司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

8月 1st, 2013

8月 01 2013

訴訟をしないで立ち退いてもらう方法

家賃の滞納が3ヶ月以上になると、大家さんとしては出て行ってもらうことも考えるようになるでしょう。しかし、日本の法律では借主は保護されていて、大家さんが強制的に立ち退かせると違法になってしまいます。出て行ってもらう為には建物明渡訴訟を起こして裁判所の力で立ち退かせるのが正式なやり方です。

ですが、建物明渡訴訟は時間も費用もかかりますので、抵抗がある場合は借主と交渉することになります。場合によっては訴訟をするよりも、滞納分を帳消しにする代わりに自主的に出て行ってもらう方が安くつくこともありえます。まあ大家さんからしたら理不尽に思えるかもしれませんが、合理的に損得で考えた方が、うまくいく場合もあるのです。

しかし、上記のような交渉が成立したとしても注意すべき点があります。それは、「借主が約束どおり本当に出て行ってくれるのか」、という点です。

人の良い大家さんだと口約束で済ませてしまうかもしれませんが、これは絶対におすすめしません。何しろ、長期間家賃を滞納するような借主なのです。約束を守らない可能性は充分にあると考えるべきでしょう。守らなかった時に口約束では、どうにもなりません。

また、慎重に覚書などを書いてもらう方法がありますが、仮に書いてもらったとしても、借主が守らなかった時は、結局、その覚書に基づいて訴訟をやることになります。訴訟で判決が出るまでは何も出来ません。固い方法だと思いきや、実は結果は、あまり変わらないのです。(とは言っても、口約束よりは証拠がしっかりしている分、マシなのは確かです)

では、どのような方法が大家さんにとってベストなのかと言うと、即決和解という手続を使うことです。

即決和解とは、あらかじめ双方の合意が出来ている場合、後で合意内容を蒸し返されないように、裁判所に行って即決和解の調書を作成してもらう手続のことを言います。

この調書を作成してもらうと、非常に強力な切り札になります。何と、この調書があれば、借主が約束を守らなかった場合、訴訟をしなくても立ち退きの強制執行を裁判所に申し立てることが可能なのです。この「訴訟をしなくても」という所がポイントです。

ここまで読んで法律に詳しい人だと、「何だ、それなら公正証書と同じじゃないか。公正証書じゃだめなのか?」という疑問を持たれるかもしれません。

実は、強制執行が可能な公正証書には、「金銭の給付を目的とする権利関係に限る」というルールがあるのです。ようするに「AさんからBさんにお金を払え」、というような内容でないと上記の公正証書は作れないのです。

建物からの立ち退きは、金銭の給付を目的とはしていませんので、この内容では公正証書は作れません。こういう場合は、先ほど紹介した即決和解という方法をとるしかありません。

即決和解のご説明は以上です。任意交渉や裁判手続に自信が無い場合は、専門家にご相談下さい。