3月 06 2024
遺言執行者の通知義務 遺言㉘
遺言執行者の通知
旧民法では遺言執行者が法定相続人に通知をすることは義務ではありませんでした。しかし、それでは法定相続人の知らないところで勝手に遺言執行が進んでしまうという懸念があり、改正民法では遺言執行者の通知は義務となりました。
就任承諾通知義務
遺言執行者は遺言書に記載されている場合が多いと思います。(家庭裁判所で選任される場合もある)。しかし遺言書に記載があれば自動的に就任するわけではありません。なぜなら遺言書に書く時に、就任の意向を確認する必要が無いからです。遺言書を開封して始めて、自分が遺言執行者にされていることを知ったというケースもあります。
ですから遺言執行者は遺言に記載されていても拒否する権利があります。裏を返せば、就任を承諾して始めて遺言執行者になるのです。故に、就任を承諾したかどうかは法定相続人にとって重要な情報になります。従って、就任を承諾したという事実を法定相続人に通知することが、改正民法では義務化されました。
遺言内容開示義務
また法定相続人は遺言書の内容を知る権利があると考えられ、遺言執行者には遺言書の内容を通知する義務も設けられました。
これは主に遺留分請求を迅速にするためというのが理由の一つだと考えられます。しかし改正民法では、遺留分の無い兄弟姉妹甥姪に対しても通知義務が課されています。通知の方法としては、遺言書の写しをそのまま添付すれば良いとされています。
財産目録開示義務
次に相続財産の開示義務があります。相続財産の目録を作って、それを法定相続人に通知する義務です。私が遺言執行者の実務をやっていて個人的に最も抵抗があるのが、この財産目録の通知義務です。しかし法律で義務付けられているので、やらない訳にはいきません。
なぜ抵抗があるかと言うと、送られた相続人から苦情が寄せられることがあるからです。遺言で指定されていない相続人の立場からすると、「自分がもらえない財産の詳細なんて見たくもない」というのが本音でしょう。
他には、予想よりも多い財産が書かれていた場合、「本当に本人が書いたのか」、「認知症になっていて誘導して書かせたんじゃないのか」などのクレームになり易く、弁護士に駆け込んで大掛かりな争いに発展してしまうこともあります。個人的には財産目録を通知することによって、争いの種をまいているのではないかと思うことがあります。
終了報告義務
遺言執行者は遺言の執行が終了したら終了報告をする義務があります。
このように改正民法では遺言執行者に対して様々な通知報告義務を課しています。一般の方で遺言執行者に指定された場合は、注意してください。もし通知義務に違反した場合、損害賠償責任を負わせられる可能性もありますので覚えておきましょう。
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