司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

5月 15 2017

法定相続情報証明制度の使い方(預貯金の相続③) 

2017年5月29日から全国の法務局において「法定相続情報証明制度」という新しい制度が始まります。
この制度の仕組みについてご説明します。

法定相続情報証明制度の概略

法定相続人を特定するための戸籍・除籍等と、法定相続人の一覧図を法務局に提出すると、法務局が公的な認証文を付けて法定相続人の情報を記録した証明書を発行してくれる、というものです。
提出した戸籍や除籍の原本は返してくれます。

この証明書は複数枚取ることができますので、そのメリットはあります。
今まで、不動産や預貯金の相続手続の際に、不動産屋と銀行それぞれに対して大量の戸籍や除籍を持参していました。
銀行は、複数の口座を持っている人も多いですよね。
やったことがある人はおわかりだと思いますが、相続手続きは、なかなか面倒です。
今回の法定相続人情報証明書の添付によって戸籍や除籍の代用にする、という活用の仕方が考えられています。

ただ、懸念もあります。

    法務局と銀行の双方に手続をすることになるので、2度手間になる
    最初から戸籍を銀行に持参した方が早い

などの意見が聞かれていて、実際にどれほど利用されるかは未知数です。

また、注意点もあります。
法定相続人情報証明書が証明してくれるのは、あくまで法定相続人の情報だけです。
一般的に行われる遺産分割後の相続情報は記載されません。
ということは、不動産や銀行で手続きをする際に、結局、法定相続人情報証明書だけでは、足りずに、遺産分割協議書や遺言書なども銀行に添付する必要があるわけです。
法務局が考えるほど便利ではないという意見もあるのは、これが理由です。

法定相続人情報証制度の使い方

では、まったく役に立たないのかと言うと、そういうわけではありません。
たとえば、以下のような使い方が考えられます。

  1. 預貯金の相続で最も大変な戸籍・除籍の収集の部分を専門家に依頼する
  2. 法務局に法定相続情報として登録してもらい、その後は、相続人本人が法務局から証明書を取得する
  3. 相続人が自分で相続手続を進めて行く

というようなケースでしょうか。これなら現実的な使い方だと思います。

今のところは、色々と不便な点も指摘されている法定相続情報証明制度ですが、今後、改善されていき、より便利になっていく可能性はあります。
今後の推移を見守りながら、また改善があったら報告したいと思います。

預貯金の相続についてもう少し詳しく知りたい方はこちら

5月 10 2017

配偶者の短期居住権とは(相続法改正②)

配偶者の居住権の保護(住み慣れた家に住み続けるために)(相続法改正①)
で説明したとおり、被相続人が遺言で配偶者以外の者に、居住している不動産を遺贈した場合、現行の法律では、配偶者は無償で住み慣れた家に居住を続けることが出来ません。

この場合、配偶者は居住の権利を有していない為、不動産所有権を遺言で取得した者から明渡請求を受ける可能性があります。法律上、配偶者はこの明渡請求を拒否することは出来ません。

そこで改正が検討されているのは、被相続人の死亡から遺産分割の話し合いが成立するまでの間、配偶者の居住を保護する為の規定を設けることです。これを配偶者の短期居住権と呼んでいます。

しかし、それでは遺産分割の後はどうなるのか、と言う問題が残ります。それは、相続法改正①で取り上げた「長期居住権」という別の権利規定を設けることで解決しようと考えているのです。
長期居住権については別のブログで説明することにしましょう。

5月 08 2017

配偶者の居住権の保護(住み慣れた家に住み続けるために)(相続法改正①)

現在、相続法の大幅な改正が検討されています。
まだ確定ではありませんが、一応、このような改正が検討されているということについては知っておいても損はありません。
今回は、配偶者の居住権の保護の規定について紹介しましょう。

例えば以下のような事例を考えてみましょう。
夫が亡くなり、相続人は妻と夫の甥姪の4人です。
夫の姪とはほとんど会ったことも無く他人も同然です、夫の姪からは、家を売却したいから出て行ってほしい、と言われています。
妻は出て行かなければならないのでしょうか。
遺言(子どもがいない場合)相続関係図
配偶者の一方が死亡した場合、残された配偶者は、それまで住んでいた家に住み続けたいと思うのが普通でしょう。

しかし、最近は子どものいないケースも少なくありません
高齢化も進んでいるため、配偶者の一方が亡くなったときには両親も亡くなっていることが多いでしょう。
そうなると、残された配偶者との共同相続人になるのは、亡くなった配偶者の兄弟姉妹か甥姪になります。

高齢で亡くなっている場合は、兄弟姉妹も同様に高齢で亡くなっているケースが多くなりますので、必然的に甥姪が共同相続人になるケースが増加しているのです。

自分の甥姪ではなく、配偶者の甥姪ですから、あまり面識がなく他人も同然というケースも多くなります。
このとき、相続財産に預貯金が多くあれば、あまり問題にはなりません。
めぼしい財産が居住している不動産だけ、あるいは不動産が占める割合が高いと問題が生じます。
あまり面識の無い配偶者の甥姪に対して何らかの財産を渡す必要があるのに、元手が無いということになるからです。
この場合、甥姪からは、不動産を売却して現金に換えて分配して欲しいという要求が来る可能性が大きくなります。
預貯金が多くあれば、預貯金を分割する方法もありますので、住み慣れた家を売却することを避けることができます。
(預貯金は減ってしまいますが……。)

また、事例のケースで夫が妻以外の者に不動産を遺贈していた場合、遺贈された者から妻に対して建物明渡請求をされる可能性があり、現状の法律では、この明渡請求を拒むのは難しいとされています。
これらの不都合を一発で解決する方法があります。
甥姪には遺留分が認められていませんので、「妻に不動産を相続させる」という遺言が残されていればよいのです。
しかし、残念ながら日本では遺言を残す習慣が確立しておらず、まだまだ少ないのが現状です。
最近は、徐々に増えてきていはいますけれど。

それで、このような場合の配偶者の保護規定として、現在、改正が検討されているのが、一定の期間、配偶者に住み慣れた家に住む権利(居住権)を認めよう、というものです。

検討されている居住権には、短期居住権と長期居住権の2種類があります。
これについては、別のブログでご紹介しましょう。

配偶者の短期居住権について

4月 28 2017

相続放棄の期間と借金の行方(相続放棄⑦)

相続放棄の期間と借金の行方(相続放棄⑦)

相続放棄ができる期間は、被相続人が死亡したのを知ったときから3カ月以内、というのは結構有名になっていて、かなりの人がご存知だと思います。
しかし、詳しく知らないと意外な落とし穴があるのです。

基本は3か月以内

例えば亡くなった方が債務超過(借金の方が多い状態)で子どもと配偶者が相続人の場合、子どもと配偶者の両方が3カ月以内に相続放棄をしたとしましょう。
このとき、被相続人の両親がご存命の場合、借金は両親に相続されてしまいます。
これを防ぐためには両親も相続放棄をする必要があります。
では、両親の相続放棄は、いつまで可能なのでしょうか。

この問題は、勘違いされている人が多いので注意が必要です。
多くの人が、両親も、配偶者と子どもの相続放棄と同様の期間だと思っているようです。
現実には、両親の相続放棄は、子どもの相続放棄が家庭裁判所に認められてから3カ月以内にすればOKです。

理由は、子どもの相続放棄が認められるまでは両親は相続人ではないからです。
子どもの相続放棄の申述が家裁で受理されて初めて両親は相続人となりますので、そのときから3カ月となるのです。
むしろ、子どもの相続放棄と一緒に両親の手続をしても、家裁から拒否されます。
現時点で相続人でない人の相続放棄は出来ないからです。

もちろん、子どもがいない場合は両親は初めから相続人ですから、亡くなったのを知った時から3カ月です。
このとき、被相続人の兄弟姉妹がいる場合は、両親の相続放棄が認められてから3カ月以内に兄弟姉妹の相続放棄をする必要があります。

転々とする借金の行方

相続放棄の場合、第一順位(子)の相続放棄をすると第二順位(両親)に、第二順位の相続放棄をすると第三順位(兄弟姉妹)に、借金が移っていきますから、先に相続放棄をした人は、次の順位の相続人に連絡をすることが大切です。
これを怠ると後で大きなトラブルになりますので注意しましょう。

例えば、税金の滞納があった人が亡くなって、その後、子、両親と借金が移り、ついに兄弟にまで税金の請求がきた事例があります。
まさか自分のところまでは借金はこないだろうと、たかをくくっていると、実際に請求されてびっくりすることになるかもしれません。
心の片隅に、とどめておいてください。
請求が来ても相続放棄は可能ですが、油断して3か月を過ぎないようにだけは、注意しましょう。

より詳しい情報が知りたい方は以下をクリック

https://www.hashiho.com/inherit/renounce/

4月 19 2017

回答書って何?(相続放棄⑥)

以前、相続放棄の照会書の話をしました。

>>>相続放棄の「照会書」って何?<<<
照会書と一緒に同封されているのが「回答書」です。
本当に本人の意思で相続放棄をしているのかを裁判所が確認するための書類です。

回答書には、いくつかの質問が書かれていますが、質問の数や内容が各裁判所によって異なっています。

実際に受けた依頼の中で、放棄をする相続人は名古屋の人ですが、被相続人が九州に居住していたケースがありました。

相続放棄は被相続人の居住する裁判所に提出する必要がありますので、この場合は、九州の裁判所に書類を出すことになります。

手続を進めて行くと照会書が届きました。同封されている回答書を見ると、随分と名古屋の裁判所とは違うという印象でした。

質問の数も多く、内容も細かいことを聞いていました。
名古屋の書式がシンプルだったので、意外な感じでした。
地方の裁判所の方が、審査が厳しい印象を受けたからです。

従って、ネットに上がっている回答書の質問を見て、同じものが届くと思っていると、それはどこか特定の裁判所のものである可能性が高いです。
後で違うものが届いて驚くことになるかもしれない、ということは知っておかれるとよいでしょう。

より詳しい情報を知りたい方は以下をクリック

https://www.hashiho.com/inherit/renounce/

4月 10 2017

相続放棄の戸籍収集(相続放棄⑤)

相続放棄の戸籍収集は、簡単でしょうか。
それとも、大変なのでしょうか。

相続放棄の場合、単独で出来る手続なので、他の相続人が何人いるかは基本的に証明する必要がありません。
従って、不動産や預貯金の相続手続のようにすべての相続人を確定するだけの戸籍は必要とされません。
具体的には、被相続人の死亡の事実を証明する戸籍と、申述人(相続放棄をする人)が相続人の一人であることを証明すれば足ります。
ここまでなら、難しくなさそうですね。

第二・第三順位の相続放棄

ただし、第二順位(被相続人の両親・祖父母)、第三順位(被相続人の兄弟姉妹・甥姪)などの相続放棄の場合は、それほど簡単ではありません。

なぜなら、第二順位の場合は第一順位(子供・孫)の相続人がいない(あるいは相続放棄している)か、あるいは全員死亡していないと、そもそも相続人にはなりませんので、そのことを証明する必要があるからです。

少しややこしいですね。別の言い方をしましょう。
第一順位の人たちが確実にいない(あるいは相続放棄している)ことを証明しなければならない、ということです。
確実にいないことを証明する、ということはどういうことでしょうか。

  • 最初から存在しない(子どもがいない)
  • 子どもは存在したが、既に亡くなっている
  • 子どもは存在しているが、既に相続放棄している
  • この3パターンが考えられます。

    これには、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍、更に既に亡くなった子どもがいる場合は、孫(亡くなった子どもの子)がいないことを証明するために、亡くなった子どもの出生から死亡までの全ての戸籍が必要となります。
    注意が必要なのは、子どもが複数いるときです。
    たとえば、裁判所に、3人の子どもの相続放棄が出されていたとしても、子は3人かどうかは、調べないとわからないのです。実は4人目が存在するかもしれません。子の数を確定する必要があるということです。

    第三順位となると更に大変で、上記の戸籍に加えて第二順位の相続人がいないことも証明しなくてはなりません。

    第一順位でも要求された事例

    また、裁判所によっては、第一順位でも追加の戸籍を要求する場合もあります。

    私が依頼を受けた事例で、お住まいは名古屋市ですが、亡くなった親が長崎県の方がいらっしゃいました。
    相続放棄は、被相続人の住居のある裁判所に申述しますので、長崎の家庭裁判所に出すことになります。

    そこで、長崎の家裁に出したところ、「当裁判所では、第一順位の場合でも、親と子が一緒の戸籍に入っていたときから現在までの戸籍を要求しています」と言われました。

    この依頼人さんの場合、親も子も一緒の戸籍に入っていたのは長崎でも名古屋でもない別の県でした。
    それから別々の戸籍に分かれてしまったので、双方ともたどっていくのは結構大変でした。
    3カ月の期限がせまっていたので、専門家に依頼して良かったと言っていただけました。

    このように裁判所によっては標準的な書類だけでなく、追加の書類を要求してくる場合もありますので注意が必要です。

    より詳しい情報が知りたい方は以下をクリック

    https://www.hashiho.com/inherit/renounce/

    4月 05 2017

    「配偶者は相続税がかからない」って本当?(遺産整理⑤)

    配偶者は相続税がかからないと思われているケースが多いようですが、これは本当でしょうか。

    実際には配偶者にも相続税がかかる場合があります。
    しかし、相続税がかかるケースが非常に少ないのも事実です。
    相続を経験した配偶者は、「自分は相続税を払わなかった」という記憶が残りますので、
    その情報が広がり、このようなことが言われるようになったのではないでしょうか。

    配偶者控除

    ではなぜ、配偶者は相続税がかかるケースが少ないのでしょう。
    それは、相続税に関する「配偶者控除」と呼ばれる制度があるからです。
    配偶者控除は、かなり優遇された制度で、ほとんどの配偶者がこの制度に当てはまります。ですから現実に相続税を支払う配偶者は、とても少ないのです。

    配偶者が実際に受け取る遺産の金額が
    (1)1億6,000万
    (2)配偶者の法定相続分

    のうち、どちらか多い方の金額以内であれば、相続税はかかりません。
    これが、配偶者控除です。

    しかし、無条件で控除が受けられる訳ではありませんので注意して下さい。
    この控除を受けるには、相続税の申告が必要なのです(基礎控除の範囲内なら不要)。
    税金を支払わないために、税金の申告手続をするということになります。

    相続税の申告期限

    相続税の申告には期限があります。
    被相続人が死亡してから10か月以内にする必要があるのです。
    そして、上記の配偶者控除を受けるには、遺産分割協議が終了していて、配偶者の受ける相続分が確定していなければなりません。(注)
    遺産分割で揉めていて申告期限に間に合わないと控除が受けられなくなってしまいます。
    (注)遺言がある場合は別です。

    10か月を越えてしまいそうになったときは、申告書に、3年以内に遺産分割をするという「申告期限後3年以内の分割見込書」というものを提出して期限を延ばしてもらうという救済措置があります。
    しかし、このような救済措置は最後の手段と考えて、出来るだけ期限内に遺産分割協議を終わらせて申告をするのが良いでしょう。

    尚、全ての税理士が相続税に詳しい訳ではありません。
    司法書士事務所へ相続の相談に行くときは、相続税に詳しい税理士を紹介してもらえるかどうかを一度確認した方が良いでしょう。

    遺産整理について、より詳しい情報が知りたい方は以下をクリック

    https://www.hashiho.com/inherit/isanseiri/

    3月 27 2017

    預貯金は遺産分割の対象になるのか?(預貯金の相続②)

    平成28年12月に、相続に関して注目すべき最高裁決定が出ました。
    最高裁には5人の裁判官で構成される小法廷が3つあります。
    通常は小法廷で審議されます。

    しかし、今までの裁判例を変更するような重要な判決や決定を出す場合は、3つの小法廷の裁判官が全員集まって大法廷が開かれることになっています。
    合計15人の裁判官で構成されることになりますね。
    今回出た決定は大法廷ですので、注目に値する決定が出たということです。

    預貯金の相続 今までの考え方

    預貯金の相続に関しては、今までの裁判所の考え方は、
    「相続人全員が合意により遺産分割の対象に含めない限り、相続が開始した瞬間(被相続人の死亡の瞬間)に法定相続分に従って分割される」というものでした。
    ちょっとわかりにくいですね。
    預貯金は不動産と違って、もともと分けることができる財産ですから、そのような財産は、被相続人が亡くなった瞬間に、自動的に法定相続分が法定相続人に分けられているという考えかたです。
    実際は、預貯金はまだ銀行にあるのですから、少し混乱してしまいますが、このような考え方になっているということです。

    しかし、この考え方には現場で実務を取り扱っている金融機関からは批判が多くあり、学者の間でも「現場に混乱をもたらしている」と批判的な意見が出ていました。
    なぜでしょうか。
    たとえば、この考え方に従うと、相続人の一人が銀行にやってきて、法定相続分の引き出しを請求した場合、銀行は応じなければなりません。
    応じた後で、別の相続人が、「実は遺言が見つかって、私が預貯金のすべてを相続することになったから」と言ってきた場合、大変なトラブルになってしまうからです。

    また、相続人の一人が生前贈与を受けていた場合、本来ならば、生前贈与の分も考慮して遺産分割協議を行うのが公平です。
    しかし相続財産が預貯金しか無かった場合、当然に法定相続分に従って分割されてしまうと、生前贈与を受けなかった相続人が損をしてしまうという不都合が起こっていました。

    預貯金債権は遺産分割の対象に

    これらの現場の声や学者の声に動かされた影響もあるのでしょう。
    ついに最高裁が今までの考え方を改め、「例え相続人全員の合意が無くても、預貯金債権は遺産分割の対象になる」という決定を出したのです。

    この決定が実務に与える影響は大きいと思われます。
    今後は、上記のような混乱や不都合は減少していくでしょう。しかし、その反面、新たな問題の発生も予想されます。例えば、以下のような問題です。

  • この決定を受けて、今後、銀行では遺産分割協議が終了するまでは故人の銀行口座を凍結し、引き出しには応じなくなる。
  • 相続税の申告などが必要な場合、10ヶ月という期限がありますので、早急に現金が必要になる。もし、遺産分割協議が長引いてしまった場合、間に合わなくなり、相続税の支払いの為に一時的に借金をするというケースも考えられる。
  • 上記のようなトラブルを防ぐ為に、今後は早めに現金が引き出せるように、遺産分割協議が不要な遺言の作成、生命保険の契約などが重要となってくるでしょう。

    平成30年の時点で、更に変更されましたが、詳細はまだわかっていません。
    わかり次第、またブログにアップ予定です。

    より詳しい情報が知りたい方は以下をクリック

    https://www.hashiho.com/inherit/megihenko/

    3月 24 2017

    結婚20年以上で、配偶者の相続に新たな優遇案(遺産分割①)

    結婚20年以上のご夫婦に朗報です!
    相続制度に関する法律の変更が新たに検討されています。
    これには、戦後70年以上が経過して、今までの法律が時代に合わなくなってきているという背景があります。
    今回は、配偶者の相続に関する新たな優遇案をご紹介しましょう。

    結婚20年以上で住宅贈与の場合

    法務大臣の諮問機関である「法制審議会」の相続部会において新たに提案がなされました。「結婚から20年以上が過ぎた夫婦の場合、配偶者が生前や遺言により居住用の住宅を贈与されたときは、遺産分割で優遇される」というものです。
    相続部会では賛成者が多数だったようで、いずれ法制化される可能性が高いと考えられます。

    新しい案では、結婚から20年以上の夫婦で、配偶者が居住用の不動産(建物・土地)の贈与を受ける場合が対象になります。
    贈与した人が亡くなり、相続人同士で遺産分割が行われた場合、贈与された居住用の不動産については遺産分割の財産に含めないという形になります。

    高齢の配偶者に対する配慮

    今までの法律ですと、居住用の不動産以外にめぼしい財産が無い場合、困ったことが起きていました。
    配偶者以外の相続人が遺産分割協議の席で換価分割を主張したとします。
    財産のほとんどが不動産だった場合には、こういうケースも少なくありません。
    そうすると、財産を相続人で分けるためには、居住用不動産を売却しなくてはならなくなります。
    そのため、高齢の配偶者が長年住み慣れた家から追い出されるという不都合が生じるケースが少なからずあったのです。

    今回の優遇案では、このような事態を防ぐ目的があると思われます。
    ただし、自動的に配偶者が優遇される訳ではありません。
    生前贈与や遺言などの方法により、法的にはっきりとした形で贈与がされていることが条件になっているので注意が必要です。
    (この法案が通った場合、配偶者への生前贈与や遺言が増加することが予想されます。)

    まだ成立した訳では無いので、若干の修正がかかる可能性がありますが、現行の遺産分割制度に見直しがかかる可能性は高いでしょう。

    より詳しい情報が知りたい方は以下をクリック

    https://www.hashiho.com/inherit/divide/

    3月 02 2017

    本当は大変な銀行の相続手続(預貯金の相続①) 

    銀行の相続手続は簡単だと思っていますか?
    銀行は、誰でも何度も行ったことがありますし、窓口での振り込みやその他の取引をしたこともありますよね。
    その延長線で、相続もたいした手続きではないだろうと思ってしまうのです。
    相続は人生に何度も起こることではありません。
    経験した人も少ないため、大変さがなかなか伝わらないのです。
    実際に経験した人は、皆さんが、「二度とやりたくない」、「こんなに大変だと最初から分かっていれば専門家に頼んだのに」などの感想を持たれます。
    では何がそんなに大変なのでしょうか。

    1. 銀行の担当者が相続に詳しいとは限らない
    2. 相続が大変になる最も大きな理由がこれだと私は思います。
      実は相続手続をきちんと理解している担当者は銀行の中でもとても少ないのです。
      普段の手続きに比べたら、件数が少ないので、そういうことが起きるのかもしれませんね。たまたま詳しい人が留守だったりすると、説明があいまいだったりすることも珍しくありません。

      ただでさえ、戸籍や住民票、遺産分割協議書等、慣れない書類を準備しなくてはならない相続手続きです。
      必要書類の説明が抜けていて、聞いたとおりの書類を持参しても
      「すいません。追加の書類が必要です」などと言われ、何度も足を運ぶ羽目になることが珍しくありません。

    3. 時間がかかる
    4. これも1と関連がありますが、支店レベルの担当者が相続に詳しくないため、疑問点が出るたびに、本部に問い合わせるのです。
      そして本部から折り返しの回答が来てから顧客に対しての説明になるので、非常に手間も時間もかかります。
      メガバンクや郵貯銀行などの大手に、このような対応が目立ちます。

      メガバンクや郵貯銀行は支店とは別に相続センターのようなものを設けて、支店で受け付けた書類をそのままセンターに送って集中的に事務処理をするというパターンが多いので、支店レベルではますます詳しい人が少なくなる傾向があります。
      支店に何人かは、詳しい人を置いてほしいところですね。

    5. 銀行ごとに書式や必要な書類が違う

    6. 複数の銀行の相続手続をする場合は、より大変になります。
      銀行ごとに独自の書式を設けているので、手続書類の書き方が異なっているからです。
      異なっているのは書き方だけではなく、必要書類も異なっている場合がありますから注意が必要です。
      正直なところ、金融機関どうしで話し合って統一書式を作れないのかと思うことが何度もあります。

      私のこれまでの経験では、最も必要書類が多いのは三菱東京UFJ銀行です。三菱東京UFJ銀行の相続は要注意ですね。
      同じグループ企業なのに三菱UFJ信託銀行は、それほど多くありません。(同じグループでも対応が異なるのが相続手続です。)

    7. 相続人全員の実印を何枚も押さなくてはならない
    8. 相続人が複数いて法定相続する場合、ほとんどの銀行で、手続依頼書には相続人全員の署名と実印の押印が必要です。
      相続人全員の印鑑証明書も必要です。
      このため、銀行が複数ある場合は、すべての銀行の用紙に全員の署名押印をもらうだけでも大変な手間になります。
      このような場合、専門家に依頼すると、委任状に1度署名押印することで、全ての銀行の手続が可能となりますので、かなりの手間を省くことが出来ます。

    9. 中心になって動く相続人が疑われることがある
    10. 通常、相続人の中でも中心になって手続を進める人が決められることが多いです。
      その場合、他の相続人よりも手間がかかっているにも関わらず、他の相続人から「きちんと分配したのか」というような苦情を言われるケースがあります。
      このようなトラブルやクレームを避ける目的で、専門家に依頼される方もいます。

    以上のように、銀行の相続手続は多くの人がイメージされるよりもずっと大変です。
    仕事が忙しくて平日にあまり休みを取れない方、高齢で体力が衰えて頻繁に出歩くのが大変な方、面倒な手続きはできれば任せたい方などは、専門家に依頼することを検討されると良いでしょう。

    より詳しい情報が知りたい方は以下をクリック

    https://www.hashiho.com/inherit/megihenko/

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