司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

11月 19th, 2007

11月 19 2007

任意整理の分割払い

 取引期間が7年以上の長期にわたる人は過払いの可能性があります。うまく、過払いになっていれば後は取り戻すだけですから依頼した人にとっては、メデタシメデタシで、あまり問題はおきません。しいて問題になる可能性はクレディアのように破綻した時くらいです。

ところが、取引期間が短かったり、あるいは取引期間が長くても過払いにならなかったりした時(取引の仕方によっては、こういうケースもあります)は、分割払いの交渉を成立させなければなりません。実は、これが最近やっかいになってきているのです。

主要な消費者金融(武富士・アコム・プロミス・アイフル・GEコンシューマー・CFJなど)やクレジット会社の場合は、今まで通り分割払いに応じてくれる場合が多いのですが、中堅以下の消費者金融業者では、だんだん分割払いに対して厳しいことを言うようになってきています。

中堅以下の業者は今や、いつ倒産してもおかしくないと言われていますので、我が身の事情も影響しているのでしょう。分割払いの交渉の時に「分割にするなら将来の利息もつけてくれ、つけてくれないなら和解に応じない。」と言ってくるようになってきています。

任意整理と言えば「将来利息のカット」は、今までは常識でした。しかし実は法的な根拠は無いのです。もし、業者が訴訟をしてきたら債務者が不利なのです。「生活が困窮している債務者に将来利息の支払は無理だから」という理由で、一種の紳士協定のような習慣となってきたものでした。

業者自体が倒産するかもしれないという状況に陥って、紳士協定を破る業者が増えてきた訳です。

これは重大な問題です。最後の手段としては特定調停があります。最近、特定調停に回して成功したという事例を聞きましたから、業者もそこまでやれば応じるということなのでしょうか。

いずれにしても、今後は分割払いの時は注意する必要があるでしょう。

 

11月 19 2007

最近の状況

 債務整理の業務を行なってきて随分と時間が経ちました。その間に、いろいろと状況が変化してきました。今回は、私が行なってきた業務を少し振り返ってみたいと思います。

私が開業した頃は、まだ債務整理と言えば「自己破産」という考えが主流でした。ようやく「特定調停」や「個人再生」という、自己破産とは違う手続が整備されてきたところでしたが、まだポピュラーなものではありませんでした。相談の時に、自己破産以外の方法が使えるかもしれないと伝えると、相談に来た人は大抵驚いた顔をしていたものです。

ましてや「過払い」などと言う言葉を知っている人も皆無でした。その頃は、司法書士や弁護士ですら、過払金の取り戻しについて詳しく知らない人が多かったのです。業者も今よりずっと過払金の支払いに抵抗していましたから、満額取れるケースは少なく元金の7割とか8割で和解することも珍しくありませんでした。

その頃は債務整理を専門に打ち出す司法書士は、愛知県には、ほとんどいませんでした。手前みそになりますが、愛知県で債務整理中心のホームページを立ち上げたのは、私が初めてだと思います。

それから、二つの大きな変化が訪れます。

一つは司法書士に簡裁代理権が与えられたことです。今でこそ当たり前になりましたが、昔は司法書士には任意整理を行なう資格が無かったのです。従って任意整理を司法書士がやり始めたのは、ごく最近のことなのです。

もう一つの大きな変化は、最高裁判所の画期的な判決が、ここ3年位の間に立て続けに出たことです。

これらの判決により過払金の返還請求が飛躍的に有利になりました。それとともに、「過払い」という言葉もポピュラーになり、今では過払いを見逃したら司法書士や弁護士の責任問題に発展します。

この二つの変化により、状況は劇的に変わりました。債務整理の仕事の大半は「任意整理」と「過払金請求」になり、「自己破産」と「個人再生」が急激に減少したのです。

最近になって開業した事務所の中には、開業以来、「自己破産」と「個人再生」は受けていないという事務所もあると聞きます。

しかし、こういう状況は重大な問題を、はらんでいます。要するに「自己破産」や「個人再生」の経験をつんでいない司法書士が増えてしまったということです。

それに対して、貸金業法が改正されてグレーゾーン金利が無くなることが決定しましたから、今後は「任意整理」と「過払金請求」が減ってくることは明らかです。

逆に増えることが予想されているのが「自己破産」と「個人再生」です。総量規制が始まると貸し出し基準が厳しくなり、返済の為の借入が出来なくなりますから行き詰まる人が増えてきます。金利水準は大手を中心に下がっていますから、利息制限法の利率に引き直しても支払えない場合が多くなります。住宅ローンの金利も先行き不透明で、今後金利が上昇した場合、支払いが厳しくなるケースが出てくる可能性もあります。

これらのことを考え合わせると今後は「自己破産」と「個人再生」が増えるだろうと容易に予想がつきます。しかし、あまりにも一時的に「任意整理」と「過払金請求」が増えすぎてしまった為に、技術的な経験が蓄積されていない司法書士が現場の仕事に携わるようになったことは新たな問題と言えるでしょう。

これから移り変わる状況に対して、司法書士業界が、うまく対応していけるのかどうか、司法書士業界全体の課題になるでしょう。

 

11月 19 2007

時効について

 今回は時効についての、お話です。債務整理で注意しなければならない時効は二つあります。

一つは残っている借金の時効、二つ目は過払金請求権の時効です。それぞれについてコメントしましょう。

まず、残っている借金(利息制限法の利率に引き直しても、残っている場合のことです)は、いつから消滅するのでしょうか。これは相手方が貸金業者の場合は5年で消滅時効にかかると法律で決められています。相手方が一般人の場合は10年なのですが、貸金業者との取引は通常よりも短い時効期間となっているのです。

では、5年経てば、どんな場合でも時効により消滅するのでしょうか。残念ながら、いくつかの条件を満たす必要があります。

その条件とは、①5年の間、一度も返済していない。もちろん借りてもいない。(たとえ、10円でも本人の意思で返済した事実があっったら条件を満たしません)②5年の間、貸金業者から訴訟をされたり、裁判所からの支払督促を受けていない。(裁判所を通さない、ただの貸金業者からの請求は含まれません)

以上のような条件を満たして5年経っていれば、借金は時効により消滅している可能性が高いでしょう。しかし、時効には最後に、もう一つ忘れてはならない大事なことがあります。

それは、本人が時効を援用する(法律用語で「本人が時効だから払わないと相手方に主張する」ことを言います)必要があるのです。要は何も言わないで黙っていたら、借金を請求されても文句は言えないということです。5年経ったら自動的に消滅する訳ではありません。

次に過払金請求権の時効について考えてみましょう。過払金請求権が時効消滅する期間は10年です。

要は完済してから10年を超えてしまったら過払金の回収が出来なくなる可能性がある訳です。もし、もう少しで10年になりそうだと言う人がいたら、早急に専門家に相談に行くことを、おすすめします。

時効期間経過前に過払訴訟を提起すれば時効は中断されます。例え1日でも期間を超えていなければOKですから、ぎりぎりの人がいたら急いだ方が良いでしょう。