司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

2019年5月

5月 31 2019

戸籍が廃棄されている場合の相続手続 遺産承継(遺産整理)⑯

戸籍の廃棄とは

戸籍には保存期間が定められています。平成22年に戸籍法施行規則が改正されるまでは80年でした。現在は150年となっています。ただし、保存期間を経過していても役所によっては保存している場合もあり、一律の取り扱いではありません。一般的に大量の戸籍を扱う都会の役所の方が、廃棄している確率が高いと言えそうです。

除籍とは

戸籍には種類があり、大きく分けて現在戸籍・除籍・改製原戸籍の3つがあります。現在戸籍とは最も新しい戸籍で、通常、戸籍と言うと現在戸籍のことです。
一方、除籍とは戸籍に記載されている家族が全員いなくなった場合のことです。
いなくなる原因としては以下のような理由があります。
①死亡
②結婚による新たな戸籍の作成
③転籍(本籍地の変更)
戦後の戸籍制度では結婚すると親の戸籍から抜けていきますので、死亡や結婚で徐々に戸籍の人数が減っていき、全員がいなくなると除籍となります。また、転籍すると前の役所の戸籍は閉鎖されて除籍となります。
前項の保存期間は除籍謄本が対象になります。

改製原戸籍とは

結婚や転籍以外でも戸籍が新しく作られることがあります。それは戸籍法が改正された時です。戸籍法の改正によって閉鎖された古い戸籍のことを改製原戸籍といいます。戦後だと昭和23年と平成6年に戸籍法が改正されています。戦前生まれの方が亡くなった場合、ずっと独身で一度も転籍していなくても戸籍は最低3つはあることになります。
相続手続における「出生までの戸籍をたどる」ということは、除籍謄本や改製原戸籍も含めて全てをそろえるということです。特に除籍謄本については保存期間があるので注意が必要になるのです。

戸籍が廃棄された場合の相続手続

保存期間が80年だった時に多くの戸籍が廃棄されたため、相続が発生して戸籍の収集を始めると戸籍(除籍謄本)が取れないという事態に直面する場合があります。
相続手続では、銀行や法務局から被相続人の出生から死亡までの戸籍が必ず求められます。戸籍が廃棄されていた場合、出生までたどれないということが起こるのです。

戸籍が廃棄されていた場合の解決法

この場合は、廃棄した役所から「廃棄済み証明書」という書面を発行してもらって、この書面を添付することで相続手続をすすめていくことが可能です。以前は廃棄済み証明書に加えて、相続人全員の同意書を添付する取り扱いが一般的で、かなり事務的に面倒な手続でした。
しかし、平成28年に法務局の取り扱いが変更になり、現在では廃棄済み証明書が添付されていれば、相続人全員の同意書は不要な取り扱いになりました。これは相続手続の負担軽減になり、非常に良い変更だったと思います。(銀行の場合は、法務局で法定相続情報証明を取得して持っていけば同様の取り扱いになります)

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遺産承継

5月 31 2019

損害保険の死亡保険金に対する相続税 遺産承継(遺産整理)⑮

損害保険の死亡保険金とは

死亡保険金は生命保険が代表的ですが、損害保険にもあります。例えば、自動車保険などに付いている死亡保険金などです。

損害保険の死亡保険金の相続税は?

生命保険の死亡保険金には相続税の控除の制度があります。では損害保険の場合はどうなるのでしょうか。結論から言うと、同じような控除があります。「500万円×法定相続人の数」が控除の上限となります。

相続税の対象となるかは条件によって異なります

死亡保険金が相続税の対象となるかどうかは条件によって異なります。最も代表的な例は、「保険料の支払いが被相続人、被保険者が被相続人、受取人が相続人」の場合は相続税の対象となりますので、前項の控除が使えます。
しかし、例えば保険料の支払いが被相続人では無かった場合は、相続税の対象とはみなされないでしょう。

死亡保険金は相続税対策になる

法定相続人の数が多かった場合、死亡保険金は有望な相続税対策となります。
死亡保険金の控除は、相続人を一人に絞った場合でも全額受けられるからです。
例えば法定相続人が3人だった場合、控除額の上限は1500万円となりますが、これは3人に均等に分ける必要は無いのです。仮に一人に相続させる場合でも3人分の控除を受けることが出来ます。
この点は誤解されている方が多いので注意しましょう。

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5月 30 2019

法務局でも間違えることはある 相続登記⑱

共有持分の相続登記

父2分の1、長男2分の1という不動産があって、父が亡くなり長男が相続人となった場合、父持分全部移転という相続登記をすることになります。
この時、父が亡くなる前の長男の持分の表示は共有者となっています。亡くなる前は父と長男の共有だった訳なので、これは正しい表示です。

相続登記後の長男の表示

相続登記をして父の持分2分の1が長男に移った場合、不動産は長男一人のものになるので、この場合は所有者という表示になります。もはや共有では無いのだから当然です。

所有者の表示が共有者になっていた

私が相続登記をした事例で、何とこれが間違って登記されていたことがありました。長男一人のものになったのに、表示が共有者になっていたのです。明らかに法務局の間違いでした。

法務局が間違いを認めて訂正

司法書士は登記が終わった後、登記事項証明書を取得して完了後の表示を確認します。それで間違いを発見しました。急いで法務局に連絡すると、最初は驚いていたようですが、しばらくすると「確かに間違っています。早急に訂正して正しいものを送ります」と言う返事でした。

法務局にも間違いはある

法務局も人の組織である以上、(件数は少ないですが)間違いはあるということです。ですから登記完了後にきちんと確認するのが重要となります。
法務局も早期に間違いを認めて訂正の処理をしてくれましたので、結果として悪くない対応だったと思います。

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相続登記

5月 29 2019

仏壇、お墓、位牌などは相続放棄すると引き継げないのか 相続放棄⑬

仏壇、お墓、位牌などを祭祀財産という

仏壇、お墓、位牌などの財産は一般の相続財産とは区別され、祭祀財産と言います。祭祀財産とは祖先を祭るための財産という意味です。
祭祀財産は引き継ぐ方法も一般の財産とは異なり、第一には被相続人が指定した人です。被相続人が指定していない場合は慣習に従うとなっています。
また祭祀財産を引き継ぐ人のことは、相続人ではなく祭祀承継者といいます。

祭祀財産は相続放棄の影響を受けない

祭祀財産は一般の財産とは区別されますので相続放棄の影響を受けません。従って、例え相続放棄をした場合でも、仏壇、お墓、位牌などを引き継ぐことは問題ありません。祭祀財産のことで相続放棄をためらう必要は無いのです。

祭祀財産の種類

仏壇、お墓、位牌など以外にも祭祀財産はあります。例えば、遺骨、家系図、神棚なども含まれるでしょう。もちろん神道や仏教以外の宗教の場合もあると思います。

一般の財産は単純承認に注意

一方、一般の財産を一部でも相続してしまうと単純承認とみなされて、後ほど相続放棄をすることが難しくなることがありますので注意しましょう。

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相続放棄

5月 16 2019

在日韓国人の相続では日本人以上に遺言が重要 遺言⑱

在日韓国人の相続の基本

在日韓国人の相続の場合、家族の中に帰化している人と帰化していない人が混ざっている場合が珍しくありません。その場合、まず最初に確認するのは、被相続人(亡くなった人)が韓国籍なのか日本国籍なのか、です。
被相続人が韓国籍の場合は韓国法による相続手続、日本国籍ならば日本法による相続手続になります。

在日韓国人の戸籍はどうなるのか

相続手続で最も大変なのは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍の収集です。
在日韓国人の場合、2008年より韓国で戸籍が廃止されてしまったのが手続に大きく影響しています。代わりに家族関係登録制度という仕組みができました。これによると、基本証明書・家族関係証明書・婚姻関係証明書などと呼ばれる書類が相続の書類として使われているようです。
更にややこしいのが2007年までは韓国の戸籍が存在していた訳ですから、2007年以前は韓国戸籍をさかのぼる必要があります。日本人の相続手続よりもずっと大変ですね。このような理由で費用も高めに設定している事務所が多いようです。

韓国の書類は、どうやって取得するのか

最も一般的な方法は、大使館や領事館で取る方法です。日本には全部で9カ所の韓国大使館・領事館があります。
また民団という組織で取得の代行をしてくれるようです。ただ、代行費用は必要だと聞いています。
ただし、戸籍や証明書を取得するにはまずは韓国における本籍地を知らなければなりません。ところが、在日韓国人の中には自分の韓国における本籍地を知らない方が結構います。こうなると取得するのは大変困難になり、最悪の場合、取得できないというケースもあります。

在日韓国人の相続手続書類の問題点

在日韓国人の中には、生まれた時から日本で暮らしていて韓国語も良く分からない、と言う人が珍しくありません。このような場合、以下のような問題点がある場合が珍しくありません。
(1)結婚しても大使館や領事館に届けていない
これにより、韓国の戸籍や家族証明に婚姻の事実が記載されなくなります。書類上は独身になっていますから、相続手続の時に困ったことになります。
(2)子どもが生まれても大使館や領事館に届けていない
これは結婚よりももっと深刻な問題で、書類のどこにも子どもの記載がないことになります。帰化しない限り日本の戸籍にも記載がないので、事実上、子どもが無国籍の状態になってしまいます。

在日韓国人こそ遺言を残しておくべき

このように在日韓国人の相続手続は、日本人の相続よりも大変な手続になる場合がほとんどです。ただし、この大変な手続を回避する手段が一つだけあります。それは公正証書遺言を残しておくことです。
公正証書遺言の中に、「私の日本における相続は日本法による」と書いておけば、日本法により相続手続を進めていくことが可能です。

何故、公正証書なのか?

自筆証書遺言にしてしまうと意味がありません。何故なら、家庭裁判所の検認が必要だからです。家庭裁判所の検認手続では相続人全員に通知する必要があるので、結局、相続人全員が分かる書類を集めなくてはならないからです。

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遺言