司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

1月 16 2012

住宅ローン付き破産

住宅ローンが返せなくなってローン会社から督促が来ている、けれども給料が大幅に下がった、あるいは失業したなどの事情で今後も返せるあてが無い、そういった人は現在、増えていると思います。

このような人は、やはり自己破産を選択するのが適切だと思われますが(個人再生は安定した給料が維持されていることが条件になっていますから)、問題は同時廃止で処理できるかどうかです。

破産には同時廃止と管財事件の2種類がありますが、このうち管財事件は裁判費用が約40万円と高額です(弁護士や司法書士の報酬とは別に裁判所に支払う費用です)。提出書類の数も多く期間も長期化しますので、出来れば同時廃止で済ませたいのが破産を試みる人の素朴な感想でしょう。一方、同時廃止ならば裁判費用は通常5万円以下と格安です。

しかし同時廃止を試みる時に障害になるのが不動産です。不動産は高額の財産なので同時廃止のような簡略化された手続ではなく管財事件で処理したいというのが裁判所の本音だからです。

その際、名古屋地裁の場合、こういうケースならば不動産を持っていても特別に同時廃止にして良いという基準を発表しています。それは以下のようなものです。

固定資産税評価額を調べて(市区町村役場の税務課という部署で調べることが出来ます)、その評価額を土地ならば2倍、建物ならば1.5倍して評価額の合計を出します。評価額の合計と住宅ローンの残債務額を比較してローンの残債務額の方が上回れば、その不動産は無価値とみなして同時廃止で処理して良いということになっているのです。

現在は不動産価格は下落傾向にありますので、この条件に当てはまる人は結構いるでしょう。住宅ローンが払えなくなって破産したいけど、管財事件の費用はとても払えないと考えている人は検討してみると良いでしょう。

1月 11 2012

代位弁済

代位弁済とは一般の人にとっては聞きなれない言葉だと思います。しかし、この言葉は銀行に対する借金が返せなくなると必ず耳にする言葉です。

銀行ローンを借りる時には、消費者金融とは違って、ほとんどの場合で保証人を要求されます。しかし、最近では少額のカードローンを銀行も用意していて、これに関しては保証人不要となっているケースが多いのです。

ところが、ここが銀行らしいところですが、決して銀行は損しないような仕組を作っているのです。これが保証会社と呼ばれるものです。

保証人が不要の銀行のカードローンであっても必ず保証会社は付いています。(最近では高額の住宅ローンでも保証人ではなく保証会社になっているケースが多くなっています)

保証会社とは債務者が返済できなくなった時、銀行に対して代わりに支払ってくれる存在です。だから銀行は絶対に損はしないようになっているのです。

保証会社を付ける時には保証料が必要です。保証会社は銀行が損しない為に付けるのですから、本来、保証料は銀行が負担すべきものだろうと私は思うのですが、現実はそうなっていません。保証料は借りる時に債務者が負担するのです。(いかに銀行が保護されているか良く分かるでしょう。彼らはリスクを一切取らないで稼いでいる訳です)

そして、現実に銀行ローンが返せなくなった時に保証会社が代わりに銀行に支払うことを代位弁済と呼ぶのです。

このように書くと代位弁済によって債務者は支払義務から解放されるものと勘違いされている人もいるかもしれません。残念ながら全く違います。

代位弁済の後は、銀行に代わって保証会社が債権者になって債務者に取り立てるのです。そして、一般的に保証会社の方が取立てが厳しいのが普通です(銀行は損しないように保護されていますから品良く振舞えるのです)。

銀行のカードローンの中には消費者金融が保証会社になっているものすらあります。銀行から借りているつもりが、返済が滞った途端、取立てが消費者金融になったという笑えない話が現実にある訳です。

債務整理の場合、銀行は法定利息で貸していますので、利息の引き直しで減額になることはありません。従って、任意整理で登場することは、ほとんどない訳です。

銀行ローンの債務整理と言えば、ほとんどが自己破産や個人再生となります。破産や再生を考えている人は代位弁済という言葉を覚えておいた方が良いでしょう。

1月 04 2012

臨時ニュース 武富士その後⑧

明けまして、おめでとうございます。今年も、よろしくお願いします。

さて、新年の一発目が武富士から始まるとは今年も、お騒がせな会社です。

昨年末にスポンサー企業であった韓国A&Pファイナンシャルが急遽、資金繰りがつかないということでスポンサーを降りてしまう事件がありました。(更正決定が出た後にスポンサーを降りるなど、スポンサー企業側にも問題があることは間違いありません)

案の定、大混乱に陥った武富士側ですが、当初予定していた12月の配当金の支払いは中止となりました。

そこで、新たなスポンサー探しを始めた訳ですが、年の押し迫った12月28日に新しいスポンサーが決定したようです。Jトラストという会社です。

ところが、武富士の責任を追及する弁護士の団体が、この新たなスポンサーによる会社更生に対して取消を求める申立を東京地方裁判所に提出したようです。

理由は今回のスポンサーの変更によって、武富士に支払われる対価が30億円ほど減額になるらしいのです。これは文字通り過払債権者に支払われる分配金に大きな影響を与える可能性が大です。

従って、改めて関係人への説明集会の開催や、再度の書面投票が必要だと主張している訳です。

まあ、スポンサー企業の変更という会社更生の根幹に係わるような出来事が起こった訳ですから、「もう一度、債権者の信を問え」というのは説得力のある主張でしょう。

果たして、どういう結末になるのでしょうか。今年も武富士からは目が離せそうにありません。

 

12月 22 2011

民事訴訟の基本③ 被告の対応

さて久しぶりに民事訴訟の基本の続きです。本日は訴えられた場合の被告の対応について話しましょう。

訴える側の原告は準備万端整えて、いざという覚悟で訴状を出します。従って、心の準備は充分すぎるほど出来ています。これに対して被告は、ある日、突然、訴状が郵送されてきます。もちろん、その前に内容証明郵便が来たり、原告や原告の代理人から電話などで請求されていることが多いので、突然というのは言い過ぎかもしれませんが、大半の人が実際に訴えられるまでは、「いくらなんでも本当に訴訟まではしてこないだろう」と、たかをくくっていることが多いものです。そういう意味では原告に比べて心の準備が出来ていないと言えるでしょう。

そこで最も、やってはいけない対応が放っておくことです。前回でも言いましたが、被告が何もしないで放っておくと原告の主張を全て認めたことになってしまいます(民事裁判における自白)。結果は、原告の全面勝訴で判決書が郵送されてくることになり、更に放っておくと次に差押が来る可能性が高いです。

従って被告が取るべき対応は答弁書を書いて裁判所に2通送ることです(裁判所の分と、原告の分の合わせて2通。1通は裁判所が原告に送ってくれる)。

原告と被告の双方に弁護士や認定司法書士がついている場合は、直送といって裁判所に1通、相手方に直接1通送ることが多いです。しかし、一方が一般人の場合は裁判所に2通送ることが多いです。

答弁書の内容は、だいたいが定型の書式で決まっています。ここで書くと長くなりすぎるので省きますが、簡単に言うと、「原告の請求を棄却する旨の判決を求める」ことと、原告の請求原因をとりあえず全て否認しておくことです。

ここで大切なのは、例え原告の言うとおりだなと思うところがあっても、とりあえず全て否認して構わないということです。ある意味、時間かせぎです。

正直な一般の日本人の感覚だと、ウソをつくことになるけど、裁判でそんなことをして大丈夫か、と思うかもしれません。しかし、裁判実務では良く行われていることです。裁判官も特に気にしません。

そもそも、裁判とは、必ずどちらかがウソをついているか、勘違いしているかなのです。双方が正しいということは、ありえません。にもかかわらず、お互いに自分こそが正しいと思っているから裁判になっているのです。従って、相手の主張を否定するのは、むしろ当たり前で、全部、認めるなら、原告は訴える必要は無いはずだし、被告は裁判になる前に支払ってしまえば良かったはずです。

また、被告は原告に比べて準備が出来ていないことが一般的なので、大半の被告は一回目の口頭弁論には出てきません。簡単に言うと、答弁書だけ出して1回パスできる訳です。(答弁書が提出されずに欠席すると自白になりますので、答弁書が出ていることが欠席の条件です)

こうやって原告に比べて準備不足の点を、パスした時間で埋めるのです。この時間を使って、一生懸命、作戦を練りましょう。

以上のようなことは、弁護士や認定司法書士では常識ですが、一般の人は、ほとんど知らないでしょう。だから、訴えられると、ひたすら、あわててしまって失敗することが多いのです。

12月 14 2011

臨時ニュース 武富士その後⑦

順調に行くと思われた武富士の会社更生に危険信号が灯り始めました。予想外の展開です。

名乗りをあげていた韓国のスポンサー企業からの買収予定額の追加の入金が、ここにきて滞っているらしいのです。

何故、韓国のスポンサー企業の入金が滞ったのか詳しい事情は分かりませんが、一説によると、スポンサー企業自体が韓国国内で問題を起こしていて、そのことについて韓国で追及を受けており日本企業のスポンサーになっているどころではないという話しも聞こえてきています。(真偽のほどは分かりません)

いずれにしても、武富士にとっては予想もしない展開になっています。賛成多数で会社更生が決定してからは12月中に配当金を支払うと公言していたにもかかわらず、スポンサーからの入金が無い状態では最早12月の支払いは難しく延期は必至の状況です。そもそも延期したから支払える保証も無いのです。

配当金を支払うことが会社更生の条件ですから、武富士は新たなスポンサーを見つけなくてはなりません。果たして今から見つけることが出来るのでしょうか。

私の個人的な意見としては他の消費者金融に与える影響も考えると(過払金カットによる逃げ切りを許してしまうから)武富士には破産してもらいたいと考えていますので、ひょっとしたら破産に向かう可能性もあるのかなと期待してしまいます。

武富士に関しては全く余談を許さない展開になってきました。しばらく、武富士から目が離せません。

12月 05 2011

臨時ニュース 平成23年12月1日最高裁判決

最近の過払金訴訟で貸金業者側がしてきた主要な反論が二つあります。

一つは、取引の途中で空白期間があった場合の取引の分断の主張、もう一つは、悪意受益者の利息に対して、当時は悪意だと考えていなかった特段の事情があるから、やむを得ない為に利息は支払わないという主張です。

上記2大反論のうち、悪意受益者の利息について、この度、最高裁判所が決着をつけました。結論から言うと、貸金業者は、きちんとした法定書面を交付していない場合、悪意ではないと考える特段の事情は存在しない。故に過払金に対する5%の利息は認められる、というものです。

この判決によって、今まで利息に関して、さんざん抵抗してきた業者も今後は支払う方向に向かっていくものと思われます。(もちろん、経営悪化の為に支払能力が無い業者は話が別です。こればかりは、どんな有利な判決が出ようと、どうしようもありません)

しかし、楽観は禁物です。今よりは支払いが良くなるとは思いますが、この判決だけで全ての利息が取れるようになるとは限りません。

例えば、今回は、きちんとした法定書面が交付されていない場合は利息は支払わなくてはならないと判決では言っていますが、裏を返せば、きちんとした法定書面が出ていた場合は支払わなくても良いという解釈も可能な訳です。(この反論は今後、予想されます)

法定書面には2種類あって、17条書面(契約書面)・18条書面(受取書面)がそれにあたります。法律では、これらの書面に返済期間と返済回数の記載が義務付けられていますが、実際には、これらの記載がされるようになったのは、ここ数年のことなのです。

従って、これらの記載がされる前に過払金が発生している取引ならば恐らく問題は無いと思われますが、これらの記載がされるようになった後に過払金が発生する取引の場合は業者の抵抗が予想される訳です。

まだ100%こちらの主張が通ると言う訳ではありませんが、今までよりは格段に良くなったことは確かです。貸金業者との争いは少しずつ前進する積み重ねの歴史でした。一朝一夕に事が進む訳ではありません。今回は素直に喜んで、利息の請求に努めていきましょう。

11月 29 2011

出会い系サイト被害

最近、出会い系サイト被害の相談を受けました。サイトを利用した後、確かに解約手続をして解約の画面も表示されたのに、その後もクレジットの請求が毎月、止まらないというものです。

一口に出会い系サイト被害と言っても内容は様々です。上記のようなケースもあれば、画面が「無料」と表示されていたのに後から料金を請求されたり、あるサイトに登録したら全く関係のない別のサイトに勝手に登録されていたり、退会したいと申し込んだら多額の違約金を請求されたりと色々です。

このようなサイトは、ほとんどが怪しい悪質サイトですが、かなり多くの人が泣き寝入りをして、お金を払って、そのままにしているようです。

特に問題を複雑にしているのが、クレジットの利用です。利用料金の支払は、ほとんどの人がクレジットを利用しています。この方がサイト運営会社も料金が取りやすいからです。しかし、クレジットには意外な落とし穴があります。それは、サイト運営会社とクレジット会社とは全くの別会社だということです。

これが原因で、被害を受けたサイト運営会社に対するクレームをクレジット会社に対して言っても取り合ってくれないことが多いのです。クレジット会社の言い分は「ウチは支払の代行をしているだけなので、文句はサイト運営会社に言ってくれ」ということになります。まあ、一応、理屈はとおっています。だから、やっかいなのです。

しかし、被害者からすれば、金を引き落とされるクレジット会社が一番、困るわけです。

今回のケースではクレジット会社と交渉することによって支払をストップすることが出来ました。しかし、いつも簡単に済むとは限りません。特に最近のクレジットは直接、加盟店と契約している訳ではないケースが多いので、やっかいです。では、実際に加盟店と契約しているのは、どこかと言うと、それを決済代行会社と言います。

決済代行会社はクレジットの明細に書かれている場合もありますが、書かれていない場合も結構あります。書かれていない場合は探すのが非常にやっかいですし時間もかかります。

このように、なかなか大変な出会い系サイト被害ですが、粘れば何とかできる場合も多いので困った場合は専門家に相談してみましょう。

11月 21 2011

裁判所の特徴⑥ 名古屋地方裁判所民事第2部

前に名古屋地方裁判所は、いくつかの部に分かれているという話をしました。しかし今回、取り上げる民事第2部は他の部とは明らかに異なっています。それで単独でタイトルをつけて説明することにしました。

民事第2部は別名、民事執行部とも言います。他の民事部は訴訟を担当する部なので裁判官の考え方のクセのようなもので多少の違いはありますが、やっていることは訴訟の進行ということで共通しています。ところが、民事第2部に関しては、そもそも訴訟を取り扱っていないのです。

第2部で扱っているのは、強制執行に関する業務(差押のことです)と、あとは破産や民事再生に関する業務です。従って、債務整理に関わっている司法書士にとって民事第2部は非常に良く訪れる場所だということになります。

そして、民事第2部は、他の民事部とは建物自体が別棟になっています。これは、全く系統の違う仕事をしているのが一つの理由で、あとは他の民事部よりも取り扱っている事務の量が膨大であることも理由になっているでしょう。(職員も多勢います)

私の知る限りでは東京地裁と大阪地裁も同じように民事執行部が独立して他の建物になっています。名古屋は同じ敷地内の別棟ですが、東京や大阪は全く別の住所の建物に入っています。従って、東京や大阪で破産や差押の書類を持って、地方裁判所を探して行ってみたら、全然別の場所を指示されたということがありうる訳です。(もちろん、きちんと検索すれば、ちゃんとホームページに載っていますが、最初から同じ場所にあると思い込んでしまう人も当然いるでしょう)

ただ、名古屋でも建物が独立して別になっているのは本庁だけです。支部になると訴訟と同じ建物の中にあるのが普通です。

本庁の第2部の建物の最上階に破産係と再生係が入っています。仕切りを一つ挟んでいるだけなのですが、驚くほど交流がありません。情報交換のようなことも、ほとんど行われていないようです。

ですから似たようなケースでありながら破産係と再生係で取り扱いが違ったりします。(例えば、賃貸住宅の敷金が破産係では財産には含まれないのに、再生係では財産に含まれるとか) この辺りが、いかにも役所の縦割りという感じで、融通が利かないなあと思います。

 

11月 17 2011

民事訴訟の基本② 要件事実

基本と言いながら「要件事実」という専門用語のタイトルで面食らった人もいるかもしれません。しかし、この要件事実だけは例え専門用語を使っても民事訴訟にとって避けては通れない部分なのです。

民事訴訟の訴状は要件事実に従って作成されます。要件事実が、きちんと書かれているかどうかで訴状の良し悪しが決まります。素人が訴状を書くのが困難な理由は、この要件事実が、よく分かっていないからである場合が、ほとんどです。裏を返せば要件事実を、きちんと理解できれば素人でも、そこそこの訴状を書くことは可能です。(もちろん、そんなに簡単なことではありません。だからこそ、法律家というものが存在するわけです)

ある出来事を訴状に書く場合、どのような法律を適用すべきかを考え、更に適用する法律が決まったら現実の出来事を法律に置き換えると、どのように表すことが出来るかを考えます。

その際、各法律によって、どのような事実があると権利が発生するかを表したものが要件事実と言います。

恐らく、抽象的で分かりにくかったと思いますので、具体的に、お金の貸し借りを例にして説明してみましょう。

お金の貸し借りのことを金銭消費貸借契約と言います(略して金消契約と言います)。よく銀行のローン契約書に金銭消費貸借契約書と書かれていますので、ご存知の方も多いと思います。金消契約は民法587条に記載されていますので、請求する根拠は、この法律になります。

では金消契約が成立する為の要件事実は何かと言うと、次の2つになります。

1 返還の約束が当事者の間にあったこと。

2 金銭が相手方に交付されたこと

何だ当たり前じゃないかと思われた方がいるかもしれませんが、これが実は当たり前ではありません。例えば売買契約の場合は、2番目の目的物の交付は要件事実にはなっていません。従って、売買契約の訴状を書くときは目的物を相手に渡したかどうかは訴状に書かなくても良いということになります。(相手方の反論を防ぐ為に書いておいても構いません。しかし、絶対に必要な訳ではないということです)

しかし、金消契約の場合は2番目の金銭の交付が訴状に書かれていなかったら、そもそも権利が発生する根拠が無いと裁判所に判断されて、門前払いの可能性が高いでしょう。

このように要件事実とは各法律によって異なっています。それぞれの法律に照らし合わせて適切な要件事実を見つけ出して、不足の無いように訴状に書いていく必要がある訳です。

そして、以前のブログにも書きましたが、要件事実が確かにあったということは、原告に立証責任があります。ここが非常に重要なことです。裏を返せば、要件事実以外のことは証明できなくても裁判の直接の負けの原因にはならないということです。

この立証責任があるからこそ、何が要件事実で、何がそうでないかを確実に把握しておく必要があるのです。

要件事実の立証に失敗した場合(証拠が足りなくて証明できなかった場合)、裁判は原告の負けとなります。この場合、被告は裁判所で否定するだけで構いません。要件事実に関しては原告に立証責任がある訳ですから、被告はただ否定しているだけでいいのです。だから、原告に充分な証拠が無いと分かっている裁判の場合、被告の立場は非常に楽なのです。

ただし、原告が証拠無しでも勝てるケースが少しだけあります。それは、被告が裁判に欠席した場合と、裁判所に出席しても被告が何も反論しなかった場合、あとは答弁書という被告の提出する反論の書面を出さずに放っておいた場合です。

このように被告が何も反論する気持ちが無いという態度を示した場合は、原告の請求を全て認めたものとみなされてしまいます(擬制自白と言います)。刑事裁判では自白が証拠にならない場合もありますが、民事裁判における自白は絶対です。自白をしたら自動的に認めたものとして判決が書かれてしまいます。だから、民事裁判では被告は絶対に放っておいてはいけません。必ず反論しなければならないのです。(放っておいたら、例え架空請求であっても原告勝利で判決が出ます)

さて要件事実と立証責任については分かってきたでしょうか。次は訴えられた場合の被告の対応について考えてみましょう。

11月 07 2011

臨時ニュース 武富士その後⑥

ついに武富士の会社更生に対する投票結果が発表されました。残念ながら結果は、「会社更生認可決定」となりました。非常に落胆しております。これで3.3%という信じがたい配当率が決定されてしまいました。

発表によると、過払債権者の同意率(賛成した割合)は何と88.07%となっています。これは、弁護士・司法書士が代理人となった案件とは、かけ離れた数字となっております。

私の知り合いの同業者に問い合わせても、ほとんどが反対票の方が多く(別に強制した訳ではありません。普通に説明した結果、反対の方が自然に多くなるのです)、むしろ数多くの一般債権者(弁護士・司法書士に依頼しないで武富士に申請した人達)が、武富士からの電話等による強烈な説得を受けた結果であろうと容易に推測できるわけです。(武富士は投票にあたって、かなりの電話攻勢をかけていたと聞いております。恐らく、一般債権者などに焦点をしぼって電話をしていたのでしょう)

私の事務所でも9割の人が反対を表明してきて、むしろ私自身は意外な結果だと受け止めていたくらいです。要は普通に武富士の立場や条件を説明して意見を聞くと、自然に反対の方が多くなる訳です。

まあ、直接、担当者と話して、低姿勢に泣き落としでもされると転んでしまう日本人の性質もあるのでしょう。こういう性質は時には人情深くて良い場合もありますが、反対に物事の本質を見失う結論を出してしまう恐れもあり、諸刃の剣と言えるでしょう。

他には会社更生が失敗して破産になると配当は0円になると担当者が説得していた例もあると聞いています。これが本当なら虚偽の説明です。破産になった場合でも会社の財産調査をして(恐らく破産の方が徹底的な調査をされるでしょう)、明らかになった財産から分配はされる訳です。もちろんスポンサー企業が存在しない分、少なくなる可能性もありますが、0円になるとは限りません。

なにしろ元が低い金額ですから、少なくなったとしても、たかが知れていると考えることもできます。それなら武富士を破産させて、きっちり責任を取らせたいと考える人が実際には、もっと多かったであろうと考えるのが自然ではないでしょうか

今回の認可決定により、傍観していた他の消費者金融は、「武富士は、うまいことをやった。我々も同じ手口で過払金をカットできるのではないか」と考え始めることは火を見るより明らかでしょう。今後、続々と会社更生や民事再生のラッシュが起こるのではないかと心配になります。

特に気になるのが、銀行の支援を受けていない大型消費者金融であるアイフルの動向です。以前から武富士の次はアイフルと噂が絶えなかったので、武富士が会社更生で生き残ったという知らせは、アイフルにとって大きかったのではないでしょうか。

皆さんは、アイフルのカウントダウンの声が聞こえてきたような気がしませんか。

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