2月 18 2016
残業代請求 解決事例④
40代男性 中堅企業
未払い残業代 約170万円
依頼人はトラックの配送業をしていて、何と出勤時刻は深夜の3時から4時という、きつい職場環境でした。たまにではなく、ほぼ毎日が上記の時刻に出勤なのです。
深夜労働が当たり前なので、当然、残業代は相当な額になります。しかし、会社側は、少しでも残業代を減らそうとと、タイムカードを出勤した時には打刻させず、朝の5時から打刻を許していました。従って、タイムカード上は朝5時出勤となってしまいます。
ところが、依頼人は独自に対策を取っていて、毎回、出勤と退勤の時にスマホに時刻を記録していたのです。客観性に欠けるので証拠としては弱いですが、それでも何も無いよりは、はるかにマシです。陳述書と組み合わせれば充分な証拠になると考え、依頼を引き受けました。タイムカードを偽装していた会社のやり方も許せないという気持ちもありました。
まずは催告書を郵送して請求しましたが、タイムカードを偽装するような会社ですから、回答も予想通り、「スマホの記録など証拠にならない。」、「早朝出勤は、もししていたとしても、本人の仕事が遅いから勝手に出てきただけで、会社の指示ではない」などの大反論をしてきて、結果、「未払い残業代など無い。1円も払うつもりは無い」という強硬なものでした。
早速、裁判手続の準備に入りました。金額が高額だったのと、証拠が強いとは言えなかったことで、労働審判を選択しました。労働審判なら、証拠が弱くても、裁判官を介した話し合いで妥協点を探れます。あと、3回以内で終了しますので、長引く恐れもありません。
裁判所に出す陳述書は詳しければ詳しいほど証拠として強くなりますので、何回か書き直してもらいました(実は裁判所が陳述書の評価を上げるポイントが、いくつかあるので、それを指摘して書いてもらいました)。
労働審判は初回から白熱しました。お互いが主張を出し合って何と3時間ほどかかりました。労働審判は回数が3回以内と制限されている分、1回の時間が長い傾向があります。裁判所も3回を使い切るという発想ではなく、なるべく少ない回数で、出来れば初回で終わらせようとしてきます。
証拠が弱い分、ある程度の減額は仕方がありません。こちら側も減額されるのを見込んで、請求しています。そもそも裁判になる前は、「1円も支払わない」と言っていた会社ですから、減額になっても回収できれば大成功です。
最終的に裁判官が提示した金額が170万円でした。会社は当初、渋っていたようですが(後半になると、交互に部屋に入って裁判官と話をするので、相手がどのような様子なのかは分からない)、最後は会社側の担当者が裁判官に説得されて決着しました。時間が長いので、初回は大変ですが、何回も裁判所に通うことを考えたら、1回で決着が付くのはメリットだと思います。
和解条項には、会社側の希望で「今回の残業代請求については他言しない」という条項が追加されました。実は、この条項は、残業代請求では良く利用されるもので、残業代請求が他の従業員に波及するのを防ぎたいという、会社側の意向が働いています。しかし、依頼人にとってはマイナスになる条項ではないので、通常は反対はしません。下手に反対して、せっかく整った和解案が振り出しに戻る方がマイナスが大きいと考えるからです。
和解調書が届いてから3日ほど過ぎたら、無事、依頼人の口座に和解金が振り込まれました。時間はかかりましたが、当初は「支払わない」と会社が言っていた訳ですから、成功と言えます。依頼人にも満足して頂けました。
以上、労働審判で解決した事例です。









