司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

10月 31 2011

差押④ 動産の差押

差押には大きく分けて、債権、不動産、動産があります。

債権とは請求権のことで、代表的には給料(従業員から会社への請求権)・売掛金(売主から買主への請求権)・銀行口座(預金者から銀行への請求権)などがあります。

不動産は説明が不要でしょう。いわゆる、土地・建物のことです。

これらに対して動産とは、簡単に説明すると、債権でも不動産でもないものと考えると分かりやすいでしょう。具体的には家財道具・持ち物は全て動産に含まれます。

以上3つの差押のうち、動産の差押は最も人気がありません。よく、映画やドラマではイメージが分かり易いせいか、動産の差押のシーンが登場します。家中の家財道具に赤い紙を貼っていく例のシーンです。ところが現実の実務では、あんなことはめったに行われないのです。

その理由の最大のものは、回収率が非常に悪いという一点につきます。そもそも換金して価値のある動産など、ほとんどの人が持っていないというのが現実だからです。(そんなものを持っている人は大抵、資産家ですから、そもそも差押の対象になることが少ないです)

皆さんも自分のこととして思い返してみれば、自分の持ち物で換金して、まとまったお金になりそうなものは、なかなか思い浮かばないのではないでしょうか。(今は金が上がっていますから、女性なら金を使ったアクセサリーぐらいでしょうか)

もちろん、金庫やタンスに現金がある人は、現金は動産になりますから差押の対象になります。しかし、まとまった現金を持っている人が差押の対象になることが少ないのは、換金して価値のある動産の時と同じことです。

また、もし、以上のような現金や価値のある動産を持っていたとしても、どこか分からないところに隠されてしまった場合、動産の差押で見つけ出すことは、ほとんど不可能です。

恐らく知らない人のイメージだと差押の執行官は税務署員のような人だと思われているのではないでしょうか。実は私も差押の現場に付き添うまでは、そのように思っていました。税務署員のように徹底的に隠し財産を調べ上げて時間をかけて追求していくのだろうというイメージです。

ところが、実際の動産の執行官は、ざっと建物の中を見渡したら、一言、二言、住人に聞いて、一応、押入れや戸棚や引き出しの中を開けさせて確認はしますが、奥までひっくり返して全て調べるようなことは基本的にしません。非常に表面的で事務的なのです。

これは、税務署員と執行官の勤務評価にかかわっていると私は思っています。

税務署員は文字通り、隠し財産を見つけて税金を余分に取ったら、それは税務署員の成績になります。ようは勤務評定に反映される訳です。おのずと彼らは頑張って探そうとする訳です。

一方、執行官の方は見つかっても見つからなくても一切、評価には関係ないと聞いています。こうなると、人間あまり一生懸命やらなくなるのは当然で、一通り調べて見つからなければ、それで終了となってしまいます。

以上、動産の差押が何故、人気がないのかを説明しましたが、一つだけ意味があるとすれば、それは相手に対する嫌がらせの効果です。

動産の差押は、債務名義(差押の根拠となる書類)を持っている人が裁判所に申し立てれば必ず始まります。見つからなくても何回も申し立てることは一応、可能です。

いくら見つからなくても、裁判所の執行官が何回も家に来て見回られるのは誰だって嫌なものです。しかも、裁判所は、いつ調査に来るかを事前に教えてくれる訳ではありません。(これは当然ですね、教えたら差押の意味がありません)

ある日突然、執行官がやってきて調査を始める訳ですから、税務署に比べて大雑把であっても、何回もやられたらプレッシャーになるでしょう。

まして、相手が事業主であった場合、仕事場に突然、現れるので、仕事の支障になる可能性があります。お客さんがいるところに来たら、相手にはかなりの重圧になるでしょう。

このような方法で相手にプレッシャーを与えて支払を約束させるというやり方もある訳です。(他の方法に比べて遠まわりで面倒ではありますが)

 

10月 24 2011

個人再生における自動車ローンの扱い

久々に個人再生の話題です。

平成22年6月4日の最高裁判決の影響で個人再生における自動車ローンの扱いが変化した裁判所があるようなので注意が必要になりました。(まだ全国の裁判所に広がっているのかどうかは不明です)

注意すべきケースは車検証の所有者の欄にディーラー(販売店)が書かれている場合です。

理屈から考えるとローンが払い終わっていない場合、自動車の所有権はローンの担保としてクレジット会社に留保されている状態です。従って、多くのケースでは車検証の所有者の欄はクレジット会社になっているでしょう。

ところが、ローン未払いの時の車の引き上げや売却の関係で、この所有者欄がディーラーになっている場合も少なくないのです。これが問題をややこしくしています。何故なら、クレジット会社はローンを組んでいる以上、正統な所有権を主張する権利がありますが、ディーラーには無いからです。所有者欄がディーラーになっている法的な根拠を問われても、ディーラーは回答に困ってしまうでしょう。要は事務手続上の問題に過ぎないからです。

しかし、裁判所は法律を厳格に解釈して以下のような判断をくだす可能性があるのです。(実際に名古屋地裁本庁の再生係で、下された判断のようです)

その判断とは、車検証の上でディーラーが所有者となっている以上、クレジット会社に自動車の引き上げや、換金の権限は無い。従って、個人再生の際、クレジット会社が自動車を引き上げて換金するのは、特定の債権者に対する偏頗弁済(一部の債権者に対して多く弁済すること)となり違法である。もし、これを行うならば、クレジット会社が換金して返済された分を清算価値として計上(財産に加えて支払額を増やせということです)するべき、というものです。

このとおり処理すれば、換金された自動車の時価相当額は丸ごと清算価値に上乗せされることになり、自動車の価格によっては支払額の大幅アップに、つながりかねません。

以前の処理では、換金されても清算価値の増加は無く、クレジット会社のローン残額も減って、何の問題もありませんでした。今でも車検証の所有者欄がクレジット会社になっていれば問題なく、この処理が行なわれます。

要は、車検証の所有者欄がディーラーになっているか、クレジット会社になっているかで、やっている処理自体は同じなのにもかかわらず、著しく依頼人に不利になるケースが出てきた訳です。

ただし、清算価値は100万円までは支払額に影響を与えませんので、自動車の時価と、その他の財産を合わせても100万円に届かない場合は心配する必要はありません。今までと変わりがないと考えて良いでしょう。要は安い自動車に乗っている人は、あまり心配いらないということになります。(自分は軽自動車だから大丈夫とは思わないで下さい。軽自動車は最近、人気なので意外に時価は高かったりするので事前に調べた方が良いでしょう)

それにしても、単に引き上げ売却の際の都合で習慣化していた制度を、厳格に解釈して依頼人の経済的再生を、やりにくくしてしまっている裁判所の判断は疑問を感じます。今後、処理を重ねていくと多くの矛盾が出てくると思われますので、その中で少しでも改善されていくことを期待したいと思います。

より詳しい情報を知りたい方は以下をクリック

http://www.hashiho.com/debt/kojinsaisei/

10月 18 2011

臨時ニュース 武富士その後⑤

武富士の更生管財人(会社更生を取り仕切る役目のこと)が、武富士の元役員と大株主を相手に損害賠償請求訴訟を起こしたようです。

これは表向きは、武富士の元役員や大株主にも会社倒産の責任を負わせるというものですが、素直に、そのように評価してよいかは疑問が残ります。

何故かというと、今まで武富士の更生管財人は、過払金債権者よりも武富士に味方していると見られていて、過払金債権者側の弁護士達からは批判の対象になっていたからです。

そのように見られていた更生管財人が一転して武富士の責任を追及する訴訟を提起した訳ですから、「これは何か裏があるのではないか」と勘ぐってしまうのも無理はありません。

予想できることとしては、武富士の会社更生を成功させる為には過半数の賛成票を集めなければなりませんので、賛成票を投じてもらう為にパフォーマンスとして武富士に責任追及をしているという疑いです。

この予想どおりだと仮定すると、管財人は真面目に武富士を追求する気はなく、適当なところで訴訟を終わらせてしまう可能性があるということになります。あるいは非常に低い金額で決着を図るかもしれません。(私は個人的には、予想どおりである可能性が高いのではないかと考えています)

もし予想が当たっていたとしたら、腹立たしい反面、そこまで武富士は賛成票集めに苦労しているのか、という見方もできます。

前回の丸和商事の件でも書きましたが、武富士の会社更生が成功するかどうかは、全ての消費者金融が注目しています。武富士の過払金逃れが、うまくいけば、今後、畳み掛けるように消費者金融の倒産が次々と起こってくるでしょう。(何しろ過払金をカットして会社が存続するのですから)

従って、繰り返しになりますが、武富士の会社更生は、丸和商事の民事再生と同じく、失敗することが好ましいと考える訳です。

 

10月 12 2011

臨時ニュース 丸和商事倒産 その4

民事再生を申し立てていた丸和商事(ニコニコクレジット)ですが、最近、弁済率が発表されたようです。何と武富士をも下回る割合で司法書士・弁護士の間に衝撃が走っています。

具体的には1000万円までの過払金に対しては1.65%、1000万円を超える過払金に対しては1.32%というものです。ほとんどの過払金債権者が1000万円以下だと思われますので、弁済率は1.65%だと考えて良いでしょう。

この弁済率だと仮に100万円の過払金があったとしても、丸和商事からの配当金は、わずか1万6500円ということになります。衝撃が走ったのも当然でしょう。いくらなんでも武富士を下回るとは多くの人は予想していなかったのではないでしょうか。

同じ静岡県のクレディア(現フロックス)の民事再生の時は弁済率が4割だった訳ですから、まさに天と地の差があります。(クレディアは内心、失敗したと思ってるんじゃないでしょうか。もう少し粘っていれば、相当、弁済率を下げられたのではないかと思っていても不思議はないです)

問題は、この非常識な弁済率の再生計画案が果たして認可されるかどうかです。しばらくすると、計画案に賛成か反対かを決める投票用紙が過払金債権者のところに送られてきます。

私の意見は、やはり、この計画案は反対多数で不認可に追い込むべきだと考えます。今回の弁済率が非常識になったのは、やはり武富士の影響が大きかったと思います。武富士の前例が無かったら、丸和商事も、これほど大胆な弁済率は提示できなかったでしょう。

もし、これが簡単に認可されてしまったら、消費者金融各社は倒産すれば過払金から開放されて再出発できると考えてしまうことになります(丸和商事には銀行のスポンサーが決定していて、認可されたら会社は存続します)。

そうなったら、次から次への倒産ラッシュが起こり、収拾がつかなくなるかもしれません。過払金債権者は大打撃を受けることになります。

どこかで負の連鎖を断ち切る必要があります。武富士、丸和商事のどちらか(願わくは両方とも)が、倒産手続に失敗するという前例を作らなければなりません。そうすれば、他の消費者金融も安易な倒産をためらうようになるでしょう。

丸和商事への過払金債権者の皆さん、反対しましょう。こんな不当な倒産を許すべきではありません。

10月 04 2011

臨時ニュース プロミスが銀行の完全子会社に

消費者金融業者の中でプロミス・アコム・新生は比較的安全だと今まで説明してきました。これは、これらの業者には銀行がバックについているからです。しかし、裏を返せば万が一、銀行が見放したら一気に経営が傾く可能性もありました。

最近の消費者金融の経営状態の悪化は世間でも評判になっていて、このまま悪化が止まらなければ銀行が提携を解消してしまうのではないかという噂も流れていました。(こういう時に銀行が容赦ない対応をすることは皆さんも良くご存知でしょう)

ところが最近、プロミスの親会社である三井住友銀行が今までの出資比率(確か22%だったと思います)を大幅に引き上げて100%子会社にすることが発表されました。

これは事実上、プロミスに関しては三井住友銀行が責任を持つと宣言したようなものです。これでプロミスが倒産する危険性は限りなく低くなったと言えるでしょう。過払金請求を考えている人には朗報です。

武富士以来、どこの業者が倒産してもおかしくないという疑心暗鬼の状態が続いてきましたが、ようやく安心して請求できる業者が出来たということになります。

今まで過払金の支払時期が延びる傾向にあったプロミスですが、これを機会に支払時期も短縮してくれることを期待したいです。

今まで銀行が消費者金融に対して、もっとも懸念していたのが、いつまで続くか分からない過払金請求のことでした。ところが今回、三井住友銀行は「過払金請求はピークを過ぎた。今後は減少していくだろう。」と見通したと言われています(だからこそ100%子会社にしたのでしょう)。

実際に過払金請求の絶対数も武富士倒産以来、減少傾向にあるようです。しかし一部の司法書士や弁護士の中には、「まだ、完済してしまって、そのまま放ったらかしにしている人が、かなりいるはず。その人達が10年以内に請求してくれば、また増加する可能性はある」と言っている人もいます。

果たして、どちらが正しいのかは分かりません。しかし、一時期の膨大な過払金請求であふれかえったようなピークは過ぎたのは、確かではないかと私は思います。

 

9月 27 2011

差押③ 銀行口座の差押

差押の中で給料の次に、よく行なわれるのが銀行口座の差押です。何故、給料や銀行口座が狙われるのかと言うと、換金の必要が無いからです。

給料や口座を押さえてしまえば、直接、現金を獲得することが出来ます。しかし、不動産や動産に対する差押の場合は、不動産や動産を現金に換金する作業が必要になります。換金作業では、時期による価格の変動もありますし換金による手数料も発生します。最悪の場合は二束三文で換金できないという可能性もある訳です。

このように有利な点が多い銀行口座の差押ですが、給料に比べて人気が劣るのは、給料よりも確実性が低いからです。

給料の場合は勤め先が分かれば、ほとんど成功します。時間はかかっても、いつかは回収できます。ところが、口座の場合は差し押さえた時点で残高が無ければ空振りになってしまうのです。

裁判で負けた相手は、ちょっと法律の知識があれば次には差押の危険があることを知っています。そうすると、銀行口座から現金を引き出してしまうという行動に出ます。これを事前にやられると口座の差押は、お手上げになってしまうのです。(この点、給料の場合は分かっていても防ぐ方法がありません。強いて言えば会社を辞めるしかないことになります)

ちなみに銀行口座を知られていないから大丈夫と思っている人は大きな間違いです。口座の差押は銀行名と支店名が書かれていれば裁判所は受け付けます(口座番号は不要です)。また、複数の銀行や支店が書かれていても構いません(費用は余分にかかりますが)。だから、裁判で負けた相手の近所の銀行の支店を片っ端から差押をするということも可能なのです。その中の一つでも当たっていれば成功です。

はずれた支店に口座自体が無かったとしても、それは手続的な問題にはなりません。そもそも差押とは、そういうものなのです。だから、確実でない情報をもとに、予想をして差押をすることは許されているのです。

あと相手が会社であれば取引銀行が分かっていれば(会社のパンフレットやホームページに取引銀行が書かれていることが多いです)、目ぼしい支店に一斉に差押をかけるという手段もあります。

このように銀行口座の差押は、一種、賭けのような部分が存在します。うまく残高がある口座にヒットすれば丸ごと回収できますが、残高が無ければ全くの無駄骨に終わる可能性もあるのです。この辺りが給料に比べて優先順位が低い原因だと思います。

9月 21 2011

裁判所の特徴⑤ 名古屋地方裁判所岡崎支部

地方裁判所は都道府県に一箇所ですが、面積が広い都道府県の場合は一箇所だと不便になってしまうので、支部というのを設けている場合が多いです。

支部は名称からのイメージでは子会社のように思われるかもしれませんが、実際には独立した裁判所として機能しています。従って、支部と本庁で全く取り扱いが違うということも普通に起こります。

名古屋地裁岡崎支部は西三河と呼ばれる地域を管轄する地方裁判所ですが、名古屋地裁本庁(名古屋市の中心部にあります)とは色々な意味で異なる裁判所となっています。

債務整理を申し立てる人にとって最も大きな違いは個人再生の取り扱いでしょう。

個人再生を申し立てる場合、本庁では、かなりの確率で再生委員が付きます。この為、申立費用が約8万円ほど高くなってしまいます。もともと再生を申し立てる人は生活が苦しい訳ですから、この金額の差は大きいです。

他にも岡崎支部の個人再生では裁判所に呼び出されることがありません。書面審査だけで進んでいきますので、申立人の負担が非常に軽いのです。それに対して本庁では最低でも1回、再生委員が付いた場合は2回も裁判所に呼び出されます。

これだけ大きな違いがあるにもかかわらず、本庁の管轄地域と岡崎支部の管轄地域は隣あっているのです。私の昔の事務所は日進市にありましたが、その頃はちょうど双方の管轄の中間に近い地域で、両方の依頼人が多く訪れていました。そうすると同じ個人再生という手続をやっているのに費用や時間が大幅に異なることに強い疑問を持つようになりました。正直なところ、本庁管轄の人が申し立てる場合は一時的に岡崎支部の管轄に引っ越した方が良いのではないかと思う時もありました。

これ以外にも、最近、本庁で流行っている過払金訴訟の調停移行の問題でも大きな違いがあります。はっきり言って岡崎支部では調停に強制的に移されることはありません。通常訴訟として申し立てれば、そのまま訴訟として扱ってくれます。

これらの違いは何を意味しているかというと、ようするに弁護士が余っている地域か、そうでないかの違いなのです。

本庁の個人再生の費用が高いのも呼び出しが多くあるのも全ては再生委員が付くからです。再生委員のほとんどが弁護士です。また、本庁の過払訴訟が調停に回された時に調停委員に登場するのも、やはりほとんどが弁護士なのです。ようは弁護士が多くいる地域にある裁判所と、弁護士があまりいない裁判所の違いが明確に現れているという訳です。読者の皆さんは、この事実を知って、どのように感じられるでしょうか。

9月 12 2011

民事訴訟の基本① 原告と被告

最近は法廷に行くと、いかにも素人に見える人が原告席に座って裁判官の質問に答えている姿を目にすることがあります。やり取りを聞いていると、そのほとんどが過払金の訴訟だと思われますが、素人の人達にも訴訟に関する関心を高めたという効果も過払金訴訟にはあったのかもしれません。

以前は素人が法廷に来る場合は、ほとんどが被告席での登場でした。原告は貸金業者、クレジット会社、携帯電話会社などで、未払いの返済金や電話料金などを請求されて放っておいたら自宅に訴状が届き驚いて法廷に来たというパターンです。従って、原告側に素人が座っているというのは本当に珍しいケースだったのです。

民事訴訟の場合、訴えた方を原告といい、訴えられた方を被告といいます。この被告というのは刑事裁判での被告人と間違われることが多いのですが中身は全然違います。

被告人は犯罪に対する容疑者ですが、被告は単に訴えれただけの存在です。日本の裁判では刑事裁判の場合、90%以上の確率で被告人は有罪になります(これはこれで民主主義国家としては問題だと思いますが)ので、何となく日本人は被告人というと悪い人のイメージを持ってしまいます。

本当は刑事裁判で有罪になるまでは被告人といえども犯人扱いしてはいけないという原則があるのですが、実際にはマスコミも犯人であるかのように報道しているケースもしばしばあります。

この被告人のイメージに引っ張られて民事裁判の被告も悪いイメージでとらえてしまう人が多いのですが、こちらは犯罪とは関係ありません(もちろん刑事裁判の被告人に対して新たに民事の損害賠償を起こした場合は、同一人物が被告人であると同時に被告になるケースもあります)。

法廷では原告が裁判官席に向かって左側に、向かって右側に被告が座ります。原告は自分の要求を訴状に書いて、その要求がどういう法律に基づいて請求できるか、また当てはまる法律の要件を満たす事実が存在していることを明らかにしなければなりません。(これが結構、専門知識がいるので原告側に座る素人が少ない理由になっていると思われます)

更に被告が反対してきた時に、事実が存在していることを証拠によって証明するのは原告の役目です。厳密に言うと被告が証明しなくてはならない事実もありますが、ややこしくなるので今は置いておきましょう。とりあえず、最初に証明しなくてはならないのは原告の方だと考えておいて下さい。だからこそ、世の中のあらゆる契約の場面で契約書が作成されるのです。何の為に契約書を書くのかと言えば、後で裁判になった時に原告は契約があったことを証明しなくてはならないからです。

裏を返せば、もし原告が契約書を持っていなかったら、分かりやすい例で言えば金を貸した原告が借用書を持っていなかったらどうなるか考えてみましょう。

裁判になった時に被告が、「私は金なんか借りてない、原告はウソをついている」と言ったとしましょう。この時に金を貸したことの証明は原告の役目です。その時に最も強力な証拠は契約書です。印鑑が押された契約書が出てくればウソをついているのは被告の方だと裁判所は判断するでしょう。でも原告が貸し借りの事実を証明できなかったら、裁判で負けるのは原告の方なのです。

ここで、おかしいなと思われた人がいるかもしれません。例え原告が証明できなくても、ウソをついているのは原告とは限りません。どちらがウソをついているか分からない状態のはずです。では何故、原告が負けるのかと言うと、それが民事裁判のルールだからです。これを立証責任と言います。

この点については長くなりますので、またいつか説明しましょう。

 

9月 06 2011

差押② 給料の差押

差押の中で最も良く使われるのが給料の差押です。何故、良く使われるのかと言えば最も成功率が高いからです。

差押①でも書きましたが、差押とは実際には成功率が高くありません。(理由は差押①をご覧下さい) そんな中で給料の差押は数少ない非常に成功率の高い方法なのです。何故なら給料は貯金と違って、会社が本人に渡す前に差し押さえてしまえば、隠すことも使ってしまうことも出来ないからです。差し押さえる側にとって、これほど有利な条件はありません。(逆に裁判で負けた側にとっては給料の差押は最も注意しなければならないものです)

貸金業者は、お金を貸す時に必ず勤め先を聞いて書類に記入させます。これは、いざと言う時に給料の差押を可能にする為です。会社名と住所が特定されていれば(最悪、会社名さえ分かれば住所は調べられますが)、給料の差押が可能になるのです。そして契約書には、たいていの場合、「勤め先に変更があった場合は必ず知らせること」という条項が書かれています。これは勤め先が分からなくなると給料の差押ができなくなってしまうからです。

そうは言っても給料を差し押さえられたら生活が出来なくなってしまうと思われた人もいるでしょう。しかし、そこは法律も考えていて給料全額の差押は禁止されています。その額は毎月の給料の4分の1と定められています。ようするに差し押さえられるのは給料の4分の1までで、4分の3は受け取ることが出来るということになります。もっとも、高額の給料を受け取っている場合は法律の例外として、4分の1以上の差押が認められています。しかし、高額の給料を受け取っている人は、そもそも裁判で負ける前に支払ってしまう場合が多いでしょうから、現実には4分の1が適用されると考えておいて、ほとんど問題ないでしょう。

給料の差押が実行された場合、まず裁判所から会社に(公務員の場合は国や地方自治体に)差押の通知が届きます。本人に届くのは、その後です。通知を受け取った会社は毎月の給料から4分の1を差し引いて本人に渡すことになります。

4分の1だと、給料によっては、かなりの回数を重ねないと請求されている金額に届かない時もあります。しかし、法律の規定で差押を1回すれば請求金額に届くまで、ずっと差押の効力は持続することになっています。ようは1回差し押さえれば、全額回収するまで会社は毎月、4分の1を差し引き続けることになるのです。

一見、長時間かかるので効率が悪いように見えますが、それでも、あらゆる差押の中で最も良く使われるのは何と言っても回収が確実だからです。相手の会社が倒産するか、本人が退社でもしない限り必ず、いつかは回収できることになります。

最初に書きましたように差押は、もともと、あまり成功率が高くありませんから確実に回収できるというメリットは非常に大きいということです。

8月 29 2011

臨時ニュース SFコーポレーション倒産

消費者金融の倒産ラッシュが続いています。今回は、8月26日東京地方裁判所にてSFコーポレーション(旧三和ファイナンス)が破産開始決定を受けました。

最近では、消費者金融の倒産は珍しくありませんが、今回の特徴は破産であることです。今までは、クレディア・丸和商事の民事再生、武富士・ロプロの会社更生など倒産したといっても、会社を存続させる手続でした。しかし破産となると話は別です。SFコーポレーションという会社は解散して消滅することになります。

実はSFと言う会社は非常に悪質だった為に、今までに何度も債権者破産の申立をされていました。債権者破産とは会社ではなくて、会社に債権を持っている側(SFの場合は過払請求者)が、「この会社は債権(過払金)を払わないのだから既に破綻している」という理由で破産を申し立てることです。

ところが破産を申し立てられたSFは、その度に、どこからか金銭の都合をつけてきて一時的に過払金を払うことによって破産を免れていました。そして、ほとぼりが冷めた頃には、再び払わなくなるということを繰り返していたのです。(全く、あきれるほど、ケシカラン会社です) それが、ついに自ら破産を申し立てて開始決定が出された訳です。

破産となると、スポンサーを見つけて会社を存続させる民事再生や会社更生と違って、今あるSFの資産を処分して配当金を払うことになります。当然、配当金は微々たるもので、ほとんど期待できないと考えた方が良いでしょう。(その代わりSFという悪質な会社は、この世からなくなりますが)

まだ情報が入ってきたばかりなので、詳細なことが分かるまでに、しばらくかかるでしょう。追って、このブログでも報告していきます。

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