司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

12月 14 2017

生命保険の活用で遺留分トラブルを回避(相続税⑥)

相続における生命保険の活用方法は、何も生命保険控除だけではありません。1つ具体例を紹介しましょう。

例えば、親が1人子ども2人の家族で、主な財産は自宅不動産だけだったとします。
現金が1円もないことは、ほとんどありえませんが、財産に占める現金の割合が少ないことは、よくあります。
子ども2人は、長男次男としますね。
そして親は遺言で不動産を長男に相続させると決めていたとしたらどうなるでしょう。

遺留分の発生とその後のトラブル

この場合、相続が起こると次男に遺留分が発生します。
次男が長男に対して遺留分減殺請求をすると、長男は遺留分相当の遺産を次男に渡さなくてはなりません。
この例でいうと、普通に相続したとすると2分の1ずつですが、遺留分はその半分なので、4分の1ですね。

預貯金があれば良いのですが、不動産以外のめぼしい財産がありません。そうすると、長男は遺言で与えられた不動産の一部を次男に渡すしか方法がなくなります。
渡すといっても、家を切って渡すわけではありません。
登記により、長男の持ち分が4分の3、次男の持ち分が4分の1となるのです。

結果的に不動産は長男と次男の共有になり、売却したり抵当権を付けたりするときに必ず次男の同意が必要になります。意見が同じなら良いのですが、違っているとトラブルに発展します。こうなることを避けたいがために、親は遺言で長男に不動産を残したのですが、親の希望は通らなくなってしまうのです。

生命保険による遺留分問題解決方法

これを生命保険で解決することができるのです。

親が生前に生命保険を契約して、契約者と被保険者を親、受取人を長男にしておきます。長男に支払われる保険金を次男の遺留分相当額にしておくのです。
たとえば、家の価値が4000万円だとしたら、遺留分は4分の1ですから、1000万円です。
そうすることで、長男は保険金によって次男に遺留分を支払うことが可能になり、めでたく遺言どおりに不動産を単独で所有することが出来るのです。

遺留分とは割合を主張できるだけで、請求するものは選べません。遺留分相当の金銭が支払われたら、次男は黙って受け取るしかありません。(金銭を断って、不動産の一部をよこせ、とは言えないのです)

このように生命保険は、相続の際に色々な方法で活用することが可能です。覚えておきましょう。

>>>節税保険にも興味がある人はこちらをどうぞ<<<

12月 04 2017

突然借金の請求が……兄弟姉妹の相続放棄(相続放棄⑩)

相続放棄で、よく問題になるのが兄弟姉妹の相続放棄です。
なぜ、問題になりやすいかと言うと、いつまでなら相続放棄が認められるのかが分かりにくいからです。

最初から子どもも両親もいないことが分かっている場合は、それほど問題にはなりません。通常と同じように、被相続人が亡くなったのを知った時から3カ月以内に家庭裁判所に申述をすることになります。

問題は、亡くなった人の子どもや両親が先に相続放棄をしていた場合です。この場合、子どもや両親の相続放棄が家裁で認められて初めて兄弟姉妹が相続人になりますので、先順位の相続放棄が認められたのを知った時から3カ月以内が申述期間(熟慮期間)になります。

しかし、被相続人の子どもや両親と、兄弟姉妹が頻繁に連絡を取り合っているとは限りません。特に兄弟姉妹が遠方に住んでいたりすると、ほとんど会っていないというケースもあるでしょう。
そんなとき、先に相続放棄をした子どもや両親が、相続の権利が移ったことを教えてくれるとは限らないのです。

実際に、連絡せずに放置したという事例は案外多いです。
当事務所では、相続放棄をしたことにより、兄弟姉妹や甥姪などに被相続人の借金が引き継がれてしまう場合は、該当する人たちに連絡をするように強くおすすめし、そのようなサービスを行っています。
「そうなんですか?では連絡をお願いします」という人もいれば、「いえ、特に必要ありません」という人もいます。
強制はできませんので、必要ありませんと言われればそこで終了となりますが、心配にはなりますね。

先に子どもや両親が相続放棄をしている訳ですから、兄弟姉妹は、いつのまにか相続人になったとき、借金が回ってきてしまうことになります。

兄弟姉妹の相続放棄

このようなケースで、兄弟姉妹が自分が置かれた状態に気付くのは、借金の請求をされた時納税金の請求をされた時などが多いです。いきなり請求を受けて、「あなたが相続人になりました。支払って下さい」と言われる訳ですから、相当驚いてうろたえてしまいますよね。

これはあまりにも酷だろう、ということで、家庭裁判所も兄弟姉妹の相続放棄については割と広く申述期間(熟慮期間)を解釈する傾向があります。

上記のようなケースならば、気付いた日付を「請求がされた日付」だと主張することによって、先順位の相続放棄から3カ月以上経っていたとしても、家庭裁判所に認めてもらえる可能性が充分にあります。

兄弟姉妹の相続放棄は上記のような理由により遅くなりがちですが、認められる可能性は残っていますので、あきらめないで専門家に相談しましょう。

>>>相続放棄についてもう少し詳しく知りたいかたはこちら<<<

12月 01 2017

法定相続分での相続登記4つのポイント(相続登記⑫)

相続登記をする場合、圧倒的に多いのは遺産分割協議をしてから、協議書を添付して行う相続登記です。
そして、次に多いのが遺言による相続登記です。

もう1つ、相続登記にはパターンがあり、それが法定相続分による相続登記になります。これは件数としては他のパターンよりも少ないです。なぜ少ないのか、その理由についてご説明しましょう。

法定相続分の相続登記4つのポイント

法定相続分による相続登記には大きな特徴があります。
それが、法定相続人のうち1人からでも申請することが出来るという点です。例え相続人の間で話がまとまっていなくても、そのうちの1人から申請することが可能なのです。(もちろん、法定相続人全員が申請人になって申請することも可能です。)

一見、便利そうにみえる特徴ですが、件数が少ないのには、様々な理由があります。
順番に紹介していきましょう。

  1. 共有者が多いため売りにくい
  2. 法定相続分の登記をすると、その不動産は法定相続人全員の共有になります。すると、不動産売却の際には、共有者全員の同意が必要になります(具体的には全員分の実印と印鑑証明が必要です)。
    もちろん全員が同意すれば売却は可能ですが、1人でも売却に消極的な共有者がいると売れなくなってしまいます。

  3. 相続人間でトラブルが起こる
  4. 法定相続人の一人から申請した場合、他の相続人が知らない間に相続登記が行われてしまうことになるので、そのことで相続人の間でトラブルが起こる場合があります。時には、他の相続人が遺産分割調停などを起こして、登記の変更を求めてくる可能性があります。
    (変更が認められるかどうかは、家裁の判断となります。「登記はそのまま」という判断になる可能性もあります。)

  5. 登録免許税は全員分を支払う
  6. 法定相続人の1人から申請した場合でも、相続登記にかかる登録免許税は全員分を支払う必要があります。誤解されることが多いのですが、1人から申請した場合でも、1人分の登記がされる訳ではありません。
    全員分の登記を1人で行えるということなのです。

  7. 登記識別情報が発行されない
  8. 一般の方が最も気づきにくいポイントしては、法定相続人の1人から申請した場合、申請しなかった他の相続人には登記識別情報(昔の権利証に当たるもの)が発行されません。これが次に売却するときに注意すべき点になります。

    売却の際には、全員分の登記識別情報が必要ですが、提出できない共有者がいる場合は、その人に関しては司法書士に本人確認情報を発行してもらう必要があります。その際に追加費用がかかります。(法定相続人全員で申請した場合は、全員に対して登記識別情報が発行されます)

上記のように、法定相続分の相続登記には注意すべき点があります。
ただし、法的には可能な登記なので(一人から申請する場合も含めて)、申請自体は問題ありません。もし希望される場合は、注意点に対して充分に納得して行うようにしましょう。

>>>相続登記についてもう少し詳しく知りたいかたはこちら<<<

11月 24 2017

節税保険(相続税⑤)

節税保険って言葉を、聞いたことがありますか?
取り上げられることが増えてきたので、一度くらいは聞いたことがあるかもしれませんね。保険会社としても、大きな市場としてとらえているため、次々に新しい保険が販売されています。

文字通り、節税につながりますので、売れています。
ただ、保険商品や加入方法を間違えると、節税が発揮できないだけでなく、税金が増える危険性もありますので、注意が必要です。

では、上手に利用した具体例を1つ紹介しましょう。

節税保険の加入例

父が亡くなり、母と子ども2人(長男と長女と仮定しましょう)が法定相続人のケースで考えてみます。
父の生前の財産は30,000万円(3億円)と仮定します。

まずは一般的な方法で、法定相続人が3人なので「500万円×3」で受取金1500万円の生命保険を「契約者父、被保険者父、受取人長男と長女」で生前にかけておきます。これで1500万円の節税効果があります。
ここまでは、ご存知の人も多いと思います。

>>>知っておきたい生命保険と相続<<<

ここからが、本格的な節税保険の加入手法です。
まずは、贈与から開始します。
毎年長男と長女に300万円ずつ、合計600万円を贈与します。
300万円の贈与税は、110万円の年間控除額を差し引いた190万円の10%で19万円ですから、10年続けたら190万円、2人合わせて380万円です。

そして贈与された300万円を、長男と長女がそれぞれ全額を生命保険契約して保険料として支払います。
契約内容は「契約者長男と長女、被保険者父、受取人長男と長女」です。
これを10年続けると、受取額は300万円の10年分、3000万円よりも多くなります(4000万円を下回るくらいでしょうか)。

こうすると受取額の増加分は、贈与税の合計380万円を上回ります。ようするに得になる訳です。しかも、毎年600万円、父の財産が減っていき、10年で6000万円も父の財産が減りますので、相続税に関してもかなりの節税になります。
実はこれが最も大きい効果と言えます。
(ただし、保険料負担者と保険金受取人が同一なので、保険金受取の際は、一時所得として所得税がかかります。)

元々3億円だった父の財産が、契約した1500万円の保険と、長男と長女への贈与を合わせると、なんと7500万円も減ります。相続税を計算する時点では、かなりの節税につながります。

このように生命保険を上手に利用することによって、非常に高い節税効果が期待できます。
実は、資産家や経営者の間では、昔からよく知られている方法です。
今回は1つの例をご紹介しましたが、いくつものタイプがありますので、資産や目的に合わせて加入することが大切ですね。
ただし、最近は節税保険について金融庁が問題視していますので、一部の保険には、メスが入るかもしれません。

現在は、相続税など無関係だと思っていた人も、かかる可能性がずいぶん高くなりました。
本気で節税を考えてみる必要が出てきたということですね。

具体的な加入については、家族の事情によって個別にプランを練る必要があることと、契約の仕方が複雑になりますので、一般の方が独力で設計するのはお勧めできません。万が一、間違った契約をしてしまうと高額の税金が発生する可能性があるからです。
ちなみに生命保険会社に直接相談すると、自社の保険を売りたがる傾向がありますので、注意が必要です。

もし検討される場合は専門家のサポートを受けたほうが良いですね。

相続税についてもう少し知りたい方はこちらをどうぞ

11月 13 2017

死後離縁

死後離縁って、聞いたことありますか?
恐らく、ほとんどの人が聞いたことがないと思います。
死後離縁とは、養子縁組を行った養親または養子のうち、どちらか一方が亡くなったとき、生存している養子または養親が家庭裁判所の許可をもらって縁組を終了させることを言います。一般的には、亡くなった側の家族と縁を切りたい場合に使われることが多い制度です。

この説明を聞いても、あまりピンとこないかもしれません。
こういう状況になる人は、多くはありませんから。
しかし、本人たちにとってみれば、とても重要な問題であることが多いです。
一度は親族になったものを、くつがえすほどの思いとは、どういうものなのでしょうか。

死後離縁は、実務上は圧倒的に養親が亡くなって養子の方から申し立てる場合が多いです。
養子からみて養親の家族と折り合いが悪いというケースが良くあるパターンです。
財産の問題、借金の問題、あるいは人間関係にいたるまで、離縁したくなる理由はさまざまです。

死後離縁の手続は、まずは家庭裁判所に申立をして許可をもらいます。
その後、市区町村役場に家裁の許可を証する書面を持参して、離縁の届出をすることによって成立します。家裁と役所の2段階になる訳です。

書面を提出すれば、それで離縁が完了するのかというと、そう簡単ではないのです。
死後離縁は必ず認められる訳ではありません。
家裁に正当な理由があると認めてもらう必要があります。

特に注意が必要なのが、そこそこの財産を養親から相続した場合や、養親が亡くなる前に一定の財産を贈与してもらった場合などです。

相続や贈与で財産をもらった後の死後離縁は認められにくい傾向があります。養子縁組をする大きな理由の一つに「養親が亡くなった後の祭祀(注)を養子が引き継ぐ」というのがありますので、「財産をもらったのなら養親が死んだ後の祭祀を養子が行うべき」、と家裁が考えるからです。
(注)祖先を祭ること

死後離縁を考えているのならば、養親からなるべく財産はもらわないように注意しましょう。
もし既にもらってしまったならば,家裁を納得させるだけの理由が必要になると覚えておきましょう。
例えば、養親の家族から大きな嫌がらせを受けたとかいう理由はありそうですね。

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死後離縁②

11月 09 2017

死後事務委任契約とは?(任意後見④)

任意後見契約とセットで契約されることが最も多いのが公正証書遺言です。
その次に多いのが、死後事務委任契約です。死後事務委任契約は公正証書でなくても結ぶことが可能なので、任意後見契約を結んだ後に、しばらくしてから新たに契約される場合も珍しくありません。

死後事務委任という名前から想像できると思いますが、死後事務の具体的な内容は、以下のようなことになります。

委任する死後事務の具体的な内容

自分が死んだあとのことは、あまり考えたくないのが普通かもしれません。
けれど、それを考えて書面に残すことで、スムーズに事が運びます。
「立つ鳥跡を濁さず」ということですね。

それならば、エンディングノートでも良いのではないかと思いますよね。
しかし、あくまでもその人の思いをノートに記したものなので、法的効力がありません。
すると、エンディングノートには書いてあっても、残された人たちが話し合って、亡くなった本人の意思とは違うお葬式をすることも充分考えられるのです。

委任する死後事務の具体的な内容は、葬儀・納骨・埋葬・供養などを本人の希望通りにやってもらうために、細かく取り決めておきます。死亡時に連絡して欲しい人の指定や、葬儀会社や寺や墓地などを指定することもできますし、これらに使う費用の上限などを定めておくことも可能です。
死後事務のメインになりますね。

もう1つは、死後の後始末に当たる部分です。死亡した時点での未払いだった各種費用(施設利用費や入院費、光熱費や通信費など)の支払い、家財の処分方法の取り決め、役所等への届出業務の代理、などを定めておくことです。
こまごまとしたことになりますが、役所等への届出の代理などは、きちんと定めておかないと、何もことが進まなくなって、困ることがよくあります。

死後事務委任が威力を発揮するとき

こんなことは親族が行えば良いじゃないかと思った人もいるかもしれませんが、信頼できる親族が近くにはいない、というケースも少子高齢化の時代には珍しいことではなくなっています。

仮に近所に親しい友人がいたとしても、友人はあくまで法律上は他人なので、親切心で死後事務を手伝おうとしても、葬儀会社も施設も病院も役所も友人を代理人とは認めないのが普通です。つまり、友人は善意で動こうとしても動けないという状態に陥ります。

こんなときには死後事務委任契約が威力を発揮します。死後事務委任契約書があれば、友人は契約書を見せることで相手方に本人の代理人と認めてもらえます。死後事務をスムーズに進めることができるのです。

近くに頼れそうな友人もいないという場合は、司法書士などの専門家に死後事務を依頼することも可能です。

死後事務委任の重要ポイント

また、死後事務委任をする場合に重要なポイントとして、費用の問題があります。本人が死亡して相続が開始すると銀行は口座を凍結してしまうので、死後事務の費用が賄えなくなる可能性があります。
これを解決しておかなくてはなりません。

遺産分割協議を経て相続人が確定するのは結構時間がかかるのが普通ですが、死後事務は本人死亡後にすぐに費用が発生しますので、どうしても費用の問題が発生します。死後事務委任契約は、この費用の問題も解決してくれます。

良く行われる方法としては、一定の預り金を本人の生前に死後事務の受任者に渡しておいて、その旨を契約書に記載して、預り証を別途作成して契約書と一緒に閉じこんでおきます。

注意点としては、預り証は法的にきちんとしたものを作成しないと、贈与税がかけられる可能性があるということです。
トラブルを避けるためには、専門家に作成を依頼するのが良いですね。

他人にお金を渡すのが心配な場合は、本人名義の預り金口座を別途開設して、死亡後に死後事務の費用として、受任者がその口座から引き出すことが出来るように契約書に記載しておく、という方法もあります。
信用している人であっても、万が一の心配をせずに済むのは、預り金口座の別途開設ですね。

このような方法で死後の事務を滞りなく進めていけるように締結するのが、死後事務委任契約です。

遺言にしても、死後事務委任にしても、あるいは任意後見にしても、どこかのテンプレートを見てそれを見本として作成して終わってしまう人がいますが、本当は一度専門家の目を通した方が良いのになぁと思います。
ちょっとした一言が無かったりするだけで、後々とんでもないトラブルが発生する事例を私たち専門家は、よく目にしているからです。
その事例は、またいつか別のブログで……。

任意後見についても、もう少し詳しく知りたい方は、知って得する任意後見のメリットをどうぞ

11月 01 2017

戸籍の郵送申請と定額小為替(相続登記⑪)

相続登記の必要書類の中で最も手間がかかるのが、被相続人の出生から死亡までの戸籍であるということは、このブログでも何回かご説明してきました。

出生から死亡までの戸籍について

被相続人の戸籍を遡っていくと、転籍をしていることが良くあります。転籍に関しては、相続人も全て認識しているケースは稀で、取得して見たら気付いたというケースがほどんどです。

転籍先が遠方である場合は(北海道や九州などというケースも珍しくありません)、戸籍取得の為に交通費を払う人はいませんので、通常は郵送申請になります。この郵送申請が結構やっかいなのです。

まず、相続の特徴として、申請する段階では出生までの戸籍が何通あるか分かりません。仮に役所に電話しても、「申請して頂かないと通数は分かりません」と言われてしまいます。従って、申請書の書き方に工夫がいります。

また、戸籍の郵送申請の場合、役所の手数料は定額小為替で支払わなくてはなりません。そのようにルールで決まっています。

定額小為替について
定額小為替とは、郵便局で発行してもらう少額の為替のことで、受け取った人が郵便局で換金できる仕組みです。

定額小為替の種類は金額によって細かく分かれていますが、1枚あたり100円という結構高い手数料が取られます。小為替には50円という額面もありますが、50円の小為替でも手数料は100円なのです!
組み合わせを工夫しないと、手数料が結構高くなってしまいますね。
今後は、役所も支払い方法の電子化などに注力していただきたいと思います。
予算は厳しいのでしょうが……。

ここで先ほどの問題が再び起こります。請求する通数が事前に分からない為、定額小為替をいくら封入すれば良いかが決まりません。この場合、司法書士が行う方法は、多めの金額を封入しておいて余ったら、その分は小為替で返してもらいます。

司法書士の場合は余った分を小為替で返してもらっても、次の仕事で使うことが出来ますが、一般の人の場合は、余分に作成した時の手数料が無駄になりますね。

また、定額小為替には、「発行から6ヶ月以内に換金して下さい」と書かれています。これを真に受けて、返してもらった小為替の換金を忘れて6ヶ月を経過したら、あきらめて捨ててしまう人がたまにいます。実は、これは非常にもったいない行為なのです。

実際には、発行から5年以内ならば郵便局は問題なく換金に応じてくれます。万が一、6ヶ月以上経過した定額小為替を持っていたら、覚えておきましょう。

そして、戸籍を発行する役所の、定額小為替の扱いですが、先ほどの理屈でいくと、6ヶ月以上経過した定額小為替を封入して郵送申請しても大丈夫だと思われる方が多いと思います。
しかし役所は通常6ヶ月以上経過した小為替は受け取りません。
一部受け取る役所もあるそうですが、そのような柔軟な対応をしてくれる役所は少数派なので、あまり期待しないようにしましょう。

相続登記についてもう少し詳しく知りたい方はこちら

10月 23 2017

名義預金には注意しよう (相続税④)

相続税の税務調査が入った時に、税務署員から非常に指摘されることが多いと言われているのが名義預金です。

名義預金とは、子どもや孫の名義で預金しているにもかかわらず、実質的には親が預金者であると判断されてしまう預金のことを言います。
財産を何年もかけて、少しずつ子に移して、相続税の負担を減らそうという発想から、よく行われています。

しかし、やり方を間違えると、名義は子や孫でも、実質は親の預金であるとして、亡くなった後に相続税の対象になってしまうことがあります。

特に問題になり易いのが、子どもや孫名義の口座であるにもかかわらず、その通帳の印鑑を親が保管していて、印鑑のありかを子供や孫が知らない場合です。これは、親の相続財産とみなされる可能性が高い行為ですから注意が必要です。

子が通帳を持っていたとしても、印鑑がなければ、実質何も動かせないですよね。
そうすると、誰が管理しているのか?ということになり、印鑑を持っている親が管理している=親の財産となるわけです。

また、そもそも子どもや孫が自分名義の口座を親が用意していたことを知らないような場合も、上記の例と同様に相続税の対象になる可能性が高いです。
子どもや孫が税務署員に、「この口座知ってる?」、「いくらあるか知ってる?」と聞かれて、「知らない」と答えたりすると、アウトになる確率が高いようです。
これは、簡単に理解できますよね。

このようなことにならないためには、預金口座は通帳も印鑑も子どもや孫に管理させて、中身がどうなっているかも、しっかり把握させておく必要があるでしょう。

また、贈与税の年間控除額の110万円以内で毎年決まった時期に預金を移動させていると、「相続税のがれ」とみなされて贈与と認めてもらえない可能性もあります。

これを防ぐには、110万円よりも少し多い金額を贈与して、毎年確定申告で少額の贈与税を払い続ければ、税務署も文句を言いにくいようです。
贈与税の申告とともに、公正証書で贈与契約を結んでおけば、なお良いと言えます。
ただし、贈与税を支払っていても、名義預金と認定されてしまうときもあります。
例えば、通帳や印鑑を親が保管しているようなときですね。

いずれにせよ、これで100%名義預金にはならない、と言い切ることはなかなか難しいですが、最低限の注意を怠って、親の財産(相続財産)だと認定されてしまわないように気を付けたいものです。

10月 19 2017

相続税の生命保険控除 (相続税③)

前にも触れましたが、生命保険は民法上は相続財産ではありません。
従って、遺産分割協議の対象にはならず、受取人に全て渡りますので遺言と同じような効果が期待できます。

しかし、税法上は相続税の対象として扱われますので、一定の控除額を超えた場合は相続税がかかります。
ややこしいですね。

知っておきたい生命保険と相続

では一定の控除額とは、いくらかと言うと、
500万円×法定相続人の数
ということになっています。
この計算のときの法定相続人の数には、相続放棄をした人も含まれるという取り扱いです。

勘違いしやすいのが、保険金受取人1人あたりに500万円の控除があると思ってしまうことです。
しかし、この考え方は間違いなのです。勘違いしたままだと損をする可能性がありますので注意しましょう。
意外と多い間違いですよ。

具体的な例で説明しましょう。
例えば、父が亡くなって、母と子ども2人が法定相続人だとしましょう。
父が契約者の生命保険が2000万円で、受取人が子ども2人だった場合、いくらの控除がうけられるのでしょうか。

500万円×2人で1000万円の控除……ではありません。
正解は、子ども2人の受取保険金額の合計が1500万円まで控除が受けられます。
なぜなら、法定相続人は3人なので500万円×3で1500万円になり、この金額は生命保険を受け取らない相続人(この場合は母)がいても変わらないからです。

このように相続には勘違いしやすい制度がいくつもあります。
勘違いしたまま生前対策や相続手続をしてしまうと非常に損をしてしまう可能性があります。これを避けるためには、素人判断せずに専門家に相談に行かれることをお勧めします。

10月 12 2017

小規模宅地の特例で注意すること(相続税②)

小規模宅地の特例は、宅地の相続税評価額が最大で80%ほど減額されるという、相続人にとっては非常に魅力的な制度です。

ただし、効果が大きいだけに要件も厳しく、利用するには注意が必要です。
例えば、相続人が、相続後にすぐに宅地を売却してしまった場合、小規模宅地の特例が使えなくなる可能性が高くなります。

なぜなら、小規模宅地の特例の適用を受けるためには、原則として、その特例の対象となる宅地等を相続税の申告期限まで保有していないといけないからです。
保有していないといけないことを、保有継続要件といいます。

今後、住む予定が無い親の宅地を、子どもが相続してすぐに売ってしまうというのは、いかにもありそうな話です。
しかし、上記の注意点を知らないと、後でかなりの金額の相続税を支払うことになりかねません。

「相続税の申告期限まで」というのが法律の縛りなので、もし売却したい場合は、申告期限が過ぎるまで待つのが得策でしょう。
ちなみに申告期限は、被相続人の死亡後10か月です。

※小規模宅地の特例には、他にも様々な要件がありますので自分で判断するのは危険です。安心して利用するには専門家に相談するのが一番だと思います。

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