司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

1月 09 2018

こういう自筆証書遺言はトラブルになる!(遺言⑧)

遺言の中でも自筆証書遺言は気軽に書けるため人気があります。
誰にも相談せずに秘密にしておけるのも、メリットと感じられる人もいるようです。
公正証書遺言は、費用もかかりますので、その点でも避けられているのかもしれません。

しかし、司法書士として多くの遺言の相談を受けてきた経験から言えることは、記載の不備で遺言として利用できないという自筆証書遺言が想像以上に多いという事実です。

自筆証書遺言は、誰にも相談せずに書けるというメリットがある反面、間違いに気付くチャンスが無いとも言えるのです。
では、具体的にどんな遺言がトラブルになったのでしょうか。

折り合いの悪い子がいた場合

お父様が亡くなって、子どもが3人いました。
お母様は既に亡くなっています。
お父様は自筆証書遺言を残していました。
不動産を長女に、預貯金を次男に譲るという内容です。
この遺言で不動産の名義変更をして欲しいという依頼です。

ここまでで、「あれ?」
と思いましたか?
思った人は、なかなか鋭いですね。
そうです。子どもは3人、財産を譲るのは長女と次男ということは、長男はどうなった?ってことですよね。
遺言というのは、感情も入ってくるものなのです。
折り合いの悪い親族には、財産を譲らないようにする遺言を残すことは、珍しいことではありません。

残念!遺言に間違い発見

ところが遺言を拝見すると、重大な間違いが見つかりました。
「〇〇県〇〇市の不動産を長男に相続させる」という記載だったのです。

さて、問題です。
この部分の一体何が間違っているのでしょうか?

実は上記のような記載では不動産の特定が不十分で、法務局は登記を受け付けてくれません。
〇〇県〇〇市の不動産といえば、お父様からしてみれば、間違いの無い自分の不動産としてイメージしているのですが、実際には〇〇県〇〇市のどの不動産のことかがきちんと書かれていなくてはダメだったのです。
何丁目何番地まで、もっと言えば面積までです。建物ならば鉄骨か木造かまで入れた方が無難です。

せっかく自分の意思を残そうと思って遺言を書かれたのに、利用できなければ無駄になってしまいます。

自筆証書遺言は遺留分の配慮を

また、今回の遺言では遺留分に対する配慮もなされていませんでした。
次男には遺言でも否定できない遺留分の請求権があります。
相続人が子ども3人だとすると、3分の1×2分の1で6分の1ですね。

通常、専門家が遺言作成の依頼を受けた場合、遺留分にも配慮した遺言の内容にします。そうしないと後で遺留分減殺請求を受けてトラブルになる可能性があるからです。

遺留分減殺請求は、する方も、される方も、気持ちの良いものではありません。
しかも、遺留分減殺請求によって、売りたくなかった不動産を売却しなければならなくなることも起こりえます。

>>>生命保険の活用で遺留分のトラブルを回避<<<

法的に有効な遺言を書くのは意外と難しいものです。
開封されるのは書かれた人が亡くなった後ですから、その時点では訂正も出来ません。このような遺言の性質を考えると、どうしても自筆証書で残したい場合は、自身が書いた遺言を専門家に一度見てもらった方が良いのではないでしょうか。

>>>遺言についてもう少し詳しく知りたい人はこちら<<<

1月 04 2018

離婚による財産分与を円滑に行うポイント(名義変更)

離婚には大変な労力が必要とされます。
その理由は、ただ別れたら終わりではなく、それまでに築いてきた財産を2人で分ける作業があるからです。
ときに、この作業でお互いを傷つけあい、疲れ果ててしまうことがあります。
離婚による財産分与を、少しでも円滑にすすめることはできないのでしょうか?

離婚による財産分与で不動産を譲り受けた場合、不動産登記(名義変更)をする必要があります。この際、注意すべき点が2つあります。

  • 後でごね出す?協議離婚の場合
  • 1つは、協議離婚の場合、不動産の登記に相手方の協力が得られるのかという問題です。

    協議離婚の場合の不動産登記(名義変更)は、相手方の実印、印鑑証明、権利証(登記済証・登記識別情報)が必要になります。譲り受ける人単独では出来ません。

    依頼を受けた司法書士が相手方と本人確認のために面談することも必要です。

    円満離婚なら問題ないかもしれませんが、相手方と険悪な雰囲気になっていたとしたら不動産登記(名義変更)に協力してもらうのは難しいかもしれません。

  • 円滑な登記が可能な手続きは?
  • 一方、裁判所の調停・審判・訴訟などによる離婚の場合は、裁判所の判断が出るまでは大変ですが、判断が出た後、不動産の所有権を財産分与により譲るという結果が得られれば、相手方の協力は不要になります。

    結果の書かれた裁判所の調停調書・審判書・判決正本などを添付していけば、譲り受ける人の単独で登記を行うことが可能です。
    もちろん司法書士による相手方の本人確認や面談も不要です。

    離婚をするのですから、相手の顔も見たくないし、何度も裁判所で話したりするのも冗談じゃないと思うかもしれません。
    その気持ちはわかります。

    しかし、大事なのは、財産をしっかりと分与してもらうことですよね。
    大きな目的を確実に達成するためには、裁判手続きを踏むという少し面倒なことは乗り越えたほうが、賢い選択と言えるのではないでしょうか。

  • 意外な盲点!贈与税
  • 2つめの注意点は贈与税です。
    通常は財産分与で不動産を譲り受けても贈与税はかかりません。
    財産分与とは今までの夫婦の財産を清算するのが目的だからです。

    しかし、夫婦の財産を清算するよりも多いと思われるような財産の場合、税務上の財産分与とは認めてもらえない可能性があります。その時は、超えた分に関しては贈与税の対象になるかもしれません。

    たとえば、財産が不動産3,000万円、預貯金1,000万円で合計4,000万円だとします。
    普通に考えれば2,000万円ずつということになります。

    しかし、夫の名義の不動産を妻に譲るとなると、妻3,000万円となり、1,000万円分は財産分与ではなく、贈与だと判断される可能性があるということです。

    すると、1,000万円分に贈与税がかかってきます。
    贈与税は、贈与を受けた方が支払いますので、この場合は妻が支払わなければならなくなります。
    (実際にこうなるというわけではありません。簡単に説明するための例えです)

    このように財産分与と言っても気を付けるポイントがあります。
    離婚をお考えの人は、一刻も早く別れたいと思いがちですが、財産のことを考えると、事前に専門家に相談するのが間違い無いと思います。

    >>>相続登記についてもう少し詳しく知りたい人はこちら<<<

    12月 25 2017

    空き家問題は、なぜ起こるのか(相続登記⑬)

    近年、日本では空き家のまま放置される家が増加していて問題になっています。
    空き家問題とは、放置された空き家を自治体等が処分しようと思っても、思うように処分できない状態になっていることをいいます。

    景観の悪化や、不審者の住み付き、崩壊による近隣住民への被害も聞いたことがあると思います。
    近くにこのような空き家があったら、何とかして欲しいと思いますよね。

    新聞やテレビニュースでも話題になっている空き家問題ですが、そもそもなぜ空き家問題が起こるのでしょうか。これについて考えてみましょう。

    特定できない持ち主

    普通に考えると、持ち主のところに行って話をつければ良いように思いませんか。
    空き家のまま放置されるような物件は、持っていても収益にはならないような物件ですから、持ち主にとっても処分することは、そんなに悪い話ではないはずです。
    収益にならない物件を持っていても、毎年の固定資産税を払うだけ無駄ですから。

    ではなぜ問題になっているかと言うと、それは持ち主が特定できないからなんです。

    持ち主が特定できないとは、どういうことでしょう。
    それは相続登記をしないまま長期間、放置した結果、相続人が膨大に増えてしまい、生死や居場所が不明な相続人が何人も現れるという事態に陥っているということなのです。

    物件を処分する為には、すべての所有者の同意を得なければなりません。
    これが10人、いえ、それ以上になっているような物件が、日本中のあちらこちらに存在しています。

    相続放棄を放置した例

    具体例で説明しましょう。
    最初の相続で子ども3人が法定相続人だったとしましょう。このとき、相続登記をしないまま、子ども3人が死亡したとすると、子ども3人の相続人に所有権が移ります。

    例えば、子ども3人それぞれに配偶者と子ども2人がいたとしたらどうなりますか?
    相続人はそれぞれ3人ですから、3人×3人で9人が相続人になります。
    この時点で、既に9人です。
    この後、同様にして増えていくわけです。
    もちろん、この間に亡くなる人もいますが、一方で結婚や出産で相続人が増えていくことも十分考えられますね。

    更に相続登記をせずに放置していた場合、そのうち、生死が不明な所有者や、居場所が不明な所有者が出てきてしまうのです。

    こうなってしまうと、空き家を売却して処分しようとしても、すべての所有者の同意を得るのは極めて難しい作業になります。従って、崩壊して危険になっているような空き家が増えていくという大変な事態になってしまうのです。

    売りたくても売れない

    政府も重い腰を上げて対策を取ろうとしています。相続登記を放置しないように、新しい仕組みを検討していると聞きます。
    ひょっとしたら、相続登記を放置した場合に何らかのペナルティーが課せられるような制度が出来るかもしれません。
    そのくらい、空き家問題は深刻なのです。

    不動産売買には、売買契約が必要です。契約書には売主の署名押印が必要です。登記を放っておいたがために売主が特定できなければ、売買契約書に署名押印できないですよね。

    さらに、売買には登記申請も必要です。
    登記を放っておいたら、現状、誰が所有者なのか不明、という状態になりかねません。
    その状態で、不動産を買う人はいませんよね。
    所有者全員が特定できないために、売りたくても売れないという物件になってしまうかもしれません。
    この記事を読んでくださった皆さんは、相続登記を長年放置したりしないようにしてください。

    >>>相続登記についてもう少し詳しく知りたい人はこちら<<<

    12月 20 2017

    再婚時の生命保険活用(相続税⑦)

    結婚した総人数に占める、再婚の割合は増えているようですね。
    夫、妻の両方が再婚の人もいますし、どちらか一方が再婚の場合もあります。
    両方をあわせると、結婚した総人数に占める、再婚の割合は25%を超えています。

    ということは、将来の相続に対する配慮も、より必要になってきますね。
    配偶者とは、離婚すれば縁が切れますが、子どもは離婚しようが再婚しようが、ずっと相続の第1順位なわけですから。

    では、生命保険の相続における具体的な活用事例の2つ目をご紹介しましょう。

    将来の法定相続人に、現在の妻の子どもと先妻の子どもがいるようなケースです。

    親にとってはどちらもかわいい子どもで、法的にも同じ権利があります。
    ですが、いざ相続が発生すると、もめてしまうことも十分起こりえます。
    「先妻の子には、財産を渡したくない」
    と、感情的になってしまって、遺産分割協議がどろ沼になってしまうことも……。

    解決するには、生命保険を活用する方法があります。

    具体的には、

  • 契約者:父親
  • 被保険者:父親
  • 受取人:先妻の子ども
  • とする生命保険を契約しておきます。

    保険金額は、最低でも遺留分相当分ですが、相続分相当分でも構わないです。
    ここは契約者が決めることです。
    契約の代わりに、先妻の子どもには前もって遺留分の権利を放棄してもらうと良いでしょう。保険金をもらった上で、更に遺留分の請求まで行ったら、それは先妻の子どもが優遇されすぎになりますから。

    こうしておけば、相続が発生したときも、スムーズに進みます。

    具体的な例を紹介しましょう。

      対策をしない場合

    遺産が6,000万円で、先妻の子1人、現在の妻の子2人だとします。
    相続が発生したら、現在の妻が2分の1で3,000万円、先妻の子が1,000万円、現在の子もそれぞれ1,000万円になります。

    一見何も問題ないように思えますが、財産の大部分が不動産だったりすると、現在の妻が家を手放さなくてはならなくなるなど、不都合も考えられます。

      対策をした場合

    先の生命保険の保険金が、1,000万円だったとします。
    遺言は、現在の妻と子に遺産を相続するという内容にしますと、相続が発生したら、現在の妻が2分の1で3,000万円、現在の妻の子が1,500万円ずつということになります。
    先妻の子の遺留分は1,000万円の2分の1で500万円。
    保険金は1,000万円入っているわけですから、遺留分請求まではしないでくださいねと、前もって契約しておけますね。

    このように相続財産に関しては遺言を残して、現在の妻の子どもに引き継がせるのです。現在の妻や子どもも、そして先妻の子も納得しやすいでしょうし、後の相続争いをかなりの程度防ぐことが出来ます。

    ただ1点、注意したいことがあります。
    あまり、若すぎる年齢で遺言と保険契約をしてしまうと、亡くなったときの財産と契約時の財産が違い過ぎる可能性があります。
    先妻の子のための保険契約時に、財産が1億円あったけれど、何かで失敗しほとんど財産が無くなってしまったりすることがあるかもしれません。
    しかし減った場合はあまり問題にはならないでしょう。

    問題になるのは、極端に財産が増えたときです。
    保険契約時の財産は6000万円だったけれど、亡くなったときには5億円の財産になっていたとしたらどうでしょう。
    保険金1000万円で先妻の子は納得するでしょうか?
    どのように抵抗するかはわかりませんが、争ってくる可能性はありますよね。
    ですから、ある程度の年齢になって、財産が概ね変化がないような状態になってから対策を立てるのが良いでしょう。

    遺留分の権利の放棄を前もってしてもらうことや、正確な遺言を残すときには、ぜひ一度、専門家にご相談ください。
    ここを間違えてしまうと、せっかくのプランが無駄になってしまう危険性があります。

    >>>節税保険にも興味がある人はこちらをどうぞ<<<

    12月 14 2017

    生命保険の活用で遺留分トラブルを回避(相続税⑥)

    相続における生命保険の活用方法は、何も生命保険控除だけではありません。1つ具体例を紹介しましょう。

    例えば、親が1人子ども2人の家族で、主な財産は自宅不動産だけだったとします。
    現金が1円もないことは、ほとんどありえませんが、財産に占める現金の割合が少ないことは、よくあります。
    子ども2人は、長男次男としますね。
    そして親は遺言で不動産を長男に相続させると決めていたとしたらどうなるでしょう。

    遺留分の発生とその後のトラブル

    この場合、相続が起こると次男に遺留分が発生します。
    次男が長男に対して遺留分減殺請求をすると、長男は遺留分相当の遺産を次男に渡さなくてはなりません。
    この例でいうと、普通に相続したとすると2分の1ずつですが、遺留分はその半分なので、4分の1ですね。

    預貯金があれば良いのですが、不動産以外のめぼしい財産がありません。そうすると、長男は遺言で与えられた不動産の一部を次男に渡すしか方法がなくなります。
    渡すといっても、家を切って渡すわけではありません。
    登記により、長男の持ち分が4分の3、次男の持ち分が4分の1となるのです。

    結果的に不動産は長男と次男の共有になり、売却したり抵当権を付けたりするときに必ず次男の同意が必要になります。意見が同じなら良いのですが、違っているとトラブルに発展します。こうなることを避けたいがために、親は遺言で長男に不動産を残したのですが、親の希望は通らなくなってしまうのです。

    生命保険による遺留分問題解決方法

    これを生命保険で解決することができるのです。

    親が生前に生命保険を契約して、契約者と被保険者を親、受取人を長男にしておきます。長男に支払われる保険金を次男の遺留分相当額にしておくのです。
    たとえば、家の価値が4000万円だとしたら、遺留分は4分の1ですから、1000万円です。
    そうすることで、長男は保険金によって次男に遺留分を支払うことが可能になり、めでたく遺言どおりに不動産を単独で所有することが出来るのです。

    遺留分とは割合を主張できるだけで、請求するものは選べません。遺留分相当の金銭が支払われたら、次男は黙って受け取るしかありません。(金銭を断って、不動産の一部をよこせ、とは言えないのです)

    このように生命保険は、相続の際に色々な方法で活用することが可能です。覚えておきましょう。

    >>>節税保険にも興味がある人はこちらをどうぞ<<<

    12月 04 2017

    突然借金の請求が……兄弟姉妹の相続放棄(相続放棄⑩)

    相続放棄で、よく問題になるのが兄弟姉妹の相続放棄です。
    なぜ、問題になりやすいかと言うと、いつまでなら相続放棄が認められるのかが分かりにくいからです。

    最初から子どもも両親もいないことが分かっている場合は、それほど問題にはなりません。通常と同じように、被相続人が亡くなったのを知った時から3カ月以内に家庭裁判所に申述をすることになります。

    問題は、亡くなった人の子どもや両親が先に相続放棄をしていた場合です。この場合、子どもや両親の相続放棄が家裁で認められて初めて兄弟姉妹が相続人になりますので、先順位の相続放棄が認められたのを知った時から3カ月以内が申述期間(熟慮期間)になります。

    しかし、被相続人の子どもや両親と、兄弟姉妹が頻繁に連絡を取り合っているとは限りません。特に兄弟姉妹が遠方に住んでいたりすると、ほとんど会っていないというケースもあるでしょう。
    そんなとき、先に相続放棄をした子どもや両親が、相続の権利が移ったことを教えてくれるとは限らないのです。

    実際に、連絡せずに放置したという事例は案外多いです。
    当事務所では、相続放棄をしたことにより、兄弟姉妹や甥姪などに被相続人の借金が引き継がれてしまう場合は、該当する人たちに連絡をするように強くおすすめし、そのようなサービスを行っています。
    「そうなんですか?では連絡をお願いします」という人もいれば、「いえ、特に必要ありません」という人もいます。
    強制はできませんので、必要ありませんと言われればそこで終了となりますが、心配にはなりますね。

    先に子どもや両親が相続放棄をしている訳ですから、兄弟姉妹は、いつのまにか相続人になったとき、借金が回ってきてしまうことになります。

    兄弟姉妹の相続放棄

    このようなケースで、兄弟姉妹が自分が置かれた状態に気付くのは、借金の請求をされた時納税金の請求をされた時などが多いです。いきなり請求を受けて、「あなたが相続人になりました。支払って下さい」と言われる訳ですから、相当驚いてうろたえてしまいますよね。

    これはあまりにも酷だろう、ということで、家庭裁判所も兄弟姉妹の相続放棄については割と広く申述期間(熟慮期間)を解釈する傾向があります。

    上記のようなケースならば、気付いた日付を「請求がされた日付」だと主張することによって、先順位の相続放棄から3カ月以上経っていたとしても、家庭裁判所に認めてもらえる可能性が充分にあります。

    兄弟姉妹の相続放棄は上記のような理由により遅くなりがちですが、認められる可能性は残っていますので、あきらめないで専門家に相談しましょう。

    >>>相続放棄についてもう少し詳しく知りたいかたはこちら<<<

    12月 01 2017

    法定相続分での相続登記4つのポイント(相続登記⑫)

    相続登記をする場合、圧倒的に多いのは遺産分割協議をしてから、協議書を添付して行う相続登記です。
    そして、次に多いのが遺言による相続登記です。

    もう1つ、相続登記にはパターンがあり、それが法定相続分による相続登記になります。これは件数としては他のパターンよりも少ないです。なぜ少ないのか、その理由についてご説明しましょう。

    法定相続分の相続登記4つのポイント

    法定相続分による相続登記には大きな特徴があります。
    それが、法定相続人のうち1人からでも申請することが出来るという点です。例え相続人の間で話がまとまっていなくても、そのうちの1人から申請することが可能なのです。(もちろん、法定相続人全員が申請人になって申請することも可能です。)

    一見、便利そうにみえる特徴ですが、件数が少ないのには、様々な理由があります。
    順番に紹介していきましょう。

    1. 共有者が多いため売りにくい
    2. 法定相続分の登記をすると、その不動産は法定相続人全員の共有になります。すると、不動産売却の際には、共有者全員の同意が必要になります(具体的には全員分の実印と印鑑証明が必要です)。
      もちろん全員が同意すれば売却は可能ですが、1人でも売却に消極的な共有者がいると売れなくなってしまいます。

    3. 相続人間でトラブルが起こる
    4. 法定相続人の一人から申請した場合、他の相続人が知らない間に相続登記が行われてしまうことになるので、そのことで相続人の間でトラブルが起こる場合があります。時には、他の相続人が遺産分割調停などを起こして、登記の変更を求めてくる可能性があります。
      (変更が認められるかどうかは、家裁の判断となります。「登記はそのまま」という判断になる可能性もあります。)

    5. 登録免許税は全員分を支払う
    6. 法定相続人の1人から申請した場合でも、相続登記にかかる登録免許税は全員分を支払う必要があります。誤解されることが多いのですが、1人から申請した場合でも、1人分の登記がされる訳ではありません。
      全員分の登記を1人で行えるということなのです。

    7. 登記識別情報が発行されない
    8. 一般の方が最も気づきにくいポイントしては、法定相続人の1人から申請した場合、申請しなかった他の相続人には登記識別情報(昔の権利証に当たるもの)が発行されません。これが次に売却するときに注意すべき点になります。

      売却の際には、全員分の登記識別情報が必要ですが、提出できない共有者がいる場合は、その人に関しては司法書士に本人確認情報を発行してもらう必要があります。その際に追加費用がかかります。(法定相続人全員で申請した場合は、全員に対して登記識別情報が発行されます)

    上記のように、法定相続分の相続登記には注意すべき点があります。
    ただし、法的には可能な登記なので(一人から申請する場合も含めて)、申請自体は問題ありません。もし希望される場合は、注意点に対して充分に納得して行うようにしましょう。

    >>>相続登記についてもう少し詳しく知りたいかたはこちら<<<

    11月 24 2017

    節税保険(相続税⑤)

    節税保険って言葉を、聞いたことがありますか?
    取り上げられることが増えてきたので、一度くらいは聞いたことがあるかもしれませんね。保険会社としても、大きな市場としてとらえているため、次々に新しい保険が販売されています。

    文字通り、節税につながりますので、売れています。
    ただ、保険商品や加入方法を間違えると、節税が発揮できないだけでなく、税金が増える危険性もありますので、注意が必要です。

    では、上手に利用した具体例を1つ紹介しましょう。

    節税保険の加入例

    父が亡くなり、母と子ども2人(長男と長女と仮定しましょう)が法定相続人のケースで考えてみます。
    父の生前の財産は30,000万円(3億円)と仮定します。

    まずは一般的な方法で、法定相続人が3人なので「500万円×3」で受取金1500万円の生命保険を「契約者父、被保険者父、受取人長男と長女」で生前にかけておきます。これで1500万円の節税効果があります。
    ここまでは、ご存知の人も多いと思います。

    >>>知っておきたい生命保険と相続<<<

    ここからが、本格的な節税保険の加入手法です。
    まずは、贈与から開始します。
    毎年長男と長女に300万円ずつ、合計600万円を贈与します。
    300万円の贈与税は、110万円の年間控除額を差し引いた190万円の10%で19万円ですから、10年続けたら190万円、2人合わせて380万円です。

    そして贈与された300万円を、長男と長女がそれぞれ全額を生命保険契約して保険料として支払います。
    契約内容は「契約者長男と長女、被保険者父、受取人長男と長女」です。
    これを10年続けると、受取額は300万円の10年分、3000万円よりも多くなります(4000万円を下回るくらいでしょうか)。

    こうすると受取額の増加分は、贈与税の合計380万円を上回ります。ようするに得になる訳です。しかも、毎年600万円、父の財産が減っていき、10年で6000万円も父の財産が減りますので、相続税に関してもかなりの節税になります。
    実はこれが最も大きい効果と言えます。
    (ただし、保険料負担者と保険金受取人が同一なので、保険金受取の際は、一時所得として所得税がかかります。)

    元々3億円だった父の財産が、契約した1500万円の保険と、長男と長女への贈与を合わせると、なんと7500万円も減ります。相続税を計算する時点では、かなりの節税につながります。

    このように生命保険を上手に利用することによって、非常に高い節税効果が期待できます。
    実は、資産家や経営者の間では、昔からよく知られている方法です。
    今回は1つの例をご紹介しましたが、いくつものタイプがありますので、資産や目的に合わせて加入することが大切ですね。
    ただし、最近は節税保険について金融庁が問題視していますので、一部の保険には、メスが入るかもしれません。

    現在は、相続税など無関係だと思っていた人も、かかる可能性がずいぶん高くなりました。
    本気で節税を考えてみる必要が出てきたということですね。

    具体的な加入については、家族の事情によって個別にプランを練る必要があることと、契約の仕方が複雑になりますので、一般の方が独力で設計するのはお勧めできません。万が一、間違った契約をしてしまうと高額の税金が発生する可能性があるからです。
    ちなみに生命保険会社に直接相談すると、自社の保険を売りたがる傾向がありますので、注意が必要です。

    もし検討される場合は専門家のサポートを受けたほうが良いですね。

    相続税についてもう少し知りたい方はこちらをどうぞ

    11月 13 2017

    死後離縁

    死後離縁って、聞いたことありますか?
    恐らく、ほとんどの人が聞いたことがないと思います。
    死後離縁とは、養子縁組を行った養親または養子のうち、どちらか一方が亡くなったとき、生存している養子または養親が家庭裁判所の許可をもらって縁組を終了させることを言います。一般的には、亡くなった側の家族と縁を切りたい場合に使われることが多い制度です。

    この説明を聞いても、あまりピンとこないかもしれません。
    こういう状況になる人は、多くはありませんから。
    しかし、本人たちにとってみれば、とても重要な問題であることが多いです。
    一度は親族になったものを、くつがえすほどの思いとは、どういうものなのでしょうか。

    死後離縁は、実務上は圧倒的に養親が亡くなって養子の方から申し立てる場合が多いです。
    養子からみて養親の家族と折り合いが悪いというケースが良くあるパターンです。
    財産の問題、借金の問題、あるいは人間関係にいたるまで、離縁したくなる理由はさまざまです。

    死後離縁の手続は、まずは家庭裁判所に申立をして許可をもらいます。
    その後、市区町村役場に家裁の許可を証する書面を持参して、離縁の届出をすることによって成立します。家裁と役所の2段階になる訳です。

    書面を提出すれば、それで離縁が完了するのかというと、そう簡単ではないのです。
    死後離縁は必ず認められる訳ではありません。
    家裁に正当な理由があると認めてもらう必要があります。

    特に注意が必要なのが、そこそこの財産を養親から相続した場合や、養親が亡くなる前に一定の財産を贈与してもらった場合などです。

    相続や贈与で財産をもらった後の死後離縁は認められにくい傾向があります。養子縁組をする大きな理由の一つに「養親が亡くなった後の祭祀(注)を養子が引き継ぐ」というのがありますので、「財産をもらったのなら養親が死んだ後の祭祀を養子が行うべき」、と家裁が考えるからです。
    (注)祖先を祭ること

    死後離縁を考えているのならば、養親からなるべく財産はもらわないように注意しましょう。
    もし既にもらってしまったならば,家裁を納得させるだけの理由が必要になると覚えておきましょう。
    例えば、養親の家族から大きな嫌がらせを受けたとかいう理由はありそうですね。

    死後離縁の他の記事をご覧になりたい方は以下をクリック

    死後離縁②

    11月 09 2017

    死後事務委任契約とは?(任意後見④)

    任意後見契約とセットで契約されることが最も多いのが公正証書遺言です。
    その次に多いのが、死後事務委任契約です。死後事務委任契約は公正証書でなくても結ぶことが可能なので、任意後見契約を結んだ後に、しばらくしてから新たに契約される場合も珍しくありません。

    死後事務委任という名前から想像できると思いますが、死後事務の具体的な内容は、以下のようなことになります。

    委任する死後事務の具体的な内容

    自分が死んだあとのことは、あまり考えたくないのが普通かもしれません。
    けれど、それを考えて書面に残すことで、スムーズに事が運びます。
    「立つ鳥跡を濁さず」ということですね。

    それならば、エンディングノートでも良いのではないかと思いますよね。
    しかし、あくまでもその人の思いをノートに記したものなので、法的効力がありません。
    すると、エンディングノートには書いてあっても、残された人たちが話し合って、亡くなった本人の意思とは違うお葬式をすることも充分考えられるのです。

    委任する死後事務の具体的な内容は、葬儀・納骨・埋葬・供養などを本人の希望通りにやってもらうために、細かく取り決めておきます。死亡時に連絡して欲しい人の指定や、葬儀会社や寺や墓地などを指定することもできますし、これらに使う費用の上限などを定めておくことも可能です。
    死後事務のメインになりますね。

    もう1つは、死後の後始末に当たる部分です。死亡した時点での未払いだった各種費用(施設利用費や入院費、光熱費や通信費など)の支払い、家財の処分方法の取り決め、役所等への届出業務の代理、などを定めておくことです。
    こまごまとしたことになりますが、役所等への届出の代理などは、きちんと定めておかないと、何もことが進まなくなって、困ることがよくあります。

    死後事務委任が威力を発揮するとき

    こんなことは親族が行えば良いじゃないかと思った人もいるかもしれませんが、信頼できる親族が近くにはいない、というケースも少子高齢化の時代には珍しいことではなくなっています。

    仮に近所に親しい友人がいたとしても、友人はあくまで法律上は他人なので、親切心で死後事務を手伝おうとしても、葬儀会社も施設も病院も役所も友人を代理人とは認めないのが普通です。つまり、友人は善意で動こうとしても動けないという状態に陥ります。

    こんなときには死後事務委任契約が威力を発揮します。死後事務委任契約書があれば、友人は契約書を見せることで相手方に本人の代理人と認めてもらえます。死後事務をスムーズに進めることができるのです。

    近くに頼れそうな友人もいないという場合は、司法書士などの専門家に死後事務を依頼することも可能です。

    死後事務委任の重要ポイント

    また、死後事務委任をする場合に重要なポイントとして、費用の問題があります。本人が死亡して相続が開始すると銀行は口座を凍結してしまうので、死後事務の費用が賄えなくなる可能性があります。
    これを解決しておかなくてはなりません。

    遺産分割協議を経て相続人が確定するのは結構時間がかかるのが普通ですが、死後事務は本人死亡後にすぐに費用が発生しますので、どうしても費用の問題が発生します。死後事務委任契約は、この費用の問題も解決してくれます。

    良く行われる方法としては、一定の預り金を本人の生前に死後事務の受任者に渡しておいて、その旨を契約書に記載して、預り証を別途作成して契約書と一緒に閉じこんでおきます。

    注意点としては、預り証は法的にきちんとしたものを作成しないと、贈与税がかけられる可能性があるということです。
    トラブルを避けるためには、専門家に作成を依頼するのが良いですね。

    他人にお金を渡すのが心配な場合は、本人名義の預り金口座を別途開設して、死亡後に死後事務の費用として、受任者がその口座から引き出すことが出来るように契約書に記載しておく、という方法もあります。
    信用している人であっても、万が一の心配をせずに済むのは、預り金口座の別途開設ですね。

    このような方法で死後の事務を滞りなく進めていけるように締結するのが、死後事務委任契約です。

    遺言にしても、死後事務委任にしても、あるいは任意後見にしても、どこかのテンプレートを見てそれを見本として作成して終わってしまう人がいますが、本当は一度専門家の目を通した方が良いのになぁと思います。
    ちょっとした一言が無かったりするだけで、後々とんでもないトラブルが発生する事例を私たち専門家は、よく目にしているからです。
    その事例は、またいつか別のブログで……。

    任意後見についても、もう少し詳しく知りたい方は、知って得する任意後見のメリットをどうぞ

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