司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

12月 1st, 2017

12月 01 2017

法定相続分での相続登記4つのポイント(相続登記⑫)

相続登記をする場合、圧倒的に多いのは遺産分割協議をしてから、協議書を添付して行う相続登記です。
そして、次に多いのが遺言による相続登記です。

もう1つ、相続登記にはパターンがあり、それが法定相続分による相続登記になります。これは件数としては他のパターンよりも少ないです。なぜ少ないのか、その理由についてご説明しましょう。

法定相続分の相続登記4つのポイント

法定相続分による相続登記には大きな特徴があります。
それが、法定相続人のうち1人からでも申請することが出来るという点です。例え相続人の間で話がまとまっていなくても、そのうちの1人から申請することが可能なのです。(もちろん、法定相続人全員が申請人になって申請することも可能です。)

一見、便利そうにみえる特徴ですが、件数が少ないのには、様々な理由があります。
順番に紹介していきましょう。

  1. 共有者が多いため売りにくい
  2. 法定相続分の登記をすると、その不動産は法定相続人全員の共有になります。すると、不動産売却の際には、共有者全員の同意が必要になります(具体的には全員分の実印と印鑑証明が必要です)。
    もちろん全員が同意すれば売却は可能ですが、1人でも売却に消極的な共有者がいると売れなくなってしまいます。

  3. 相続人間でトラブルが起こる
  4. 法定相続人の一人から申請した場合、他の相続人が知らない間に相続登記が行われてしまうことになるので、そのことで相続人の間でトラブルが起こる場合があります。時には、他の相続人が遺産分割調停などを起こして、登記の変更を求めてくる可能性があります。
    (変更が認められるかどうかは、家裁の判断となります。「登記はそのまま」という判断になる可能性もあります。)

  5. 登録免許税は全員分を支払う
  6. 法定相続人の1人から申請した場合でも、相続登記にかかる登録免許税は全員分を支払う必要があります。誤解されることが多いのですが、1人から申請した場合でも、1人分の登記がされる訳ではありません。
    全員分の登記を1人で行えるということなのです。

  7. 登記識別情報が発行されない
  8. 一般の方が最も気づきにくいポイントしては、法定相続人の1人から申請した場合、申請しなかった他の相続人には登記識別情報(昔の権利証に当たるもの)が発行されません。これが次に売却するときに注意すべき点になります。

    売却の際には、全員分の登記識別情報が必要ですが、提出できない共有者がいる場合は、その人に関しては司法書士に本人確認情報を発行してもらう必要があります。その際に追加費用がかかります。(法定相続人全員で申請した場合は、全員に対して登記識別情報が発行されます)

上記のように、法定相続分の相続登記には注意すべき点があります。
ただし、法的には可能な登記なので(一人から申請する場合も含めて)、申請自体は問題ありません。もし希望される場合は、注意点に対して充分に納得して行うようにしましょう。

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