司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

5月 26th, 2026

5月 26 2026

借金の相続は遺言でも決められない 遺言㉛

司法書士の橋本剛太がお答えします。

Q 借金の相続について遺言書に書くことはできますか?

A 遺言書に書くこと自体はできますが、法的な効果は期待できません。遺言ではプラスの財産の分け方については効果がありますが、借金のようなマイナスの財産の分け方には効果がありません。

Q では遺言で借金を相続しないとされた相続人も、安心できないということでしょうか?

A はい。借金の相続について遺言で指定しても効果はありませんので、「借金を相続しない」と書かれた相続人も借金を免れることはできません。例え金融機関などの債権者に遺言書を見せたとしても、法定相続人ならば通常どおり請求されます。

Q では遺産分割協議書で、借金を相続しない相続人を定めることはできますか?

A いいえ。遺産分割協議書の場合も遺言書と同様に借金の相続人を決めることはできません。理由としては、遺言書や遺産分割協議書で借金の相続人を決めることを可能にしてしまうと、財産や収入が無くて返せない相続人に借金を押し付けて、事実上、借金を踏み倒すことができてしまうからです。法律は、このような行為を許していないということですね。

Q では借金の相続は、法的にはどうなるのでしょうか?

A 借金の相続は法的には法定相続分で各相続人に相続されます。法定相続人が配偶者と子ども2人ならば、配偶者2分の1・子がそれぞれ4分の1ずつとなります。借金の相続を特定の相続人に決めるためには債権者の同意が必要です。しかし現実には債権者が同意するケースは極めて稀です。債権者の立場から見たら、法定相続人全員に請求できる方がリスクが少なく有利だからです。

Q では遺言で特定の相続人に財産を全て相続させると書かれていたら、借金がある場合は、遺言で指定された相続人が特別に有利になるのでしょうか?

A 確かに、このような遺言が残されていたら「財産は全て相続するのに、借金は法定相続分しか負担しなくて良い」という状況になり、不公平になります。そこで最高裁判所が、この不公平を是正する判決を出しています。

Q 不公平を是正する最高裁判決とは、どのようなものですか?

A それは、「相続人同士の間では、財産を全て相続した相続人が、借金も全て相続すると解釈できる」という判断をしました。ここで重要なのは「相続人同士の間では」と言う部分です。
債権者との間では変わらず法定相続分で借金は相続されます。債権者は法定相続分で各相続人に請求できます。

そこで遺言で指定されていない相続人が、債権者に請求されて自分の法定相続分の借金を支払った場合は、その支払った分を遺言で指定された相続人に請求できるとしたのです。つまり債権者に対しては支払拒否はできないけれど、支払った分を財産を相続した相続人から取り返すことができるのです。なかなかうまいことを最高裁は考えたと思います。

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