司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

3月 28 2011

クレジットのマンスリークリア(後編)

 さて、本題に入る前に前回、臨時で東日本大震災について被災地以外の人の過度の節約は良くないという話をしましたが、これについて一言付け加えたいと思います。

このブログは借金で苦労されている方が、ご覧になっている場合が多いと思いますので、あえて強調させて頂きますが、あくまで必要以上の節約が良くないと言っているのであって、家計にとって必要な節約は当然するべきです。

特に現在、借金で悩んでいる方にとっては、必要な節約を要求される場面は多いと思いますので、その辺りは誤解のないように、お願いします。

 では本題です。前々回、クレジットのマンスリークリアを複数申し込むことで利息の総額をリボルビングよりも低く抑えたにもかかわらず、翌月一括払いで大きな金額が動く為、ほんのちょっとの計算違いで支払い不能になり破綻してしまうケースもあると申し上げました。こういう場合、残債務の金額がリボルビングに比べて巨額になる傾向があります。

また、リボルビングよりもトータルの利息の支払額が低い為に任意整理を試みても、あまり残債務が減らない傾向もあります。

これらを合わせるとマンスリークリアで破綻した場合は任意整理ではなく、個人再生や自己破産につながるケースが多いということになります。

もちろん、マンスリークリアでも長期間の取引をしていて過払いになるケースもあります。ただリボルビングに比べると数は少ないです。何故かというと、マンスリークリアの場合、その性質上(後述します)、リボルビングのように長期間の取引を継続している場合が少ないからです。

従って、もしマンスリークリアでも5年以上、取引の切れ目が無く続けていたならば過払いになっている可能性は、もちろんあります。

 話は戻りますが、個人再生や自己破産になった場合、裁判所に家計簿を提出しなくてはなりません。これは普段つけているものを出すのではなく、裁判所用に決められた書式のものを新しく作って提出します。その時、マンスリークリアの人は直前まで毎月大きな金額が動いている為、裁判所から詳しい説明を求められることがあります。

これは、裁判所が家計を調査する時に大きな金額が移動しているところに注目するという習慣があるからです。マンスリークリアは一括払いなので、その点、どうしても目立ってしまう訳です。

もちろん、きちんと説明できれば問題は無いのですが、まあ余計な詮索をされる可能性があるという訳です。

 このように書くと、まるで私がマンスリークリアを批判しているように受け取られるかもしれませんが、決してそんなことはありません。むしろ私は多重債務を、これだけ増やしたのは間違いなくリボルビングの責任だと思っています。

リボルビングのことを「悪魔の契約」と呼んだ弁護士さんがいるくらいです。何故なら、本人は高い利息を取られていることに極めて気付きにくく、毎月少額を返済しているつもりが、ほとんどは利息に消えていき、元金はいつまでたっても減らず、気がついてみたら10年近く取引してしまったと言う人の何と多いことか。そもそも過払請求の大半がリボルビングにより発生しているのが何よりの証拠です。返還請求ができるほどの高い利息を長年支払っていた訳で、しかも何度も言いますが、本人が高い利息を支払っていたという意識を非常に持ちにくい構造になっているのです(毎月の支払いが少額だからです)。まさに「悪魔の契約」という言葉がぴったりだと思いませんか。一説によると最初に考案したのはアメリカの金融業者だと聞いています(私は確認していませんので真偽のほどは分かりません)。まあ本当だとしたら、きっとウォール街の人なんだろうと勝手に想像しています。(彼らなら、いかにも考え付きそうじゃありませんか)

その点、マンスリークリアならば元金利息込みの全額を毎月支払いますから、自分がいくら利息を支払っているかを認識するのはリボルビングよりは容易です。また貸金業者の数を増やしにくいという特徴もあります(一括払いで支払額が巨額なので)。リボルビングは毎月の支払いが少額なので、ついつい業者の数が増えていってしまうのです(貸金業者の方も、それを狙っています)。

 このようにリボルビングには一見、便利なように見えて実は貸金業者にとって有利な部分が(逆に言えば借り手にとって不利な部分が)いっぱいあります。目先の便利さに惑わされないように、それぞれの特徴を良く考えてみて下さい。

 次回はオリコの取引履歴についてです。

3月 22 2011

東日本大震災についての考察

 本日は予定を変更してお届けします。本ブログは主に愛知・岐阜・三重の方に対して発信しているつもりで書いていますので、遅れてしまいましたが、もし東北・関東の方が読まれていたら、「このたびの東日本大震災により、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された地域の皆様に対しまして心からお見舞い申し上げます」。

 さて、未曾有の大災害が起こって、大事なのは、「これから、いかにして復興するか」です。先ほど、本ブログは主に愛知・岐阜・三重に向けて書いていると言いました。これらの地域の人が復興に向けて出来ることは散々テレビなどでも報道されています。でも報道では目を向けられていませんが、私が大事だと思うことを述べてみたいと思います。

 それは被災地以外の人が「してはいけないこと」です。答えは意外に思われるかもしれませんが、「個人の節約」だと考えています。

日本人的感覚では被災地の惨状をテレビで見てしまうと、自分たちも節約しなければと考えてしまいがちです。でも、ちょっと待って下さい。愛知県の人が節約したことで何か被災地の人の為になるでしょうか。むしろ個人の節約は回り回って被災地の復興を遅らせてしまう可能性すらあるのです。

例えば、愛知県の人が一斉に家計を節約した場合、当然、愛知県内の小売業、外食産業、製造業などは大不景気に陥ります。そうすると、それらの会社や事業主は不景気になることによって赤字になり税金を払わなくなってしまいます。

これだけの大災害の復興は個人の努力では限界があります。どうしても政府が財政出動しなくてはなりません。その場合、国債や政府紙幣を発行するという手段はもちろんありますが、ただでさえ国債発行に非難が集まっているご時勢ですから、税収が多いほうが良いに決まっています。

ようするに被災地以外の人が節約すると全国的に不景気が加速して税収不足になり政府が復興の為の臨時予算が組みにくくなる可能性があると言う訳です。結果的に被災地の復興を遅らせることになりかねません。

 もちろん節約をしないと言っても、注意すべき点はあります。一つは特定の品目だけを買い占めること(理由は必要ないですね)。もう一つは電力不足の地域において電力を大量に使う消費行動です(愛知・岐阜・三重は今のところ対象外です)。この二つに関しては、明らかに迷惑になる行為なので控えた方が良いでしょう。

しかし、上記に該当しない消費であれば、むしろ控えるべきではないと私は考えます。積極的に消費をして経済を活性化して政府の税収を上げてやることが結果的に復興を早めることになると思います(もちろん、政府が上がった税収を適切に復興に使うと言う前提ですが)。

 被災地以外の地域の経済が活性化してこそ、復興に余裕をもって望むことが出来ます。自分達の足元がしっかりしていなければ、他人を助けることなど出来ません。くれぐれも必要以上の節約をして日本全国大不景気などということにならないようにしましょう。

 

3月 16 2011

クレジットのマンスリークリア(前編)

 クレジットカードのキャッシングには2種類の方法があります。(カードによっては1種類しかないものもあります)

 一つは、リボルビングと言い、消費者金融と同じ方法です。一定の限度額を設けて、その限度額内ならば、いつでも借入が可能で、それに対して返済は最低弁済額を超えていれば少額でも構わないというものです。

この方法は一見、便利で借りやすいように見えますが、実は借金の総額が、なかなか減らないという重大な欠点をもっています。しかも、返済額が少額なので気付きにくいのですが、利息は借金の総額に対してかかっているので、実は非常に高い利息を支払っていることに気付きにくいのです。

「高い利息を払っていることに気付きにくい」ということは貸金業者にとっては誠に都合が良い訳で、だからこそ消費者金融などは、ほとんどの業者がリボルビングを採用している訳です。これは裏を返せば借りる側は非常に損をしているということになります。(ほとんどの人は、最も損をする借り方であることに気付きません)

 一方、クレジットもリボルビング方式は主流です(理由は儲かるからです)。しかし、クレジットの場合は、もう一つマンスリークリアという借入方式を選べるカードがあります。多くは銀行系などの審査が厳しめなカードが多いようです。この方式は、まとまった金額を一度に借りて、翌月には一月分の利息を付けて全額返済するという方法です。

 意外なことに、マンスリークリア方式の方が利率が高いことが多いのです(私は、これはリボルビングに借り手を誘導する為の業者の作戦ではないかと思っています)。従って、目先の利率に惑わされてしまう人も多勢いて、利率が低いからリボルビングを選んでしまうことが良くあります。ところが、ここに落とし穴があるのです。

リボルビングは高い限度額が長期間ずっと維持されますので(長いときは10年以上)、トータルでは非常に高い利息を支払っています(だからこそ過払請求が起こっている訳です)。ところが、マンスリークリアの場合は短期間に精算が済んでしまいますので、実際にはリボルビングほど多くの利息を支払っていません。10年間マンスリークリアを繰り返した人と、リボルビングで借り続けた人を比較してみれば、利息の金額の差は一目瞭然の結果になるでしょう。(もちろんリボルビングの方が高くなります)

それが証拠にクレジット会社はキャッシングのリボルビングキャンペーンや、あとからリボルビングに変更できるプランを盛んに用意しています。何故、彼らがリボルビングを、こんなに勧めるのか、答えはリボルビングがクレジットに大きな利益をもたらすからです。

逆の見方をすれば、リボルビングを良く使う人はクレジットを儲けさせていることになります。どうでしょう。リボルビングを使っている人は、だんだん悔しくなってきたのではないでしょうか。

 なかには、そのことに気付いて、リボルビングでは借金は一向に減らないし、いつまで経っても利息ばかり支払っている、これからはマンスリークリアにしようと考える人もいます。

この考え方自体は間違ってはいません。借り手が少しでも利息を減らそうと考えるのは自然で合理的な行動です。むしろリボルビングの罠に良く気がついたと言うべきでしょう。ところが、なかには複数のマンスリークリアを綱渡りのように融通しあって毎月大きなお金が動くようになってしまう人もいます。そうなると、翌月一括払いなので、ほんの少し計算が狂っただけで破綻に追い込まれることもあるのです。

 次回はマンスリークリアを利用して破綻した場合の債務整理についてです。

3月 08 2011

過払金の相続

 最近、立て続けに過払金の相続の依頼がありましたので、本日は、この話題を取り上げようと思います。

 高齢の両親が消費者金融やクレジットカードから、かなり長期間の借入をしていて、過払金が発生している可能性が極めて高い場合に、ご両親が亡くなると過払金の相続の問題が発生します。

過払金は相続財産に含まれますので、相続人が複数いる場合は、

1 相続人全員から請求して後ほど相続分に応じて分配する。(専門家に依頼する場合は全員と面談し、委任状も全員からもらう必要があります)

2 遺産分割や相続放棄をしてもらい、誰か一人を相続人に決めて、その相続人から請求する

の二通りの方法があります。

ちなみに過払金の金額を確かめる為の取引履歴の開示のみだったら、たとえ相続人が複数であったとしても相続人のうちの誰か一人から請求することは可能です。(要は遺産分割の前に金額を確かめることは可能ということです)

生前、貸金業者からの催促の電話が、よく家にかかってきた場合などは同居の家族も苦労している訳ですから、故人の過払金を請求する権利はあるように思います。

一方、生前は全く借金があることなど知らず、亡くなってからカードや明細書が見つかって驚いて相談に来られる方もいます。こういう場合、そもそも何社から借りていたのか、過去に完済している業者があるのかなどの重要な情報が分からなくなっている場合があるので注意が必要です。

残高がある場合は、相続人であることが証明できれば情報機関に問い合わせれば、ほとんどのケースで解決しますが、完済している場合には情報機関にも情報が残っていない可能性があるので、やっかいです。この場合は故人の机や書棚をひっくり返して探すしかないでしょう。完済しているケースは一般的に過払金の金額が大きくなるので、面倒がらずに探した方が良いと思います。

特に完済している場合は完済から10年で時効により回収できなくなってしまいますから、どうせ相続財産など無いと考えて遺産分割もやらずに放っておいたような人は、見覚えがある場合は探してみるべきでしょう。ひょっとしたら驚くような過払金が眠っているかもしれません。

相続人の一人から過払金を請求する場合は、かなり詳細な相続証明書類が要求されるのが普通です。請求された側の貸金業者の立場からすれば、間違った人に支払ったら大変なトラブルになってしまいますから、まあ、これは仕方がないでしょう。

例を挙げると、被相続人(亡くなった人のこと)の死亡を証明する書類、被相続人の生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍(これが人によっては大変な分量になります。特に住所を転々と移動していた人は遠方の役所に請求を出す必要がありますので非常に大きな手間になります)、遺産分割協議書、相続放棄証明書(家庭裁判所で取得します)などです。正直、素人が正確に集めようとすると、かなり面倒だと思います。ですから、ほとんどのケースで相続関係書類は司法書士・弁護士の仕事になっています。(不動産の相続が絡む時は、圧倒的に司法書士の仕事になることが多いです)

 では次回は、クレジットカードのマンスリークリアについてです。

 

3月 03 2011

クレジット会社ライフの経営悪化

 本日はクレジット会社ライフについての話題です。

 今までクレジット会社は消費者金融に比べて過払金の支払いが良いというのが定説でした。さすがに任意で請求(訴訟をしないで電話等で請求すること)した場合は減額を要求されることもありましたが、それでも訴訟を提起すれば元金に関しては、ほぼ満額回収できました(粘れば利息も回収できる会社が多いです)。ところが、ついにクレジット会社の一部にも経営悪化の影響が忍び寄ってきたようです。

その第一弾としてライフカードが挙げられます。ライフが最初となったのはアイフルの子会社であることも影響していると思われます。親会社のアイフルが経営悪化が取りざたされているので、その関係で支払いが悪くなってきているのでしょう。

前のブログでも取り上げましたが、ライフはクレジット会社では珍しく移送申立などの悪質な引き延ばし手段を使ってきます。電話も頻繁にかかってきて、早く解決したいなら金額を下げろと執拗に圧力をかけてくるようになっています。もはや、ライフ相手に元金に近い金額を回収しようと思ったら勝訴判決を取るしかないという情況になっているのです。

今のところは勝訴判決を取れば元金にかなり近い金額の回収は出来ています(それでも利息の回収は難しいです)。ただ、この情況が、いつまで続くかは分かりません。

 今後、ライフのようなクレジット会社が、これ以上、増加しないことを祈りましょう。

 次回は「過払金の相続」の予定です。

2月 22 2011

臨時ニュース アイフルの怪しい和解

 本日はクレジットカードのライフについて書く予定でしたが、緊急な情報が入ってきましたので予定を変更してアイフルについて書きます。

 アイフルは武富士が倒産してからは主要消費者金融の中では最も経営が悪化していると言われている業者です。次の大型倒産はアイフルだろうというのが業界での噂となっています。

以前にも書きましたが、武富士の倒産によって、隠れ過払いだった人が自分が過払いであることに気付くことが多くなりました。理由は、武富士がコマーシャルや電話、ATMの表示などで隠れ過払いの人に債権届けの必要性を大々的に訴えたからです。これにより武富士の訴えを聞きつけた人は他の業者についても自分は過払いになっているのではないかと疑いました。当然、次のステップとして他の業者に対しても取引履歴の請求をしてみることになりました。すると、案外多くの人が他の業者についても過払いになっていることが多かったのです。これによって、本来、武富士とは関係なかったはずの業者まで大量の過払請求を受けることになった訳です。(実際に主要業者に対する取引履歴の請求件数が武富士倒産後に急増したそうです)

ところが、ここでトンデモナイ手を打ってきた業者がありました。アイフルです。アイフルは何と取引履歴の請求を受けた相手に対してゼロ和解の書面を送りつけて、相手が何も分からないうちに和解を結び過払請求を封じ込めようとしているらしいのです。

ゼロ和解とは「お互いに債権債務なし」と書かれた書面で、簡単に言うと、「アイフルも今後、請求しないから、あなたもアイフルに対して請求しないように」という約束を交わすことです。

この書面をもらった人は、「今後はアイフルからの請求は無くなるのか、良かった」と思ってしまうかもしれません。(実はアイフルに対する過払請求を封じ込められることになる訳です)

これは非常に問題があります。もし、この和解書を返送してしまったら、後で過払いであることに気付いても請求できなくなる可能性があるからです(本人が認識していた訳ではないので、裁判を起こせば勝つ可能性もありますが、絶対ではありません)。

アイフルと長期間の取引をしていて取引履歴の請求をしたら、アイフルから書面が送られてきて、それを返送してくれと言われたら、絶対に気軽に返送しないで下さい。上記のゼロ和解書面である可能性もあるので、よく読んでからにしましょう。読んでも分からない場合は、専門家に見せましょう。それから返送しても遅くはありません。

 今や消費者金融業界は、どこの業者も青息吐息です。苦しくなってくると業者もなりふり構わなくなってきます。後で後悔しないように、しっかり情報収集をすることが肝心です。

2月 15 2011

SF・ライフ・ヴァラモスの移送申立(後編)

 前回の続きです。本日は移送申立に対する対抗手段について、お話ししましょう。

 まず、移送申立が出されたら放っておいてはいけません。放っておけば移送が認められてしまいます。前回も説明したとおり、移送が認められてしまえば事実上、過払請求を諦めることになりかねません。これだけは避けなければなりません。

そこで、移送申立に対しては「移送申立に対する意見書」というものを裁判所に提出します。これは裁判所に対して「移送を認めないでくれ」と理由を付けて反論する書面です。ほとんどの場合、移送申立の根拠は前回に説明した合意管轄条項によるものです。従って、この条項に対して反論していくことになります。

具体的には、以下のような反論が考えられます。

1 そもそも契約書に、そんな条項が書かれていること自体、知らなかったし説明も受けていない。合意とは双方が認識していて始めて成立するものであるから、管轄の合意など成立していない。

2 契約書に書かれた管轄の合意には過払金返還請求訴訟は含まれていない。何故なら、契約書を交わした当時に貸し手と借り手が認識していた将来の紛争とは貸金業者の行う貸金請求訴訟のことであり、双方ともに過払金に関しての訴訟が将来起こることなど想定していない。

3 付加的管轄の合意である。(契約書に専属的という言葉が無い場合)。専属的とは、契約書に書かれた裁判所以外は一切、認めないという意味です。この言葉が書かれていない条項なら、これを逆手にとって、「専属的と書かれていないんだから他の裁判所も認める余地がある」と反論するのです。この反論を付加的管轄の合意と言います。

4 民事訴訟法17条による移送の却下を求める。民事訴訟法17条に「当事者の衡平を考えて裁判所は事件を別の裁判所に移送できる」と書かれています。これを逆に解釈すると、「当事者の衡平を考えて移送を却下することが出来る」と読むことも出来ます。もちろん、このとおりの意味に解釈してくれるかどうかは裁判官にかかっていますが、裁判とは言える反論は、とりあえず何でも言っておくのが正しいやり方なのです。(この点、普段の日本人の考え方とは、かなり違います)

5 消費者契約法10条により無効だと主張する。消費者契約法10条には「消費者の利益を一方的に害するものは無効とする」と定めています。借りた人が法人や事業主でなければ消費者です。また、契約書に書かれた合意管轄条項は貸金業者に一方的に有利なものであり、借り手である消費者にとって利益になることは何もありません。従って、この法律を根拠にして、「契約書の合意管轄条項は消費者契約法10条により無効であり、故に移送申立は却下されるべきである」と反論する訳です。

 以上の反論が認められて、めでたく移送申立が却下されたとしても安心は出来ません。中には、即時抗告という手段を使って更に争ってくる場合もあるのです。私の経験ではSFコーポレーションが、よく即時抗告を申し立ててきます。

即時抗告とは移送申立が却下された時に、その却下が不満な相手方(この場合は貸金業者)が、「もう一度、別の裁判所で判断してくれ」と言って申し立てるものです。簡易裁判所で却下された場合は地方裁判所に、地方裁判所で却下された場合は高等裁判所に申し立てることになります。

即時抗告の反論の仕方は基本的に前と同じです。ただ、仮に却下を勝ち取ったとしても、時間がかかるという点において、過払請求者にとっては非常に痛いことは確かです。実は移送が認められる確率は高くありません。もちろん、100%勝てる訳ではないので油断は禁物ですが、確率としては却下の方が多い訳です。では何故、一部の貸金業者は移送申立を行うかと言えば、「時間かせぎ」をする為です。

訴状を出すと第1回口頭弁論期日が約1ヵ月後くらいに決められます。そして、移送を出すような業者は、この第1回期日に狙いを定めて期日直前(ひどい時には前日)に移送申立を出してきます。そうすると、移送の審査の為に第一回期日は取り消しとなり、そこから移送の審査、却下、即時抗告、もう一度審査、却下と2ヶ月近くの時間を費やします。例え、却下されたとしても業者から見れば「時間の引き延ばし」の効果は充分にある訳です。だからこそ、この手を使う業者は、たちが悪いのです。

 さて、理解の無い裁判官に当たって、万が一、移送が認められてしまった場合は、諦めるしかないのでしょうか。実は簡易裁判所の場合は、何とかする方法があります。それは簡易裁判所の特則を使う方法です。

簡易裁判所の特則とは色々ありますが、その中に「本人が出頭しなくても書面で反論や主張が出来る」というものがあります。これを使えば、遠方の裁判所に移送されてしまった場合でも、戦う方法はあります。

こう書くと、「何だ、そんな方法があるのなら、始めからそれを使えば良いじゃないか」と考えそうですが、実は、そう簡単なことではないのです。

一応、この特則はありますが、では現実に使われているかというと、あまり使われていません。何故かと言えば、やはり裁判官も人間であり、実際に出頭してきた生の声の方を信頼する傾向があるからです。書面だけ出して来ない人には「真剣に訴訟をしようと思っていない」と判断されてしまう危険性があるのです。故に、この特則は移送が認められてしまった場合などの、やむを得ない時にのみ使うのが得策です。むやみやたらに使うのは、控えた方が良いでしょう。

 では次回は、クレジット会社のライフの最近の状況についてです。

2月 07 2011

SF・ライフ・ヴァラモスの移送申立(前編)

 本日はSFコーポレーション・ライフ・ヴァラモスの過払訴訟における移送申立についてです。最近は弁護士や司法書士に頼まずに自らで訴訟を行い過払請求をする人も増えてきましたが、移送申立が行われることによって、一般人が過払訴訟を行うことが以前よりも難しくなったと思います。以下、理由を説明しましょう。

 最近、貸金業者の過払請求に対する抵抗が激しくなっているのは今までにも何度か、ご紹介してきましたので、ご存知の方も多いと思います。その中でも特に激しい抵抗を示しているのが、上記の3社です。(ライフは、つい数ヶ月前までは激しい抵抗はしていませんでした。最近の過払情勢は本当に短期間で変化するという良い例だと思います)

この3社は過払訴訟を起こすと、かなりの確率で移送申立をしてきます。通常、過払訴訟は請求者の住所地にある裁判所に提起します(義務履行地と言います)。ところが貸金業者側が裁判所の場所にクレームをつけてくることがあります。これが移送申立と呼ばれるものです。

移送申立では以下のような説明がなされます。「請求者の住所地の裁判所で審理するのは正しくない、正しくは貸金業者の本店所在地の裁判所で審理されるべきである。」というものです。そして、その根拠になっているのが契約書に書かれている合意管轄と呼ばれるものです。

ほとんどの場合、貸金契約には合意管轄条項が含まれています(お金を借りる人は気が付いていないと思います)。この条項では、「もし契約上のトラブルがあった場合は貸金業者の本店所在地の裁判所で審理する」と書かれています。要は貸金業者に一方的に有利に書かれている条項なのです。

しかし、ほとんどの人が合意管轄条項の存在そのものを知りませんし、例え説明されても拒否することは事実上、不可能です。何故なら、拒否してしまったら、お金が借りられなくなってしまうからです。契約とは本来、双方の自由意志に基づいて結ばれるものですが、貸金契約の場合は借りる側は貸す側の条件を呑むしかありません。ここが問題なのです。

にもかかわらず、SF・ライフ・ヴァラモスといった業者は最近、移送申立を頻繁に出してきます。もし、こんなものが認められてしまったら、地方在住の依頼者は事実上、過払訴訟をあきらめなくてはならなくなります。何故なら、ほとんどの業者の本店は東京や関西にあり、裁判をする為には東京や関西まで出掛けていかなくてはならないからです。(弁護士や司法書士に頼んだとしても、交通費は請求されるでしょうから同じことです)

ですから、この3社を相手にする場合は、過払訴訟で絶対に移送申立を認めないように裁判所に働きかける必要があります。冒頭で一般人が訴訟をするのが難しくなったと言ったのは、これが理由です。一般人が貸金業者の移送申立に対抗するのは、なかなか大変だと思います。

 では、どのような対抗手段があるか、次回、説明しましょう。

2月 02 2011

過払調停の問題点

 本日の話題は過払調停です。

 債務整理に関心のある人は調停と言えば、一般的に特定調停を思い浮かべるでしょう。特定調停とは弁護士や司法書士の行う任意整理を裁判所を介して一般人でも行えるようにと始まった手続です。

当初は費用の安さも手伝って特定調停は非常に件数を伸ばしていましたが、ここ数年は減少傾向にあります。その最大の理由は特定調停では過払金の請求が出来ないということにありました。

特定調停が始まった頃には、まだ過払金の請求は一般的なものではありませんでした。ところが最高裁判所の判決が出てからは過払金請求が一気に広まって、過払金請求の出来ない特定調停に以前ほどの魅力がなくなってしまったのです。

 その代わりに激増したのが過払金請求訴訟です。簡易裁判所及び地方裁判所における過払金請求訴訟は増加の一途をたどり、ついには増えすぎて処理できないと裁判所が悲鳴を上げるほどになりました。

そこで裁判所が新しく考え出したのが過払調停という制度です。これは、本来は訴訟にするか調停にするかは裁判所に書類を提出する時に本人または代理人が決めることなのですが、その常識を覆して、もともと訴訟として提出された場合でも裁判所の判断で調停に変更されるというものです。(事前に電話で調停に変更して良いか聞いてくれる裁判所もあります)

 この制度の何が問題かと言うと、まず、裁判所や裁判官によっては本人の意向を無視して強引に訴訟を調停に変更してしまう場合があることです。例えば私の地元である名古屋地方裁判所で実際にあった出来事ですが、本人が「調停ではなく訴訟で進めて欲しい」という上申書を提出していたにもかかわらず認められずに調停に変更されたことがありました。(もちろん書類は訴訟で出しているのです)

では何故、過払請求は調停ではダメなのかと言うと、いくつか理由があります。その一番の理由は何と言っても和解金額が下がるケースが多いということにあります。(これは国家権力が過払金請求者の権利を侵害しているとも考えられる訳で非常に問題だと思います)

どうして金額が下がることがあるのかと言うと、率直に言って調停委員が貸金業者から甘く見られているからです。調停とは裁判所から指定された調停委員が取り仕切る手続です。調停委員は過払金請求の専門家とは限りません。我々、司法書士のように最新の貸金業者の状況や和解の適切な基準などは知らない人が圧倒的に多いのが実情です。そして調停委員が詳しくないということを相手方の貸金業者が知っているというところが問題なのです。

当然、貸金業者は司法書士や弁護士に対するよりも低い和解金額を提示する傾向があります。最近は専門家に頼まずに自分で過払訴訟を出す人も増えてきていますが、こういう人達にとっては過払調停は脅威だと思います。一般人が裁判所に行って調停委員から「この金額が妥当だから、この金額で和解しなさい」と言われたら、果たして断れるでしょうか。ほとんどの人は和解基準が、どの程度か分かりませんので承諾してしまうでしょう。

もう一つの問題点は時間が余分にかかるということです。調停になった場合、まず訴訟外で和解交渉をまとめることが難しくなります。貸金業者も調停になったら安く決着する可能性があるので、事前に交渉しなくなります(訴訟の場合は、ほとんどの業者が弁論期日前に電話をかけてきます)。

あと、調停の場合は最低でも1時間は裁判所に居なければなりません。これは最低ラインで、ひどい時には2時間以上も調停室に閉じ込められるケースがありました。調停の場合、ほとんどの業者は裁判所に出てきません。では、どうやって交渉するのかと言うと、調停委員が裁判所から直接、業者に電話をかけるのです。ですから、調停室には必ず各部屋に電話が設置されています。そして、困ったことに、この電話が非常にかかりにくい業者があるのです。例えばプロミスなどは、かけても常に話中で、つながるまでに1時間近くかかる場合があるのです。そうすると調停室に入ってから交渉が始まるまでに無駄な時間が膨大に発生することになります。

 このように、いろいろと問題点が多いのが現状の過払調停です。もし、選択することが可能な裁判所だったら調停を選択しない方が無難でしょう。強制的に調停に変更になった場合は、自分の気に入らない金額なら絶対に、まとめないという覚悟が必要でしょう。

 

 

 

1月 24 2011

地方の裁判所

 本日のタイトルは、ちょっと紛らわしいのですが、いわゆる地方裁判所のことではありません。タイトルの意味は都心部ではない比較的人口の少ない地域の裁判所のことです。

 何故、地方の裁判所を取り上げるのかと言うと、最近、気がついたことがあるからです。それは過払訴訟をやっていると地方の裁判所の方が有利に決着することが多いのではないかということです。

具体的には、相手方(貸金業者)の出頭率が低いということが挙げられます。業者の方も経営悪化を受けて支店の数を減らしています。この場合、やはり人口の少ない地域から支店が減らされていきます。そうすると、そのような地域で裁判を起こされると、業者は遠方から従業員を派遣しなくてはなりません。当然、交通費がかさみますし、時間も取られてしまいます。仮に弁護士に頼んだとしても、遠方に出頭する場合は弁護士が交通費等を業者に請求してくるでしょう。やはり余分に費用がかかる訳です。

過払訴訟は業者にとって勝ち目のある裁判ではありません。勝ち目が薄い裁判で、わざわざ地方に費用をかけて出向きたくないという心理が働いているのでしょう。

過払訴訟は業者にとって勝ち目が薄いと言いましたが、そうすると業者の裁判での対策は、いかにして長引かせて過払請求者の嫌気を誘って金額を引き下げるかにかかっています。都心部の裁判所では(筆者の場合は名古屋の裁判所)、あらゆる長引かせる為の手を打ってきて、正直、うっとうしいくらいです。ところが、地方の裁判所(筆者の場合は三河地方、岐阜県、三重県など)に行くと、そもそも出頭してこないので、あっさりと判決が出たりします。非常にありがたい訳です。

和解で決着する場合も地方の裁判所に出した方が早めに決着する傾向があります。業者も判決が出るくらいなら和解した方が良いと思うのでしょう。だからと言って、裁判所の管轄は決まっていますから、地方の裁判所に出せるのは地方在住の人に限られます。

 実は過払訴訟に限らず、個人再生や自己破産でも地方の方が有利な場合が多いのです。例えば、個人再生は名古屋では再生委員が付く為に裁判費用が10万円以上かかりますが、地方では3万円くらいで済んでしまいます。自己破産の場合も、名古屋では最近、管財事件に回される事件が多くなってきていますが、地方では多くありません。そもそも管財人になる弁護士が地方には少ないというのが影響しているのでしょう。

正直、こんな差があって良いのかと非常に疑問に思いますが、これが現実なのです。だとしたら地方で債務整理を考えている人は都会よりも有利なことが多い訳ですから、是非、ためらわないで頂きたいものです。(残念ながら現実は逆で、有利なはずの地方の人が債務整理や過払請求をためらう場合が多く見られます)

 地方在住の方は、上記の事実を、良く認識して頂いた上で判断して頂きたいと思います。

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