司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

10月 6th, 2020

10月 06 2020

遺言が無くてトラブルになりやすい事例(6) 遺言(24)

今回は、遺言が無いためにトラブルになりやすい事例の六つ目のお話です。

会社を経営している方が事業の承継を考えている場合、遺言が無いと承継がうまくいかない可能性があります。

会社経営者ならば、いつかは誰かに会社を継いでもらおうと考えていることでしょう。もし何も対策を取らずに亡くなった場合、株式などが法定相続分で相続されて分散してしまい、その後の経営に支障が出ることが考えられます。

遺言で指定しておくことで、後継者に株式を集中して相続させることが可能になります。スムーズに承継されるように、後継者には遺言についてある程度の情報は伝えておいた方が良いでしょう。

株式だけでなく会社で活用している不動産なども、後継者に相続されるように遺言に書いておくべきでしょう。

相続トラブルで会社の信用が落ちるようなことは絶対に避けるべきです。そのためにも、事業承継のための遺言は公正証書遺言で残した方が良いでしょう。会社の資産の承継ですから、より公的な証明力の強い形式で作成すべきです。

他にも注意点としては、遺言執行者は必ず決めておくべきです。会社の承継に関する遺言ですから、利害関係人が個人よりも多くなるので、第三者を遺言執行者に指定して公平さを出しておく方がトラブルが少なくなるでしょう。
会社の承継の場合、できれば遺言執行者は専門家を指定しておいた方が良いでしょう。利害関係人から遺言執行について質問を受けた時に法的な回答ができる方が望ましいからです。

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10月 06 2020

遺言が無くてトラブルになりやすい事例 (5) 遺言(23)

今回は、遺言が無いためにトラブルになりやすい事例の五つ目のお話です。

遺産分割で大変なことになるケースとして、特定の相続人が音信不通の場合があります。

例えば、兄弟が複数いて一人がとても素行が悪く、途中で家を飛び出してから音信不通でどこにいるかも分からない、というようなケースです。

この場合、遺言が残されていないと大変困ったことが起こります。
音信不通の子どもも法定相続人の一人なので、その子を抜きにして遺産分割協議を行うことはできません。仮にその子を除いた協議書を作っても相続手続には使えません。
従って、探し出す必要がでてきます。

仮に見つかっても、相当に相続人同士の仲が悪くなっていることが考えられます。飛び出した子が法定相続分の取得をきっちりと主張してきた場合、「今さら何を言ってるのか」と他の相続人は考えるでしょうから、遺産分割協議は相当に揉めるでしょう。家庭裁判所に持ち込まれるかもしれません。

(マメ知識)
このケースで家庭裁判所の遺産分割調停に持ち込まれた場合、音信不通だった子の法定相続分が認められる可能性が高いです。経験上、昔の素行不良や音信不通の経緯などは、あまり考慮されないことが多いです。理不尽だと思われるかもしれませんが、家庭裁判所はできる限り法定相続分で分けようとする傾向があるということは覚えておいた方が良いでしょう

探しても見つからなかった場合はもっと大変です。家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てなければなりません。申立てには費用も時間もかかります。
その後、選任された財産管理人を含めて遺産分割協議を行います。この時、財産管理人は法的に不在者の法定相続分を主張する義務がありますので、間違いなく音信不通の子の法定相続分を主張します。法定相続分が確保できなければ協議書に印鑑は押さないという態度に出るでしょう。

このように音信不通の子が見つかっても見つからなくても、遺産分割は非常に大変なことになります。ですから、このようなケースでは必ず遺言を残しておくべきです。遺言があれば、音信不通の子を除いた状態で相続手続を進めていくことができます。残された相続人のためにも遺言を書いておきましょう。

(マメ知識)失踪宣告
映画やドラマなどにたまに登場する失踪宣告という制度があります。生死不明で音信不通の状態が7年以上続いた場合、失踪宣告を使うことによって、法的に死亡したとみなされる制度です。
音信不通が7年以上ならば不在者財産管理人ではなく失踪宣告を利用するのが一般的です。

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10月 06 2020

遺言が無くてトラブルになりやすい事例(4) 遺言(22)

今回は、遺言が無いためにトラブルになりやすい事例の四つ目のお話です。

割と良くあるケースで、持ち家があり、亡くなった人と同居していた相続人と別居の相続人がいる場合です。遺産分割で揉めることが多いケースです。

なぜ揉めることが多いかと言うと、同居の相続人は同じ家に住み続けたいが、別居の相続人は「家はいらないから相続分の金銭が欲しい」と言ってくる場合が多いからです。

特に不動産以外の預貯金財産があまり多くない場合には非常にトラブルになりやすいです。預貯金は簡単に分けられますが、不動産はそうはいかないからです。

預貯金が多ければ、不動産を誰か一人が相続しても、その分預貯金の相続を減らせば他の相続人は納得してくれるでしょう。しかし、遺産の大部分が不動産ということになると、不動産を売らない限り相続人全員に分配できないということが起こります。
こうなると今まで通り同じ家に住みたいという相続人と利害が対立しますので、なかなか遺産分割協議がまとまらなくなります。

同居している相続人に老後の介護などで世話になっている場合は、同居の相続人が同じ家に住み続けられるように遺言を残してあげるべきだと、私は個人的には思います。
一生懸命故人を介護していたのに、亡くなった途端に他の相続人から「家を売れ」と言われるのは、あまりにも可哀そうだと思うからです。

(マメ知識)配偶者居住権
相続法が改正されて新たに配偶者居住権という権利ができました。
これにより配偶者は相続が発生した後も住み慣れた家に住み続けられる可能性が高くなりました。ただし、この制度は配偶者だけに認められたものなので、同居の子については同様の問題が起こることになります。

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