司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

2026年4月

4月 27 2026

住所変更登記で引っ越しの経緯が証明できない時 生前贈与⑩

Q 贈与者の住所が引っ越しで変わっていた時とは?

A 不動産の贈与登記を依頼されると、司法書士はまずは該当の不動産の登記情報を取得します。登記情報の所有者欄を見た時に、引っ越し等で現在の住所と変わっている場合があります。この場合、贈与登記の前に住所変更登記を入れる必要があるのです。

Q なぜ住所変更登記が必要なのでしょうか?

A 異なる住所で贈与登記が申請された場合、贈与者が同姓同名の別の人である可能性があります。別人である確率は低くても100%同一人物とは言えないわけです。不動産登記に間違いがあってはいけませんので、このままでは審査は通りません。一旦、住所変更登記をして、登記情報の上では同一人物であると確認できる状態にしてからでないと、贈与登記ができない仕組みになっています。

Q 引っ越しの時期が古くて役所で証明できないと言われました。そんなことがあるのでしょうか?

A 最近になって住民票の保存期間が延長されましたが、それまでは5年で廃棄されていました。これだと古い引っ越しは戸籍の附票に記載されていない場合があります。(ただし、一つ前の住所であれば、どれだけ古くても住民票の従前の住所に記載されます)

Q それは困りますね。どうしたら良いのですか?

A 住民票や戸籍の附票で証明できない場合、①権利証を出す、②上申書を出す、③固定資産税の納税通知書を出す、などの方法で法務局を説得していくことになります。3つ全部を要求されることもありますので、結構大変です。

Q 最近、スマート変更登記というのが始まったと聞きました。住所変更登記は不要になったのでしょうか?

A これはよく質問されるのですが、スマート変更登記は法務局に申出をしていないと対象になりません。たとえ申出をしていたとしても、法務局が変更情報の検索をするのは2年に1回程度で、いつするのか分かりません。これでは贈与登記がいつになったら可能になるのか分かりませんので、現実的ではありません。

スマート変更登記は、あくまで何もしないで放置してある不動産に対して法務局がサービスするものです。売買や贈与などのアクションを起こした時の前提になる変更登記の場合は、今までどおり住所変更登記が必要です。

Q 相続の場合の住所変更登記は、どうなるのでしょうか?

A 相続の場合は登記情報に記載されている所有者は亡くなっていますので、取り扱いが異なります。亡くなった所有者の住所が変更になっていた場合は住所変更登記は不要です。ただし相続登記の申請時に住所変更の事実を証明する公的な書類は必要になります。

Q 相続の際、住民票の除票や戸籍の附票で証明できない場合は、どうなるのでしょうか、贈与や売買の時と同じですか?

A いいえ。相続の場合は亡くなった所有者の権利証が提出できれば、法務局は認めてくれます。実は以前は贈与や売買の時と同じ取り扱いでした。

しかし、所有者不明土地問題がクローズアップされて、政府が相続登記が放置されることを防ぐことに本腰を入れ始めました。それで相続登記が義務化されたのですが、同様に住所変更の証明も簡略化されたのです。スマート変更登記が始まったのも同じ理由で、所有者の住所が分からなくなるのを防ぐのが目的ですね。

生前贈与についてより詳しく知りたい場合は以下をクリック

生前贈与

4月 22 2026

コンピューター化以前に登記された住所変更付記登記は、コンピューター化された時に本登記として記録される 相続登記㊹

Q 相続登記の不思議な事例について

A 相続登記を長い間やっていると不思議な事例に出会うことがあります。その中の一つに、住所変更登記の事例があります。

Q 住所変更登記の不思議な事例とは何ですか?

A 例えば以下のような事例です。相続登記をするためには、被相続人(故人)の住民票の除票または戸籍の附票が必要です。そこで戸籍の附票を取ったところ、「A市B町一丁目1番地 住定日 昭和50年6月10日」と記載されていました。ところが登記簿を見ると「A市B町一丁目1番地 所有者甲 登記原因 昭和50年6月5日売買」となっていました。これは非常に不思議なことなのですが、分かりましたでしょうか。

Q 何が不思議なのでしょうか、答えを教えてください?

A 答えは、A市B町一丁目1番地に住所を移したのは6月10日なのに、登記簿には6月5日の時点で同じ住所が書かれているからです。売買が行われた時にはA市B町一丁目1番地の住民票は取れなかったはずなので、一見、不思議なことが起こっているように見えます。(買主の住民票は売買の登記の必要書類です)

Q 本当に不思議ですね。なぜ、こんなことが起こっているのでしょうか?

A 実は登記簿のコンピューター化が深くかかわっています。実は事例の案件では、コンピューター化される前の紙の登記簿にはきちんと「A市B町一丁目1番地6月10日住所変更」という付記登記がされていました。売買の後に住所変更がされたことが分かるようになっていたのです。

Q それがコンピューター化されると、なぜ分からなくなるのでしょうか?

A コンピューター化される時に、付記登記で記載された住所変更登記は省略されて、最初から変更後の住所で所有者欄が記載されるというルールがあるのです。そのため住所変更されたことや日付も分からなくなってしまうのです。法務局としては効率化のために行っていることなのだと思いますが、変更の経緯が分からなくなってしまうのは困りますね。

Q どうすれば気付くことができるのですか?

A 司法書士ならば慣れているので気付くことができますが、一般の方だと難しいでしょう。紙の登記簿が保存されていれば、それを見れば分かりますが、保存されていなければ推測するしかありません。

相続登記について、より詳しい情報が知りたい方は以下をクリック

相続登記