2月
20
2012
最近は貸金業者の経営状態が悪化する一方なので、過払金の回収が以前に比べて困難になっていることは、このブログでも何度も取り上げてきました。中堅以下の業者に関しては判決を取っても支払わず、その後、強制執行(差押)をしても空振りに終わることが珍しくありません。
では、このような業者に当たった場合、過払金を諦めるしかないのでしょうか。「そんなの悔しくて、我慢できない」という人も多いことでしょう。実は私も、そう考える一人です。
そこで強制執行が空振りに終わった場合に、何か出来ることは他にないだろうかと考えたところ財産開示という手続があることに気づきました。
これは、業者が差し押さえ可能な財産を隠している可能性がある為、裁判所を通じて、それを明らかにしようという手続です。
具体的には、財産開示の申立をすると、相手方は裁判所に、財産を明らかにする為に財産目録を提出しなくてはなりません。もし、これを決められた期限までに提出せず、更に決められた出頭日に欠席すると(ようは裁判所の指示に対して従わずに無視した場合)、30万円以下の過料が課せられます。(過料とは行政罰の用語です。これに対して刑事罰の場合は罰金と呼びます)
ということは、業者は何もしなかったら過料を払わせられることになりますから、だったら財産を開示しようとか、あるいは過払金を払ってしまおうとか、圧力になる可能性がある訳です。(特に30万円以下の過払金の場合は、払ってしまった方が安くすみます)
私としても初めての試みなので、期待どおりの結果になるかどうかは今のところ分かりません(これらの業者は開き直っていますから、過料ですら無視するかもしれません)。しかし、過払金を支払わないで平気な顔をしている貸金業者に対して一矢報いる為には、チャレンジする価値はあるかなと思っています。また、結果が出たら報告いたします。
2月
16
2012
民事再生手続に入った静岡県の中堅消費者金融の丸和商事ですが、平成24年2月16日付で再生計画案の認可決定が確定しました。残念ながら、これで武富士よりも低い弁済率が法的に正当化されてしまいました。もはや過払債権者は、この極端に低い弁済率(1.65%)を受け入れるしかありません。
それにしても、武富士の時もそうだったのですが、当事務所の依頼人は再生計画案に全て反対でした。しかし、債権者全体の投票結果は、今回も賛成多数だったのです。
正直なところ、1.65%なんて弁済率を受け入れる人が、過半数を超えて存在するなんて、今でも信じられません。一体、どういう仕掛けになっているのかと思います。
素直に考えて、こんな弁済率を提示されたら、「ふざけるな」という怒りの感情が湧き起こるのが自然な気がします(事実、当事務所の依頼人は皆さんそうでした)。
そして次にくるセリフが、「こんな会社、絶対に許せない。まともに払わないなら民事再生をつぶして破産させてやる」という反応です。(しごくまともな反応だと思います。私が依頼人の立場だとしても同じ反応を示すと思います)
ところが結果は武富士の時も今回も賛成多数の可決なのです。何かおかしくないでしょうか。
大きな疑問を感じながらも、裁判所の認可決定が確定した以上、この弁済率で支払われた上で丸和商事は生き残ります。(会社の名前はクレディアのように変わるかもしれませんが)
こんなことが許されてしまった以上、後に続く貸金業者が出るのは避けられないでしょう。丸和商事の結果を見たら、真面目に過払金を支払っている貸金業者は馬鹿馬鹿しくなってくるに違いありません。果たして今年は、どこが追随するでしょうか。
2月
09
2012
安城簡易裁判所は愛知県三河地方にあり、私の事務所からはちょっと離れています(車で1時間半くらい)。管轄区域は安城市、碧南市、刈谷市、西尾市、知立市、高浜市、幡豆郡です。トヨタ系のグループ会社が、たくさん集まっている地域として知られています。
たまに、これらの地域からの依頼があり、過払訴訟などで利用することがありますが、以前から素早く判決をくれる傾向があり非常に重宝しています。
最近の過払訴訟の場合、たいした反論もないのに明らかな屁理屈を並べ立てて、ひたすら訴訟を長引かせようとする貸金業者が増えています。杓子定規な裁判官だと、業者側の引き延ばし工作に付き合ってしまい、結果として訴訟が長引く傾向があります。
ところが安城簡裁では、業者側が悪意受益の利息に対する反論しか用意していない場合、初回の弁論で結審して判決を出してくれるのです。これは非常に評価できる取り扱いだと思います。
特に遠方から裁判所に出掛けている時は、この取り扱いは本当に助かります。
先日も対アイフルの訴訟が安城簡裁であり、相変わらず分厚い準備書面が事前に送られてきて(でも内容は薄い)、またかと思っていたところ(こうやって相手方をうんざりさせて、訴訟を自分に有利にすすめようというのがアイフルの戦法なのでしょう)、初回で判決を頂くことが出来ました。
是非、この取り扱いが他の裁判所にも広まってくれますようにと願わずにはいられません。
2月
02
2012
過払金請求において、判決を取っても支払わない極めて悪質な業者を複数抱えているネオライングループが、いくつかの業者をグループから切り離したようです。(もう面倒見切れないということでしょうか)
切り離された代表的な業者としては、ネオラインキャピタル株式会社、株式会社ヴァラモス(旧トライト)、アペンタクル株式会社(旧ワイド)、株式会社クラヴィス(旧タンポート)などです。
ネオラインキャピタルはグループからはずれた以上、ネオラインという名前は紛らわしいですから商号変更してクロスシード株式会社となるそうです。
これらの業者は、過払金をほとんど支払わない業者として有名ですが、グループから離れたことが、果たしてどのように影響するのでしょうか。
単純に考えて資金力が弱まる訳ですから、改善するようには、どうも思えません。むしろ、倒産の危険性がより高まったと考えた方が良いかもしれません。
ただ、今までも、ろくに支払わなかった業者なので、仮に倒産したからと言って、過払金を請求する側から考えたら、あまり変化はないとも言えるでしょう。
むしろ、資金があるくせに払わない方が腹が立ちますので、いっそのこと倒産してくれた方が、これらの業者に関しては、すっきりするかもしれません。
1月
23
2012
ローンが払えなくなった時、「保証人に請求がいくのは困る」と考える人は多いと思います。しかし、ローン契約書に保証人の記載が無いと、ほとんどの人は安心してしまうのではないでしょうか。ところが、そういう場合にも思わぬ落とし穴がある時があります。それが本日のテーマ、保証委託契約の保証人です。
保証委託契約とは借主と保証人(保証会社であることが多い)が結ぶ契約のことです。文字通り、借主が保証人(保証会社)に対して保証してくれることを頼む契約です。
それに対して、良く知られる保証契約とは貸主と保証人が結ぶ契約なのです。借主は実は保証契約の当事者ではありません。一般的には借主から頼まれて保証人になることが多いので、多くの人は借主が保証契約の当事者だと勘違いしている場合が多いようです。
保証人が個人の場合は、保証契約のみのケースが多いと思います。一方、住宅ローンが代表ですが、高額で長期間のローンの場合は保証会社と借主が保証委託契約を結ぶことが一般的になっています。
実は、ここが問題なのですが、大元のローン契約自体に保証人がついていないにもかかわらず、保証委託契約に保証人がついている場合があるのです。
この場合、ローン契約書を眺めていても絶対に分かりません(ローン契約書には保証会社のことしか書かれていません)。しかも、保証委託契約による保証人への請求は、前回に説明した保証会社への代位弁済が行われた後でなければ起こりません。例え滞納していたとしても、代位弁済が行われる前の段階では銀行は保証人へ請求してきませんから(ローン契約に保証人が設定されていない以上、当然ですが)全く気が付かない訳です。(住宅ローンの場合、約6ヶ月間の滞納で保証会社へ代位弁済されるケースが多いようです)
このことから、住宅ローンが払えずに自己破産に踏み切った人が、しばらくして保証会社に代位弁済がなされ、その後、保証人に請求されてびっくりするということが起こりうる訳です。
従って、自分のローンに保証委託契約が付いているかどうか、付いていたら保証委託契約に保証人が付いているかどうかを、まず確かめることが重要だと言えるでしょう。
1月
16
2012
住宅ローンが返せなくなってローン会社から督促が来ている、けれども給料が大幅に下がった、あるいは失業したなどの事情で今後も返せるあてが無い、そういった人は現在、増えていると思います。
このような人は、やはり自己破産を選択するのが適切だと思われますが(個人再生は安定した給料が維持されていることが条件になっていますから)、問題は同時廃止で処理できるかどうかです。
破産には同時廃止と管財事件の2種類がありますが、このうち管財事件は裁判費用が約40万円と高額です(弁護士や司法書士の報酬とは別に裁判所に支払う費用です)。提出書類の数も多く期間も長期化しますので、出来れば同時廃止で済ませたいのが破産を試みる人の素朴な感想でしょう。一方、同時廃止ならば裁判費用は通常5万円以下と格安です。
しかし同時廃止を試みる時に障害になるのが不動産です。不動産は高額の財産なので同時廃止のような簡略化された手続ではなく管財事件で処理したいというのが裁判所の本音だからです。
その際、名古屋地裁の場合、こういうケースならば不動産を持っていても特別に同時廃止にして良いという基準を発表しています。それは以下のようなものです。
固定資産税評価額を調べて(市区町村役場の税務課という部署で調べることが出来ます)、その評価額を土地ならば2倍、建物ならば1.5倍して評価額の合計を出します。評価額の合計と住宅ローンの残債務額を比較してローンの残債務額の方が上回れば、その不動産は無価値とみなして同時廃止で処理して良いということになっているのです。
現在は不動産価格は下落傾向にありますので、この条件に当てはまる人は結構いるでしょう。住宅ローンが払えなくなって破産したいけど、管財事件の費用はとても払えないと考えている人は検討してみると良いでしょう。
1月
11
2012
代位弁済とは一般の人にとっては聞きなれない言葉だと思います。しかし、この言葉は銀行に対する借金が返せなくなると必ず耳にする言葉です。
銀行ローンを借りる時には、消費者金融とは違って、ほとんどの場合で保証人を要求されます。しかし、最近では少額のカードローンを銀行も用意していて、これに関しては保証人不要となっているケースが多いのです。
ところが、ここが銀行らしいところですが、決して銀行は損しないような仕組を作っているのです。これが保証会社と呼ばれるものです。
保証人が不要の銀行のカードローンであっても必ず保証会社は付いています。(最近では高額の住宅ローンでも保証人ではなく保証会社になっているケースが多くなっています)
保証会社とは債務者が返済できなくなった時、銀行に対して代わりに支払ってくれる存在です。だから銀行は絶対に損はしないようになっているのです。
保証会社を付ける時には保証料が必要です。保証会社は銀行が損しない為に付けるのですから、本来、保証料は銀行が負担すべきものだろうと私は思うのですが、現実はそうなっていません。保証料は借りる時に債務者が負担するのです。(いかに銀行が保護されているか良く分かるでしょう。彼らはリスクを一切取らないで稼いでいる訳です)
そして、現実に銀行ローンが返せなくなった時に保証会社が代わりに銀行に支払うことを代位弁済と呼ぶのです。
このように書くと代位弁済によって債務者は支払義務から解放されるものと勘違いされている人もいるかもしれません。残念ながら全く違います。
代位弁済の後は、銀行に代わって保証会社が債権者になって債務者に取り立てるのです。そして、一般的に保証会社の方が取立てが厳しいのが普通です(銀行は損しないように保護されていますから品良く振舞えるのです)。
銀行のカードローンの中には消費者金融が保証会社になっているものすらあります。銀行から借りているつもりが、返済が滞った途端、取立てが消費者金融になったという笑えない話が現実にある訳です。
債務整理の場合、銀行は法定利息で貸していますので、利息の引き直しで減額になることはありません。従って、任意整理で登場することは、ほとんどない訳です。
銀行ローンの債務整理と言えば、ほとんどが自己破産や個人再生となります。破産や再生を考えている人は代位弁済という言葉を覚えておいた方が良いでしょう。
1月
04
2012
明けまして、おめでとうございます。今年も、よろしくお願いします。
さて、新年の一発目が武富士から始まるとは今年も、お騒がせな会社です。
昨年末にスポンサー企業であった韓国A&Pファイナンシャルが急遽、資金繰りがつかないということでスポンサーを降りてしまう事件がありました。(更正決定が出た後にスポンサーを降りるなど、スポンサー企業側にも問題があることは間違いありません)
案の定、大混乱に陥った武富士側ですが、当初予定していた12月の配当金の支払いは中止となりました。
そこで、新たなスポンサー探しを始めた訳ですが、年の押し迫った12月28日に新しいスポンサーが決定したようです。Jトラストという会社です。
ところが、武富士の責任を追及する弁護士の団体が、この新たなスポンサーによる会社更生に対して取消を求める申立を東京地方裁判所に提出したようです。
理由は今回のスポンサーの変更によって、武富士に支払われる対価が30億円ほど減額になるらしいのです。これは文字通り過払債権者に支払われる分配金に大きな影響を与える可能性が大です。
従って、改めて関係人への説明集会の開催や、再度の書面投票が必要だと主張している訳です。
まあ、スポンサー企業の変更という会社更生の根幹に係わるような出来事が起こった訳ですから、「もう一度、債権者の信を問え」というのは説得力のある主張でしょう。
果たして、どういう結末になるのでしょうか。今年も武富士からは目が離せそうにありません。
12月
22
2011
さて久しぶりに民事訴訟の基本の続きです。本日は訴えられた場合の被告の対応について話しましょう。
訴える側の原告は準備万端整えて、いざという覚悟で訴状を出します。従って、心の準備は充分すぎるほど出来ています。これに対して被告は、ある日、突然、訴状が郵送されてきます。もちろん、その前に内容証明郵便が来たり、原告や原告の代理人から電話などで請求されていることが多いので、突然というのは言い過ぎかもしれませんが、大半の人が実際に訴えられるまでは、「いくらなんでも本当に訴訟まではしてこないだろう」と、たかをくくっていることが多いものです。そういう意味では原告に比べて心の準備が出来ていないと言えるでしょう。
そこで最も、やってはいけない対応が放っておくことです。前回でも言いましたが、被告が何もしないで放っておくと原告の主張を全て認めたことになってしまいます(民事裁判における自白)。結果は、原告の全面勝訴で判決書が郵送されてくることになり、更に放っておくと次に差押が来る可能性が高いです。
従って被告が取るべき対応は答弁書を書いて裁判所に2通送ることです(裁判所の分と、原告の分の合わせて2通。1通は裁判所が原告に送ってくれる)。
原告と被告の双方に弁護士や認定司法書士がついている場合は、直送といって裁判所に1通、相手方に直接1通送ることが多いです。しかし、一方が一般人の場合は裁判所に2通送ることが多いです。
答弁書の内容は、だいたいが定型の書式で決まっています。ここで書くと長くなりすぎるので省きますが、簡単に言うと、「原告の請求を棄却する旨の判決を求める」ことと、原告の請求原因をとりあえず全て否認しておくことです。
ここで大切なのは、例え原告の言うとおりだなと思うところがあっても、とりあえず全て否認して構わないということです。ある意味、時間かせぎです。
正直な一般の日本人の感覚だと、ウソをつくことになるけど、裁判でそんなことをして大丈夫か、と思うかもしれません。しかし、裁判実務では良く行われていることです。裁判官も特に気にしません。
そもそも、裁判とは、必ずどちらかがウソをついているか、勘違いしているかなのです。双方が正しいということは、ありえません。にもかかわらず、お互いに自分こそが正しいと思っているから裁判になっているのです。従って、相手の主張を否定するのは、むしろ当たり前で、全部、認めるなら、原告は訴える必要は無いはずだし、被告は裁判になる前に支払ってしまえば良かったはずです。
また、被告は原告に比べて準備が出来ていないことが一般的なので、大半の被告は一回目の口頭弁論には出てきません。簡単に言うと、答弁書だけ出して1回パスできる訳です。(答弁書が提出されずに欠席すると自白になりますので、答弁書が出ていることが欠席の条件です)
こうやって原告に比べて準備不足の点を、パスした時間で埋めるのです。この時間を使って、一生懸命、作戦を練りましょう。
以上のようなことは、弁護士や認定司法書士では常識ですが、一般の人は、ほとんど知らないでしょう。だから、訴えられると、ひたすら、あわててしまって失敗することが多いのです。
12月
14
2011
順調に行くと思われた武富士の会社更生に危険信号が灯り始めました。予想外の展開です。
名乗りをあげていた韓国のスポンサー企業からの買収予定額の追加の入金が、ここにきて滞っているらしいのです。
何故、韓国のスポンサー企業の入金が滞ったのか詳しい事情は分かりませんが、一説によると、スポンサー企業自体が韓国国内で問題を起こしていて、そのことについて韓国で追及を受けており日本企業のスポンサーになっているどころではないという話しも聞こえてきています。(真偽のほどは分かりません)
いずれにしても、武富士にとっては予想もしない展開になっています。賛成多数で会社更生が決定してからは12月中に配当金を支払うと公言していたにもかかわらず、スポンサーからの入金が無い状態では最早12月の支払いは難しく延期は必至の状況です。そもそも延期したから支払える保証も無いのです。
配当金を支払うことが会社更生の条件ですから、武富士は新たなスポンサーを見つけなくてはなりません。果たして今から見つけることが出来るのでしょうか。
私の個人的な意見としては他の消費者金融に与える影響も考えると(過払金カットによる逃げ切りを許してしまうから)武富士には破産してもらいたいと考えていますので、ひょっとしたら破産に向かう可能性もあるのかなと期待してしまいます。
武富士に関しては全く余談を許さない展開になってきました。しばらく、武富士から目が離せません。