司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

7月 12th, 2013

7月 12 2013

未成年の契約

学習塾はもちろんのこと、英会話教室・音楽教室・スポーツ教室などでも、未成年の子供を主な顧客としている教室は少なくありません。すると、未成年の契約という問題が発生することが、たまに見られます。

まあ、小学生ではあまり無いとは思いますが、中学生や高校生が対象の教室の場合、生徒本人が申込書を持って入塾あるいは入会の受付を済ませるということが起こる場合が、まれにあるようです。

最初に結論から言うと、このような申込は、教室側から考えた場合、絶対に避けなければいけません。何故なら、未成年者との契約になってしまい、後で親から取消の請求をされる恐れがあるからです。しかも、この取消請求、法律的には圧倒的に教室側が不利です。仮に裁判で争っても、負ける可能性が極めて高いです。

教室によっては、受付にアルバイトしか置いていないところもあります。そういう場合は、よほど指導を徹底しておかないと、書類一式そろっていたら申込みを受け付けてしまうかもしれません。きちんとマニュアル化して、「未成年者の申込みは受け付けない」ということを周知徹底しておく必要があります。

ただし、申込書に親の署名と印鑑が押されていれば、申込の主体は親だと考えられますので、子供は単なるメッセンジャーとして申込書を運んできたことになり、受け付けてもトラブルは少ないでしょう。(でもゼロではありません。トラブルを完全に無くす為には、一度は親に来てもらって意思確認をするのが万全です。最低でも電話確認ぐらいはしておくことを、おすすめします)

一方、法律では、未成年であることをわざと隠して、相手を錯覚させて契約をした場合は取消が出来ない、とも定めています。他にも、実際には親の同意が無いのに、親の同意があるとウソをついてした契約も同様に取消が出来ません。これは、詐欺をはたらいたのと同じ行為を法律で保護するのは妥当ではないという考え方からきています。未成年だからといって、必ず取り消せる訳ではないということです。

もう一つ覚えておきたい規定に「追認」があります。
追認とは、仮に未成年者の契約であっても、後から親が認めたら、その後の取消しは出来なくなります。親が認めた時点で有効な契約として確定するということです。

実は、この追認が様々なシチュエーションが考えられる為、よく問題となります。
例えば、未成年者が勝手に契約をして(この時点では取消可能な契約です)、後から親が、契約の内容について長々と文句を言ってきた場合、「追認があった」と判断される可能性があります。(あくまで可能性です。必ず、そうなる訳ではありません)

これは、「契約の内容に文句を言うということは、契約を結んだこと自体は認めているということだろう。」と裁判所で判断される可能性があるからです。従って、もし親が取り消すつもりなら、ただ一言、「私が知らない間に勝手に子供がしたことです。だから取り消します。」でいいのです。余分なことを言うと、かえって墓穴を掘ることになります。

他には、未成年の契約の後に教室が授業料の請求をした時に、親が「今は払えません」と答えたら、これは立派な追認です。今は払えないという答えは、教室の授業なりレッスンなりを受けることが前提となっているからです。

例を挙げていくと、きりがありませんので、このくらいにしておきますが、ようは追認と言っても、色々なパターンがあるということです。教室経営者の皆さんは参考にして下さい。