司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

7月 30 2009

シリーズ 過払金② 完済した後の過払いとは

 今回は、質問の多い「完済した取引の過払い」について、説明します。

 今回、取り上げるのは完済した後、もう取引をしていない状態です。昔、完済したけど、その後、再び借り入れて、現在も取引中という場合は省きます。

実は結構、これも勘違いされている方が多く、完済後に再び取引しているケースも「完済した取引」だと思って相談に来る人もいるのです。今まで間違った情報を信じていた方は、是非、このブログで正しい情報を仕入れて下さい。

 さて、「完済した取引」の最大の特徴は、ほぼ100%過払いになっているということです。

「ほぼ」という言葉を使ったのは、利率が最初から利息制限法以内の場合(10万円以上100万円未満の場合は18%以内)は過払いにはならないからです。この場合、最初からというのが肝心です。途中で18%に下がった場合は、やはり過払いになっていますから。(一部のクレジットカードに最初から利率の低いものがあります。数は少ないです)

 前回の説明で、過払いになるかどうかは取引によって違うと言いました。ところが、完済している場合は、そのように悩む必要はありません。ほぼ過払いであることは間違いないからです。従って、依頼者の立場からすlれば、通常の取引よりも決断がしやすいというメリットがあります。

また、完済した取引の場合は、費用も安く設定している事務所が多いのも、決断しやすい理由の一つでしょう。例えば、私の事務所の場合は、完済した取引の場合は着手金を無料にしています。成功報酬だけなので、依頼人が直接支払う分はありませんから、依頼がしやすくなっています。

 このように完済した取引はメリットが多いのですが、請求をせずに放っておくと、取り戻せなくなる場合がありますので注意が必要です。

それは時効による消滅と言う規定があるからです。過払請求権は10年で時効により消滅します。要するに10年たつと請求できなくなってしまうのです。

では、10年とは、いつから数えるのでしょうか。これが時効の起算点と呼ばれる問題です。具体的には完済した取引の場合は、「完済した時から」と考えるのが一般的です。従って、完済した取引がある人は、10年以内に請求することを忘れないで下さい。

 あと、以外に忘れがちなのが、クレジットのキャッシングの完済です。クレジットカードは、そのまま持っているので取引が終わったという実感はありません。(中にはカード自体を解約している場合もあります。この場合は完済の実感が起こりやすいですね。) 

例えば、昔、クレジットのキャッシングをしていたけど、今はしていない。しかし、カードは持っているというケースです。結構、いるんじゃないでしょうか。

この場合もキャッシングに関しては完済した取引と同じなので、過払金が発生しています。しかし、ショッピングをしていた場合は、ショッピングの残高よりもキャッシングの過払金の方が額が大きいことが前提になります。

もちろん、ショッピングをしていない場合は、ほぼ間違いなく過払金が発生しています。(冒頭で説明したように、クレジットの場合は最初から利率が低いカードが一部ありますので、それは除外して下さい。)

ただ、この場合の問題点は、過払いを請求した時点でクレジットカードは使えなくなるということです。この先使う予定の無いカードならば、請求した方が良いでしょう。

ただし、使う予定があっても、過払金の金額によっては、請求した方が良い場合もあります。こういう時は、自分でクレジット会社に取引履歴を請求して、利息の計算を事務所に頼むと良いでしょう。そうすればカードを取り上げられることなく、自分の過払金の額を知ることが出来ます。請求するかどうかは金額を知ってからの方が後で後悔せずに済むと思います。(実際に金額を確かめた後で心変わりして請求した方もいます)

私の事務所では、このような利息計算サービスもやっていますが、全ての事務所がやっているとは限りません。事前に確認してみて下さい。

 もう一つ注意して欲しいことがあります。それは最近の貸金業者の経営状況です。倒産する業者も増えていますし、倒産しないまでも過払金が全く支払えない業者や、一部しか支払えない業者が次々と出てきています。ということは、完済したまま放っておくと、例え10年以内であっても、業者の経営状況によって取り戻せなくなる可能性が高くなってきているのです。これは知っておいて欲しい重要な情報です。

 ここまで読んでこられた方は納得されたと思いますが、完済した取引というのは、ある意味、預金と同じです。しかし、時効になったり、業者が経営破綻したりすると、その預金が引き出せなくなってしまうのです。銀行の預金が引き出せなくなると聞いたら大抵の人はあわてて銀行に走るでしょう。ところが同じようなことが起こっているのに、過払金の場合は実感が伴わないせいか、放置している人がまだ大勢いると思われます。引き出せなくなる前に専門家の扉をたたくことを、おすすめします。

7月 23 2009

シリーズ 過払金① 過払いになる取引とは

 さて、今回からは過払金について説明していきましょう。

過払金は今、一番ホットな話題と言ってもよいでしょう。債務者に有利な最高裁判決が立て続けに出た結果、3年ほど前から空前の過払金ブームと呼ばれる現象が起きました。相談で最も件数の多いのも過払金に関することです。

しかし、あまりにも加熱したブームになった結果、ちまたでは怪しい情報も同時に増えてしまったのも事実です。素人の方には怪しい情報かどうかの区別がつかない場合も多いので、相談を受けていると、全く間違ったことを信じている人も大勢いるという状態になっています。

そこで、まずは過払金に対する正しい情報を、このブログで知ってもらおうと思います。これを読んだ皆さんは、今後は怪しい情報に惑わされないで下さい。また、怪しい情報に惑わされている知り合いがいたら、是非、教えてあげて下さい。

 それでは、まず過払いとは、どんな場合に発生するのか、ということです。

かなり有名になって、今では知っている人も増えてきましたが、過払いとは「出資法」と「利息制限法」という二つの法律の制限利率が異なっていることから発生します。

具体的には現状の出資法の制限利率は29.2%ですが、一般的な貸付金額である10万円以上100万円未満の取引の場合の利息制限法の制限利率は18%です。(利率は全て年利です)

この二つは一体、何が違うのかと言うと、出資法に違反すると刑事罰になりますが、利息制限法に違反しただけでは民事上無効になるだけだということです。

もう少し分かりやすく言うと、出資法に違反した業者は警察の捜査の対象になります。そもそも存在自体が違法な業者であって、正規の貸金業者とは呼べません。故に、出資法違反の業者のことを「ヤミ金」と呼びます。(ちなみに広告では出資法以内の利率をうたっておきながら、実際に借りてみると出資法をオーバーしていたという業者もいます。もちろん、これも「ヤミ金」です。)

では、利息制限法の利率をオーバーしているけど、出資法の利率は越えていない業者(消費者金融とクレジットは、ほとんどがこのパターンです)は、どうなるのでしょうか。

これが、いわゆるグレーゾーン金利と呼ばれているものです。消費者金融やクレジットは、このグレーゾーン金利で今まで稼いできた訳です。

先ほど利息制限法の利率を超えると民事上無効になると言いましたが、この意味を分かりやすく説明しましょう。

これは、裁判で争った場合、あるいは法律家が介入した場合は、超えた部分の利息は認められませんよ、ということです。

 では、超えた利息(以下、超過利息と呼びます)は実際に支払われている訳ですが、無効になったら既に支払った超過利息は、どうなるのでしょうか。この答えは、超過利息は利息ではなく元本を支払ったものとみなすのです。

するとどうなるか。超過利息を1回払えば、その時の元本がその分減ります。次の利息は減った元本に対してかかりますから、利率の超過分と減った元本分の両方の効果で2回目の超過利息は相乗効果で更に大きくなります。

2回目の超過利息も元本を支払ったことになりますから、更に元本が減ります。そして、3回目の支払いでは2回目で減った元本に対して利息がかかるので更に、、、、、という具合に相乗効果で元本が減っていく訳です。

 従って、上記のような計算をしていくと、支払い年数が長ければ長いほど元本は急カーブを描いて減っていきます。そこで長い取引の場合、ある時、元本が0円になる時が訪れます。この時が過払いなるかどうかの分岐点です。

元本が0円になっても、まだ取引が続いていた場合、その後の支払いは過払いとなります。要するに支払い超過となっている訳で、その分を取り戻せますよ、というのが過払金の根拠なのです。

元本0円になってからの支払いが長ければ長いほど、過払金の額も大きくなります。だから、過払いの相談を受けると法律家が、「取引年数は何年くらいですか」と真っ先に尋ねるのは、そういう理由があるからです。

ただし、過払いが発生した後も、過払金を打ち消すくらいの大きな額の借入をした場合は、過払いは消滅して、また元本が残ってしまいます。

例えば、10万円の過払いが発生している時に、30万円の借入をしてしまった場合は、差し引き20万円の元本が残ってしまいます。こうなると、また同じように、次の支払いの超過利息で元本を減らしていくことになります。元本が0円になるまでは、しばらく過払いは発生しません。

このように過払金の発生には、各人の取引傾向が強く影響を与えますので、一口に、「何年以上は過払いだ」とは言えないのです。まさに、5年で過払いになる人もいれば、10年でも過払いになっていない人もいます。

従って、あまり断定的に、「〇年以上は必ず過払いだ」などという広告を見つけたら、その事務所は信用しない方が良いでしょう。

 もちろん、断定的でなく、大体の傾向として取引が長い方が過払いになりやすいというのは、あるでしょう。

以下、私の経験で大体の傾向を述べると、5年未満で過払いになっている人は、ほとんどいません。非常に少ないと思います。

5年~7年で、たまに過払いの人が出てきます。でも、この取引年数だと割合としては半分以下です。

7年を超えてくると、一転して過払いの人の割合の方が多くなります。半分以上が過払いだと思います。

10年以上になると、今度は、ほとんどの人が過払いです。過払いにならない人は非常に少数になります。でも、少数でも一応、いるということは覚えておいて下さい。決して100%ではないのです。

 相談をしていると、2年か3年くらいの取引で、「過払いを取り戻して欲しい」と言ってくる人がいます。決して珍しくありません。こういう相談を受けていると、「ああ、間違った情報が氾濫しているんだなあ」と痛感します。その為にも、このブログで正しい情報を獲得して下さい。

 では次回は、「完済している取引について」です。

 

7月 16 2009

シリーズ 自己破産⑪ 破産申立その後(後半)

 さて、今回は破産開始決定後の流れについて説明しましょう。

 開始決定が出ると開始決定書が郵送されてきます。この時、免責期日呼出状という書面が同封されています。免責期日とは、免責審尋が行われる期日のことです。

では、免責審尋とは何でしょうか。これは、債務者の借金を帳消しにしてもよいか(厳密には借金の支払義務を無くしてもよいか)を裁判所が判断する為に、債務者を裁判所に呼び出して面談することを言います。

こう言うと、前に出てきた、開始決定前に1割くらい呼ばれることがある破産審問と何が違うのかと思われる人もいるでしょう。

まず、破産審問は全員が呼ばれる訳ではありません。裁判官の任意です。しかし、名古屋の場合、免責審尋は破産を申し立てた人は全員が呼ばれます。(もちろん開始決定まで、たどり着けなかった人は呼ばれません。当然ですね)

あと、破産審問の場合、呼ばれた時は裁判官と1対1の面談になりますので、かなり緊張します。しかし、免責審尋は名古屋の場合は集団面談です。たいていは10人から20人が呼ばれています。従って、裁判官から質問されるのは、その中の数人です。質問の内容も、ごく簡単なことで終わってしまいます。免責審尋で返答に困ったケースを私は今のところ知りません。

要するに免責審尋とは出席さえすれば、ほとんど問題無い手続だということです。だからこそ、絶対に遅刻や欠席はしないようにしましょう。

 ちなみに人口の少ない地方の裁判所だと、免責審尋をやらない裁判所もあるようです。その代わり破産審問に呼ばれる場合もあるので、どちらが良いかは何とも言えません。(人口が少ないと裁判官が1対1の面談をやる余裕があるということなのでしょう) 

 免責審尋に、きちんと出席して、しばらくすると免責決定という書面が送られてきます。これが借金の支払義務を帳消しにしてくれる証明書です。これで事実上、破産手続は終了です。(これも厳密に言うと、法律上の終了は免責決定が確定してからになりますが、破産の場合、免責決定が出た後に文句を言ってくるケースは、まずありませんので、事実上、終了と考えて良いでしょう)

 これが同時廃止における破産手続の大体の流れです。管財事件の場合は、もっと複雑で期間も長くなります。

 さて、次回からは新シリーズとして過払金返還請求について説明していきましょう。

 

7月 07 2009

シリーズ 自己破産⑩ 破産申立その後(中半)

 さて、前回からの続きです。

 破産申立後の審査の結果の二つ目は、追加書類の提出です。

このケースは実は最も多いパターンです。全体の6割~7割くらいを占めていると思われます。良く追加書類の提出を命じられて不安になる人がいますが、心配することはありません。命じられる確率の方が高いのですから。しかも、このケースでは、きちんと追加書類を提出できれば、その後すんなりと開始決定が出る場合がほとんどなのです。

では、具体的に、どのような追加書類の提出を命じられるかと言うと、実は裁判官によって様々なので特定するのは難しいのです。また、同じ裁判官であっても、いつも同じものを要求するとは限りませんので、こればかりは審査結果が送られてからでないと分からないというのが正直なところです。

それでも、比較的に確率が高いものをあげると反省文になります。これは債務者の直筆が条件になっていますので、司法書士が代筆することは出来ません。こればかりは債務者に書いてもらうより仕方がありません。(そもそも反省文を他人が書いたら反省にならないですから)。

内容は何故、今回、破産しなければならないほどの借金を背負ってしまったかを振り返って、今後、同じことにならないように何に気をつけていくかなどを書いてもらうことになります。あまり短いと印象が悪いので、A4なら3枚以上くらいは書いた方が良いというのが私の感想です。

 次に審査結果の三つ目ですが、最初の段階から裁判所に債務者が呼び出された場合が、これに当たります。これを破産審問と呼びます。

こうなった場合、最も厳しい結果になったと考えて良いでしょう。

通常、破産(同時廃止)の場合は裁判所に債務者は最低1回行くことになります。免責審尋と呼ばれるものです。しかし、三つ目の審査結果になった場合は、破産審問と免責審尋の2回、裁判所に行くことになるのです。

これも全体の1割~2割の珍しいケースです。でも誤解しないで下さい。別に破産が出来なくなる訳ではありません。裁判所は基本的には出来る限り破産は認める方向で審査をしますので、破産審問で裁判官が納得すれば、開始決定は出してくれます。破産審問は裁判官との1対1の面談なので債務者がドキドキするのは仕方がありませんが、極度に悲観的になる必要はありません。

 以上、申立後は3つのパターンがあることを説明しました。どのパターンになっても、クリアした後は破産開始決定というものが出されます。これで破産の第一段階が終了したことになります。しかし、まだ終わりではありません。

前回も話しましたが、開始決定は「支払うべき財産が無い」ということを裁判所が認めてくれた段階です。まだ、借金の支払義務は残っています。

では、次回は開始決定の後の流れについて説明しましょう。

 

6月 29 2009

シリーズ 自己破産⑨ 破産申立その後(前半)

 さて今回は、裁判所に破産を申し立てた後の流れについて説明します。例によって、名古屋地裁の流れになりますので、他の裁判所では異なる部分があるかもしれません。

 まず、申立をすると事件番号が裁判所から付与されます。具体的には平成〇〇年(フ)第〇〇〇〇号というものです。〇〇には数字が入り、その年の1月から1号と数えて年が変わったら、また1号に戻ります。だから12月の後半に申し立てると、その年の申し立てた裁判所の破産の事件数が、だいたい分かります。また、(フ)は破産の申立を意味する記号です。申し立てた事件の種類によって、記号が変わります。

事件番号が付与されたら、これを各債権者に郵便で教えてやります。実は債権者にとっては、この事件番号は何よりも知りたい情報なのです。何故かと言うと、事件番号と申立裁判所が分かると、破産された債権を経費で落とすことが可能になるのです。要するに税金対策として使える訳です。

だから、ほとんどの債権者は、「破産することになりました」と言うと、たいしてしつこく追求もせず、このように言ってきます。「早く申立をして事件番号を教えて下さい」と。実際に事件番号を教えると、その後は何の音沙汰もなくなる場合がほとんどです。債権者からしたら、「どうせ回収できないんだから、経費で落として税金を減らした方が良い」という考えになるようです。破産する債務者の方も、こういう事情は分かっていた方が良いと思います。

ただし、このように書くと誤解する方がいるかもしれませんので、一つ注意しておきます。集中的に短期間で借りて、ほとんど返済せずに破産申立をすると、さすがに債権者はクレームをつけてきます。計画破産ではないのかというクレームです。債務者や司法書士に向けて言ってくるだけなら良いのですが、裁判所に対して抗議してくる場合もあります。(これを異議申立と言います)。裁判所が、債権者の異議はもっともであるという判断をしたら、破産が出来なくなる(免責が取れなくなる)恐れもありますので気をつけましょう。

 さて、事件番号を債権者に知らせたら、後は裁判所の審査結果を、しばらく待つことになります。審査結果は大きく分けて3種類になります。

 一つは、最も良い結果になった場合で、何の指摘もなく破産開始決定と免責審尋呼出状が送られてくるケースです。非常に恵まれたケースで破産申立全体の10%くらいしかないと思いますので、あまり期待しない方が良いでしょう。

ここで予備知識として説明しておきますが、破産手続きは開始決定と免責決定の二つの決定をもらうことで終了します。よく開始決定を破産の終了だと思っている人がいますが違います。開始決定が出た段階では「支払うだけの財産が無い」という事実を裁判所が認めただけで、まだ借金の支払義務は消えていません。その次に免責決定をもらって始めて借金の支払義務が消えるのです。従って、免責決定をもらうまでは破産手続は終了していないのです。

開始決定が送られてくると、一緒に免責審尋呼出状が入っています。免責審尋とは免責を認めるかどうかを決める為に債務者を裁判所に呼び出して面談をすることです。これについては後で詳しく説明します。

 それでは、二つ目と三つ目に関しては次回に説明しましょう。

 

 

 

6月 19 2009

臨時ニュース 貸金業参入規制厳格化

 今月18日に貸金業者の参入規制が厳格化されましたので、お知らせします。

 具体的には、今までは貸金業を開業するにあたって、純資産額が500万円以上あれば良かったのですが、これからは2000万円以上必要になります。

この改正により、少ない資金で小規模の悪質業者が気軽に開業することが難しくなるものと予想されており、悪質業者の新規開業に歯止めをかけることが期待されています。

 更に新たな改正として、貸金業取扱主任者の資格試験制度が始まります。宅建業や旅行業にも同様の制度がありますが、営業所を設けるにあたって、各営業所ごとに一定数の資格試験合格者を配置しなければならないという制度です。

資格試験の合格者を営業所に配置させることによって、違法な営業に歯止めをかけることが期待されています。

6月 15 2009

シリーズ 自己破産⑧ 債務増加の経緯

 さて、今回は自己破産の提出書類の中で最も裁判所が注目すると言われている「債務増加の経緯」についてです。

 「債務増加の経緯」とは、どういう書類かと言うと、どのように借金が膨らんでいったのかを、日時を示しながら、なるべく詳しく説明していく作文です。債務者にとっては、自分の借金の歴史を振り返ることにもなります。

大抵の場合、現在の借金を返済することに集中している為に、何故、自分の借金が、ここまで大きくなってしまったのかを忘れてしまっている人も少なくありません。「債務増加の経緯」を書くことによって、改めて自分を見つめ直す良い機会になったと言う人が多いのも事実です。

 また、裁判所も非常に重要視している書類で、いい加減に少ない分量しか書かれていない場合は、書き直しを命じられる時もあります。逆に非常に詳しく日時も正確に書かれていると裁判所の印象もグッと上がって、破産の審査が順調に進む傾向があります。

何故、裁判所が重視するのかと言えば、裁判所は破産において、やはり債務者に反省を求めているからだと思います。借金を法的にチャラにする訳ですから、少しは反省してもらわなければ困るというのが裁判所の本音でしょう。

「債務増加の経緯」を書くことによって、債務者に借金について、じっくりと振り返ってもらい、どういう行動がいけなかったのかを考える、きっかけにしてもらおうというのが狙いだと思います。

 具体的な書き方としては時系列を、はっきりさせてから書き始めると良いものが書けることが多いようです。

最初に、借金が増える、きっかけになったことを、まずは片っ端から書き出して、その一つ一つの事柄に対して日時を書いていきます。それが出来たら、最後に日時の順番に事柄を並べ替えれば時系列表が完成します。あとは、もう一度、時系列表を最初から読み返して矛盾したところが無いかを探します(記憶とはあいまいなものなので、大体いくつかは矛盾点が出てくるものです)。最後に記憶を確かめながら、矛盾点を直していきます。矛盾の無い時系列表が出来たら後は、それを見ながら文章にしていけば良いのです。

 文章を書きなれていない人には大変な作業かもしれませんが、矛盾点の洗い出しには司法書士も参加してアドバイスできますし、何と言っても裁判所が注目する書類ですから、頑張って頂くしかありません。

 では、次回は「破産申立その後」と題して、申立の後の流れについて説明します。

6月 02 2009

シリーズ 自己破産? 破産しても残る財産(後半)

 さて、前回からの続きです。

 前回の最後に車の財産評価について書きましたが、車に関しては私の事務所のある愛知県では非常に破産のネックになるケースが多いです。どういうことかと言うと、ローンが残っている場合、車が引き揚げられてしまいますが、それを極端に嫌がる人が多いからです。この辺は東京を中心とした首都圏とは違う部分でしょう。(東京だと最初から車を持たない人が結構います)。

車が地方では生活に必要であるということを差し引いても、生活の為の車ならば小型の中古車でも充分なはずですから、引き揚げられた後に安い中古車を購入すれば済むはずです。裁判所も車が必要なことは分かっていますから、安い中古車ならば認めてくれます。(もちろん登録から5年以上、軽なら4年以上経っている国産車を選びます)。

ところが愛知県の人は、自分の車に強力な愛着を持っている人が多くて、手放すことを極度に嫌がるのです。その為に破産に踏み切れなくて、本来、助かる人が助からなくなるというケースが出てきます。これは、やはり本人に決断して頂くしか仕方がありません。

 次に最も問題になる不動産についてです。不動産を持っていて尚且つ、同時廃止の基準を満たす為には、以下の条件をクリアーする必要があります。

現時点での住宅ローンの残額と固定資産評価額(役所の税務課で証明書を取得できます)を比べて、建物の場合はローン残額が評価額の1.5倍以上、土地の場合はローン残額が評価額の2倍以上である場合は、不動産が無価値であると裁判所は判断してくれます。価値が無い訳ですから、上記の条件に当てはまれば同時廃止が可能になる訳です。

また、評価額が上記の条件を超えていた場合でも、もう一つ救済措置があります。それは、近隣の不動産業者2名の査定書をつけて、その査定額の平均値と住宅ローン残額を比べて、ローン残額が平均値の1.5倍以上あれば、やはり無価値と判断されます。

ただし、いずれの場合も同時廃止で処理できるというメリットはありますが、不動産は手元には残りません。当然、ローン会社によって競売にかけられるか、あるいは任意売却をして売却金をローン会社に支払い、それでも残ったローン残額を破産処理するという手続になります。(実際には、ローン全額を破産処理して、後から競売や任意売却をするケースが多いと思います)。このように不動産が手元に残らないという点が個人再生との大きな違いとなります。

 あと、賃貸住宅に住んでいる場合の敷金についてですが、破産の場合は無価値と判断されています。部屋を出ない限り本人が手にする可能性はないからでしょう。しかし、一つ不思議なことがあって、個人再生の場合は敷金も清算価値(破産の場合の財産に相当)に含まれています。この違いは何故、生じているのか未だに私は分かりません。ひょっとして名古屋地裁独特の運用なのかもしれませんが。

 最後に現金の取り扱いについてです。現金は99万円までなら財産に含まれないことになっています。こう書くと一見、現金は結構残るように思えますが、実は、この場合の現金には厳しい条件がつけられています。

その条件とは、「破産申立の半年前以降に他の財産から現金化されたものは現金に含まれない」というものです。

これは結構、厳しい条件です。ちなみに銀行預金や郵便貯金は現金とはみなされません。これが法律の世界と生活感覚の違いの最たるものですが、普通の生活感覚では預金は現金という認識ではないでしょうか。しかし、法律の世界では預金は預金者の銀行に対する債権という認識なのです。

従って、銀行預金を申立3ヶ月前に引き出して現金化した場合は、先ほどの条件に当てはまらないことになり、財産として考えなければならなくなります。(私は、この取り扱いは非常に大きな矛盾だと思っています。タンスや金庫に入れていなければ現金として認めないというのは余りにも通常の生活感覚から離れています。改めるべきではないでしょうか)。

あと、よく質問されるケースとして、財産を換金して裁判費用や司法書士費用を支払った場合はどうなるかについてです。結論を言うと、裁判所は全く問題にしません。要するに破産を行う為に使われた費用であることが明確なので構わないという判断になるようです。

従って、生命保険の解約返戻金が同時廃止の基準を超えていたけれど、そこから裁判費用と司法書士費用を支払って減らすことにより、同時廃止基準に収めるということは普通に行われています。

 では、今回のテーマは以上です。次回は「債務増加の経緯」について取り上げます。

5月 27 2009

シリーズ 自己破産⑥ 破産しても残る財産(前半)

 今回の話題は「破産しても残る財産」です。これも結構大きなテーマなので、前半と後半に分けて取り上げます。

 まず、覚えて欲しいのが破産には大きく分けて2種類あるということです。

 一つは管財事件と言い、破産管財人が裁判所から選任されて、破産者の財産を調査して、生活に必要な最低限の物を残して、換価できる財産を金銭に換えて債権者に分配します。この間、破産者は引っ越しの制限を受けたり、郵便物を管財人に点検されたりと、いろいろと制約があります。また、破産を申し立てるにあたって裁判所に納める予納金も約40万と、かなり高額になっています。(最近は少額管財と言って20万くらいで済む場合もありますが、それでも結構な額ですね)

二つ目は、同時廃止事件と言い、破産者の財産が総額で40万未満の場合(名古屋地裁の基準です)、管財人は選任されず、破産者の財産の換価も行われないで破産手続きが進んでいきます。要するに40万未満の財産はまるまる残るということになります。これは管財事件の予納金が約40万なので、予納金を支払ったら破産者に財産が残らない場合は管財人を選任しても仕方が無いからです。ちなみに同時廃止事件の予納金は約1万5000円です。管財事件とは随分と違いますね。

では、申立比率はどうなっているかというと、圧倒的に同時廃止事件が多くて、9割近くを占めています。管財事件になる人の大半が事業主や法人なので、個人の破産と言えば、ほとんどが同時廃止と言っても過言ではありません。

 このような事情を踏まえて、本日の話題も同時廃止事件についての説明になります。では、どのような基準で同時廃止と認められるのでしょうか。(以下は名古屋地裁の基準です)

 まず、財産の総額が40万を超えないことです。これは先ほど説明しましたね。でも基準は、これだけではないんです。

 次に単品で30万を超えないことです。ようするに財産が単品で39万だった場合は同時廃止とは認められないことになります。ちなみに保険31万と預金8万でもダメです。保険29万と預金10万ならOKということになりますね。あと、この場合の単品とは一つの項目という意味になります。例えば生命保険に3本入っていて、15万と10万と10万の返戻金があったとしたら、生命保険単品で35万と判断されてしまいます。

 次に退職金ですが、これはすぐに受け取れる財産ではありませんので特例が設けられています。具体的には申立時に自己都合で退職したと仮定した時の退職金の8分の1が財産とみなされます。(もちろん実際に退職する必要はありません)

 次に車ですが、ローンが残っていない車が財産評価の対象になります。何故かと言うと、ローンが残っている場合はローン会社が車を引き揚げてしまう場合が、ほとんどなので、手元に車が残らないからです。ではローンの終わった車に関しては、国産車であれば、普通乗用車は5年、軽自動車は4年を経過していれば無価値と判断されます。要するに財産に含まれませんから車は残るということです。上記以内の年数であったり、年数に関係なく外国車の場合は、車の査定をしてもらって、その査定額が財産となります。

 さて、長くなりましたので本日は、ここまでと致しましょう。この続きは次回に回します。

 

 

 

 

5月 21 2009

シリーズ 自己破産⑤ 破産を決意した時に必要なもの(後半)

 本日は前回からの続きです。

「銀行預金通帳・郵便貯金通帳」 本人名義のものは全て必要です。過去1年分の記帳が条件なので、1冊で足りない時は古い通帳も必要です。よく、記帳しないで放っておく人がいますが、そうすると破産の為に久しぶりに記帳した時に「オマトメ」と表示されて途中の記帳が省略されてしまうことがあります。この場合は、銀行に行って省略分のコピーを受け取ってこなければなりません。(結構、面倒です。こまめに記帳しましょう)

「車検証」 首都圏の人は別にして、地方の場合は車の所持率は非常に高いと思われます。車が無いと生活できないという場合も多いでしょう。従って、車検証の提出は必須です。登録年度や所有者、ローンが終わっているかどうかなどを判断する為の資料となります。ちなみに同居人が車を持っている場合も必要になりますので、ご注意ください。(もちろん同居人が車を取られる訳ではありません。誰の名義かを裁判所が確かめる為です)

「退職金見込額証明書」 派遣やパートや契約社員の場合は不要です。当然ですね。正社員で退職金が無い場合は、無いことを証明する書類の提出を求められます。ある場合は金額を計算して計算の根拠を示す書類(多くの場合、就業規則になるでしょう)を提出することになります。

「保険証券」 本人が契約者となっているものは全て必要です。よく忘れるのが自動車保険と子供にかけている学資保険ですね。あと、親が支払っているけど契約者は本人だったというケースも提出義務はありますので注意が必要です。

「保険解約返戻金証明書」 良く勘違いされますが、保険を解約する必要はありません。保険を継続したまま、現在貯まっている返戻金だけを知ることが出来るのです。保険会社に電話して、現時点での返戻金証明が欲しいと言えば、送ってくれます。明らかに返戻金が無いタイプの県民共済とか、損害保険などは不要です。

「診断書」 必須ではありませんが、病気やケガが借金の原因に含まれている人は提出した方が良い書面です。提出されれば裁判所が破産に理解を示してくれる可能性が高くなると思われます。

「パスポート」 借金の原因とは関係なく、海外旅行経験がある人は出すことになっています。出して問題になった経験は私はありません。何故、出すのか私にも不明ですね。

「税金・社会保険料の滞納額証明書」 税金や社会保険料を滞納している人は金額が分かるものを出さなくてはなりません。督促状が来ているはずなので、それを出せばよいでしょう。督促状を無くしてしまった人は覚悟を決めて、税務署や社会保険事務所に電話しましょう。ちなみに税金や社会保険料は破産できません。(正確には破産しても支払義務は残ります)

 以上が主だった破産に必要な書類です。結構、たくさんありますね。でも、借金が全額、帳消しになる訳ですから、この位の大変さは我慢しましょう。

では、次回は破産しても残る財産について説明しましょう。 

 

 

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