生などやっても意味が無い」、「何故、破産を選ばないのか理解に苦しむ」、「任意整理でダメなら、破産をすすめるのが正しいやり方だ」という発言を聞いたことがあります。特にひどいと思ったのが、個人再生最大のメリットである「住宅を維持したまま他の借金を減額できる」という部分に対してさえも、「例え住宅ローンを抱えていても、住宅をあきらめて売却して破産するようにすすめるのが、債務者の為になる」と真顔で言っていた人もいることです。私は今まで何件も個人再生を手がけてきて感謝の言葉を頂いているので、このような発想の方がむしろ理解できません。

これらの理由により、個人再生という選択肢があるにもかかわらず、その存在すら知らされずに人生における重要な決断を下してしまっている人が多いのが現実です。もちろん条件に合わずに個人再生が利用できない人もいます。しかし、条件に合っていて自己破産を避けたいという希望を持っている人がいたら、これは説明すべきでしょう。

もし今、借金の返済に行き詰まっていて、自己破産はどうしても嫌だと思っている人がいたら、一度、個人再生が可能かどうかを検討してから判断することをおすすめします。

3月 15 2016

残業代請求 解決事例⑥

20代男性 小規模企業
未払い残業代 約40万円

従業員が10人未満の小規模な会社で、タイムカードも機械式では無く手書きで毎日記入するタイプでした。本人は、過去2年分のタイムカードを全て保管していたので、推定計算をする必要はありませんでした。

ただ、小規模な会社にありがちな、労働基準法に従ったルールが未整備で、正直、いい加減に運営されていました。こういうタイプの会社は、いざ争いになった時に、法律による合理的な説得が通じないことが多々あります。ようは、「今まで当然のようにやってきたことだから何が悪い」という態度です。この会社も例外ではありませんでした。

まず内容証明で請求しましたが、通常なら、例え強引であっても一応は法律に基づいた反論が返ってくるものですが、ここの場合は、「早朝出勤は確かにあったが、そんなものはどこでもやってる、だから残業ではない」とか、「残業代は、賞与に含めて支払っているから、未払いは無い」とか、「就業規則に書いていないけど、みなし残業代は認められる」とか、もう法的には無茶苦茶な反論が返送されてきました。正直、先が思いやられるなと感じました。

このケースでは、タイムカードが全てそろっていたので、労働審判ではなく民事訴訟を選択しました。民事訴訟は労働審判のように3回以内という制限が無いので、長引く可能性がありますが、一方で、話し合いが前提の労働審判と違って、例え和解になっても解決金の割合が高い傾向があります。

民事訴訟を提起して、相手方から答弁書が送られてきました。見ると、内容証明の後の反論書とたいして変わらない内容だったので、「まあ、これなら裁判では通用しないだろうから有利に進むだろう」と思いました。ただ、唯一気になる点は、小規模会社の社長にたまにあるのですが、どれだけ不利になろうが、どれだけ長引こうが、絶対に自分の主張を引っ込めずに、しつこく争ってくる場合があることです。(なまじ法律の知識が無いだけに、合理的に不利だという判断が出来ないのでしょう)。

今回の場合は、幸いなことに、相手は初回から金額交渉のテーブルにつきました。内容証明の段階では1円も払おうとしなかった訳ですから、大進歩でしょう。裁判所も「法的には労働者側の主張の方が筋が通っている」というスタンスで社長に説明していたのが大きかったのでしょう。それでも、最初に社長がしぶしぶ提示した金額は低かったので、こちらは「その金額では合意できません」と裁判官に伝えました。

最終的には、2週間以内という早期の支払いを条件にして合意できる金額で決着しました。それにしても、金額交渉する気があるのなら、内容証明の段階で連絡して欲しいものです。通常は、内容証明の後に金額交渉が無い会社は、裁判になっても強硬姿勢を貫いてくる場合が多いのです。私は長引く覚悟をしていましたので、正直、拍子抜けした部分もあります。

結果的には満足のいく決着となりました。民事訴訟で解決した事例です。

より詳しい情報をお知りになりたい方は以下をクリック

http://www.hashiho.com/overtime/

2月 26 2016

残業代請求 解決事例⑤

20代女性 中堅企業
未払い残業代 約100万円

こちらも労働審判になった事例です。

私が受けた依頼の中でも、会社の悪質度がかなり高いと思われたので印象に残っています。

まず、この会社は当初タイムカードを備えていませんでした。それに類するものも全くありません。ようするに、従業員の時間管理をする体制を全く整えていなかったのです(驚いたことに、これでも全国に支店がある会社なのです)。まさに、あきれるようなひどい会社です。(途中から、タイムカードを導入しました。きっと、今回のように従業員の誰かが訴えたのではないかと推測します。そんなことでもなければ、改善されないような会社だということです)

他にも、この会社では、昼の休憩がありませんでした。もちろん名目上の昼休憩は存在していましたが、実際には、電話対応や会議などで休むことが出来ない体制だったのです。依頼人は、弁当持ち込みで食べながら電話対応をしたり、ひどい時には昼食抜きで働く時もあったようです。

また、基本給を抑えて手当を多めに出して給料を支払っており、いざ裁判となったら、手当は「みなし残業代」だと主張してきて、だから残業代は支払済みだから支払わないと言ってきたのです。最初から、残業代請求を見越して、なるべく残業代が安くなるように設定しているとしか思えない対応です。

あと、強制退社時間というものを設けていて(当然、定時よりも2時間ほど遅い)、会社幹部が「強制退社時間までは残業じゃない」などと発言していたりと、コンプライアンスの欠片もない驚くほど悪質な会社でした。

当然、こんな会社ですから、内容証明で支払ってくるはずもなく、予想どおり裁判になり、労働審判の申立をしました。

依頼人が会社の労働環境を良く記憶していたこともあり、詳しい陳述書を証拠に出して、タイムカードが無かった部分の計算の根拠としました。(申立人の記憶を頼りに、会社の労働環境を記述したものを陳述書と言います)

労働審判の特徴として、3回以内で終了するというものがありますが、実際には、ほとんどの労働審判が初回で決着しています。裁判所も出来るだけ初回で、交渉をまとめようとしてきます。(裁判官や審判委員の態度を見ていれば分かります。これは私の想像ですが、恐らく、初回でまとめた方が彼らの人事評価が上がるのではないかと推測しています)

内容証明を送っても「1円も支払わない」と言っている会社から回収するのは、裁判に訴えるしかありません。でも、出来れば早めに解決して欲しいと思っている人も多いのが実情ですから、その為には、労働審判は有効な選択肢だと思います。

ただ、少ない回数で決着する分、通常の訴訟よりも1回の時間が長いという欠点もあります。初回だと、だいたい3時間くらいはかかるのが普通です。

何故、そんなにかかるのかと言うと、まず、一通り双方の主張の確認をするのに約1時間、その後は、申立人と相手方で交互に審判室に呼び出されて金額の話になります。裁判官と審判委員が入れ替わりに入ってくる申立人と相手方に対して、金額交渉の仲介をするというスタイルです。これが、すんなり終われば3時間もかからないのですが、たいていは、何度も何度も審判室を往復することになります。

今回は、相手方に弁護士がつき、当初、「もし、支払うとしても20万円」と主張していました。そこから、何度も入れ替わりの交渉になり、最終的に100万円で決着しました。正直、もっと上積みしたいのが本音でした。しかし、相手方が「今、経営が苦しいので、すぐには支払えない。3カ月先になる。」と言ってきたので、それなら、「100万円なら、もっと早く支払って欲しい」と主張して、2ヶ月先まで短縮させました。それでも、通常は2週間以内に支払ってくる会社がほとんどなので、最後の最後まで困った会社でした。

2月 18 2016

残業代請求 解決事例④

40代男性 中堅企業
未払い残業代 約170万円

依頼人はトラックの配送業をしていて、何と出勤時刻は深夜の3時から4時という、きつい職場環境でした。たまにではなく、ほぼ毎日が上記の時刻に出勤なのです。

深夜労働が当たり前なので、当然、残業代は相当な額になります。しかし、会社側は、少しでも残業代を減らそうとと、タイムカードを出勤した時には打刻させず、朝の5時から打刻を許していました。従って、タイムカード上は朝5時出勤となってしまいます。

ところが、依頼人は独自に対策を取っていて、毎回、出勤と退勤の時にスマホに時刻を記録していたのです。客観性に欠けるので証拠としては弱いですが、それでも何も無いよりは、はるかにマシです。陳述書と組み合わせれば充分な証拠になると考え、依頼を引き受けました。タイムカードを偽装していた会社のやり方も許せないという気持ちもありました。

まずは催告書を郵送して請求しましたが、タイムカードを偽装するような会社ですから、回答も予想通り、「スマホの記録など証拠にならない。」、「早朝出勤は、もししていたとしても、本人の仕事が遅いから勝手に出てきただけで、会社の指示ではない」などの大反論をしてきて、結果、「未払い残業代など無い。1円も払うつもりは無い」という強硬なものでした。

早速、裁判手続の準備に入りました。金額が高額だったのと、証拠が強いとは言えなかったことで、労働審判を選択しました。労働審判なら、証拠が弱くても、裁判官を介した話し合いで妥協点を探れます。あと、3回以内で終了しますので、長引く恐れもありません。

裁判所に出す陳述書は詳しければ詳しいほど証拠として強くなりますので、何回か書き直してもらいました(実は裁判所が陳述書の評価を上げるポイントが、いくつかあるので、それを指摘して書いてもらいました)。

労働審判は初回から白熱しました。お互いが主張を出し合って何と3時間ほどかかりました。労働審判は回数が3回以内と制限されている分、1回の時間が長い傾向があります。裁判所も3回を使い切るという発想ではなく、なるべく少ない回数で、出来れば初回で終わらせようとしてきます。

証拠が弱い分、ある程度の減額は仕方がありません。こちら側も減額されるのを見込んで、請求しています。そもそも裁判になる前は、「1円も支払わない」と言っていた会社ですから、減額になっても回収できれば大成功です。

最終的に裁判官が提示した金額が170万円でした。会社は当初、渋っていたようですが(後半になると、交互に部屋に入って裁判官と話をするので、相手がどのような様子なのかは分からない)、最後は会社側の担当者が裁判官に説得されて決着しました。時間が長いので、初回は大変ですが、何回も裁判所に通うことを考えたら、1回で決着が付くのはメリットだと思います。

和解条項には、会社側の希望で「今回の残業代請求については他言しない」という条項が追加されました。実は、この条項は、残業代請求では良く利用されるもので、残業代請求が他の従業員に波及するのを防ぎたいという、会社側の意向が働いています。しかし、依頼人にとってはマイナスになる条項ではないので、通常は反対はしません。下手に反対して、せっかく整った和解案が振り出しに戻る方がマイナスが大きいと考えるからです。

和解調書が届いてから3日ほど過ぎたら、無事、依頼人の口座に和解金が振り込まれました。時間はかかりましたが、当初は「支払わない」と会社が言っていた訳ですから、成功と言えます。依頼人にも満足して頂けました。

以上、労働審判で解決した事例です。

2月 15 2016

残業代請求 解決事例③

20代男性 勤め先 中小企業
未払い残業代 約60万円

若い依頼人で、労働環境がハードだったので、勤めて2年以内で辞めています。タイムカードが無く、業務日報を大量に持ってきたのが印象に残っています。

業務日報には退勤時刻が書いてあり、毎回、上司が判を押す形になっていましたので、退勤時刻の証明としては充分でした。ただ出勤時刻を証明するものは何もありませんでした。

出勤時刻は定時の会社なら、それでも構わなかったのですが、残念ながらこの会社の場合、早出残業も常態化しており、定時が8時半のところ、毎日7時半出勤が当たり前だったようです。

いざ裁判になった場合、陳述書を書いてもらい、出勤時刻の証拠にしようと考えていました。陳述書とは、本人に出来るだけ詳しく具体的に、平均的な1日の仕事の流れなどを書いてもらう書類のことです。(詳しければ詳しいほど、裁判における証拠能力が高まります)

残業代の計算は、7時半出勤で全て計算しました。結果、約60万円の残業代となりましたので、催告書を作成して会社に郵送しました。

出勤時刻の証拠が弱かったので、争ってくるかなと思っていましたが、しばらく後に会社から電話があり、「和解したい」と言ってきました。

和解金額を依頼人に連絡すると、OKだったので、すぐに会社に連絡して和解成立となりました。依頼人も、タイムカードが無く業務日報だけだったので、裁判になる前に和解が出来るとは思っていなかったようで、喜んでいました。

タイムカードがそろっていなくても、スピード解決した良い例だと思

2月 12 2016

残業代請求 解決事例②

40代男性 勤め先 中堅企業
未払い残業代 約25万

勤め先は、小売店の設備を設置する企業で、結構ハードな職場でした。設備設置の時は泊まり込みになることも多く、当然、深夜労働になります。その割には残業代が少ないと思われたかもしれませんが、理由があります。

一つは、残業代が全く支払われなかった訳ではないこと。さすがに、これだけの仕事をさせて残業代が0円ということはなく、毎月数万円は支払われていました。(もちろん足りませんが)

もう一つは、あまりのハードな労働環境に耐えられず、依頼人が早くに辞めてしまったことです。正味8カ月くらいの労働期間で、そのうち、最初の3カ月は試用期間でした。

期間が短いこともあって、タイムカードが全てそろっていました。証拠に関して特に問題ありません。(泊りの時はタイムカードに時刻の記載はありません。当然、通しで働いているとして計算しました)

典型的なブラック企業だなと思って、「長引くかもしれないな」と考えましたが、実際には、催告書を郵送したら10日ほどで電話がかかってきました。(支払うつもりの無い会社の場合、電話ではなく相手も郵送で反論してくることが多いです)

この企業の勤め先は名古屋でしたが、本社は四国にあり、私は四国の担当者と話をしました。若干、減額にはなりましたが、和解契約書交換の後、1週間以内に支払うということで依頼人も納得して、和解になりました。無事、期間内に入金もあり、スピード解決となりました。

2月 10 2016

残業代請求 解決事例

40代男性  勤め先 大手企業
未払い残業代 約30万円

相談に来られた時は、「上司との関係がうまくいかなくなって辞めた。辞めたからには、今までの残業代を取り戻したい」とのことでした。
実は、このような主張をされる方は、とても多くて、在職期間中はいろいろ文句はあっても我慢していたけれど、辞めることになった以上、もう遠慮はいらないと思われるようです。
会社は、愛知県の人なら知らない人はいないという大手の企業でした。

さすがに大手企業だけあって、証拠は充分でした。タイムカードも給料明細もきちんと全てそろっていました。金額も正確に出すことが出来ました(タイムカードがそろっていない場合は、推定計算をすることになるので、金額も最初は推定になります)。

早い段階で金額が確定しましたので、計算書を添付した催告書を会社に郵送しました。
すると、だいたい5日ほどで、会社の顧問弁護士から回答が来ました。大手企業の場合、顧問弁護士が付いている場合が多いので、残業代の請求をすると、顧問弁護士から回答が来ます。

回答の内容は、「表示された金額を支払いたいので、まずは和解契約書を交わして欲しい」というものです。
裁判をやらずに解決する場合は、お互いに和解契約書を交わしてから金額の支払いが行われるのが普通です。そうしないと、支払った後で、もめることがあるからです。契約書で条件を確認した上で記名押印して、お互いに1通ずつ持ち合います。顧問弁護士が付いている場合は、会社の書式があって、顧問弁護士が送ってくることが多いです。

催告書の金額に対しては減額交渉をしてくる企業が圧倒的に多いのですが、さすがは大手企業というか、証拠が完璧にそろっていることもあるのか、一切の減額交渉はありませんでした。司法書士からの請求というのも関係しているのでしょう。

送られてきた和解契約書を点検して、特に依頼人に不利になる規定が無いかを確認したら、記名押印して、1通返送します(1通は手元に残ります)。後は入金を待つだけです。

未払い残業代の請求で、和解契約書を交わした後に入金されなかったということは今のところありません。(貸金業相手の過払金返還請求だと、たまにあります)。今回の場合も、きっちり振り込まれました。

依頼を受けてから1カ月ちょっとで回収というスピード解決でした。相手が大手企業で証拠がそろっていたこと、金額がそれほど高額ではなかったことなどが早く解決した理由ではないかと思っています。

12月 04 2015

特定調停①

債務整理の中で、あまり目立たない手続として特定調停があります。債務整理と言えば、自己破産、個人再生、任意整理、過払金返還請求が有名で、特定調停の存在自体を知らない人もいるかもしれません。では、何故、特定調停は、それほど知られていないのでしょうか。

その理由は、任意整理でカバーできるケースが多いからです。
任意整理とは、司法書士や弁護士が間に入って、債権者と分割払いの交渉をする手続です。決着すると和解契約書を交わして、契約書どおりの分割払いをしていくことになります。

一方、特定調停は、裁判所が間に入って、債権者と分割払いの交渉をする手続です。決着すると調停調書が発行されて、調書に書かれている通りの分割払いをしていくことになります。
いかがでしょう。似ていると思いませんか。

双方にあまり違いが無い場合、今まで司法書士や弁護士は任意整理を選択することがほとんどでした。それは、裁判所に申立をする必要が無いので、全て事務所で解決できるため、手間がかからなかったからです。確かに解決できるなら、その選択は間違いとは言えません。

しかし、最近では、必ずしも任意整理では解決できないケースも増えてきています。例えば以下のような事例です。

①そもそも分割払いに応じない。強硬に一括払いを主張してくる。何とか分割をお願いしても、2回とか3回とか、到底、支払えない回数を主張する。

②分割には応じてくれるが、将来利息の請求をしてくる。今までの任意整理では、将来利息は一切無しが常識でした。最近は、大手でも将来利息の請求は珍しくありません。

何故、このような事態になったのかと言いますと、過払金請求が激増したことが背景にあると言われています。
過払金請求が激増した結果(最近は減少傾向にあるようですが)、貸金業者の資金繰りが悪くなり、回収できるものは徹底的に回収するという姿勢に変化してきたのです。

実際に上記のような主張をされてしまうと任意整理では、どうすることも出来ません。何故なら任意整理とは、あくまで任意交渉であり法的な強制力はありません。実は先ほど取り上げた①や②の事例は、法的に見れば、貸金業者の方が正しいことになっているのです。

驚く方もいるかもしれませんが、貸金業者が司法書士や弁護士の任意交渉を断って民事訴訟に持ち込んだとしたら、裁判所は貸金業者の主張通りの判決を出します。法的には、請求金額を分割にする義務は貸金業者にはありません。

ようするに任意整理が成立するかどうかは、あくまで貸金業者次第なのです。業者が強硬な態度に出た場合、交渉は打ち切るしかありません。

そこで新たに注目を浴びてきたのが、今まで目立たなかった特定調停です。

特定調停の場合、裁判所が間に入っている為、任意整理よりも強制力があります。貸金業者も無視するわけにはいきません。また、特定調停では将来利息は付けないのが原則なので、この点でも、最近の任意整理よりも有利と言えます。

実際に任意整理ではまとまらなかった分割交渉が、特定調停ではまとまったという事例はあります。今後は徐々に特定調停が増えていくのではないかと個人的には思っています。

11月 18 2015

残業代を取り返そう⑤ 意外な展開

以前ブログで、「中小企業でも請求金額によっては、郵便請求のみで支払ってくる場合がある」という話をしました。今回は、まさに、それに当てはまる事例を紹介しましょう。

愛媛県に本社があり名古屋に支店がある会社に対する残業代請求の相談がありました。支店の規模は従業員10人以内という小規模な会社です。勤務形態は、出張が非常に多く、しかも一晩、車を走らせて早朝に相手先に着かなければならないなど、相当なハードワークです。ただ、その分、残業代もそこそこ支払われており、未払い分を計算すると約30万円ほどでした。(ちなみに、この依頼人はハードワークに耐えられず、すぐ辞めてしまったので、請求期間は短く5カ月ほどでした)

当初、私は、「小規模な会社だから、郵便請求だけでは払ってこないだろう」と考えて、長期戦の覚悟をしていました。依頼人から裁判用の委任状ももらっていたほどです。

ところが実際に郵便請求をしてみると、回答には若干、時間がかかりましたが、何と満額回答だったのです。正直、この展開は意外でした。

満額回答だった理由が、「請求金額が少額だったから」なのか、それとも「会社の方針だった」のかは実際には分かりません。ただ、私は前者ではないかと推測しています。

いずれにしても、依頼人にとって非常に満足のいく結果になったことは間違いありません。長く仕事をしていると、こういう全てがうまく運ぶパターンにも出会うものです。印象に残った事例でした。

11月 18 2015

残業代を取り返そう④ 業務日報と推定計算

タイムカードが途中までしか無くて、その代わり「業務日報」が、たくさん残っているという相談がありました。

実際に書類を拝見すると、1年くらい勤めて、タイムカードは半年分くらい手元にあって、他には業務日報が勤務日数の8割くらい残っているという状態でした。また、業務日報には退勤時刻は書いてありましたが、出勤時刻は書かれていませんでした。

上記のような証拠でも、もちろん残業代請求は可能です。業務日報は会社が関与している書類ですから証拠能力は高いと言えます。ただ、今回の場合、出勤時刻は、どうなるのでしょうか。

この依頼人の場合、出勤時刻は、いつも同じ時刻で統一していました。そのことは半年間のタイムカードで証明できます。ですから、特に問題なく、タイムカードが無い期間も同じ時刻で計算しました。(この点で、会社側からの反論はありませんでした)

では、タイムカードも業務日報も無い日付については、どうでしょう。業務日報は8割くらいしか手元に無いので、残りの2割は証拠が無いことになります。

この場合は推定計算というものをします。証拠が残っている日付から、だいたい平均したら、この位の時刻には出退勤しているという推定をして時刻を決めるのです。

では、推定計算は、争いになった場合、どの程度、認められるのでしょうか。

例えば、証拠があまりにも少ない日数しか残っていない場合は、推定計算の確度が下がりますから、会社側も簡単には認めないでしょうし、裁判になった時も減額を求められる確率が上がるでしょう。

しかし、今回のように、証拠が8割もあって、残りの2割を推定しました、というような場合は、相当程度認められるというのが私の実感です。

実際に、このケースでは、郵便による請求のみで、会社側が支払ってきました。

どこまで推定計算が認められるかというのは、正直なところ、ケースバイケースですが、証拠が半分以上あるなら、してみる価値はあると思います。

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