6月
07
2019
遺産分割調停とは
相続人同士で争いがあり、遺産分割協議がどうしてもまとまらない場合は、最後の手段として家庭裁判所による遺産分割調停があります。
遺産分割調停は、家庭裁判所に相続人全員が出向いて調停委員を仲介役として話し合う手続のことです。
遺産分割調停でも話し合いがまとまらなかった場合は、審判と言う手続に移行します。
どこの家庭裁判所に申し立てるのか
どこの裁判所で手続を行うか、を管轄と言います。
遺産分割調停の管轄は、「申立人以外の相続人の住所地にある家庭裁判所」です。
例えば3人の子が相続人の場合、申立人が東京在住で、次男が大阪、長女が名古屋だったとしましょう。この場合、大阪か名古屋どちらかの家庭裁判所に申し立てる必要があります。
申立人の住所でやりたい場合は、どうする?
上記の例で、どうしても東京でやりたい場合は、「相続人全員が東京で良い」と合意できた時に限ります。しかし通常、遺産分割調停になる案件は相続人同士で揉めているケースなので、このような合意を取り付けるのは難しい場合が多いでしょう。
遠方で出席が難しい時は
相続人がバラバラに住んでいる時は、管轄裁判所が遠方で出席が難しい場合もあるでしょう。そのような時のために「電話会議」という制度があります。これは、遠方の相続人に限り電話で遺産分割調停に参加するやり方です。
この電話会議システムは大変便利なのですが、管轄の家庭裁判所の許可が必要です。家裁が許可してくれなかった場合は、利用することが出来ません。実際には、許可率はあまり高くないです。裁判所が、本人の直接参加にこだわっていることも一因です。ただ確率はゼロではありませんから、遠方ならば、とりあえず申請はしてみることをおすすめします。
調停に欠席したらどうなるのか
遺産分割調停に欠席した場合で電話会議も認められなかった場合、相続人全員参加の原則を満たしていませんので、遺産分割調停は不成立となります。
この場合、制度上は、自動的に遺産分割審判に移行することになっています。遺産分割審判は裁判のようなものなので、欠席すると、欠席した相続人に不利な状態になります。最終的に裁判官が全てを決めて審判と言う結論を出します。
審判は裁判官が法律に従って結論を決めるものなので、相続人の希望や満足度などはあまり考慮に入れられません。不満の出る結果になることも多いです。ですから、なるべく調停の段階で合意に至るようにした方が良いとは思います。
取下げを勧められることもある
遺産分割調停で相続人の一人が欠席すると、調停委員によっては「調停の取下げ」を強力にすすめてくる場合もあります。制度上は「調停が不成立の時は自動的に審判に移行する」のが原則ですが、これを調停委員の裁量で止めようとしてくる時があるのです(理由は良く分かりません)。
ただし、これは義務ではありませんので、続けて審判をやって欲しい時は、きっぱりと拒否しましょう。もし取下げてしまうと完全に振り出しに戻って、家裁に支払った費用も無駄になってしまいます。
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遺産分割
7月
02
2018
相続財産で預貯金は最も分割が容易な財産です。法定相続分どおりに分ける時には、簡単に分けられるので問題が起こりにくいと言えるでしょう。しかし、相続財産に不動産がある場合は、そう簡単ではありません。
一般的に不動産の価値は預貯金よりも高い場合が多いです(特に都会の場合)。しかし、不動産は分割することが困難な財産です。遺産分割協議で最ももめることが多いのも不動産の相続です。
理由は既に特定の相続人が住んでいる場合が多いからです。その場合、当然その住んでいる相続人が不動産の相続を主張します。住んでいる相続人にとっては、自分が相続できなかったら家を追い出される可能性がある訳ですから必死です。
話し合いがつかない場合、不動産を相続人全員の共有にすることになりますが、不動産の共有持分というのは住んでいない相続人にとっては何のメリットもありませんので文句が出ることが多いのです。
こんな時、住んでいない相続人から、「不動産を売却してお金に代えて、それで相続分を支払ってくれ」という要求が出ることがよくあります。これを言われると住んでいる相続人は引っ越しをしなくてはなりませんから、関係が悪化して話し合いで解決できなくなることも珍しくありません。
どうしても引越が嫌な場合は、住んでいる相続人が相続分相当の金銭を別に用意して他の相続人に支払うしかなくなります。このような遺産分割の方法を代償分割と言います。(相続法の改正で配偶者居住権と言う権利が新設されて、配偶者は自宅に住み続けられるように今後はなる予定です)
相続人同士で話し合いがつかない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。
このように相続財産に不動産がある場合は遺産分割協議がスムーズ進まないことが多いので、対策として遺言を残しておく人が増える傾向にあります。
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3月
02
2018
遺留分って知っていますか。
法定相続人なのに、遺言などで相続人からはずされてしまった時に、「最低限これだけはもらえる」という割合を法律が定めています。これを遺留分と言います。(従って、遺言を書くときも最初から遺留分について考えて記載した方が、後のトラブルは少ないということになります)
遺留分は自動的にもらえる訳ではありません。遺留分を無視して遺産分割協議をしても法的には有効です。そのまま遺留分の請求がされなければ、遺産分割協議のとおりに遺産は分けられることになります。
従って、自分に遺留分があると思ったら、その相続人は請求をしなくてはなりません。これを専門用語で「遺留分減殺請求」と言います。
また、遺留分減殺請求には期間があります。法律では「減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する」と定めています。ずっと放っておくと、後から気付いても請求できなくなりますので気を付けましょう。
では、具体的に、どの位の割合を請求できるのでしょうか。
(1)まず、被相続人(亡くなった方)の兄弟姉妹・甥姪には遺留分は認められておりません。あなたが兄弟姉妹・甥姪に当たる場合は遺留分はあきらめましょう。
(2)法定相続人が直系尊属(被相続人の父母・祖父母)のみの場合は3分の1が遺留分として認められています。
(3)上記1・2に該当しない場合(法定相続人が配偶者・子供の場合)は2分の1が遺留分として認められています。
実際の計算は、請求する人の法定相続分に遺留分割合をかけた割合になります。
例えば、配偶者と子供二人の場合、
配偶者の遺留分は、法定相続分2分の1に遺留分割合2分の1をかけた4分の1となります。
子供一人の遺留分は、法定相続分4分の1に遺留分割合2分の1をかけた8分の1となります。
他に注意すべき点として、生前贈与を受けた相続人がいないか、という点があります。理由は、生前贈与が「特別受益」に当たる場合、遺留分を計算する時の相続財産の金額に生前贈与された財産の金額も加える必要があるからです。(結果的に遺留分の金額が増えます)。
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1月
19
2018
現在、政府が進めている民法改正要綱案によると、遺産相続における配偶者優遇措置が強化されることになりそうです。
被相続人(亡くなった人)の配偶者が、これまで住んでいた家にそのまま住み続けられるように配偶者居住権という権利を設定できるという、法的に結婚している配偶者の優遇を強く打ち出した内容となっています。
総務省の全国調査によると、2人以上世帯の家計資産に占める不動産の割合は全国平均で約66.5%になります。
子どもがいる場合の配偶者の法定相続分は2分の1です。
法定相続で遺産を分割した場合、現状では、子どもの取り分をねん出するため、自宅を売却する必要に迫られるケースが多くなっており、配偶者が住み慣れた家を追い出されることで問題になっていました。
配偶者居住権
そこで新しい要綱案では、住んでいる家に限って所有権とは別に「配偶者居住権」という権利を新設。
この権利を設定することによって、他の相続人が家の所有権を持っていても、配偶者は家に住み続けることが出来るようになる、というものです。
この際、配偶者居住権は家の評価額よりも低くなるので、配偶者が法定相続分で相続しても、住んでいる家を失わない上に、現金・預貯金を相続できるケースが増えると見込まれています。
配偶者居住権の評価額は住む年数などに応じて変わります。
また、権利を行使するためには設定の登記が必要となります。
相続登記と一緒に依頼するのが、自然な流れでしょうか。
他にも、結婚後20年以上経った夫婦に限り、遺言による遺贈または生前贈与された居住用の家は遺産分割の対象から外せる規定も盛り込まれました。
仮払い制度の新設
また相続開始後に預貯金が凍結され、葬儀費用などを相続人が立て替えなくてはならない問題を解決するために、遺産分割前に相続人が預貯金を引き出せるようにする仮払い制度も新設されました。
被相続人の介護について
さらに、被相続人の介護などをした相続人以外の親族が、相続人に金銭を請求できる規定も盛り込まれています。
これは、被相続人と同居していた長男夫婦の場合、長男の妻が被相続人を介護していたときなどが該当するでしょう。
常々、問題になっていたことなので、画期的な改正と言えるでしょう。
主だったものはこのくらいですが、まだいくつかあります。
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)
法案は今月から始まる通常国会に提出される見通しで、早ければ今年度中には成立する可能性があります。今までの相続制度を大幅に変える規定が多く盛り込まれているため、国会の成り行きを注目していきたいと思います。
相続登記について詳しく知りたい人はこちら
遺産分割について詳しく知りたい人はこちら
9月
14
2017
不動産を相続して、その不動産を相続人の誰も利用する予定が無い場合、毎年の固定資産税の支払いが無駄になります。
評価価格の高い土地ですと、固定資産税もかなりの額になります。
相続人が1人でない場合は、誰が支払うのかでもめてしまうことも……。
このような場合は、換価分割を検討してみましょう。
換価分割とは、不動産をすぐに売却して金銭に換えてから相続人に分配する遺産分割の方法です。
分配方法が、かなり自由になりますから、よく使われる方法です。
換価分割の際の不動産の登記
換価分割の場合、一旦、法定相続人の1人に仮に名義を移してから売却します。
法定相続人が3人いたら、普通に登記をすれば3人の共有ということになります。
換価分割で、それをしないのは、1人の所有になっているほうが売却がしやすいからです。
なぜ1人の所有のほうが売却しやすいのでしょうか。
3人の共有ですと、誰か1人が売却に反対すると、買い手は困ってしまいますよね。
反対している1人がいつ賛成してくれるのか、それともずっと反対のままなのか非常に不安定な状態になってしまいます。
もちろん、3人とも賛成してくれれば問題はありませんが、買い手としてはリスクが少ないほうが良いのです。
それで、一旦1人に仮に名義を移すわけです。
そして売却後、金銭を分配すると言う方法を取ります。
換価分割の際の遺産分割協議書
遺産分割協議書の記載の仕方で注意する点が2つあります。
1つは、一旦、1人に名義が移った後の分配なので、税務署から贈与だとみなされないように記載する必要があります。
贈与とみなされた場合、贈与税がかかるからです。
贈与税は相続税よりも、はるかに高い税率ですから、大変困ったことになります
2つ目は、「仮に○○に名義を移す」というような表現を使うと、法務局での相続登記の審査が通らない、ということです。
換価分割の遺産分割協議書は、上記の2つのポイントを両方とも押さえていないと、うまくいきません。
意外と思われるかもしれませんが、弁護士さんに依頼すると、1つ目のポイントだけ押さえられていて、2つ目が配慮されていないので相続登記には利用できないというケースが実は珍しくありません。
これは、弁護士さんは不動産登記の専門家ではないために起こってしまうことです。
やはり「餅は餅屋」ということでしょうか。
逆に弁護士さんにしかできない仕事もありますからね。
上記のような理由から、換価分割を検討されている場合は、司法書士に相談されるのが良いでしょう。スムーズに進む可能性が高いと思います。
>>>遺産分割についてもう少し詳しく知りたい方はこちら<<<
3月
24
2017
結婚20年以上のご夫婦に朗報です!
相続制度に関する法律の変更が新たに検討されています。
これには、戦後70年以上が経過して、今までの法律が時代に合わなくなってきているという背景があります。
今回は、配偶者の相続に関する新たな優遇案をご紹介しましょう。
結婚20年以上で住宅贈与の場合
法務大臣の諮問機関である「法制審議会」の相続部会において新たに提案がなされました。「結婚から20年以上が過ぎた夫婦の場合、配偶者が生前や遺言により居住用の住宅を贈与されたときは、遺産分割で優遇される」というものです。
相続部会では賛成者が多数だったようで、いずれ法制化される可能性が高いと考えられます。
新しい案では、結婚から20年以上の夫婦で、配偶者が居住用の不動産(建物・土地)の贈与を受ける場合が対象になります。
贈与した人が亡くなり、相続人同士で遺産分割が行われた場合、贈与された居住用の不動産については遺産分割の財産に含めないという形になります。
高齢の配偶者に対する配慮
今までの法律ですと、居住用の不動産以外にめぼしい財産が無い場合、困ったことが起きていました。
配偶者以外の相続人が遺産分割協議の席で換価分割を主張したとします。
財産のほとんどが不動産だった場合には、こういうケースも少なくありません。
そうすると、財産を相続人で分けるためには、居住用不動産を売却しなくてはならなくなります。
そのため、高齢の配偶者が長年住み慣れた家から追い出されるという不都合が生じるケースが少なからずあったのです。
今回の優遇案では、このような事態を防ぐ目的があると思われます。
ただし、自動的に配偶者が優遇される訳ではありません。
生前贈与や遺言などの方法により、法的にはっきりとした形で贈与がされていることが条件になっているので注意が必要です。
(この法案が通った場合、配偶者への生前贈与や遺言が増加することが予想されます。)
まだ成立した訳では無いので、若干の修正がかかる可能性がありますが、現行の遺産分割制度に見直しがかかる可能性は高いでしょう。
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