司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

2017年1月

1月 27 2017

ペットのための信託(家族信託(民事信託)22)

「ペット」というよりも、「家族の一員」だという人はたくさんいますね。
わたしも昔、シュナウザーを飼っていました。なつかしいです。

さて、自分は高齢なので、もしも自分が先に亡くなってしまったら、残されたペットはどうなるのだろう、心配でしょうがない、という人に良いものがあります。
ペットのための信託という方法です。

相続人がいない人はもちろん、自分のペットを親身になって世話をしてくれそうな適当な相続人が見つからないということは、あり得ますよね。
でも知人にはペットが大好きで安心して任せられそうな人がいたとします。
こんな場合には、ペットのための信託が最適です。

ペットのための信託の標準的な設計(スキーム)は以下のようになります。
飼主(委託者)
遺言でペットを知人に譲る旨を記載

受託者
相続発生後に預貯金の一部を受託者に移転

ペット好きの知人(受益者)
受託者から定期的に費用をもらってペットの世話をする

信託の方法は遺言信託を使います。
これでペットの世話を任された知人も費用の心配をすることがなく、安心して飼い続けることが出来ます。

注意点としては、受託者に移転する金額を、他の相続人の遺留分を侵害しない程度におさえておくことです。

信託について、より詳しい情報を知りたい方は以下をクリック

https://www.hashiho.com/inherit/family/

1月 23 2017

郵便貯金の相続手続には注意が必要(遺産整理④)

郵便貯金は昔、公社でしたね。
そのせいか、他の銀行とは異なる部分が多いですが、特に相続手続は変わっているため注意が必要です。

郵便貯金の「口座の照会」

まず、亡くなった人の口座の名寄せというものがあります。
同じ名義の口座が他に無いかを探す手続ですが、銀行だとこちらが言わなくても積極的にやってくれます。
郵便貯金では「口座の照会」と呼び、相続とは別の用紙に記入して申請しなければなりません。

名寄せをしないと場合によっては、相続手続がされないまま口座が放置される恐れがあります。
金融機関にとっても困ったことになるはずですが、郵便貯金では別の手続を取らないと、確かめることも出来ません。
もしかすると、昔公社だったころの体制が残っているのかもしれませんね。
早期の改善が望まれます。

郵便貯金の委任状の形式

委任状の形式も銀行と郵便貯金では異なります。
相続人が高齢者の場合、誰かに委任して相続手続をするというケースも少なくないでしょう。
その場合の委任状は、通常の銀行ならば、委任者と受任者と委任した内容が正確に書かれていれば形式は問わないのが普通です。

ところが、郵便貯金の場合は、郵貯側が用意した指定の委任状でなければ受け付けません。
どうも勝手が違うので、とまどうことも多いです。

通常、委任状は委任者の署名と押印があれば、受任者と委任の内容に関してはワープロの印字でも構わないのが普通です。
現実に、他の銀行では全て、これで通用しています。
(銀行だけでなく、裁判所や法務局などの役所でも、この委任状で通用します)

しかし、郵便貯金の指定する委任状では、受任者の住所氏名や、相続の場合は委任の内容まで、委任者が直筆で書かなくてはなりません。
(直筆で書くように、という注意書きがあります)。
このように、取扱いが特殊なので郵便貯金がある場合は気をつけなければなりません。

相続人が高齢者の場合、文字をたくさん書くという行為が結構つらくなっている場合が多いですよね。

高齢化が進んでいる日本において、相続人が高齢者であるケースは今後、どんどん増えていくでしょう。
そういう時代の流れの中で、郵便貯金の高齢者に厳しいルールは、なるべく早く見直していただきたいと思っています。

郵便貯金は慣れていないと他の銀行とは勝手が違いますので、何度も出向くことになりかねません。
高齢で出向くことや書類を何枚も記入することが大変ならば、専門家に任せるのも1つの方法ではないでしょうか。

より詳しい情報をお知りになりたい方は以下をクリック

https://www.hashiho.com/inherit/isanseiri/

1月 18 2017

遠方の戸籍を取得するときの注意(遺産整理③)

戸籍を取り寄せるときの正しい請求先は?

過去に転籍をされた方が亡くなった場合、出生まで遡らなくてはならないため、場合によっては遠方の戸籍を取る必要が出てきます。
しかし、戸籍を取る為だけに遠方まで出かけていくのは交通費の無駄になってしまいますので、多くの場合、郵送で取得することになるでしょう。

遠方の役所に戸籍を取り寄せる場合は、平成の大合併と言われた市町村合併に注意する必要があります。
日本全国、非常の多くの自治体が合併によって併合されましたので、戸籍の地名には既に役所が無いという事態になっているケースも珍しくないからです。

まず、自分が請求しようとしている自治体が存在しているかどうかを確かめて、存在していなかった場合、どこの自治体に吸収されたのかを探す必要があります。
ここまでやって、始めて正しい請求先が分かります。

古い戸籍収集はなぜ大変なのか

他にも、転籍が多い方が亡くなった場合、すべての戸籍を集めるのにかなり時間がかかるということも覚悟しておきましょう。

よく、「戸籍なんか簡単に取得できる」と勘違いされている方がいらっしゃいますが、実は相続の戸籍収集はプロでも大変な作業です。

簡単だと思われている方は、現在戸籍の取得のことを想像されているのでしょう。
現在戸籍は、現代語で書かれていて機械で印字されていますので見やすいですし、1通だけなので確かに取るのは簡単です。

しかし、相続の戸籍は出生まで遡る必要がありますので、古い戸籍まで全て集める必要があります。
事前に何通になるかは分かりません。
一つ遡った戸籍が届いて、その前の戸籍の請求先が判明するからです。
高齢者が亡くなった場合は、戦前の戸籍を取得する必要も出てきます。

戸籍は古くなると手書きになりますので慣れていないと非常に読みにくくなります。
また、戸籍法は何度も改正されていて、その度に形式が変更されています。
どこに何が書いてあるかが、改正のたびに変わっていて、慣れていないと見つけるのが大変です。

更に戦前の戸籍になると、家族制度そのものが現在と全く違いますから、知識が無いと何が書いてあるのか分からなくなる恐れがあります。
戦前は、家督相続の時代なので、結婚しても新しい戸籍が出来る訳ではありません。
一つの戸籍に複数の家族が同時に入っています。

これらの戸籍を一つ一つたどっていって戸籍収集をしていくのですが、転籍が多いと、時間がかかります。
戸籍を郵送で請求して、それを見て他の自治体にも戸籍があることが判明し、その後、他の自治体にまた郵送で請求して、の繰り返しになります。

相続手続きの始まりは戸籍収集

戸籍が集まらないと、銀行預金や不動産の名義変更は出来ません。
また、銀行は相続が開始すると預金口座は凍結され、引き出しが出来なくなります。
引き出すには相続人を確定する必要があり、そのためには戸籍が必要です。

亡くなった方や他の相続人の転籍が多い場合、戸籍集めに時間がかかります。
ということは同時に、解約や名義変更と言った相続手続にも時間がかかるということを覚えておくと良いでしょう。

より詳しい情報をお知りになりたい方は以下をクリック

https://www.hashiho.com/inherit/isanseiri/

1月 15 2017

想定外の相続人がいた!(遺産整理②)

想定外の相続人の存在

相続の相談に来られた女性がいました。
当初のお話では「姉が亡くなったのですが、子供はいないし、両親も先に亡くなっているので、自分と兄が相続人です。相続手続をお願いします」とのことでした。

もう一人の相続人であるお兄さんも同様の認識でした。
わたしも「兄弟姉妹の相続」だから戸籍調査は大変だろうと思って、さっそく役所に行きました。
すると、意外な事実が判明したのです。


古い戸籍に結婚と離婚の記載が見つかり、被相続人(相談者の亡姉)は二度目の結婚だったことが判明しました。
兄も相談者である妹も、この事実は知りませんでした。
しかも、大変短い一度目の結婚期間中に何と子どもが1人生まれていたのです。
その子どもは離婚後、最初の夫に引き取られていて、それきり縁が無いようでした。

追跡調査をした結果、その子どもは生きていることがわかり、結果、法的にその子どもが唯一の相続人になりました。
被相続人とはまったく縁が無くなっていた一人の子どもが相続人になったのです。

感情的に難しい解決

自分達が相続人だと思っていた兄妹は大騒ぎになったことは言うまでもありません。
まるでドラマか映画にでも出てきそうな展開が現実のものとなったのです。

子どもも両親もいないと思っていた姉の世話を兄妹がしてきたこともあり、複雑な思いだったことだと思います。
私が「事務所でお互いに会って話し合ったら、いかがでしょう」と提案しても、承諾されることはありませんでした。
お気持ちは良く分かります。しかし、法的にはどうしようもありません。

相続人として突如連絡を受けた、子どもに該当する方は、物心ついたころから母親とは一度も会ったことが無いし、亡くなったことも知らなかったという話です。
しかし、法的に正当な権利者であることは間違いありません。

この場合の解決方法は、お子様が一旦、相続手続を取って、後は、お子様と、被相続人の兄妹の話し合いで、今までの世話をしてきた部分の贈与を受けるという方法くらいしか無いように思います。
もちろん、お子様の承諾が前提ですが。

結局、兄妹は話し合いを拒否することを、続けられ、弁護士に相談に行かれるようでした。明確な相続人が別にいて、自分たちは相続人ではないことが確定してしまったケースなので、弁護士でも、どうしようもない案件だとわたしは思っています。

もし戸籍を見る機会があれば確認を!

実は、兄妹は、以前に姉の古い戸籍を見たことがあるようなので、発見するチャンスはあったのです。
しかし、思い込みとは怖いもので、一度目の結婚・離婚の記載を見逃していたようです。古い戸籍は見慣れていないと、手書きの旧字で書かれていたりするので、読み取りにくいということもあるでしょう。
戸籍の形式も現在とは全く違いますので、どこに何が書かれているのかも慣れていないと分かりにくいのです。

もし、ご自身で手続きをしていたら、気が付かずに銀行などに戸籍を出して、窓口で「戸籍が足りません」と指摘を受け、足りない戸籍を取得した段階で判明して、銀行から「あなたは相続人ではありません」と言われて手続がストップすることになったでしょう。
具体的な相続手続きの前に判明しただけでも、ご相談を受けた意味はあったと思っています。

この例のように、あとから子の存在がわかることは、何度も経験しています。
あるいは、子は存在していなくても、実は再婚であったことも、ご高齢の方には珍しいことではありません。
たいていの場合、なぜかご兄弟はその事実を知らないこともよくあります。
昔の事情ということでしょうか。
思い込みで、手続きを進めると、意外な事実に出会うこともありますので、手続きをされるときは、このブログのことを覚えておいてくださいね。
いざというとき、驚かずに済みます。

より詳しい情報をお知りになりたい方は、以下をクリック

https://www.hashiho.com/inherit/isanseiri/

1月 04 2017

第三順位(兄弟姉妹・甥姪)の相続のための戸籍(遺産整理①)

第二順位の相続人の死亡証明

相続が発生した時、被相続人に子供がいなかった場合、ほとんどのケースで、相続人は配偶者と、第三順位の人(兄弟姉妹・甥姪)になります。
これは、高齢化が進んでいる日本においては、相続が発生したときには、第二順位の直系尊属(両親・祖父母)は既に亡くなっているケースが大半だからです。
従って、第二順位(直系尊属)が相続人になることは非常に稀なケースとなります。

法的には、第三順位の相続手続を進めるためには、第二順位の相続人が既に死亡していることを戸籍等で証明しなくてはなりません。
このとき、第二順位の相続人は永久に遡ることが出来るので、どこまで証明する必要があるのかが問題になります。

この基準が役所によって統一されていません。
すると、非常にやっかいなことが起こり得るのです。

役所ごとの証明基準の違い

例えば、不動産の名義変更の際に提出する役所は法務局ですね。
法務局においては、誕生日から計算して110歳を超えている場合は、それ以上、遡る必要は無いというルールを設けています。
これは、ある意味、合理的なルールで、最高齢の人でも110歳は超えていないので(注)、これ以上遡るのは現実的では無いという理屈です。

(注)2018年4月に112歳の方が存在します。ただし、法務局の基準は、いまのところ変わっていません。もしかすると、110歳以上の方がある程度の人数に達すると、基準が変更されるかもしれませんね。

一方、自筆証書遺言を検認する場合、提出するのは家庭裁判所です。
名古屋家裁では法務局とは全く異なる基準を設けているのです。
(法務局は全国統一基準だと思われますが、家裁は都道府県によって異なる可能性があります)。
家裁のルールは、被相続人の両親が明治または大正生まれの場合は、それ以上遡る必要は無いというものです。

これは、あまり合理的では無い、少々雑な基準ではないかと私は思います。
何故なら、祖父母の年齢では判断しないと言うことになるからです。
この点に関しては、法務局の基準の方が納得がいきます。

遺産整理業務をしていますと、遺言の検認と不動産の名義変更を同時に引き受けるケースがあります。
提出する役所によって基準が異なるのは、正直、戸惑いを覚えます。
まさに縦割り行政の弊害と言えるでしょう。
できれば、基準は統一して欲しいと思っています。
皆さんが書類を準備する場合にも、わかりやすくなりますよね。

より詳しい情報をお知りになりたい方は以下をクリック

https://www.hashiho.com/inherit/isanseiri/