司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

7月 19 2013

税金の滞納について

滞納にもいろいろありますが、その中でも税金の滞納は非常に特殊なルールが適用されます。いくつか、ご紹介しましょう。

まず税金は、たとえ自己破産しても消滅することはありません。ということは、税金とは物理的に支払いが不可能になったとしても逃れることは出来ないという恐ろしい性質を持っているのです。

と言っても、現実に収入も財産も無い人からは税務署も、取立てをあきらめるしかありません。ただ、それで滞納税金が無くなった訳ではないということです。もし、後に成功して支払い能力がある状態になったら、再び請求される可能性はあります。その時には延滞税という遅延損害金のような金額が、たっぷりと加算されていることでしょう。(ただし税金にも時効はあります)

ですから、税金を支払いの後回しにするのは得策ではありません。税金は最初に支払っておきましょう。

他には、税務署は裁判手続を経ることなく、税金の差押さえをすることが出来ます。これを法律用語で滞納処分と言います。

裁判もやらないで、いきなり差押さえが出来る訳ですから、これは強力な権限です。「税務署はサラ金より怖い」と言われる所以です。知らないうちに不動産登記簿に差押さえの登記が入っていたとか、銀行口座が凍結されたとか、充分に起こりうる事態です。

あと、本当に生活が苦しい人が税金の減額を受けられるか、という質問を良く受けますが、原則としては受けられません。何故なら、例え今は払えなかったとしても、請求されている税金は収入があった時に発生しているものだからです。本当に収入が無い人は、消費税などの間接税以外は、そもそも税金が発生していないはずです。

すると、もし減額したら、収入があった時に税金分を取っておいて支払った人との間に不公平が生じてしまいます。サラリーマンの源泉徴収は、これにあたります。たいていは多めに天引きされていて、年末調整で戻ってくるパターンです。

しかし、実際には、債務整理などの仕事をしていると、「税務署から電話がかかってきて、これから自己破産する旨を伝えたら税金をまけてくれた」という話をたまに聞くのは事実です。これは担当者の裁量でやっているものと思われます。ですから、人事異動などで途中で担当者が変わったら再び請求されるかもしれません。

7月 17 2013

名古屋本庁の個人再生事件の取り扱いの変化②

以前、名古屋本庁の再生係の取り扱いが変化して再生委員が選任される確率が低くなり、債務者にとっては申立がし易くなったという話をしました。今回は、その続きです。何と更に、債務者にとっては良い方向に変化しているのです。

今までは、たとえ再生委員が選任されなかったとしても、裁判官との直接面談が行われていました。再生委員が選任された場合は通常2回面談がありますが、選任されない場合は裁判官との面談が1回となっていました。

面談回数が1回に減るわけですから、もちろん再生委員が選任される時よりは負担が少ないのですが、それでも1回は裁判所に行かなくてはなりません。

ところが最近は、この裁判官との1回の面談すら省略されるケースが増えてきました。この場合、一度も裁判所に行くことなく書類審査だけで済んでしまうのです。

実は、三河や岐阜・三重などでは以前から面談は無く書類審査だけだったのですが、最近の名古屋本庁は同様の取り扱いになってきているのです。

裁判所という組織は、以前にも説明したように、人事異動などで取り扱いが急に変化したりします。この取り扱いも、いつまで続くか分かりません。

そう考えると、まさに今は名古屋市およびその周辺で個人再生を検討している人にとって、またとないチャンスと言えると思います。取り扱いが大きく変わる前に相談に行かれることを、おすすめします。

より詳しい情報を知りたい方は以下をクリック

http://www.hashiho.com/debt/kojinsaisei/

7月 12 2013

未成年の契約

学習塾はもちろんのこと、英会話教室・音楽教室・スポーツ教室などでも、未成年の子供を主な顧客としている教室は少なくありません。すると、未成年の契約という問題が発生することが、たまに見られます。

まあ、小学生ではあまり無いとは思いますが、中学生や高校生が対象の教室の場合、生徒本人が申込書を持って入塾あるいは入会の受付を済ませるということが起こる場合が、まれにあるようです。

最初に結論から言うと、このような申込は、教室側から考えた場合、絶対に避けなければいけません。何故なら、未成年者との契約になってしまい、後で親から取消の請求をされる恐れがあるからです。しかも、この取消請求、法律的には圧倒的に教室側が不利です。仮に裁判で争っても、負ける可能性が極めて高いです。

教室によっては、受付にアルバイトしか置いていないところもあります。そういう場合は、よほど指導を徹底しておかないと、書類一式そろっていたら申込みを受け付けてしまうかもしれません。きちんとマニュアル化して、「未成年者の申込みは受け付けない」ということを周知徹底しておく必要があります。

ただし、申込書に親の署名と印鑑が押されていれば、申込の主体は親だと考えられますので、子供は単なるメッセンジャーとして申込書を運んできたことになり、受け付けてもトラブルは少ないでしょう。(でもゼロではありません。トラブルを完全に無くす為には、一度は親に来てもらって意思確認をするのが万全です。最低でも電話確認ぐらいはしておくことを、おすすめします)

一方、法律では、未成年であることをわざと隠して、相手を錯覚させて契約をした場合は取消が出来ない、とも定めています。他にも、実際には親の同意が無いのに、親の同意があるとウソをついてした契約も同様に取消が出来ません。これは、詐欺をはたらいたのと同じ行為を法律で保護するのは妥当ではないという考え方からきています。未成年だからといって、必ず取り消せる訳ではないということです。

もう一つ覚えておきたい規定に「追認」があります。
追認とは、仮に未成年者の契約であっても、後から親が認めたら、その後の取消しは出来なくなります。親が認めた時点で有効な契約として確定するということです。

実は、この追認が様々なシチュエーションが考えられる為、よく問題となります。
例えば、未成年者が勝手に契約をして(この時点では取消可能な契約です)、後から親が、契約の内容について長々と文句を言ってきた場合、「追認があった」と判断される可能性があります。(あくまで可能性です。必ず、そうなる訳ではありません)

これは、「契約の内容に文句を言うということは、契約を結んだこと自体は認めているということだろう。」と裁判所で判断される可能性があるからです。従って、もし親が取り消すつもりなら、ただ一言、「私が知らない間に勝手に子供がしたことです。だから取り消します。」でいいのです。余分なことを言うと、かえって墓穴を掘ることになります。

他には、未成年の契約の後に教室が授業料の請求をした時に、親が「今は払えません」と答えたら、これは立派な追認です。今は払えないという答えは、教室の授業なりレッスンなりを受けることが前提となっているからです。

例を挙げていくと、きりがありませんので、このくらいにしておきますが、ようは追認と言っても、色々なパターンがあるということです。教室経営者の皆さんは参考にして下さい。

7月 08 2013

「ゆとり返済」と「ボーナス払い」の問題点

「ゆとり返済」またはステップ返済と呼ばれる住宅ローンの返済方法があります。かなり有名な返済方法で利用している人も多いと思います。しかし、事務所に相談に来られる人の中には、この「ゆとり返済」を利用している人が実は大勢います。

ゆとり返済とは、住宅ローンを組んだ最初の数年は支払額を低く抑えていて、途中から返済額がアップするというタイプのローンです。最初の支払額が低いので抵抗感が少なく、また住宅を販売するセールスマンの側からしても、顧客にすすめやすいので、結果的にたくさんの人が利用しています。しかし、このローンには致命的な欠陥があります。

それは、将来の給与アップがローンの前提になっていることです。そもそも、数年後には支払額が上がることが決まっている訳ですから、収入が増えることをあてにしていなければ、ローンの仕組自体が成り立ちません。しかし、現在は、右肩上がりで給与が増えることを期待できる時代ではなくなりました。それが、このローンを抱えた相談者が増える原因です。

多くの人にとって住宅は手放したくない最後の砦ですから、ローンの支払額がアップする時期になると、まずは奥様が働きに出たりして何とか収入を増やそうとします。これで、上手くカバー出来れば良いのですが、それでも足りない場合、あるいは幼い子供を抱えていて思うようには働けない場合は、消費者金融やクレジットカードからの借金に頼って、何とかしのごうとされることが多いのです。

最初はすぐに返済するつもりの、これらの借金が、いつしか日常的なものになり、借入額も膨らんで、気がついた時には、とても返済できない金額になっている、こんなパターンの相談が多いのが現実です。

それでも定期的な収入があるサラリーマンの方なら、あきらめるのは早いです。住宅ローン特則を付けて個人再生を行えば、住宅を維持したまま他の借金だけを減らすことが可能です。まずは検討してみましょう。

他には、ボーナス払いの割合が多い住宅ローンも同様に相談が多い事例です。

これも最近の経済情勢を反映して、ボーナスがカットされてしまう人が増加していたからです。ようやく政権が変わって景気も上向き始め、ボーナスの支払いも増えているところも出始めたようですが、まだまだ全体に波及するには時間がかかりそうです。

ボーナス払いの住宅ローンは、月当たりの支払額を低額に抑える代わりにボーナス時の支払額を高額に設定してあります。ボーナス時期に10万円以上は普通ですし、中には20万円以上の支払いになっている人もいます。

こんな設定で、ボーナスがカットされてしまったら、途端に苦しくなるのは当たり前で、ゆとり返済の時と同じように、ボーナス時期に消費者金融やクレジットカードから借りてしまい、それがきっかけとなって借入が習慣化して、最後には返済できないほどに借金が膨らんで、事務所に相談に来られるというのが典型的なパターンになります。

比べてみると、ゆとり返済とボーナス払いから、事務所への相談に至る過程は非常に似ていることが分かるでしょう。

ですから、ボーナス払いの時の解決方法も同じように、住宅ローン特則を付けた個人再生が有効な場合が多いです。あきらめる前に専門家に相談しましょう。

より詳しい情報を知りたい方は以下をクリック

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7月 04 2013

前払いのすすめ

各種の教室で授業料の未払い問題が発生している中で、未払いが発生する最も多い原因が、授業料を後払いにしていることです。

月謝制にしろ、チケット制にしろ、授業料は絶対に前払いにすべきです。前払いにしていれば、未払いが発覚した時点で、授業の参加を断ることが出来ます。しかし、後払いでは、受けてしまった授業は品物ではなくてサービスなので、後で返してもらうことは出来ません。このようにサービス業においては、返品という概念が存在しないため、トラブルを防ぐためには前払いにするしかありません。

もちろん、前払いにしても未払いは発生します。様々な事情で受講を断ることが出来ない場合も存在するからです。例えば、今まで何人もの生徒を紹介してくれた人からの紹介で入った生徒の中に未払者が出てしまった場合は、紹介者の顔をつぶしてしまいますから断りにくいでしょう。

だからと言って放置してしまうと、他の生徒に知れた時に大きく評判を落としますから非常に難しい問題です。やはり、こういう時は、先に紹介者に未払いの事情を詳しく説明した上で、了解をとって回収に動くことをおすすめします。

他には、経営者が人が良すぎたり、相手の言うことを信用しすぎたりした時にも未払いは発生しやすくなります。何故なら、最初から開き直って支払わない人は少数派で、最も多いのは、会うたびに「次は支払います」、「分割なら払います」という人だからです。

このような人の良い経営者の場合、恐らく督促の段階でも厳しくすることは苦手でしょうから、ストレスをためて本業に影響が出ないように、全ての回収を法律家に任せてしまう方が良いかもしれません。

7月 02 2013

総量規制について考える

「総量規制」が始まって約3年が経過しました。これは通称3分の1規制とも呼ばれていて、年収の3分の1以上の借入に対してストップをかけるものです。

ところが、この総量規制には明らかな抜け穴がありました。全ての金融機関が対象になっている訳ではないというところです。具体的には、クレジットカードのショッピング(キャッシングは総量規制の対象です)、そして銀行ローンです。

そこで一時期、総量規制で借りられなくなった人が、クレジットのショッピングを利用して取込詐欺をしてしまう例が後を絶ちませんでした。

取込詐欺とは、詐欺業者の言われるままに指定された商品を(パソコンやゲーム機などが多い)クレジットで購入し、その商品を業者に買い取ってもらうことでお金を得るシステムです。

名目上は、クレジットのショッピングになりますので、総量規制にはひっかからずにお金を工面することが出来ますので、一時的に非常に流行りました。しかし、買取価格は二束三文ですし、後ほど商品の代金が請求されますので、結局は支払不能に陥ってしまいます。

また、支払不能になった後、いざ自己破産などをしようとすると、詐欺行為として裁判所から追求される可能性もあり、破産にも影響が出るかもしれません。こういう場合は、あくまで業者に言われるままにやったことで、本人は被害者であるということを裁判所に訴えていきますが、それでも、裁判所が慎重になるようなことは、やらないに越したことはありません。

最近は、上記のようなことも知られてきて、少なくはなってきていますが、完全には無くなっていないようなので、注意しましょう。

あと、もう一つの総量規制対象外である銀行ローンが最近、増加傾向にあります。銀行ローンと言っても、最近多いのは個人向けの無担保ローンです。ようするに、昔、消費者金融がやっていた無担保ローンを最近では銀行が積極的に行っているのです。まさに総量規制によって消費者金融の市場が縮小したところを銀行がさらっていったような形になってきています。

例えば、新生銀行は新生フィナンシャルという消費者金融を傘下に抱えています。新生フィナンシャルは旧レイクという消費者金融で、今でもレイクという名前は商品名として残っています。コマーシャルを見た人も多いでしょう。

ところが、最近では、新生フィナンシャルは消費者金融なので総量規制に引っかかってしまいますので、貸出が伸びていません。経営的にも苦しいと言われています。そこで、銀行が考えたのが、新生フィナンシャルのATMなどの無人店舗を新生銀行に譲渡してしまって銀行のものにしてしまい、銀行ローンとして貸し出していくということです。これなら、総量規制は気にする必要は無くなります。何とレイクという商品名まで銀行がそのまま使用しているのです。

結局、最近の自己破産や個人再生の相談を受けていると、銀行ローンから借りている人が目立つようになってきています。これでは、総量規制など、あまり意味が無かったのではないか、かえって一時的に混乱させただけではないかと思わざるを得ません。

私はもともと、利率の引き下げには賛成でしたが、総量規制には反対でしたから、こんな政府が民間の貸出の量まで口出しをして規制するなんてことは、共産主義ではあるまいし、やはり無理があったのではないかと思っています。

PS
これはあくまで私の勝手な仮説ですが、ひょっとして財務省の頭のいい役人が、「消費者金融は儲けすぎだ。消費者金融の儲けを、我らの天下り先である銀行に移してしまえ。」と考えたとしたら、そのたくらみは見事に成功したということになりますね。もちろん仮設であって何か証拠がある訳ではありませんが、結果的にあまりにも銀行が得をする状況になっているので、こういう考えも浮かんでしまいます。

6月 28 2013

日常家事債務

日常家事債務とは法律用語です。一般の人は聞きなれない言葉かもしれませんが、日常生活で割と起こりうる場面で重要になってくることなので、知っておいた方が良いと思います。

例えば、こんな例があります。
父親と子供が一緒に英会話教室に申し込みに来ていて、申込書には父親の名前が書かれている。ところが、しばらく経つと未払いが発生して、督促をすると父親はどこかに行方不明になってしまい電話に出るのは母親だけ。そこで母親に請求すると、「私は申し込んだ覚えは無い。だから支払う必要は無いでしょう」と言われ、全く回収できない。

このケースでは、本当に母親には支払義務は無いのかが問題になります。

契約自体は父親と教室の間で結ばれているのは明らかです。よって、契約の当事者は教室と父親です。通常は、契約の当事者以外の人には支払義務は発生しません。例えば、夫が消費者金融からお金を借りた場合、保証人になっていない限り妻には返済義務はありません。

しかし、法律には、この例外として「日常家事債務」というものを規定しています。

日常家事債務とは、日常的に発生する債務に関しては、例え夫婦の一方が契約したものであっても、夫婦連帯して債務を負担するという規定です。
ようするに、夫が契約した日常家事債務に当たる支払いは、妻にも支払義務が生じるということになります。(もちろん、逆もまた、しかりです)

では、何が日常家事債務に当たるのでしょうか。

例えば、光熱費、日用品などの生活必需品、医療費、教育費などは典型的なものと言われています。他にも、夫婦の収入レベルに応じて、この範囲は拡大したり縮小したりします。(最終的には裁判所の判断になります)

すると、英会話教室の授業料などは教育費として判断される可能性が高そうです。よって、このケースの場合、母親には支払義務があると考えて、法的な請求をしていく余地は充分にあると思います。

6月 24 2013

名古屋本庁の個人再生事件の取り扱いの変化

以前は、名古屋本庁の個人再生事件は、かなりの確率で再生委員が選任されていました。そのことによって、再生委員の報酬として8万円ほどの予納金を余分に裁判所に納めなければならなかったのです。この場合、合計で10万円を超える費用を裁判所に支払うことになり、再生を試みる債務者にとっては大変に高いハードルになっていました。

一方、三河地方を管轄する岡崎支部や豊橋支部の裁判所では再生委員が選任されないので、上記の8万円ほどの上乗せ分が不要となり、同じ再生事件でも非常に安く申し立てることが出来ていたのです。

これでは住んでいる地域によって、明らかに有利・不利が出来てしまうので、この取り扱いは問題ではないかと個人的には思っていました。

ところが名古屋市及びその周辺部で再生申立を考えている債務者にとっては非常にありがたいことに、最近、名古屋本庁の再生係の取り扱いが変わってきています。具体的には、再生委員が選任されない事件が増えてきているのです。

こうなった正確な理由は分かりませんが、良い傾向になっているのは喜ばしいことです。ただし、裁判所という役所は、ある日突然、取り扱いを変更することが過去にもありましたので、これがずっと続くかどうかは分かりません。もし申立を考えている人がいたら、今はチャンスかもしれません。

不思議なことに、破産係の方は、逆に以前よりも厳しくなっています。破産管財人が選任される確率が以前よりも上がっているのです。破産管財人は再生委員よりも報酬が高いので、債務者にとっては予納金が高額になるケースが増えた訳ですから、良くありません。

再生係を甘くして、破産係を厳しくするとは、一体、名古屋本庁は何を考えているのでしょう。破産管財人には通常、弁護士が選任されますので、最近、何かと取沙汰されている弁護士の失業問題にからんでいるのではないかと言う人もいます。

まあ、そのような一部の業界の都合で取り扱いが変わったとは私も思いたくはありませんが、そのような噂があることは事実です。私としては、そうでないことを祈るばかりです。

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6月 21 2013

授業料の未払い

実は私は司法書士になる前、学習塾の経営をしていたことがあります。従って、授業料の未払いが、いかに経営に影響を与えるか、分かっているつもりです。

これを防ぐために受講券というシステムを取り入れていました。生徒に前払いでチケットを購入してもらい、授業を受けるたびに授業の単位数に応じてチケットを回収するという仕組です。生徒がみんなの前でチケットを渡しますので、チケットが無い状態で授業を受けると、生徒自身が相当にクラスの中で気まずくなります。親も気にしますので結果的に未払いは非常に少なかったと思います。ただ最近は個別指導の学習塾が全盛になっているようなので、このやり方も、あまり効果は無いかもしれません。

月謝システムを取っている塾が大半だとは思いますが、たいていは申込書に「3ヶ月以上の授業料の滞納があった場合は退塾または休塾してもらいます」という文言が入っていることが多いでしょう。そこで、実際に3ヶ月の滞納が発生してしまった時の対応が塾によって、まちまちだったりします。

情に厚い塾長さんだと、子供には罪は無いと考え、とりあえず催促はするけど、それでも払ってくれない場合ずるずると放置されて、生徒は通ってくるけど滞納授業料は増えるばかり、という悲惨な結果になりかねません。

最悪なのは、こんな状況が何かの拍子に他の生徒の親に知られてしまった場合です。これは完全に不平等な取り扱いになってしまいますから、気性の激しい親御さんなら塾に抗議してくることは充分に考えられます。その抗議を、たまたま見ていた他の親にも更に悪評が広かっていって、下手をすると大量の退塾が発生するかもしれません。

このように、たかが滞納授業料と考えていると大変なことに発展する可能性もあるのです。授業料の未払いを甘く見てはいけません。やるべきことは、ある程度の覚悟をもって、きっちりとやっていくのが良いと思います。塾は、国や自治体から補助金をもらって運営している訳ではないのですから。

やはり、3ヶ月以上の滞納があった場合は、受講を拒否するのが筋だと思います。もし、受講を継続させるならば、法的措置も含めて徹底的な授業料の回収に努めるべきでしょう。そうでなければ、他の生徒に対して示しがつかなくなってしまいますから。

塾長は教育者であると同時に経営者でもあるわけです。塾の経営が成り立たなければ結局、教育の目的も達成できなくなりますから、どこかで一線を引く必要があるでしょう。そんな時、授業に集中したいので、授業料の回収は他にまかせたいと思われた場合は、当事務所がお役に立てるかもしれません。

6月 19 2013

民事裁判と刑事裁判

一般の人は、あまり裁判になじみが無いのが普通ですから、民事裁判と刑事裁判の違いと言っても、ピンとこないかもしれません。しかし、この両者は全く異なります。

良くテレビや映画に出てくる裁判のシーンは圧倒的に刑事裁判が多いので(法廷ドラマが人気のあるアメリカでは、民事裁判のドラマも結構あります)、皆さんが頭に思い描く裁判のイメージは刑事裁判のものでしょう。何と言っても、刑事ドラマや検察のドラマが多いので、その影響を知らずに受けているわけです。

しかし、世の中の裁判のほとんどが実は民事裁判なのです。民事裁判の方が圧倒的に件数が多いです。それなのに民事裁判については驚くほど知られていません。民事裁判を扱ったドラマや映画も少ないですから、イメージすらもっていない人も珍しくありません。

それでは民事と刑事で何が違うのかを見ていきましょう。

まず民事裁判には、テレビに良く出てくる検察官は登場しません。少しでも裁判知識のある人にとっては「そんなの当たり前だろ」と言われそうですが、そのくらい民事裁判は一般人に馴染みがないのです。

刑事裁判で争っているのは国家(検察官)と個人(被告人)です。検察官は国家を代理し、弁護士は個人を代理しています。一方、民事裁判で争っているのは個人と個人です。個人が会社の場合もありますが、民間であることが重要です。ようは民事裁判とは民間同士の争いなのです。そして民事裁判では法律家を付けるかどうかは個人に任されています。双方に法律家が付く場合もあれば、片方にしか付いていない場合もあります。もちろん、裁判所に行ってみれば、双方ともに本人が出頭していることもあります。(民事裁判では訴えた方を原告、訴えられた方を被告と言います)

そして、良く間違われるのが「証拠」の扱いです。同じ証拠でも民事裁判と刑事裁判では取り扱いが全く違います。

刑事裁判では容疑者を国家が裁くという形をとりますので、慎重に進める必要があるという観点から、きちんとした証拠が無い限り、例えどんなに怪しくても有罪にしてはいけないことになっています。そして、その証拠の集め方も法律できちっと決まっていて、違法な手段で集めた証拠では有罪には出来ません。(例え、どんなに決定的な証拠であってもです)

一方、民事裁判では、証拠は警察や検察ではなく個人が勝手に集めたもので争われます。双方が用意してきた証拠を元に裁判所が判断する訳ですが、その際、証拠の集め方は問題になりません。もし違法に集めたものだったら、別の裁判で損害賠償を請求される恐れはありますが、少なくとも該当する裁判での証拠の価値は下がりません。

もう一つ、決定的な違いは、民事裁判においては、原告と被告の間に争いが無い事実(双方ともに認めている事実)については、証拠は必要ないということです。簡単に言えば、「両方が認めているんだから、それでいいじゃないか。」というのが民事裁判です。ひょっとしたら、本当は事実ではないことを両方が何かの都合で認めているのかもしれません。それでも構わないというスタンスを取るのが民事裁判の考え方です。従って、民事裁判では、双方の意見が食い違って争いになっていることだけを、証拠調べの対象にします。

また、民事裁判の場合、双方が認めるというのも、積極的に同意する必要はありません。例えば、原告が主張したことを、被告が黙って反論しなかったとしても、それは認めたこととみなされます。民事裁判では、日本的な「あうんの呼吸」は全く通用しません。反論しないことは、すなわち同意したのと同じことと考えられているからです。実際に、被告が一切反論せずに黙り続けたら、原告の完全勝利の判決が出ます。原告側が、どんなにいいかげんな証拠しかなくても、そうなってしまいます。ですから、民事裁判では、どんな屁理屈でも、とりあえず反論することが大事になります。

ところが、刑事裁判では、検察官の言うことに被告人が特に反論しなかったとしても、これだけでは有罪にすることは出来ません。被告人が反論しないで黙っていたとしたら、検察側は証拠により犯罪を立証しなければなりません。証拠不十分で立証に失敗したら、被告人無罪の判決が出ることになります。このように刑事裁判は、民事裁判に比べて厳格な立証が求められるのです。一人の人間を犯罪者にするかどうかを決めるのですから、まあ当然と言えば当然ですが。

以上、説明したように、民事裁判と刑事裁判は、その性質が非常に異なっています。特に相談をしていて私が感じるのは、ドラマなどの影響で民事裁判についての誤解が多いように思います。今回の説明で、少しはその誤解が解けたらと思っています。

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