7月
29
2013
賃貸アパートの大家さんが、知り合いに無償で部屋を貸していたとします。これを法律用語では「使用貸借契約」と呼びます。では、この知り合いとの間に何らかのトラブルがあって(アパートの使用に関するトラブルではないと仮定します)、関係が悪くなったため、「もう無償で部屋を貸したくない、出て行ってもらいたい」と大家さんが考えた場合、どうなるのでしょうか。
最初に、「アパートの使用に関するトラブルではない」とことわったのには理由があります。アパートの使用に関するトラブルならば、これを理由に契約を解除して退去してもらえる可能性が高いからです。今回、取り上げたいのは、アパートの使用に問題が無かった場合、出て行ってもらうことは可能なのか、ということです。
この場合、二つの点が問題になります。一つは契約の段階で、使用期限が定められていた場合です。もう一つは、借りる時の利用目的が具体的に決められていた場合です。
使用期限が定められていた場合なら、相手がアパートをトラブルなく利用している限り、期限が来るまでは退去してもらうのは難しいでしょう。使用期限まで利用する権利が相手方にもあるからです。
また、具体的な利用目的が定められていた場合は、その目的が達成された段階で退去してもらうことが可能となります。ちなみに、「住むところを確保する」というのは具体的な目的とは認められません。従って、アパートの1室の場合は、通常、これに当てはまるケースは多くないでしょう。一般的には、土地の使用貸借の場合に、具体的な利用目的が定められている場合が多いと思います。
使用貸借は親類や友人などの近い関係の人と交わされることの多い契約ですから、契約書を作成せずに口約束のことも多いと思います。特に使用期限や目的も決めずに利用が始まることも珍しくありません。その場合、法律では、「貸主は、いつでも使用貸借を解除して返還を請求することが出来る」となっています。
仮に契約書が作成されていても、その契約書に使用期限や具体的な利用目的が書かれていなかったら、やはり、いつでも返還を請求できます。
もちろん法律上、返還を請求できるからと言って、借主が素直に出て行ってくれるとは限りません。そういう時は迷わず法律家に相談しましょう。
7月
24
2013
最近では、自宅が夫婦の共有名義になっている場合も珍しくありません。この場合、夫が住宅ローンを滞納したら妻にも支払義務はあるのかという質問を、たまに受けます。
一見、共有名義になっているんだから妻にも支払義務はあるように考える人も多いのですが、実は共有か単独かは支払義務には関係ありません。大切なのは住宅ローン契約書の債務者または保証人の欄に妻の名前が書かれているかどうかです。
一般的には共有の場合、妻も連帯債務者として名前が書かれている場合が多いかと思いますが、必ずという訳ではありません。もし、妻の名前が債務者にも保証人にも登場していなかったら、妻には支払義務は発生しません。
ならば、妻は何も心配がいらないかというと、夫の滞納が長引いた場合、自宅が競売か任意売却となり、共有不動産を失うというデメリットは当然あります。
この場合、法律上は妻は物上保証人という立場になります。物上保証人とは他人の債務の担保としては財産を提供することを言います。この場合、妻は共有不動産という財産を、夫の債務の担保として提供したことになります。物上保証人は債務者ではありませんので、債務の支払義務はありません。ただ、担保として提供した物を失うだけです。
では妻は失った分は、あきらめなければならないのでしょうか。
法律上は、夫の債務を妻の不動産で支払った形になりますから、夫に対して請求権があります。これを求償権と言います。ただし現実には、住宅ローンを滞納する事態になったということは、夫に支払能力は無いのが実情でしょう。従って、あきらめるケースが大半だと思います。むしろ、それ以上の支払義務が無かったことを喜ぶべきでしょう。
以上は、あくまで法律上の話です。実際には、夫婦の問題ですから、協力して解決される方が多いです。
7月
19
2013
滞納にもいろいろありますが、その中でも税金の滞納は非常に特殊なルールが適用されます。いくつか、ご紹介しましょう。
まず税金は、たとえ自己破産しても消滅することはありません。ということは、税金とは物理的に支払いが不可能になったとしても逃れることは出来ないという恐ろしい性質を持っているのです。
と言っても、現実に収入も財産も無い人からは税務署も、取立てをあきらめるしかありません。ただ、それで滞納税金が無くなった訳ではないということです。もし、後に成功して支払い能力がある状態になったら、再び請求される可能性はあります。その時には延滞税という遅延損害金のような金額が、たっぷりと加算されていることでしょう。(ただし税金にも時効はあります)
ですから、税金を支払いの後回しにするのは得策ではありません。税金は最初に支払っておきましょう。
他には、税務署は裁判手続を経ることなく、税金の差押さえをすることが出来ます。これを法律用語で滞納処分と言います。
裁判もやらないで、いきなり差押さえが出来る訳ですから、これは強力な権限です。「税務署はサラ金より怖い」と言われる所以です。知らないうちに不動産登記簿に差押さえの登記が入っていたとか、銀行口座が凍結されたとか、充分に起こりうる事態です。
あと、本当に生活が苦しい人が税金の減額を受けられるか、という質問を良く受けますが、原則としては受けられません。何故なら、例え今は払えなかったとしても、請求されている税金は収入があった時に発生しているものだからです。本当に収入が無い人は、消費税などの間接税以外は、そもそも税金が発生していないはずです。
すると、もし減額したら、収入があった時に税金分を取っておいて支払った人との間に不公平が生じてしまいます。サラリーマンの源泉徴収は、これにあたります。たいていは多めに天引きされていて、年末調整で戻ってくるパターンです。
しかし、実際には、債務整理などの仕事をしていると、「税務署から電話がかかってきて、これから自己破産する旨を伝えたら税金をまけてくれた」という話をたまに聞くのは事実です。これは担当者の裁量でやっているものと思われます。ですから、人事異動などで途中で担当者が変わったら再び請求されるかもしれません。
7月
17
2013
以前、名古屋本庁の再生係の取り扱いが変化して再生委員が選任される確率が低くなり、債務者にとっては申立がし易くなったという話をしました。今回は、その続きです。何と更に、債務者にとっては良い方向に変化しているのです。
今までは、たとえ再生委員が選任されなかったとしても、裁判官との直接面談が行われていました。再生委員が選任された場合は通常2回面談がありますが、選任されない場合は裁判官との面談が1回となっていました。
面談回数が1回に減るわけですから、もちろん再生委員が選任される時よりは負担が少ないのですが、それでも1回は裁判所に行かなくてはなりません。
ところが最近は、この裁判官との1回の面談すら省略されるケースが増えてきました。この場合、一度も裁判所に行くことなく書類審査だけで済んでしまうのです。
実は、三河や岐阜・三重などでは以前から面談は無く書類審査だけだったのですが、最近の名古屋本庁は同様の取り扱いになってきているのです。
裁判所という組織は、以前にも説明したように、人事異動などで取り扱いが急に変化したりします。この取り扱いも、いつまで続くか分かりません。
そう考えると、まさに今は名古屋市およびその周辺で個人再生を検討している人にとって、またとないチャンスと言えると思います。取り扱いが大きく変わる前に相談に行かれることを、おすすめします。
より詳しい情報を知りたい方は以下をクリック
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7月
12
2013
学習塾はもちろんのこと、英会話教室・音楽教室・スポーツ教室などでも、未成年の子供を主な顧客としている教室は少なくありません。すると、未成年の契約という問題が発生することが、たまに見られます。
まあ、小学生ではあまり無いとは思いますが、中学生や高校生が対象の教室の場合、生徒本人が申込書を持って入塾あるいは入会の受付を済ませるということが起こる場合が、まれにあるようです。
最初に結論から言うと、このような申込は、教室側から考えた場合、絶対に避けなければいけません。何故なら、未成年者との契約になってしまい、後で親から取消の請求をされる恐れがあるからです。しかも、この取消請求、法律的には圧倒的に教室側が不利です。仮に裁判で争っても、負ける可能性が極めて高いです。
教室によっては、受付にアルバイトしか置いていないところもあります。そういう場合は、よほど指導を徹底しておかないと、書類一式そろっていたら申込みを受け付けてしまうかもしれません。きちんとマニュアル化して、「未成年者の申込みは受け付けない」ということを周知徹底しておく必要があります。
ただし、申込書に親の署名と印鑑が押されていれば、申込の主体は親だと考えられますので、子供は単なるメッセンジャーとして申込書を運んできたことになり、受け付けてもトラブルは少ないでしょう。(でもゼロではありません。トラブルを完全に無くす為には、一度は親に来てもらって意思確認をするのが万全です。最低でも電話確認ぐらいはしておくことを、おすすめします)
一方、法律では、未成年であることをわざと隠して、相手を錯覚させて契約をした場合は取消が出来ない、とも定めています。他にも、実際には親の同意が無いのに、親の同意があるとウソをついてした契約も同様に取消が出来ません。これは、詐欺をはたらいたのと同じ行為を法律で保護するのは妥当ではないという考え方からきています。未成年だからといって、必ず取り消せる訳ではないということです。
もう一つ覚えておきたい規定に「追認」があります。
追認とは、仮に未成年者の契約であっても、後から親が認めたら、その後の取消しは出来なくなります。親が認めた時点で有効な契約として確定するということです。
実は、この追認が様々なシチュエーションが考えられる為、よく問題となります。
例えば、未成年者が勝手に契約をして(この時点では取消可能な契約です)、後から親が、契約の内容について長々と文句を言ってきた場合、「追認があった」と判断される可能性があります。(あくまで可能性です。必ず、そうなる訳ではありません)
これは、「契約の内容に文句を言うということは、契約を結んだこと自体は認めているということだろう。」と裁判所で判断される可能性があるからです。従って、もし親が取り消すつもりなら、ただ一言、「私が知らない間に勝手に子供がしたことです。だから取り消します。」でいいのです。余分なことを言うと、かえって墓穴を掘ることになります。
他には、未成年の契約の後に教室が授業料の請求をした時に、親が「今は払えません」と答えたら、これは立派な追認です。今は払えないという答えは、教室の授業なりレッスンなりを受けることが前提となっているからです。
例を挙げていくと、きりがありませんので、このくらいにしておきますが、ようは追認と言っても、色々なパターンがあるということです。教室経営者の皆さんは参考にして下さい。
7月
08
2013
「ゆとり返済」またはステップ返済と呼ばれる住宅ローンの返済方法があります。かなり有名な返済方法で利用している人も多いと思います。しかし、事務所に相談に来られる人の中には、この「ゆとり返済」を利用している人が実は大勢います。
ゆとり返済とは、住宅ローンを組んだ最初の数年は支払額を低く抑えていて、途中から返済額がアップするというタイプのローンです。最初の支払額が低いので抵抗感が少なく、また住宅を販売するセールスマンの側からしても、顧客にすすめやすいので、結果的にたくさんの人が利用しています。しかし、このローンには致命的な欠陥があります。
それは、将来の給与アップがローンの前提になっていることです。そもそも、数年後には支払額が上がることが決まっている訳ですから、収入が増えることをあてにしていなければ、ローンの仕組自体が成り立ちません。しかし、現在は、右肩上がりで給与が増えることを期待できる時代ではなくなりました。それが、このローンを抱えた相談者が増える原因です。
多くの人にとって住宅は手放したくない最後の砦ですから、ローンの支払額がアップする時期になると、まずは奥様が働きに出たりして何とか収入を増やそうとします。これで、上手くカバー出来れば良いのですが、それでも足りない場合、あるいは幼い子供を抱えていて思うようには働けない場合は、消費者金融やクレジットカードからの借金に頼って、何とかしのごうとされることが多いのです。
最初はすぐに返済するつもりの、これらの借金が、いつしか日常的なものになり、借入額も膨らんで、気がついた時には、とても返済できない金額になっている、こんなパターンの相談が多いのが現実です。
それでも定期的な収入があるサラリーマンの方なら、あきらめるのは早いです。住宅ローン特則を付けて個人再生を行えば、住宅を維持したまま他の借金だけを減らすことが可能です。まずは検討してみましょう。
他には、ボーナス払いの割合が多い住宅ローンも同様に相談が多い事例です。
これも最近の経済情勢を反映して、ボーナスがカットされてしまう人が増加していたからです。ようやく政権が変わって景気も上向き始め、ボーナスの支払いも増えているところも出始めたようですが、まだまだ全体に波及するには時間がかかりそうです。
ボーナス払いの住宅ローンは、月当たりの支払額を低額に抑える代わりにボーナス時の支払額を高額に設定してあります。ボーナス時期に10万円以上は普通ですし、中には20万円以上の支払いになっている人もいます。
こんな設定で、ボーナスがカットされてしまったら、途端に苦しくなるのは当たり前で、ゆとり返済の時と同じように、ボーナス時期に消費者金融やクレジットカードから借りてしまい、それがきっかけとなって借入が習慣化して、最後には返済できないほどに借金が膨らんで、事務所に相談に来られるというのが典型的なパターンになります。
比べてみると、ゆとり返済とボーナス払いから、事務所への相談に至る過程は非常に似ていることが分かるでしょう。
ですから、ボーナス払いの時の解決方法も同じように、住宅ローン特則を付けた個人再生が有効な場合が多いです。あきらめる前に専門家に相談しましょう。
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7月
04
2013
各種の教室で授業料の未払い問題が発生している中で、未払いが発生する最も多い原因が、授業料を後払いにしていることです。
月謝制にしろ、チケット制にしろ、授業料は絶対に前払いにすべきです。前払いにしていれば、未払いが発覚した時点で、授業の参加を断ることが出来ます。しかし、後払いでは、受けてしまった授業は品物ではなくてサービスなので、後で返してもらうことは出来ません。このようにサービス業においては、返品という概念が存在しないため、トラブルを防ぐためには前払いにするしかありません。
もちろん、前払いにしても未払いは発生します。様々な事情で受講を断ることが出来ない場合も存在するからです。例えば、今まで何人もの生徒を紹介してくれた人からの紹介で入った生徒の中に未払者が出てしまった場合は、紹介者の顔をつぶしてしまいますから断りにくいでしょう。
だからと言って放置してしまうと、他の生徒に知れた時に大きく評判を落としますから非常に難しい問題です。やはり、こういう時は、先に紹介者に未払いの事情を詳しく説明した上で、了解をとって回収に動くことをおすすめします。
他には、経営者が人が良すぎたり、相手の言うことを信用しすぎたりした時にも未払いは発生しやすくなります。何故なら、最初から開き直って支払わない人は少数派で、最も多いのは、会うたびに「次は支払います」、「分割なら払います」という人だからです。
このような人の良い経営者の場合、恐らく督促の段階でも厳しくすることは苦手でしょうから、ストレスをためて本業に影響が出ないように、全ての回収を法律家に任せてしまう方が良いかもしれません。
7月
02
2013
「総量規制」が始まって約3年が経過しました。これは通称3分の1規制とも呼ばれていて、年収の3分の1以上の借入に対してストップをかけるものです。
ところが、この総量規制には明らかな抜け穴がありました。全ての金融機関が対象になっている訳ではないというところです。具体的には、クレジットカードのショッピング(キャッシングは総量規制の対象です)、そして銀行ローンです。
そこで一時期、総量規制で借りられなくなった人が、クレジットのショッピングを利用して取込詐欺をしてしまう例が後を絶ちませんでした。
取込詐欺とは、詐欺業者の言われるままに指定された商品を(パソコンやゲーム機などが多い)クレジットで購入し、その商品を業者に買い取ってもらうことでお金を得るシステムです。
名目上は、クレジットのショッピングになりますので、総量規制にはひっかからずにお金を工面することが出来ますので、一時的に非常に流行りました。しかし、買取価格は二束三文ですし、後ほど商品の代金が請求されますので、結局は支払不能に陥ってしまいます。
また、支払不能になった後、いざ自己破産などをしようとすると、詐欺行為として裁判所から追求される可能性もあり、破産にも影響が出るかもしれません。こういう場合は、あくまで業者に言われるままにやったことで、本人は被害者であるということを裁判所に訴えていきますが、それでも、裁判所が慎重になるようなことは、やらないに越したことはありません。
最近は、上記のようなことも知られてきて、少なくはなってきていますが、完全には無くなっていないようなので、注意しましょう。
あと、もう一つの総量規制対象外である銀行ローンが最近、増加傾向にあります。銀行ローンと言っても、最近多いのは個人向けの無担保ローンです。ようするに、昔、消費者金融がやっていた無担保ローンを最近では銀行が積極的に行っているのです。まさに総量規制によって消費者金融の市場が縮小したところを銀行がさらっていったような形になってきています。
例えば、新生銀行は新生フィナンシャルという消費者金融を傘下に抱えています。新生フィナンシャルは旧レイクという消費者金融で、今でもレイクという名前は商品名として残っています。コマーシャルを見た人も多いでしょう。
ところが、最近では、新生フィナンシャルは消費者金融なので総量規制に引っかかってしまいますので、貸出が伸びていません。経営的にも苦しいと言われています。そこで、銀行が考えたのが、新生フィナンシャルのATMなどの無人店舗を新生銀行に譲渡してしまって銀行のものにしてしまい、銀行ローンとして貸し出していくということです。これなら、総量規制は気にする必要は無くなります。何とレイクという商品名まで銀行がそのまま使用しているのです。
結局、最近の自己破産や個人再生の相談を受けていると、銀行ローンから借りている人が目立つようになってきています。これでは、総量規制など、あまり意味が無かったのではないか、かえって一時的に混乱させただけではないかと思わざるを得ません。
私はもともと、利率の引き下げには賛成でしたが、総量規制には反対でしたから、こんな政府が民間の貸出の量まで口出しをして規制するなんてことは、共産主義ではあるまいし、やはり無理があったのではないかと思っています。
PS
これはあくまで私の勝手な仮説ですが、ひょっとして財務省の頭のいい役人が、「消費者金融は儲けすぎだ。消費者金融の儲けを、我らの天下り先である銀行に移してしまえ。」と考えたとしたら、そのたくらみは見事に成功したということになりますね。もちろん仮設であって何か証拠がある訳ではありませんが、結果的にあまりにも銀行が得をする状況になっているので、こういう考えも浮かんでしまいます。