司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

相続登記(名義変更)

1月 07 2025

「相続開始の日」とは 相続登記㉙

相続開始の日についての誤解

相続登記の相談を受けていて、よくある誤解の一つに「遺産分割協議がまとまった日が相続開始の日」だと思われている場合があることです。

確かに遺産分割協議がまとまらないと相続手続ができませんので、「手続が始められる日が相続開始の日だろう」と考えてしまう人がいるのは理解できます。

ただしこの考え方だと、法定相続分どおりに分ける場合は遺産分割協議が不要なので、その場合はどうなるのだろうという疑問が生じます。では実際にはどうなるのでしょうか。

相続開始の日は被相続人の死亡日

法的には相続開始の日は被相続人(故人)の死亡日になります。しかし実際には遺産分割協議が終わらないと手続はできません。一見、矛盾に見えますが、実は遺産分割協議の法的な性質を知れば、矛盾ではないことが分かります。

遺産分割協議の法的な性質

相続の基本的な考え方は、「被相続人の死亡日に全財産は法定相続分で相続される」というものです。最も誤解が多いのは「遺産分割協議が終了するまで財産は被相続人のもの」だと思われている場合です。

これは大きな間違いで被相続人が死亡した時点で法定相続分による相続は始まっているのです。ですから法定相続分による手続の場合は遺産分割協議書が不要になります。

では遺産分割協議とは何かと言うと、「一旦、法定相続分で相続された財産の分割方法を変更すること」になります。ようは遺産分割方法の変更を協議していることになります。この考え方ならば矛盾は無くなりますね。

よって相続開始の日は被相続人の死亡日になるのです。なるほどと思って頂けたら幸いです。

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12月 27 2024

戸籍謄本の廃棄証明や滅失証明 相続登記㉘

相続登記における戸籍謄本

相続登記の手続は、まず法定相続人を確定する作業から始まります。そのためには大量の戸籍謄本を取得する必要があります。戸籍謄本をたどっていくことによって法定相続人を探していきます。場合によっては相談者が予想もしない相続人が現れることも稀にあります。

ところが戸籍謄本をたどっていくと、廃棄や滅失によって全部が取得できないケースがたまにあります。どのような場合に廃棄や滅失されたりするのでしょうか。

戸籍謄本の廃棄や滅失

戸籍謄本は様々な理由で廃棄や滅失されている場合があります。例えば保存期間の経過です。現在は戸籍の保存期間は150年に延長されていますが以前は80年でした。これだと2代前から相続登記を放置していた場合は廃棄されている可能性が出てきます。

他には戦時中の戦災や、地震や津波などの自然災害などによって役所が被害を受けて戸籍が失われるケースもあります。この場合は戸籍が滅失されたことになります。

戸籍の廃棄や滅失があった場合の相続登記

戸籍の廃棄や滅失があると全ての戸籍謄本がそろいません。その場合、法定相続人が確定しないことになります。では相続登記はどなるのでしょうか。

廃棄や滅失があった時は役所から廃棄証明(廃棄済証明)や滅失証明と言った証明書を役所から発行してもらえます。これらの証明書を添付していくことで相続登記を進めて行くことが可能になりました。
以前は、全ての戸籍謄本がそろっていない場合、判明している相続人全員から「他に相続人がいない旨」の上申書を提出しないと法務局は相続登記を受け付けてくれませんでした。

しかしルールが改正されて、今は廃棄証明(廃棄済証明)や滅失証明を提出すれば相続登記を受理してもらえます。ただし、このやり方が通用するのは判明している相続人の生死が証明できる場合になります。

相続人がいることは判明しているが生死が不明な場合

一方で「取得できる戸籍謄本から相続人の存在は確認できるが、途中の戸籍が廃棄または滅失しているため、その相続人の生死が判明しない」というケースがあります。この場合は廃棄証明や滅失証明では解決しません。

この場合は相続人がいることは確定しているので、失踪宣告の申立や不在者財産管理人の選任申立などの手続を取る必要があります。かなり複雑な手続になりますので早めに司法書士に相談しましょう。

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9月 19 2024

遺言で取得した不動産でも相続登記をしなければ第三者に対抗できない 相続登記㉗

改正前の遺言による不動産の取得

相続法が改正される前は、遺言によって不動産を取得した相続人は例え相続登記をしていなくても、その権利を第三者に対抗することができました。

法定相続人がAとBの二人いて、遺言でAが不動産を単独で相続すると決められていた場合を具体的に考えてみましょう。Aが相続登記をする前に、Bが自身の法定相続分2分の1をCに売却した場合、Aは例え登記が無くてもCに対して2分の1を返せと言うことができました。

この権利を専門用語で対抗要件と言います。

相続法の改正により結論が変わった

最近改正された相続法では上記とは異なる取り扱いに変更されました。先ほどと同様のケースで説明しましょう。

法定相続人がAとBの二人いて、遺言でAが不動産を単独で相続すると決められていた時、Aが相続登記をする前に、Bが自身の法定相続分2分の1をCに売却した場合です。
結論を先に言うとCが先に登記をしてしまったら、AはCに対抗することができません。遺言があるのだから登記名義を返せとは言えなくなってしまったのです。

相続法改正で変わった対抗要件のルール

相続法改正により対抗要件のルールが変わりました。以前は遺言で指定されていれば登記という対抗要件は不要でした。

しかし改正法以降は、「例え遺言があっても自身の法定相続分を超えた分については対抗要件が必要である」と変更されたのです(不動産の対抗要件は登記です)。なぜなら買手にとっては遺言があるかどうかを事前に察知することは極めて困難だからです。

今後の相続登記の注意点

従って今後は遺言の有無にかかわらず、法定相続分を超えて取得した相続人は最優先で登記をする必要があります。もし登記をしなかった場合、先に登記をした第三者に名義を持っていかれる可能性があるということです。

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7月 10 2024

定額小為替の手数料は高すぎる 相続登記㊱

遠方の役所から戸籍などを取り寄せる場合

相続に必要な戸籍謄本・戸籍の附票・住民票・住民票の除票・固定資産評価証明書などの書類を遠方の役所から郵送で取り寄せる時は、振り込みやクレジットや電子マネーなどは使えません。支払方法は一種類に限定されていて、それが定額小為替による支払いです。

定額小為替とは

定額小為替とは郵便局で発行される現金の代わりとなるものです。現金は現金書留で送らなければなりませんが、定額小為替ならば普通郵便でも送ることができます。受け取った相手は郵便局に持ち込んで換金することができます。

定額小為替は最も低い50円から、最も高い1000円まで12種類あります。これを戸籍や住民票の金額に応じて組み合わせて送ることになります。

定額小為替の欠点

定額小為替の最大の欠点は、発行するための手数料が高いことです。しかも最近になって、この手数料が更に値上げされました。以前は1枚100円だったのが、今は1枚200円になったのです(2倍の値上げって、すごいですよね)。

さらに驚いたことに200円という手数料は、小為替の額面の金額とは無関係なのです。つまり額面50円の小為替でも200円の手数料がかかるのです。この手数料の仕組みは非常識だと私は思います。

我々司法書士は仕事で使っていますから、額面最大の1000円の小為替を送ります。すると、おつりも小為替で返ってきます。おつりの小為替は他のお客様に使うことができますから、まだマシだと思います。
しかし、一般の方は定額小為替のおつりをもらっても使いみちが無いでしょう。ですから額面が小さい小為替でも1枚200円で作らざるを得ないでしょう。

定額小為替の将来

この定額小為替という制度は恐ろしく前時代的で、もはや遠方の役所に対する郵送請求くらいしか使われていない印象です。これほど高額な割に利便性のない仕組みは、いずれ消えていく運命ではないかと個人的には思います。

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2月 28 2024

いよいよ始まる相続登記の義務化 相続登記㉟

相続登記の義務化が始まる

今まで何度か取り上げてきた相続登記の義務化が、いよいよ4月1日から始まります。今後は相続登記を放置しているとペナルティが課せられるようになります。そこで内容について確認しておきましょう。

相続登記が義務化される理由

不動産の名義人が亡くなった時に、相続登記(名義変更)を放置することが許されなくなるのが義務化です。今まで相続税の申告には放置した場合のペナルティがありましたが、相続登記の申請にはペナルティがありませんでした。故に相続登記は放置されることが多く、特に価値が低い不動産の場合は大半が放置される傾向がありました。

これによって所有者が不明の不動産が全国で発生して大きな問題となりました。老朽化した建物を取り壊そうと思っても誰のものか分からない場合が増えてきたのです。所有者不明だと更地にすることも売却することも困難になります。これが義務化される大きな理由です。

相続登記の義務化の内容

    (1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
    (2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。

(1)と(2)のいずれについても、正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。

相続登記の義務化は4月1日以前に発生した相続に対しても適用される

ここで注意すべきなのは、既に発生している相続についても相続登記の義務化は適用されるということです。ようするに開始時期よりも前に発生した相続であっても漏れなく義務化の対象になるのです。相続登記をしなかった場合のペナルティも「10万円以下の過料」ですから無視できません。

やむを得ない場合の救済措置である相続人申告登記

例えば遺産分割協議をしたら法定相続人同士で揉めてしまい、なかなか決着が着かないという場合があります。そのため所有者が決まらないので相続登記ができないという場合には、相続人申告登記という制度が新たに作られました。注意すべきなのは、あくまで相続登記義務化の救済措置として設けられたものなので、正式な登記ではないということです。

相続人申告登記は通常の相続登記に比べると手間や費用を節約できるようになっています(登録免許税もかからない)。メリットは相続登記の義務を履行したとみなされることで、これをしておけば罰則(10万円以下の過料)は課されません。他の相続人に了解を得る必要もなく単独で申請できます。

ただし、第三者に対して不動産の所有権を主張できる権利は認められていないので、法定相続人同士の話し合いがついたら後から正式な相続登記をする必要はあります。
相続人申告登記については、改めてブログ記事を設けて詳しい説明をしたいと思っています。

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2月 13 2024

相続登記を放置したために売却ができなくなったケース 相続登記㉞

実際にあった事例

今回お話しするのは実際にあった事例です。まずは概要を説明します。
息子さんからの相続不動産の売却の相談です。

数年前に不動産の名義人である母親が既に亡くなっていましたが、その時は相続登記をせずに放置していました。その後、父親が亡くなって財産を調べたところ、父親名義の多額の借金があることが分かりました。

そこで借金を相続しないように父親の財産については相続放棄をされたそうです。その後で母親の名義の不動産を売却できないかという相談に来られました。

相続人不在の持分がある不動産

この事例の何が問題かと言うと、不動産の一部が相続人不在になってしまったことです。そうなった原因は以下のとおりです。

母親が亡くなった時に相続登記を放置していたため、不動産は法定相続分で父親と息子が共有している状態でした。この時までは遅れて遺産分割協議をすることは可能でした。

ところが父親が亡くなって2次相続が発生しました。しかも父親に借金があったために息子は相続放棄を選択しました。これにより不動産の一部が相続人不在になってしまったのです。

なぜ相続人不在になったのか

母親が亡くなった時点で、法定相続人は父親と息子の二人です。この状態で父親が亡くなると、父親の持っていた不動産共有持分の権利は通常は息子に相続されます。ところが息子が相続放棄してしまったので、父親の共有持分の権利が宙に浮いた状態になってしまったのです。

遺産分割協議が開けないので所有者が決まらない

父親に両親や兄弟姉妹などの他の相続人がいれば、その人と母親の不動産について遺産分割協議を開くことができますが、残念ながら他の相続人はいませんでした。そうすると通常の遺産分割協議を開くことができません。母親名義の不動産の所有者を決めることができないのです。

この場合に考えられる方法は、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらうことです。しかし相続財産管理人の選任には多額の費用と大きな手間がかかります。
※相続財産管理人の選任の際に裁判所に納める費用は数十万円と言われています。

相続財産管理人から持分を買い取る

しかも父親の不動産共有持分を手に入れるためには相続財産管理人から買い取る必要があります。タダでは手に入らないのです。

こうなる理由は相続財産管理人に借金の清算義務があるからです。相続財産管理人は父親の財産から借金を返さなくてはなりません。そのために父親が母親から相続した不動産持分を売却して換金する必要があります。この場合、もう一人の共有者が息子になりますから、息子が買いたいと言えば問題なく売ってくれるでしょう。相続財産管理人にとっても息子にとっても都合の良い結果ではあります。

ただし相場よりも安く買うことはできないと思った方が良いです。なぜなら相手は家庭裁判所から選任された相続財産管理人ですから、原理原則どおりに行動するからです。民間の不動産業者のような値引き交渉は通用しないと考えるべきです。

結果および結論

これらのことについて説明したところ、相続財産管理人選任の費用や、その後の共有持分の買取費用を考えるとメリットが少ないということで、売却はあきらめて放置という選択をされました。ただし今年の4月から相続登記が義務化されますので、ずっと放置しておくことはできなくなります。

今回の事例では、どうすれば良かったのかというと母親が亡くなった時点で速やかに遺産分割協議を開いて、不動産を全て息子さんが相続すると決めた上で、息子さん名義の相続登記をしておけば問題は無かったのです。

父親が亡くなった時には既に息子さんの名義になっているので、父親の相続放棄をしても問題なく不動産を売却することができました。相続登記を先延ばしにしたことで、手痛い失敗をしたという事例でした。

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12月 14 2023

相続登記における登録免許税の免税措置の変更 相続登記㉝

相続登記における登録免許税の免税措置

相続登記には登録免許税という税金がかかります。法務局に申請書類を提出する時にかかるので、払わないと受け付けてもらえません。相続登記における登録免許税の税率は固定資産評価額の0.4%です。

そして相続登記の登録免許税には評価額の低い土地には免税措置がありました。この免税措置が現在、内容が変更されているのでお知らせしたいと思います。

登録免許税の免税措置の変更

以前は免税措置の対象になる土地は、不動産評価額が10万円以下の土地でした。それが令和4年の税制改正により、免税対象の土地の評価額が10万円以下から100万円以下と大幅に上限が引き上げられ、恩恵を受けられる土地が一気に拡大しました。

増税が目立つ最近の政府ですが、これは珍しい減税事例ですね。その位、相続登記の放置問題は深刻で、相続登記の義務化と合わせて、政府はこの問題の解決に真剣だということでしょう。

不動産持分で計算すると100万円以下になる場合

不動産を共有で取得している場合、例えばAさんとBさんが2分の1ずつ共有している場合はどうなるのでしょうか。

このケースで不動産評価額が仮に180万円だったとすると、不動産単体では100万円を超えています。そして、Aさんに相続が発生したとします。Aさんの持分割合は90万円です。このような時、法律の規定によると、持分割合をかけた金額が100万円以下ならば免税の対象になるとされています。

つまりAさんのように、持分として取得している金額分が免税対象金額ならば、免税制度の適用を受けることができるのです。

申請書に条文の記載が必要

この免税制度は、規定に当てはまっている土地ならば何もしなくても免税になる訳ではありません。登記の申請書に適用条文を記載しなくてはなりません。

今回の適用条文は、租税特別措置法第84条の2の3第2項なので、申請書の該当箇所に「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」と記載する必要があります。

登録免許税の免税措置の期限

このお得な免税措置は期限があります。今のところ、令和7年3月末までということになっています。

ただし、所有者不明の土地を無くすという大きな目的があり、それがあと2年足らずで解決しているとは考えにくいので、期限がせまってきたら延長される可能性は高いと思っています(保証はできませんが)。

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11月 02 2023

相続土地国庫帰属制度の問題点 相続登記㉜

相続したくない土地の増加

特に地方の土地において、相続したくないというケースが増えています。価値が無いため売却するのも難しく、管理責任だけかかるので負担にしかならないというケースです。
「それならば相続放棄してしまえば良いのでは」と思われるかもしれませんが、相続放棄をすると全ての財産を放棄しなくてはなりません。銀行預金などは普通に相続したいけれど田舎の土地は相続したくないという場合には、相続放棄は使えません。

このような悩みを解決する新たな制度として国が作ったのが「相続土地国庫帰属制度」です。

相続土地国庫帰属制度とは

相続土地国庫帰属制度とは、様々な理由により相続したくない土地があった時に、その土地を国に帰属させることができるという仕組みのことです。これならば相続放棄をしなくても、相続したくない土地だけを切り離すことができると期待されました。始まったのは今年(令和5年)の4月からです。

相続土地国庫帰属制度の問題点

しかし、始まってから半年ほどが経過しましたが、この制度の利用は伸び悩んでいます。「期待したほどの制度ではなかった」と言う声もよく聞きます。それは、この制度が数多くの問題点を抱えているからです。具体的には、「誰でも、安い費用で、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではない」という点にあります。

相続土地国庫帰属制度の問題点 1(利用者の限定)

まず利用者に条件が付いています。相続土地国庫帰属制度が利用できるのは「相続や遺言で土地を取得した方」です。ということは、「売買により購入した方」や「贈与によりもらった方」は対象外になります。
他にも共有で相続した場合は、共有者全員で申請しなければならないという条件も付いています。共有者のうち一人でも拒否した場合は、この制度は使えないことになります。

相続土地国庫帰属制度の問題点 2(費用の高さ)

相続土地国庫帰属制度は無料ではありません。

まず審査の段階で審査手数料がかかります。手数料の金額は土地一筆あたり1万4000円です。この手数料は審査を取り下げた場合や審査が不承認で終わった場合でも戻ってきません。

他にも負担金と言う費用がかかります。負担金は原則20万円となっていますが、土地の状況や面積などで変化します。20万円以上請求されることもありうるということですね。馬鹿にならない金額です。

相続土地国庫帰属制度の問題点 3(土地の条件)

どんな土地でも引き取ってもらえる訳ではありません。むしろ相当に細かい条件が付いています。以下に具体例をあげますが、これを見る限り「所有者が引き取ってもらいたいと思うような、やっかいな土地」は除外されていると思えます。

『そもそも申請自体ができない土地』

      ①建物が存在する
      ②担保権や使用収益権が設定されている
      ③他人の利用が予定されている
      ④土壌汚染がある
      ⑤境界が明らかでない。所有権の存在や範囲に争いがある

※田舎の土地には境界線があいまいな土地が普通にあります

『申請しても承認されない土地』

      ①一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる
      ②土地の管理処分を阻害する有体物が地上にある
      ③土地の管理処分のために除去しなければいけない有体物が地下にある
      ④隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理処分ができない
      ⑤その他、通常の管理処分に当たって過分な費用や労力がかかる

結論

この数多くの条件を見る限り「何も問題が無ければ引き取る可能性がありますが、少しでも問題があるようなら引き取りません」と国は言っているとしか思えません。そもそも問題が無い土地ならば自分で何とかする人が大半なのではないでしょうか。何かしら問題があるからこそ「国に引き取って欲しい」と考えるのでしょう。

これでは利用者が伸び悩むのも当たり前に思えます。むしろ伸び悩みを予想できなかったとしたら、その方が驚きです。利用者が増えるためにも、今後の制度改正を切に望みます。皆さんはいかがでしょうか。

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9月 19 2023

不動産の共有についての誤解と、注意点

不動産の共有についての誤解による質問

相続人が複数いる場合、相続不動産が共有になることがあります。その時に次のような質問を受ける時があります。
「建物のこの部分は自分が相続したいが可能か」
「土地のこの区画は自分が欲しいので、遺産分割協議書に書いてもらえるか」
というような内容です。
実は、このような質問は共有についての誤解からきています。

不動産の共有とは、具体的な部分を分けることではない

例えば建物で言うと、「1階はAさん、2階はBさん」と分けることを共有だと誤解している方がいます。しかし、これは全く違うのです。法律で言う「共有」とは、あくまで抽象的な概念で、具体的な一部分を指している訳ではありません。
ある不動産をAさんが2分の1、Bさんが2分の1ずつ共有しているとしたら、AさんもBさんも不動産全体に対して権利を持っています。目に見える形で分けてはいません。

では、何のための共有なのかと言うと、不動産を売却した場合その価値に対しては具体的な分配が発生します。前の例で言うと、不動産が3000万円で売れた場合はAさんが1500万円、Bさんが1500万円の権利を持っていることになります。

不動産の共有の注意点

不動産のまま持っている時は、共有者のどちらかが使えない場所がある訳ではないので特に不都合は感じないでしょう。ただし売却する時は重要な注意点があります。それは、共有者のうち一人でも売却に反対した場合、その不動産は売ることができないということです。

ということは、共有者が多い物件ほど売却が大変になります。実際に不動産売買の現場では共有者が多い物件は、買い手が嫌がる場合が多いため価格が低くなる傾向があります。共有者全員が同意しないと売買契約が成立しないからです。

相続で増える共有者

例えば、子の無い夫婦二人の共有だったとしても、夫が亡くなって相続が発生し、夫の兄弟姉妹(相続人)が3人いたとしたら、一気に共有者は4人に増えてしまいます。このように相続によって共有者が増えていくケースは現在、問題になっています。
同じ不動産で相続が2回以上発生していると、共有者が10人くらいになっているケースも珍しくありません。こうなると売却するのは至難の業でしょう。

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1月 26 2023

相続登記の義務化 相続登記㉚ 

令和6年4月1日施行

かねてより情報を発信してきた相続登記の義務化が令和6年4月より施行されることになりました。注意点としては、施行された後は施行日以前に発生した相続についても義務化されることです。ですから既に発生した不動産の相続についても今のうちから登記しておくべきでしょう。

所有者不明土地問題

相続登記が義務化された背景には、所有者不明の土地が増加して社会問題化したことがあります。所有者不明の土地とは以下のようなものを言います。

  1. 相続登記がされないまま何代にもわたって相続が起こり所有者が分からなくなっている
  2. 所有者が分かっても住所変更登記がされていないため、連絡先が分からなくなっている

相続登記の申請義務化

法律施行日の前か後かは関係なく、「相続により不動産を取得した相続人は、取得したことを知った時から3年以内に相続登記の申請をしなければならない」こととなりました。
また、「遺産分割協議により不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に相続登記の申請をしなければならない」こととされました。
なお罰則として、正当な理由が無く、これらの登記をしなかった場合は「10万円以下の過料」が科されることがありますので注意が必要です。

正当な理由とは?

罰則を免れる正当な理由とは何でしょうか。例えば以下のような事例です。

  1. 相続手続を長期間放置していたために、相続人全員の把握に時間がかかるケース
  2. 遺言の有効性や遺産の範囲について相続人の間で争いがあり、決着がついていないケース
  3. 相続人が重病等で申請義務を果たせないケース

などが考えられるでしょう。

相続人申告登記

相続人同士があまり面識がなかったり、強硬な主張をしている相続人がいて話し合いに時間がかかりそうだった場合、まずは自分だけでも相続登記の義務を果たしたいと考える相続人もいるでしょう。そんな場合に用意された新しい制度が相続人申告登記です。

遺産分割協議が終わっていなくて自分の持分が決まっていない時でも、相続人の一人が申し出ることによって相続人の氏名と住所のみが登記されます。ただし正式な登記ではないので不動産の権利を保障するものではありません。

相続人申告登記の特徴

相続人申告登記には以下のような特徴があります

  1. 相続登記申請義務の期間内に相続人申告登記をすれば、「その相続人に限り申請義務を果たした」とみなされます。従って申告登記をした相続人は罰則の対象にはなりません。
  2. 相続人申告登記をした相続人の住所と氏名は登記されるので、相続人の情報が把握しやすくなります。
  3. 正式な相続登記よりも必要書類が少なくて済みます。

相続人申告登記は終わりではない

相続人申告登記をすれば申請義務は果たしたことになりますが、それで終わりではありません。あくまで仮の登記なので相続後の不動産の所有権が保証される訳ではないのです。所有権を確実なものにするためには遺産分割協議が終わった後に正式な相続登記をする必要があります。

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