司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

相続登記(名義変更)

2月 13 2024

相続登記を放置したために売却ができなくなったケース 相続登記㉞

実際にあった事例

今回お話しするのは実際にあった事例です。まずは概要を説明します。
息子さんからの相続不動産の売却の相談です。

数年前に不動産の名義人である母親が既に亡くなっていましたが、その時は相続登記をせずに放置していました。その後、父親が亡くなって財産を調べたところ、父親名義の多額の借金があることが分かりました。

そこで借金を相続しないように父親の財産については相続放棄をされたそうです。その後で母親の名義の不動産を売却できないかという相談に来られました。

相続人不在の持分がある不動産

この事例の何が問題かと言うと、不動産の一部が相続人不在になってしまったことです。そうなった原因は以下のとおりです。

母親が亡くなった時に相続登記を放置していたため、不動産は法定相続分で父親と息子が共有している状態でした。この時までは遅れて遺産分割協議をすることは可能でした。

ところが父親が亡くなって2次相続が発生しました。しかも父親に借金があったために息子は相続放棄を選択しました。これにより不動産の一部が相続人不在になってしまったのです。

なぜ相続人不在になったのか

母親が亡くなった時点で、法定相続人は父親と息子の二人です。この状態で父親が亡くなると、父親の持っていた不動産共有持分の権利は通常は息子に相続されます。ところが息子が相続放棄してしまったので、父親の共有持分の権利が宙に浮いた状態になってしまったのです。

遺産分割協議が開けないので所有者が決まらない

父親に両親や兄弟姉妹などの他の相続人がいれば、その人と母親の不動産について遺産分割協議を開くことができますが、残念ながら他の相続人はいませんでした。そうすると通常の遺産分割協議を開くことができません。母親名義の不動産の所有者を決めることができないのです。

この場合に考えられる方法は、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらうことです。しかし相続財産管理人の選任には多額の費用と大きな手間がかかります。
※相続財産管理人の選任の際に裁判所に納める費用は数十万円と言われています。

相続財産管理人から持分を買い取る

しかも父親の不動産共有持分を手に入れるためには相続財産管理人から買い取る必要があります。タダでは手に入らないのです。

こうなる理由は相続財産管理人に借金の清算義務があるからです。相続財産管理人は父親の財産から借金を返さなくてはなりません。そのために父親が母親から相続した不動産持分を売却して換金する必要があります。この場合、もう一人の共有者が息子になりますから、息子が買いたいと言えば問題なく売ってくれるでしょう。相続財産管理人にとっても息子にとっても都合の良い結果ではあります。

ただし相場よりも安く買うことはできないと思った方が良いです。なぜなら相手は家庭裁判所から選任された相続財産管理人ですから、原理原則どおりに行動するからです。民間の不動産業者のような値引き交渉は通用しないと考えるべきです。

結果および結論

これらのことについて説明したところ、相続財産管理人選任の費用や、その後の共有持分の買取費用を考えるとメリットが少ないということで、売却はあきらめて放置という選択をされました。ただし今年の4月から相続登記が義務化されますので、ずっと放置しておくことはできなくなります。

今回の事例では、どうすれば良かったのかというと母親が亡くなった時点で速やかに遺産分割協議を開いて、不動産を全て息子さんが相続すると決めた上で、息子さん名義の相続登記をしておけば問題は無かったのです。

父親が亡くなった時には既に息子さんの名義になっているので、父親の相続放棄をしても問題なく不動産を売却することができました。相続登記を先延ばしにしたことで、手痛い失敗をしたという事例でした。

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12月 14 2023

相続登記における登録免許税の免税措置の変更 相続登記㉝

相続登記における登録免許税の免税措置

相続登記には登録免許税という税金がかかります。法務局に申請書類を提出する時にかかるので、払わないと受け付けてもらえません。相続登記における登録免許税の税率は固定資産評価額の0.4%です。

そして相続登記の登録免許税には評価額の低い土地には免税措置がありました。この免税措置が現在、内容が変更されているのでお知らせしたいと思います。

登録免許税の免税措置の変更

以前は免税措置の対象になる土地は、不動産評価額が10万円以下の土地でした。それが令和4年の税制改正により、免税対象の土地の評価額が10万円以下から100万円以下と大幅に上限が引き上げられ、恩恵を受けられる土地が一気に拡大しました。

増税が目立つ最近の政府ですが、これは珍しい減税事例ですね。その位、相続登記の放置問題は深刻で、相続登記の義務化と合わせて、政府はこの問題の解決に真剣だということでしょう。

不動産持分で計算すると100万円以下になる場合

不動産を共有で取得している場合、例えばAさんとBさんが2分の1ずつ共有している場合はどうなるのでしょうか。

このケースで不動産評価額が仮に180万円だったとすると、不動産単体では100万円を超えています。そして、Aさんに相続が発生したとします。Aさんの持分割合は90万円です。このような時、法律の規定によると、持分割合をかけた金額が100万円以下ならば免税の対象になるとされています。

つまりAさんのように、持分として取得している金額分が免税対象金額ならば、免税制度の適用を受けることができるのです。

申請書に条文の記載が必要

この免税制度は、規定に当てはまっている土地ならば何もしなくても免税になる訳ではありません。登記の申請書に適用条文を記載しなくてはなりません。

今回の適用条文は、租税特別措置法第84条の2の3第2項なので、申請書の該当箇所に「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」と記載する必要があります。

登録免許税の免税措置の期限

このお得な免税措置は期限があります。今のところ、令和7年3月末までということになっています。

ただし、所有者不明の土地を無くすという大きな目的があり、それがあと2年足らずで解決しているとは考えにくいので、期限がせまってきたら延長される可能性は高いと思っています(保証はできませんが)。

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11月 02 2023

相続土地国庫帰属制度の問題点 相続登記㉜

相続したくない土地の増加

特に地方の土地において、相続したくないというケースが増えています。価値が無いため売却するのも難しく、管理責任だけかかるので負担にしかならないというケースです。
「それならば相続放棄してしまえば良いのでは」と思われるかもしれませんが、相続放棄をすると全ての財産を放棄しなくてはなりません。銀行預金などは普通に相続したいけれど田舎の土地は相続したくないという場合には、相続放棄は使えません。

このような悩みを解決する新たな制度として国が作ったのが「相続土地国庫帰属制度」です。

相続土地国庫帰属制度とは

相続土地国庫帰属制度とは、様々な理由により相続したくない土地があった時に、その土地を国に帰属させることができるという仕組みのことです。これならば相続放棄をしなくても、相続したくない土地だけを切り離すことができると期待されました。始まったのは今年(令和5年)の4月からです。

相続土地国庫帰属制度の問題点

しかし、始まってから半年ほどが経過しましたが、この制度の利用は伸び悩んでいます。「期待したほどの制度ではなかった」と言う声もよく聞きます。それは、この制度が数多くの問題点を抱えているからです。具体的には、「誰でも、安い費用で、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではない」という点にあります。

相続土地国庫帰属制度の問題点 1(利用者の限定)

まず利用者に条件が付いています。相続土地国庫帰属制度が利用できるのは「相続や遺言で土地を取得した方」です。ということは、「売買により購入した方」や「贈与によりもらった方」は対象外になります。
他にも共有で相続した場合は、共有者全員で申請しなければならないという条件も付いています。共有者のうち一人でも拒否した場合は、この制度は使えないことになります。

相続土地国庫帰属制度の問題点 2(費用の高さ)

相続土地国庫帰属制度は無料ではありません。

まず審査の段階で審査手数料がかかります。手数料の金額は土地一筆あたり1万4000円です。この手数料は審査を取り下げた場合や審査が不承認で終わった場合でも戻ってきません。

他にも負担金と言う費用がかかります。負担金は原則20万円となっていますが、土地の状況や面積などで変化します。20万円以上請求されることもありうるということですね。馬鹿にならない金額です。

相続土地国庫帰属制度の問題点 3(土地の条件)

どんな土地でも引き取ってもらえる訳ではありません。むしろ相当に細かい条件が付いています。以下に具体例をあげますが、これを見る限り「所有者が引き取ってもらいたいと思うような、やっかいな土地」は除外されていると思えます。

『そもそも申請自体ができない土地』

      ①建物が存在する
      ②担保権や使用収益権が設定されている
      ③他人の利用が予定されている
      ④土壌汚染がある
      ⑤境界が明らかでない。所有権の存在や範囲に争いがある

※田舎の土地には境界線があいまいな土地が普通にあります

『申請しても承認されない土地』

      ①一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる
      ②土地の管理処分を阻害する有体物が地上にある
      ③土地の管理処分のために除去しなければいけない有体物が地下にある
      ④隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理処分ができない
      ⑤その他、通常の管理処分に当たって過分な費用や労力がかかる

結論

この数多くの条件を見る限り「何も問題が無ければ引き取る可能性がありますが、少しでも問題があるようなら引き取りません」と国は言っているとしか思えません。そもそも問題が無い土地ならば自分で何とかする人が大半なのではないでしょうか。何かしら問題があるからこそ「国に引き取って欲しい」と考えるのでしょう。

これでは利用者が伸び悩むのも当たり前に思えます。むしろ伸び悩みを予想できなかったとしたら、その方が驚きです。利用者が増えるためにも、今後の制度改正を切に望みます。皆さんはいかがでしょうか。

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9月 19 2023

不動産の共有についての誤解と、注意点

不動産の共有についての誤解による質問

相続人が複数いる場合、相続不動産が共有になることがあります。その時に次のような質問を受ける時があります。
「建物のこの部分は自分が相続したいが可能か」
「土地のこの区画は自分が欲しいので、遺産分割協議書に書いてもらえるか」
というような内容です。
実は、このような質問は共有についての誤解からきています。

不動産の共有とは、具体的な部分を分けることではない

例えば建物で言うと、「1階はAさん、2階はBさん」と分けることを共有だと誤解している方がいます。しかし、これは全く違うのです。法律で言う「共有」とは、あくまで抽象的な概念で、具体的な一部分を指している訳ではありません。
ある不動産をAさんが2分の1、Bさんが2分の1ずつ共有しているとしたら、AさんもBさんも不動産全体に対して権利を持っています。目に見える形で分けてはいません。

では、何のための共有なのかと言うと、不動産を売却した場合その価値に対しては具体的な分配が発生します。前の例で言うと、不動産が3000万円で売れた場合はAさんが1500万円、Bさんが1500万円の権利を持っていることになります。

不動産の共有の注意点

不動産のまま持っている時は、共有者のどちらかが使えない場所がある訳ではないので特に不都合は感じないでしょう。ただし売却する時は重要な注意点があります。それは、共有者のうち一人でも売却に反対した場合、その不動産は売ることができないということです。

ということは、共有者が多い物件ほど売却が大変になります。実際に不動産売買の現場では共有者が多い物件は、買い手が嫌がる場合が多いため価格が低くなる傾向があります。共有者全員が同意しないと売買契約が成立しないからです。

相続で増える共有者

例えば、子の無い夫婦二人の共有だったとしても、夫が亡くなって相続が発生し、夫の兄弟姉妹(相続人)が3人いたとしたら、一気に共有者は4人に増えてしまいます。このように相続によって共有者が増えていくケースは現在、問題になっています。
同じ不動産で相続が2回以上発生していると、共有者が10人くらいになっているケースも珍しくありません。こうなると売却するのは至難の業でしょう。

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1月 26 2023

相続登記の義務化 相続登記㉚ 

令和6年4月1日施行

かねてより情報を発信してきた相続登記の義務化が令和6年4月より施行されることになりました。注意点としては、施行された後は施行日以前に発生した相続についても義務化されることです。ですから既に発生した不動産の相続についても今のうちから登記しておくべきでしょう。

所有者不明土地問題

相続登記が義務化された背景には、所有者不明の土地が増加して社会問題化したことがあります。所有者不明の土地とは以下のようなものを言います。

  1. 相続登記がされないまま何代にもわたって相続が起こり所有者が分からなくなっている
  2. 所有者が分かっても住所変更登記がされていないため、連絡先が分からなくなっている

相続登記の申請義務化

法律施行日の前か後かは関係なく、「相続により不動産を取得した相続人は、取得したことを知った時から3年以内に相続登記の申請をしなければならない」こととなりました。
また、「遺産分割協議により不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に相続登記の申請をしなければならない」こととされました。
なお罰則として、正当な理由が無く、これらの登記をしなかった場合は「10万円以下の過料」が科されることがありますので注意が必要です。

正当な理由とは?

罰則を免れる正当な理由とは何でしょうか。例えば以下のような事例です。

  1. 相続手続を長期間放置していたために、相続人全員の把握に時間がかかるケース
  2. 遺言の有効性や遺産の範囲について相続人の間で争いがあり、決着がついていないケース
  3. 相続人が重病等で申請義務を果たせないケース

などが考えられるでしょう。

相続人申告登記

相続人同士があまり面識がなかったり、強硬な主張をしている相続人がいて話し合いに時間がかかりそうだった場合、まずは自分だけでも相続登記の義務を果たしたいと考える相続人もいるでしょう。そんな場合に用意された新しい制度が相続人申告登記です。

遺産分割協議が終わっていなくて自分の持分が決まっていない時でも、相続人の一人が申し出ることによって相続人の氏名と住所のみが登記されます。ただし正式な登記ではないので不動産の権利を保障するものではありません。

相続人申告登記の特徴

相続人申告登記には以下のような特徴があります

  1. 相続登記申請義務の期間内に相続人申告登記をすれば、「その相続人に限り申請義務を果たした」とみなされます。従って申告登記をした相続人は罰則の対象にはなりません。
  2. 相続人申告登記をした相続人の住所と氏名は登記されるので、相続人の情報が把握しやすくなります。
  3. 正式な相続登記よりも必要書類が少なくて済みます。

相続人申告登記は終わりではない

相続人申告登記をすれば申請義務は果たしたことになりますが、それで終わりではありません。あくまで仮の登記なので相続後の不動産の所有権が保証される訳ではないのです。所有権を確実なものにするためには遺産分割協議が終わった後に正式な相続登記をする必要があります。

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10月 18 2022

戸籍の附票とは? 相続登記(29)

戸籍の附票とは

戸籍は聞いたことがあるし実際に取得したことがあっても、戸籍の附票になると「何それ」「聞いたことが無い」という人が途端に増えます。一般の人には、あまりなじみがない書類かもしれません。

戸籍の附票を一言で言うと、「戸籍に記載されている人の住所を表したもの」です。

住民票と何が違うのか

通常は住所の証明がしたい時は住民票を取得するでしょう。住民票なら何度も取ったことがあるという人が多いと思います。では住所を表す戸籍の附票が、住民票と何が違うのかをご説明しましょう。

戸籍の附票とは、「本籍に入籍した時から除籍した時までの住所の移り変わりが全て記載されている証明書」なのです。例えば生まれてから一度も本籍を変えなかった場合、生まれてから亡くなるまでの住所が全て記載されていることになります。

一方、住民票は原則として現住所を証明する書類です。「従前の住所」という項目に一つ前の住所が載っていることも多いですが、そこまでです。それ以上前の住所になると住民票では調べることができません。

戸籍の附票の使いみち

では戸籍の附票は、どんな時に使うのかというと、不動産の登記事項証明書に記載された所有者(登記名義人と言います)の住所が現住所と異なっていた場合です。

相続でも売買でも贈与でも所有権の移転(名義人の変更)をする時には、登記名義人が間違いなくそこに住んでいたことがある、と証明しなければなりません。現住所と一致していれば簡単ですが、旧法では罰則がありませんでしたので、住所が変わっても放置していることが多く、かなり昔の住所のままになっていることが珍しくなかったのです。
※新しい法律では住所変更の際は住所変更登記をしないと罰則があります。

このような場合、登記されている住所が出てくるまで遡る必要があります。そのために戸籍の附票を取得して昔の住所を調べることが多くなります。

戸籍の附票の保存期間

以前は戸籍の附票の保存期間が非常に短く、除籍されてから5年でした。しかし、あまりにも期間が短いために、長期間登記されずに放置されているケースで住所が調査できないという事例が続出して問題になりました。それを受けて現在では保存期間が150年に延長されています(住民票も同様に延長されています)。

5年から150年とは随分と極端な延長ですが、150年という期間は戸籍の保存期間に合わせた改正となっています。今後は長い間、未登記で放置されている登記名義人の住所が調べやすくなるでしょう。
※既に廃棄されてしまったものは元には戻らないので、その影響は残るとは思います。

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3月 31 2022

相続登記の遺産分割協議書は登記簿のとおりに 相続登記(28)

評価証明書と登記事項証明書

不動産の情報を確認したい時に、まず思い浮かぶのは固定資産評価証明書と登記事項証明書の二つです。

評価証明書は市町村税事務所、登記事項証明書は法務局が発行する証明書になります。
評価証明書については、毎年春に届く固定資産税納付書に添付されている明細書でも代わりになります。
※登記事項証明書は登記簿と呼ばれることもあります。

不動産情報が異なる場合がある

評価証明書と登記事項証明書に記載されている不動産の情報は、一般的には同じと考えられていますが、実は異なる場合があります。

比較的多いのは、土地の地目、建物の構造や床面積などです。

なぜ異なる場合があるのか

登記事項証明書は、不動産情報に変更があったとしても、法務局が職権で修正することはありません。法律上、申請がない限り修正できない取り扱いになっています。

ですから、土地の地目・建物の構造や床面積などに変更があっても、古い情報がそのまま放置されているケースが多いのです。

一方、評価証明書は固定資産税の根拠となる書類ですから、古い情報のままで税金を課すのは問題が生じます。
従って、定期的に市町村税事務所が調査を行い、変更があれば逐一修正しているのです。

つまり、評価証明書の方が最新の情報になっている場合が多いということになります。

他には、マンションなどの集合住宅の床面積の測り方が評価証明書と登記事項証明書では違うということがあります。一般的には、登記事項証明書の床面積の方が狭くなる傾向があります。(通常は壁の真ん中から測るのに対して、登記では壁の内側から測るため)

遺産分割協議書には、どちらを書くべきか

では評価証明書と登記事項証明書で不動産の情報が異なっていた場合、遺産分割協議書には、どちらを書くべきなのでしょうか。
これは結構重要な問題です。

まず相続登記(名義変更)をする場合には、絶対に登記事項証明書のとおりに書かなくてはなりません。
例えば実際に建物が建っていて宅地として使っている土地で、評価証明書に宅地と記載されていても、登記事項証明書に雑種地と記載されていれば分割協議書には雑種地と記載しなくてはいけません。
※このようなことが起こる理由としては、更地の時は雑種地で、その後、建物を建てた時に土地の地目の変更登記を申請していなかったケースが考えられます。

一方、相続税の申告をする場合は、どちらでも構わないようです。税金の申告なので評価証明書のとおりと言うわけではないのですね。

他には遺言書に書く場合の不動産の情報は登記事項証明書のとおりに書くことが求められています。

結論

遺産分割協議書や遺言など、登記事項証明書のとおりに書かないといけない場合がある一方で、評価証明書のとおりでないといけない場合というのは少ないように思います。(私の知る範囲では、ありません)

ですから、重要な書類に不動産の情報を書く場合は、登記事項証明書のとおりに書いておけば間違いはないと考えて良いと思います。

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9月 06 2021

遠方の親族が亡くなった時の相続登記 相続登記(27)

必要書類の郵送申請

遠方の親族が不動産を持っていて亡くなった場合、相続登記はかなり大変です。まず必要書類を郵送申請で取得しなければなりません。郵送申請は窓口よりも手続にかなりの手間がかかります。また申請が間違っていた場合、窓口ならばその場で直せますが、郵送だと出し直しになり時間も費用も余分にかかります。

法務局への相続登記申請

必要書類がそろったら法務局への相続登記申請になります。
法務局への申請が間違っていた場合、それを直すことを専門用語で「補正」と呼んでいます。法務局は通常の役所とは違い、補正がかなり厳しいです。

法務局の補正は基本的に窓口に行ってすぐに直せる程度の間違いしか認めてくれません。時間がかかる修正の場合、「一旦、取り下げてから出し直してください」と言われることも珍しくありません。

相続登記の申請の取り下げ

申請を取り下げると提出した申請書類は全て返却されます。特に面倒なのが登録免許税の取り扱いです。

登録免許税は申請の際に収入印紙に代えて納めています。その収入印紙は取り下げても使用済みの記載がされているので利用できません。それでは再び支払うことになってしまうので、救済措置として収入印紙の再使用証明の手続が認められています。つまり再使用証明の手続を行う必要があるのです。このように余分な手続きが多く非常に手間がかかります。

遠方への申請の場合、間違えると大変

遠方の法務局へ申請した場合、例え簡単な間違いだったとしても窓口へ出かけることができませんので、取下げてからの出し直しになる可能性があります。これは一般の方が自分で行う場合は非常に大きなリスク要因になります。

なぜ、法務局がこのような対応になっているかというと、不動産登記申請の9割近くが司法書士による申請になっていることが一つの理由でしょう。つまり法務局の職員にとって正確な申請がなされることが当たり前になっているので、間違った申請に対する姿勢が厳しくなりがちなのだと思います。

できる限り司法書士に依頼するべき

病気になったら医者に行きますよね、裁判になったら弁護士に相談するでしょう。なぜか登記申請になると自分でやろうとする方が一部いらっしゃいます。しかし、登記申請は実はかなり専門的な手続です。司法書士と言う国家資格がそのために設けられているくらいですから。

私は近くの親族が亡くなった場合でも、思わぬ落とし穴にはまらないように司法書士に依頼すべきだと思いますが、特に遠方の親族が亡くなった場合は、よりリスクが大きくなるので絶対に司法書士に依頼した方が良いと思います。

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相続登記

7月 12 2021

相続登記の後の抵当権抹消 相続登記(26)

抵当権付不動産の相続

相続した不動産に抵当権が付いていることがあります。ローンを返済中であれば、そのまま相続することになりますが、ローンを完済している場合は抵当権を抹消することになります。

本来はローンを完済した時に登記名義人が抹消しておくべきなのですが、後回しにしたまま放置されているケースも少なくありません。

抵当権抹消を放置されたまま名義人が死亡した時は、相続人が抵当権抹消登記をしなくてはいけません。

抵当権がかなり古い場合

相続してから確認すると、抵当権がかなり古いものである場合があります。そのような場合、抵当権者である金融機関が吸収合併などで変わっていることがあります。

特に平成に入ってからは金融再編で銀行の吸収合併が多いので、そのままである方が少ないかもしれません。

抵当権者が変わっている時の抹消登記

抵当権抹消登記の登記義務者は抵当権者です。売買や贈与の場合、登記義務者に住所や氏名などの変更があった場合は、事前に変更登記を申請しなければなりません。

しかし、抵当権抹消の時の登記義務者の変更については事前の変更登記の申請は不要です。変更を証明する書類を添付して、いきなり抹消登記を申請することができます。

変更証明書とは何か

抵当権抹消登記の登記義務者の変更証明書とは、商号変更や本店移転または合併を証明する登記事項証明書などになります。

これらの書類は通常、金融機関から送られてきます。抵当権者がハウスメーカーなどの場合も同様だと思います。

変更証明書は抵当権者から申請後の返却を要請されることが多いので、抹消登記の際に法務局に原本還付の申請を忘れないようにしましょう。

抵当権移転登記が必要な場合

注意すべき点として、ローンを完済する前に抵当権者の吸収合併が起こった場合、抹消登記の前に抵当権移転登記を申請する必要があります。抹消の原因(ローン完済など)が生じる前に抵当権者が変わったことになるからです。

古い抵当権の抹消は権利証が無いことが多い

長期間放置された抵当権の抹消の場合、権利証が紛失していることも多いです。その場合は、事前通知制度などを利用して申請することになり、手間も時間も余分にかかります。

ローンを完済したら、すぐに抵当権は抹消しよう

長い時間が経つと、もともとは簡単だった抵当権抹消登記も複雑になり手間も時間もかかるようになります。このようなことを避けるためにもローンを完済したら、すぐに抵当権抹消登記をするように心がけましょう。(ローンを完済すると、抹消登記の必要書類が抵当権者から郵送されてくるのが一般的な取り扱いです)

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相続登記

7月 07 2021

数次相続の中間省略登記 相続登記(25)

数次相続とは

登記名義人が死亡した後、遺産分割協議を決着させる前に法定相続人の一人が死亡した場合、専門用語で数次相続といいます。

例えば、Aが死亡して法定相続人が妻Bと長男Cだった場合、遺産分割協議の前に長男Cが死亡してしまい、長男Cの法定相続人はCの妻Dと、Cの長女Eだったというようなケースです。

中間省略登記とは

数次相続の場合、原則どおりなら相続登記(名義変更)は2回行わなければなりません。Aの相続登記を行ってから、次にCの相続登記を行うことになります。
これだと手続きを2回行うことになるので、登録免許税も2回支払うことになります。

しかし、ある条件を満たした場合、中間省略登記と言って2回分の相続登記を1回で済ませることができるのです。中間省略登記だと、支払う登録免許税も1回で済み非常にお得です。

中間省略登記の条件

数次相続で中間省略登記を行える条件は、「途中の相続が単独相続であること」です。単独相続とは、相続人が一人であることを言います。

事例の場合で言うと、Aの法定相続人は妻Bと長男Cの二人です。
このままでは中間省略登記はできません。

この場合、BとCの法定相続人で遺産分割協議をして、Aの相続人をCのみにしてしまえば単独相続になり、中間省略登記が使えるようになります(単独で相続するのは途中で亡くなった相続人です)。

この時の遺産分割協議に参加する法定相続人は、B・D・Eの3人になります。DとEは、死亡したCからAの相続権を受け継いだ形で参加します。

※単独相続でなければならないのは途中の相続のみです。最終の相続人(この場合はCの相続人)は二人でも構いません。
※数次相続の中間省略登記の原因日付は以下のようになります。
平成〇年〇月〇日C相続(日付はAの死亡日)
令和〇年〇月〇日相続(日付はCの死亡日)

間違えやすい代襲相続

数次相続と似ているため間違えやすいケースに代襲相続があります。

例えば上記のケースで、Aが死亡するよりも前に長男Cが死亡してしまったら、数次相続ではなくて代襲相続の問題になります。

数次相続か代襲相続かを決めるポイントは死亡の順番です。
Aが死亡するより前にCが死亡した場合は、Cには子がいますので、Cの長女EがCの代わりにAの遺産の分割協議に参加することになります。

ここで重要なのが、代襲相続の場合はCの妻Dは分割協議に参加できないということです。

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