司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

相続登記(名義変更)

10月 18 2022

戸籍の附票とは? 相続登記(29)

戸籍の附票とは

戸籍は聞いたことがあるし実際に取得したことがあっても、戸籍の附票になると「何それ」「聞いたことが無い」という人が途端に増えます。一般の人には、あまりなじみがない書類かもしれません。

戸籍の附票を一言で言うと、「戸籍に記載されている人の住所を表したもの」です。

住民票と何が違うのか

通常は住所の証明がしたい時は住民票を取得するでしょう。住民票なら何度も取ったことがあるという人が多いと思います。では住所を表す戸籍の附票が、住民票と何が違うのかをご説明しましょう。

戸籍の附票とは、「本籍に入籍した時から除籍した時までの住所の移り変わりが全て記載されている証明書」なのです。例えば生まれてから一度も本籍を変えなかった場合、生まれてから亡くなるまでの住所が全て記載されていることになります。

一方、住民票は原則として現住所を証明する書類です。「従前の住所」という項目に一つ前の住所が載っていることも多いですが、そこまでです。それ以上前の住所になると住民票では調べることができません。

戸籍の附票の使いみち

では戸籍の附票は、どんな時に使うのかというと、不動産の登記事項証明書に記載された所有者(登記名義人と言います)の住所が現住所と異なっていた場合です。

相続でも売買でも贈与でも所有権の移転(名義人の変更)をする時には、登記名義人が間違いなくそこに住んでいたことがある、と証明しなければなりません。現住所と一致していれば簡単ですが、旧法では罰則がありませんでしたので、住所が変わっても放置していることが多く、かなり昔の住所のままになっていることが珍しくなかったのです。
※新しい法律では住所変更の際は住所変更登記をしないと罰則があります。

このような場合、登記されている住所が出てくるまで遡る必要があります。そのために戸籍の附票を取得して昔の住所を調べることが多くなります。

戸籍の附票の保存期間

以前は戸籍の附票の保存期間が非常に短く、除籍されてから5年でした。しかし、あまりにも期間が短いために、長期間登記されずに放置されているケースで住所が調査できないという事例が続出して問題になりました。それを受けて現在では保存期間が150年に延長されています(住民票も同様に延長されています)。

5年から150年とは随分と極端な延長ですが、150年という期間は戸籍の保存期間に合わせた改正となっています。今後は長い間、未登記で放置されている登記名義人の住所が調べやすくなるでしょう。
※既に廃棄されてしまったものは元には戻らないので、その影響は残るとは思います。

相続登記について、より詳しい情報が知りたい方は以下をクリック

相続登記

3月 31 2022

相続登記の遺産分割協議書は登記簿のとおりに 相続登記(28)

評価証明書と登記事項証明書

不動産の情報を確認したい時に、まず思い浮かぶのは固定資産評価証明書と登記事項証明書の二つです。

評価証明書は市町村税事務所、登記事項証明書は法務局が発行する証明書になります。
評価証明書については、毎年春に届く固定資産税納付書に添付されている明細書でも代わりになります。
※登記事項証明書は登記簿と呼ばれることもあります。

不動産情報が異なる場合がある

評価証明書と登記事項証明書に記載されている不動産の情報は、一般的には同じと考えられていますが、実は異なる場合があります。

比較的多いのは、土地の地目、建物の構造や床面積などです。

なぜ異なる場合があるのか

登記事項証明書は、不動産情報に変更があったとしても、法務局が職権で修正することはありません。法律上、申請がない限り修正できない取り扱いになっています。

ですから、土地の地目・建物の構造や床面積などに変更があっても、古い情報がそのまま放置されているケースが多いのです。

一方、評価証明書は固定資産税の根拠となる書類ですから、古い情報のままで税金を課すのは問題が生じます。
従って、定期的に市町村税事務所が調査を行い、変更があれば逐一修正しているのです。

つまり、評価証明書の方が最新の情報になっている場合が多いということになります。

他には、マンションなどの集合住宅の床面積の測り方が評価証明書と登記事項証明書では違うということがあります。一般的には、登記事項証明書の床面積の方が狭くなる傾向があります。(通常は壁の真ん中から測るのに対して、登記では壁の内側から測るため)

遺産分割協議書には、どちらを書くべきか

では評価証明書と登記事項証明書で不動産の情報が異なっていた場合、遺産分割協議書には、どちらを書くべきなのでしょうか。
これは結構重要な問題です。

まず相続登記(名義変更)をする場合には、絶対に登記事項証明書のとおりに書かなくてはなりません。
例えば実際に建物が建っていて宅地として使っている土地で、評価証明書に宅地と記載されていても、登記事項証明書に雑種地と記載されていれば分割協議書には雑種地と記載しなくてはいけません。
※このようなことが起こる理由としては、更地の時は雑種地で、その後、建物を建てた時に土地の地目の変更登記を申請していなかったケースが考えられます。

一方、相続税の申告をする場合は、どちらでも構わないようです。税金の申告なので評価証明書のとおりと言うわけではないのですね。

他には遺言書に書く場合の不動産の情報は登記事項証明書のとおりに書くことが求められています。

結論

遺産分割協議書や遺言など、登記事項証明書のとおりに書かないといけない場合がある一方で、評価証明書のとおりでないといけない場合というのは少ないように思います。(私の知る範囲では、ありません)

ですから、重要な書類に不動産の情報を書く場合は、登記事項証明書のとおりに書いておけば間違いはないと考えて良いと思います。

相続登記について、より詳しい情報が知りたい方は以下をクリック

相続登記

9月 06 2021

遠方の親族が亡くなった時の相続登記 相続登記(27)

必要書類の郵送申請

遠方の親族が不動産を持っていて亡くなった場合、相続登記はかなり大変です。まず必要書類を郵送申請で取得しなければなりません。郵送申請は窓口よりも手続にかなりの手間がかかります。また申請が間違っていた場合、窓口ならばその場で直せますが、郵送だと出し直しになり時間も費用も余分にかかります。

法務局への相続登記申請

必要書類がそろったら法務局への相続登記申請になります。
法務局への申請が間違っていた場合、それを直すことを専門用語で「補正」と呼んでいます。法務局は通常の役所とは違い、補正がかなり厳しいです。

法務局の補正は基本的に窓口に行ってすぐに直せる程度の間違いしか認めてくれません。時間がかかる修正の場合、「一旦、取り下げてから出し直してください」と言われることも珍しくありません。

相続登記の申請の取り下げ

申請を取り下げると提出した申請書類は全て返却されます。特に面倒なのが登録免許税の取り扱いです。

登録免許税は申請の際に収入印紙に代えて納めています。その収入印紙は取り下げても使用済みの記載がされているので利用できません。それでは再び支払うことになってしまうので、救済措置として収入印紙の再使用証明の手続が認められています。つまり再使用証明の手続を行う必要があるのです。このように余分な手続きが多く非常に手間がかかります。

遠方への申請の場合、間違えると大変

遠方の法務局へ申請した場合、例え簡単な間違いだったとしても窓口へ出かけることができませんので、取下げてからの出し直しになる可能性があります。これは一般の方が自分で行う場合は非常に大きなリスク要因になります。

なぜ、法務局がこのような対応になっているかというと、不動産登記申請の9割近くが司法書士による申請になっていることが一つの理由でしょう。つまり法務局の職員にとって正確な申請がなされることが当たり前になっているので、間違った申請に対する姿勢が厳しくなりがちなのだと思います。

できる限り司法書士に依頼するべき

病気になったら医者に行きますよね、裁判になったら弁護士に相談するでしょう。なぜか登記申請になると自分でやろうとする方が一部いらっしゃいます。しかし、登記申請は実はかなり専門的な手続です。司法書士と言う国家資格がそのために設けられているくらいですから。

私は近くの親族が亡くなった場合でも、思わぬ落とし穴にはまらないように司法書士に依頼すべきだと思いますが、特に遠方の親族が亡くなった場合は、よりリスクが大きくなるので絶対に司法書士に依頼した方が良いと思います。

相続登記についてより詳しく知りたい場合は以下をクリック

相続登記

7月 12 2021

相続登記の後の抵当権抹消 相続登記(26)

抵当権付不動産の相続

相続した不動産に抵当権が付いていることがあります。ローンを返済中であれば、そのまま相続することになりますが、ローンを完済している場合は抵当権を抹消することになります。

本来はローンを完済した時に登記名義人が抹消しておくべきなのですが、後回しにしたまま放置されているケースも少なくありません。

抵当権抹消を放置されたまま名義人が死亡した時は、相続人が抵当権抹消登記をしなくてはいけません。

抵当権がかなり古い場合

相続してから確認すると、抵当権がかなり古いものである場合があります。そのような場合、抵当権者である金融機関が吸収合併などで変わっていることがあります。

特に平成に入ってからは金融再編で銀行の吸収合併が多いので、そのままである方が少ないかもしれません。

抵当権者が変わっている時の抹消登記

抵当権抹消登記の登記義務者は抵当権者です。売買や贈与の場合、登記義務者に住所や氏名などの変更があった場合は、事前に変更登記を申請しなければなりません。

しかし、抵当権抹消の時の登記義務者の変更については事前の変更登記の申請は不要です。変更を証明する書類を添付して、いきなり抹消登記を申請することができます。

変更証明書とは何か

抵当権抹消登記の登記義務者の変更証明書とは、商号変更や本店移転または合併を証明する登記事項証明書などになります。

これらの書類は通常、金融機関から送られてきます。抵当権者がハウスメーカーなどの場合も同様だと思います。

変更証明書は抵当権者から申請後の返却を要請されることが多いので、抹消登記の際に法務局に原本還付の申請を忘れないようにしましょう。

抵当権移転登記が必要な場合

注意すべき点として、ローンを完済する前に抵当権者の吸収合併が起こった場合、抹消登記の前に抵当権移転登記を申請する必要があります。抹消の原因(ローン完済など)が生じる前に抵当権者が変わったことになるからです。

古い抵当権の抹消は権利証が無いことが多い

長期間放置された抵当権の抹消の場合、権利証が紛失していることも多いです。その場合は、事前通知制度などを利用して申請することになり、手間も時間も余分にかかります。

ローンを完済したら、すぐに抵当権は抹消しよう

長い時間が経つと、もともとは簡単だった抵当権抹消登記も複雑になり手間も時間もかかるようになります。このようなことを避けるためにもローンを完済したら、すぐに抵当権抹消登記をするように心がけましょう。(ローンを完済すると、抹消登記の必要書類が抵当権者から郵送されてくるのが一般的な取り扱いです)

相続登記についてより詳しく知りたい場合は以下をクリック

相続登記

7月 07 2021

数次相続の中間省略登記 相続登記(25)

数次相続とは

登記名義人が死亡した後、遺産分割協議を決着させる前に法定相続人の一人が死亡した場合、専門用語で数次相続といいます。

例えば、Aが死亡して法定相続人が妻Bと長男Cだった場合、遺産分割協議の前に長男Cが死亡してしまい、長男Cの法定相続人はCの妻Dと、Cの長女Eだったというようなケースです。

中間省略登記とは

数次相続の場合、原則どおりなら相続登記(名義変更)は2回行わなければなりません。Aの相続登記を行ってから、次にCの相続登記を行うことになります。
これだと手続きを2回行うことになるので、登録免許税も2回支払うことになります。

しかし、ある条件を満たした場合、中間省略登記と言って2回分の相続登記を1回で済ませることができるのです。中間省略登記だと、支払う登録免許税も1回で済み非常にお得です。

中間省略登記の条件

数次相続で中間省略登記を行える条件は、「途中の相続が単独相続であること」です。単独相続とは、相続人が一人であることを言います。

事例の場合で言うと、Aの法定相続人は妻Bと長男Cの二人です。
このままでは中間省略登記はできません。

この場合、BとCの法定相続人で遺産分割協議をして、Aの相続人をCのみにしてしまえば単独相続になり、中間省略登記が使えるようになります(単独で相続するのは途中で亡くなった相続人です)。

この時の遺産分割協議に参加する法定相続人は、B・D・Eの3人になります。DとEは、死亡したCからAの相続権を受け継いだ形で参加します。

※単独相続でなければならないのは途中の相続のみです。最終の相続人(この場合はCの相続人)は二人でも構いません。
※数次相続の中間省略登記の原因日付は以下のようになります。
平成〇年〇月〇日C相続(日付はAの死亡日)
令和〇年〇月〇日相続(日付はCの死亡日)

間違えやすい代襲相続

数次相続と似ているため間違えやすいケースに代襲相続があります。

例えば上記のケースで、Aが死亡するよりも前に長男Cが死亡してしまったら、数次相続ではなくて代襲相続の問題になります。

数次相続か代襲相続かを決めるポイントは死亡の順番です。
Aが死亡するより前にCが死亡した場合は、Cには子がいますので、Cの長女EがCの代わりにAの遺産の分割協議に参加することになります。

ここで重要なのが、代襲相続の場合はCの妻Dは分割協議に参加できないということです。

相続登記についてより詳しく知りたい場合は以下をクリック

相続登記

4月 26 2021

相続登記における登録免許税の免税措置 相続登記(24)

最近、問題となっている所有者不明土地問題に対処するため、相続登記を義務化する仕組みが国会で成立しました。
他にも更なる相続登記の推進のために、登記にかかる登録免許税を条件付で免税する措置も設けられています。

上記の免税措置は今年の3月末で期限が切れる予定でしたが、来年3月末まで延長されました。
全部で2種類の免税措置が用意されています。これから順番に説明していきましょう。

相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合

個人が相続により土地の所有権を取得した場合において,取得した個人が土地の所有権の相続の登記を受ける前に死亡した時は、令和4年(2022年)3月31日までの間であれば、該当する相続の登記については,登録免許税を課さないこととされました。

上記のケースで免税を受けることができる相続登記の申請のイメージは,以下のとおりです。

現在、登記簿に記載された登記名義人となっている被相続人Aから相続人Bが相続により土地の所有権を取得しました。
ところが、その相続登記をしないまま相続人Bが亡くなってしまいました。この場合、相続人Bをその土地の登記名義人とするための相続登記については、登録免許税が免税となります。

この時、注意すべきポイントが2つあります。
1つは、相続人Bは亡くなっていますから第二の相続が発生しています。第二の相続の相続人をCとした場合、一般的にはAからBの相続登記と、BからCの相続登記の2種類の登記が必要になります(1種類でできるケースもあります)。

この場合、上記の免税措置の対象になるのは、AからBの相続登記だけです。BからCの相続登記については通常どおり登録免許税がかかります。

2つ目は、上記のような場合に、必ずしもCがその土地を相続している必要はなく、例えばBが生前にその土地を第三者に売却していたとしても、AからBの相続登記の登録免許税は免税となります。

市街化区域外の土地で、相続登記の促進を特に図る必要があるものとして法務大臣が指定する土地のうち、不動産の評価額が10万円以下の土地の場合
土地について相続登記(所有権移転)又は表題部所有者の相続人が所有権保存の登記を受ける場合において,以下の3つの条件に当てはまる時は、令和4年(2022年)3月31日までの間,登録免許税を課さないこととされました。

  1. その土地が市街化区域外の土地であること。
  2. 相続登記の促進を特に図る必要があるものとして,法務大臣が指定する土地であること。
  3. 不動産の評価額が10万円以下の土地であること。

ただし、不動産の所有権の持分の取得に係るものである場合は,当該不動産全体の評価額に持分の割合を乗じて計算した額となります。  

市街化区域外とは何か、を理解するためには市街化区域を理解する必要があります。市街化区域とは、住宅をどんどん建てて住んでもいいですよ、という土地の事です。人が暮らす都市としての機能を有する区域のことです。都会は市街化区域が多いということになります。

ということは、「市街化区域外」とは、住宅があまり建っていないような土地、となります。目的の土地がどちらかを正確に知るためには、役所に問い合わせるのが確実です。

法務大臣が指定する土地は、各法務局のホームページに記載されています。ただし、地域によってはかなり大雑把にしか指定されていない部分もあるので、その場合は逐一登記を申請する予定の法務局に確認する必要があります。

この免税措置については当初は所有権移転の相続登記のみが対象でしたが、後から「表題部所有者の相続人が所有権保存の登記を受ける場合」が追加されました。

表題部とは、登記簿の一番上に記載されている部分で、土地や建物の現況(構造や面積など)を表している部分です。
この表題部に所有者欄があって、そこに記載されているのが表題部所有者になります。

表題部所有者は暫定的な権利の表示なので、正式な権利の表示をするには所有権保存登記を受けなければなりません。この登記を受ける前に表題部所有者が亡くなってしまった場合は、相続人が所有権保存登記を受けることになります。

相続登記について、より詳しい情報が知りたい場合は以下をクリック

相続登記

1月 26 2021

名古屋市の評価証明書は原本の添付が不要です 相続登記(23)

今回は、相続登記における固定資産評価証明書の取り扱いに関するお話です。

固定資産評価額とは?

日本の不動産には固定資産税という税金がかかります。1年に1回、毎年4月から5月頃に固定資産税通知書(納付書)と言う書類が役所から発行されて、不動産所有者のもとに郵送されてきます。この固定資産税を計算する元になっている不動産の価格を固定資産評価額と言います。

相続登記をする場合、登録免許税という税金がかかります。実はこの登録免許税も固定資産評価額を基準にして計算するようになっています(相続登記の登録免許税は固定資産評価額の0.4%です)。

固定資産評価証明書

固定資産評価額を公的に証明した書類のことを固定資産評価証明書と言います。通常は市町村役場の税務課で取得できます。場所によっては市町村税事務所で取得する場合もあります。(固定資産税は市町村税なので)

固定資産評価証明書は土地と建物に分かれているケースが多いので、通常の土地付一戸建の場合、2通取得する必要があります(1通にまとまっているケースもあります)。

ちなみに、毎年送られてくる固定資産税通知書(納付書)に固定資産税の明細が必ず添付されているので、その明細でも固定資産評価額の公的な証明になります。こちらの方が無料ですし、役所に行く手間も省けるので便利です。

名古屋市の場合、原本の添付が不要です。

この固定資産評価証明書や明細は、相続登記の必須添付書類です。なぜなら登記申請の際に支払う登録免許税の計算の元になっているからです。そして、相続登記の添付書類は原則として原本を添付しなければなりません。
しかし、名古屋市の不動産の場合、例外的にコピーの添付が法務局で認められています。オンラインで原本の確認ができるようになったからだと説明されています。
現在、内閣の方針としてオンラインを進めていくと明言していますから、今後は原本不要の地域が増えていくことが予想されますね。

相続登記について、より詳しい情報が知りたい場合は以下をクリック

相続登記

8月 21 2020

農地の相続 相続登記(22)

農地とは

不動産の登記における農地とは、法務局で取得する登記事項証明書の「地目」の欄に「田」または「畑」と記載されている土地のことを言います。実際には耕作が行われていなくて農地として使われていなかったとしても、地目が田や畑になっていれば農地とみなされます。

農地は売買や贈与の時は農地法の許可が必要

国が定めたルールで、農地は勝手に他人に渡してはいけないことになっています。食料を生産する大事な土地なので、農業以外の目的で利用する人に自由に渡してしまうと、食料生産がどんどん減ってしまいます。

これを防ぐために農地法という法律が作られ、農地の売買や贈与には許可が必要と言うルールになっているのです。農地法の許可証は法務局で登記申請する時の必要書類になっていますので、添付しないと審査が通りません。

農地の相続には許可は不要です

ただし相続の場合は例外として、農地法の許可は不要という取り扱いになっています。
相続の場合は後を継いで農業を続ける確率も高いですし、法律上、亡くなった瞬間に相続人に所有権が移ると考えられているので、許可を条件にすることが難しいという理由もあります。

(マメ知識)
相続人が複数いる場合は遺産分割協議が済むまで相続人のものにならないように思うかもしれませんが、法的には、分割協議で決まった相続人に所有権が移る日付は故人の死亡日になります。分割協議が終了した日ではないのです。

農地を相続した後、売却したい時は許可が必要

最近は農家の相続でも相続人は都会にいて、農地を相続しても使いみちが無いから売却したいという相談も増えています。この時にネックになるのが農地法の許可です。

農地法の許可を取り扱うのは地元の役所の農業委員会ですが、基本的には農地として使ってくれる人が買主でないと、なかなか許可を出してもらえません。食料生産のための農地をできるだけ減らさないというのが農地法の趣旨だからです。

農地以外にして売却したい時は農地転用の許可

農地の地目を例えば「宅地」などに変更することを農地転用と言います。農地転用ができれば農家以外の人にも自由に売却することが可能です。しかし、農地転用するにも許可が必要なのです。
農地転用は比較的住宅街に近い農地などは認められやすい傾向がありますが、周りが全て農地のような環境では認められる可能性は低いです。

農地の移転の日付は許可された日

通常の不動産売買の場合、決済日が所有権移転の日付になることが多いです。しかし、農地の売買の場合は農地法の許可が降りないと所有権が移転しません。もし許可が降りた日が決済日よりも後だった場合は、所有権移転の日付は許可が降りた日になります。

(マメ知識)
よく名義変更と言う言葉を使いますが法的には正確ではありません。正式な用語は所有権移転と言います。登記事項証明書でも所有権移転と書かれています。法的には、所有権がAさんからBさんに移転したという考え方をするのです。

農地の相続は気を付けよう

農地を相続した場合、そのまま農家を続けるのならば問題ありませんが、不要だから売却したいと考えた場合、農地法の許可の問題があります。早めに専門家に相談した方が良いでしょう。

相続登記について、より詳しい情報が知りたい場合は以下をクリック

相続登記

8月 21 2020

相続した不動産を売却した時の固定資産税の取り扱い 相続登記(21)

相続した不動産の売却

相続登記の相談の中で比較的多いのが、「相続した不動産を売却したいので、相続登記をして欲しい」というものです。故人の名義から買主の名義に直接移すことは法律上、認められていません。必ず相続人の名義に移してからでないと売却できないのです。

売却した時、固定資産税はどうなるのか

では不動産を売却した時、売主が支払った固定資産税はどうなるのでしょうか。
まずは原則から見ていきましょう。
原則では、「固定資産税はその年の1月1日時点の名義人に対してかかる」というルールになっています。従って、原則通りなら売主が全額支払うことになりそうです。

しかし、これは役所の都合で決められた原則なので(こうやって決めてしまった方が役所はやり易いから)、非常に不公平です。従って、一般的な商習慣ではより公平な取り扱いをすることになっています。

不動産取引の現場では、固定資産税は日割で分割する

より公平にするためには、買主に名義が移ってからは買主が支払う方が良いでしょう。そのため、不動産取引の現場では、売主が固定資産税を支払った後の場合、1年間を日割して買主分の金額を計算して、決済の時に買主から売主に支払ってもらうのが通常のやり方になります。

固定資産税の基準日は4月1日から3月31日

固定資産税は1月1日の名義人にかかるのですが、基準となるのは4月1日から3月31日までの1年間です(地域によっては1月1日から計算するところもあると聞いています。少なくとも愛知県周辺は4月1日からです)。
ですから日割計算する時も、4月1日から3月31日までで計算します。

相続登記について、より詳しい情報が知りたい場合は以下をクリック

相続登記

8月 03 2020

養子は実の親の遺産も相続できる 相続登記⑳

2つの養子制度

養子には2種類の制度があります。一つは普通養子、もう一つは特別養子です。
普通養子は、養子に行った後も実の親との縁が切れません。一方、特別養子は実の親との縁が切れてしまいます。
特別養子は要件が厳しく簡単には認めてもらえません。実の親との縁を切った方が良いと思われるような事情(例えば虐待など)がある場合に特別に認められるものです。従って件数はあまり多くありません。
日本における養子のほとんどは普通養子になります。

普通養子の相続

普通養子の場合、親は実の親と養親の2組存在することになります。従って、相続の時も実の親からも、養親からも相続することができます。
一見、非常に得なように思えますが、そうとばかりも言えません。なぜなら、どちらかの親(あるいは両方)に借金がある場合も相続人になってしまうからです。

養子について良くある誤解

不動産の相続登記や遺産分割協議の相談を受けるとき、兄弟姉妹の一人は養子に行ったから今回の相続人にはならないと考えている方が珍しくありません。しかし、これは大きな間違いです。

普通養子の場合、実の親との戸籍上の縁は切れていません。従って、実の親が亡くなった時の遺産相続の相続人に養子に行った子は含まれます。当然に養子に行った子を除いた遺産分割協議は法的に無効となります。遺産分割協議ができなければ不動産の相続登記もできません。大事なことなので注意しましょう。

相続登記について、より詳しい情報が知りたい場合は以下をクリック

相続登記

« Prev - Next »