9月
06
2016
お話の前に、おさらいから。
委託者、受託者、受益者が、何度もでてきますね。
混乱しないように確認しておきましょう。
委託者:財産を預ける人のこと。
受託者:財産を預かって管理する人のこと。
受益者:財産から生まれる利益を受け取る人のこと。
信託が終了するのは、どういうときでしょうか。
信託が終了するのは、信託行為で定めた事由や信託法の規定による終了事由が発生したときです。
また委託者と受益者の合意により任意に終了させることもできます。
信託契約の合意は、誰トクで考えよう
信託契約を設定する時は、委託者と受託者の間で契約は可能であり、受益者は契約に関与する必要はありませんでした。
しかし、終了させる時は、委託者と受益者の合意で可能となり、受託者の同意は不要です。
ほんとうに複雑でややこしいですね。
なぜ、受託者の同意はいらないのでしょう。
受益者は信託によって利益を受ける存在です。
利益を受けるときは、信託の設計の段階で同意が不要です。
利益を受けるのだから、まさか断るなんてことしませんよね、ということです。
では、信託終了のときはどうでしょう。
信託が終了したら、受益者は、利益が得られなくなりますよね。
だから合意が必要という構造になっている訳です。
一方受託者は、信託が終了すればどうなりますか?
管理責任から解放されるのです。
だから同意が不要と考えられるのですね。
自由度の高い信託で注意すること
信託は、自由度が高いです。
たとえば、信託行為(信託契約等)の中で、信託を終了させる権限を誰に与えるかを自由に規定することが可能です。
「受託者と委託者の合意により終了することができる。」とか
「受益者の意思表示により信託を終了することができる。」といった形で規定できます。
注意が必要なのは、遺言による信託 の場合です。
遺言による信託の効力が発生したときには、委託者(=遺言者)は亡くなっています。
さらに遺言による信託は、原則として委託者の地位は相続によって承継されないとされているため、委託者が存在しないこととなります。
そうすると、委託者と受益者の合意を得ることが出来なくなってしまいます。
これでは合意による終了が不可能となってしまいます。
誰の権限で終了できるかの規定を置いておかないと、後で困った事態になる可能性がありますので、遺言による信託を考えている場合は、この点を検討しておく必要があるでしょう。
信託を任意に終了させる規定を置くときは、よく検討する必要があります。
任意に信託を終了しやすくすると委託者の考えに反して信託を終了させられてしまう可能性もあります。
逆にあまりにも信託を任意に終了しにくくしてしまうと、当事者全員が信託を終了させたいと思っても終了させることが事実上できないという事態が発生しかねません。
信託の目的や事情などによって、終了を容易にできるようにするのか、あるいは終了しにくくするのかを検討する必要があります。
このように信託の設計というのは、簡単ではありません。
簡単ではないですが、その分、今まではできなかったようなことが、できるようにもなります。
それぞれの家族の事情によって個別に考えていく必要があるでしょう。
基本はオーダーメイドだと思ってください。
じっくり時間を取ってコンサルティングしてくれる事務所に依頼することをお勧めします。
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9月
05
2016
家族信託が終了するのは、2パターンあります。
信託行為(信託契約等)などで定めた事由の発生によって終了する場合
例えば、終了事由を
受益者の死亡まで
受益者が成年に達したとき
信託契約から10年
と決めた場合、それぞれの事由の発生によって信託は終了することになります。
なぜ、信託が必要なのかを考えれば、その信託が必要な期間も決まってくるということですね。
信託法の規定により信託が強制的に終了する場合
例えば以下のような規定があります。
信託の目的を達成したとき、または達成することができなくなったとき
受託者が受益権の全部を有する状態が1年間継続したとき
受託者が存在しない状態が1年間継続したとき
特別の事情により裁判所が信託の終了を命じたとき
などです。
さらに一歩進んで、信託が終了したあとはどうなるのかといいますと、残った財産をどうするのかを、信託契約等で決めておき、その通りに実行するのが普通です。
遺言と似たような機能を持たせることも可能ということですね。
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9月
02
2016
受託者を監視監督する権限
受託者は形式的とは言え名義を持っています。
あってはならないことですが、自分の利益の為に信託財産を消費してしまうということが無いとは言えません。
このような心配には、どう対処すれば良いのでしょう。
信託法も一応対処は考えられています。
原則としては、信託財産の経済的価値を有する立場にある受益者に、受託者を監視監督する権限を持たせています。
受益者自身が、受託者を監視監督するということですね。
しかし、受益者が年少者、高齢者、障がい者である場合など受益者自身が受託者を監視監督できない場合は、どうしたらよいのでしょうか。
信託法では受益者のために受託者を監視監督する者として「信託監督人」の規定が置かれています。
信託監督人とは
信託監督人は信託契約の中で指定することができます。
信託監督人を誰にするかについては、例えば親の財産を長男が管理するといった信託内容の場合には、兄弟として長男を監視するように受託者の弟などを信託監督人に指定するのもよいでしょう。
司法書士や弁護士などの法律専門家を信託監督人に指定することも可能です。
それなら受託者を専門家にしておけば話が早いじゃないかと思われるかもしれませんが、規定により司法書士や弁護士は受託者にはなれないことになっています。
また、受益者が年少者などの場合だけでなく、信託財産が高額である場合なども信託監督人を置いておくと安心
です。
信託監督人のほか、信託法では、受益者が不特定多数であったり頻繁に変動したりする場合には「受益者代理人」といった受益者の保護をする者の規定が置かれています。
信託契約をするときは、先々のことも考えて、慎重に進める必要があります。
もちろん、途中で変更も可能ですが、費用も余分にかかってしまいます。
できれば、、最初から、ベストなオーダーメイドを考えたいですね。
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8月
31
2016
まずは、基本のおさらいからです。
委託者:財産を誰かに託す人
受託者:財産を預かって、運用や管理をする人
受益者:財産から発生した利益を受け取る人
でしたね。
委託者と受益者が同じになることは、家族信託では珍しくありません。
委託者と受託者が同じになることも、あります。
しかし、受益者と受託者が同じになることは基本的には家族信託では予定していません。
なぜでしょうか。
自分の利益の為に自分自身で財産を管理できるのであれば、家族信託を利用する必要がないからです。
それだと不都合が起こる様々な事情があるからこそ、家族信託が選択される訳です。
もし一時的に受託者と受益者が同じになった場合にはどうなるのでしょう。
その状態が1年間続いた場合には信託が終了することになっています。
すぐに信託が終了するわけではありませんが、信託の制度は自分以外の誰かのために財産を管理するというのが趣旨なので、このようなきまりになっています。
名義と権利が分離するのが信託の特徴でしたね。
>>>おすすめ記事 信託した財産はどうなるのか<<<
ただし、受託者が受益者になる場合でも、受託者以外の人が受託者と共に受益者となっている場合、例えば、受託者がAさんで、受益者はAさんとBさんの二人いるような場合には、家族信託は継続できることになっています。
8月
30
2016
家族信託は、いろいろなケースがあります。
委託者が親で、受託者がその子、受益者が親というケースは割と一般的です。
年齢的にみれば、親→子の順に亡くなることが予想されますが、必ずしもそうなるとは限りませんよね。
子が先に亡くなることもあり得ます。
受託者である子が先に亡くなった場合、家族信託の契約はどうなるのでしょうか。
信託は終了する?
原則として、受託者が亡くなっても信託は終了しません。
また、受託者が亡くなったとき、受託者の地位は相続人に承継されません。
相続のように、自動的に相続人が相続するというわけではないのです。
となると、信託は終了していないのに、受託者になる人がいないという、宙ぶらりんな状態になってしまいます。
これを避けるために、新しい受託者が選任されるまでの間、一時的に受託者の相続人が信託財産を管理することになります。
委託者が親で、受託者がその子だった場合は、一時的に孫が管理するということになりますね。
二次受託者を決めておく
最初から、上記のような状態を避ける手段もあります。
信託を設定する際に、信託設定時の受託者が死亡したときに受託者となるべき者(二次受託者)を定めておくことです。
その定めがない場合には、どうなるのでしょうか。
原則として委託者と受益者の合意によって新受託者を選任します。
委託者と受益者が同一人物なら、その人物が新受託者を選任することになります。
尚、受託者がいない状態が1年間続いたときには信託は終了することになっています。
受託者が亡くなって、二次受託者の定めがない場合には、1年以内に新しい受託者を選ぶ必要があります。
あらかじめ、最初の信託契約において、二次受託者を決めておいたほうが良いようですね。
<<<これも知りたい! 委託者が亡くなったら 信託も終了する?>>>
8月
29
2016
受託者は、信託の目的に従い、信託財産について名義人として管理・運用・処分することが出来るという大きな権限が与えられることになっています。
その反面、様々な義務や責任があります。
受託者を引き受ける人(法人でも受託者になれます)は、事前にこれらの義務や責任を知っておく必要があるでしょう。
受託者の義務
善管注意義務
受託者の主な義務としては、信託財産については、自分の財産を管理する程度の注意では足りません。
より高度な(善良な管理者としての)注意義務を負うという善管注意義務/があります。
自分のものでない財産を預かっているわけですから、より注意が必要というわけです。
報告義務 帳簿等の作成義務
また、委託者及び受益者に対して信託の事務処理の状況を報告する報告義務、信託財産について帳簿等を作成して保管しなければいけない帳簿等の作成義務などがあります。
受託者として名義人になったからといって、何でも好き勝手に行えるわけではありません。
受託者の責任
損失の補てんと現状の回復
更に受託者の責任としては、受託者としての任務を怠った場合に責任が生じます。
任務を怠ったことにより、信託財産に損失が生じた場合にはその損失の補填を、変更が生じた場合には、原状の回復を受託者の責任によって行う必要があります。
受託者は、とても責任が重いのです。
受託者の候補者になった場合には、このような義務や責任について認識したうえで引き受けるかどうかを検討したほうがよいでしょう。
信託監督人とは?
これだけ大きな義務と責任があるのならば、信用のおける司法書士や弁護士に受託者を頼みたいという意見も当然あるでしょう。
しかし、信託の規定により司法書士や弁護士は受託者になることが出来ません。
どうしても受託者に対して不安が残る場合は、司法書士や弁護士を「信託監督人」に指定することが出来ます。
信託監督人は受託者を監督して定期的に報告を受け取ったり、場合によっては調査したりすることが可能です。
信託監督人を置くことによって、受託者の不安をいくらか解消することが期待できるでしょう。
8月
25
2016
委託者が亡くなると、信託は終了するのでしょうか?
信託の内容が、「委託者の死亡によって信託が終了する」という内容でなければ、委託者が死亡しても信託は終了しません。
では信託が終了しない場合、委託者の地位(立場)は相続人に引き継がれるのでしょうか。
原則として、遺言による信託においては、委託者の地位は引き継がれません。
一方、信託契約による信託においては、委託者の地位は相続により引き継がれます。
いずれの場合も、委託者の死亡について特に取り決めが無い場合です。
委託者の地位にはさまざまな権利があり、これを委託者の相続人が承継するかしないかでその後の信託に大きな影響を及ぼす可能性があります。
したがって、信託の内容の中で原則とは異なる規定を置くことはできます。
(この辺が信託制度の柔軟なところです)。
この場合、必要に応じて委託者の相続人がその地位を承継するかどうかの規定を書き込むことになります。
8月
24
2016
信託の最も大きな特徴は、財産の名義と権利が分かれることです。
この特徴によって、他の制度では出来なかったことが可能になるのです。
信託された信託財産の「名義」は受託者※になります。
信託財産にかかる「権利」(経済的利益)は受益者※のものとなります。
※ 受託者は財産を預かって管理する人のこと。委託者とは財産を預ける人のこと。
※ 受益者とは財産から生まれる利益を受け取る人のこと。
受託者は信託法の規定及び信託の目的の範囲内で、信託財産を名義人として管理・運用・処分することができます。
たとえば、受託者は信託された不動産の賃貸借契約、管理契約、売買契約などについて、名義人として行うことができます。
ただし、信託財産から発生する経済的利益である賃料や売買代金については受益者のものとなるのです。
たとえば、
委託者→認知症の親
受託者→財産を管理する子
受益者→認知症の親
のパターンですと、どうなるのでしょうか。
家族信託契約により、認知症の親の代わりに、子が財産を管理し、その収益を親の生活費や施設入居費等に使う、ということができます。
認知症になったあとですと、家庭裁判所の成年後見制度を利用するしかなくなるため、このようなことは、実現不可能になります。
なんとかなるだろうと、甘く考えていると、あまりにも制限がかかるので、驚かれると思います。
何度も成年後見人を経験したので、わたしはよくわかっています。
後で後悔しないためにも、早めに家族で話し合っておくことを、おすすめします。
8月
23
2016
そもそも、信託とはどういう意味でしょうか。
誤解を恐れずに簡単に言います。
「自分の財産を信頼できる人に渡して、その財産を管理したり、処分したり、ときには運用したりすること」です。
信頼できる人が管理運営して得た利益は、自分が受け取ることができるよう設定することが多いですが、自分以外の人に決めることもできます。
信託は、以下の3つの方法によって設定することができます。
信託契約
委託者と受託者※が信託契約を締結する方法です。
注意していただきたいのは、受益者※は契約の当事者にはならないということです。
契約書の作成は公正証書によることは要求されていませんが、財産管理という非常に重要な内容の契約です。
公正証書で作成するのが一般的になっています。
※ 委託者とは財産を預ける人のこと。受託者は財産を預かって管理する人のこと。
※ 受益者とは財産から生まれる利益を受け取る人
遺言
信託の目的・信託財産・受託者・受益者など信託の内容を遺言書の中に記載する方法です。
遺言なので、当然、亡くなった後でしか、効力が発生しません。
信託契約と同様、信託の内容を記載した遺言書についても、やはり公正証書で作成することが望ましいでしょう。
気を付けて頂きたいのは、信託銀行の扱う遺言信託という商品です。
これは通常の遺言を信託銀行が代行するという意味で、ここで言う遺言による家族信託とは全く違いますので注意しましょう。
>>>家族信託と信託銀行の扱う遺言信託の違いについて、もっと知りたい方はこちら<<<
信託宣言
委託者と受託者が同一者となる場合(自己信託)には、契約当事者が一人となるため契約をすることができません。
そこで委託者の意思表示によって信託の設定をする方法です。
意思表示は、公正証書での作成のほか、公証人の認証を受けた書面や、確定日付のある証書による受益者への通知といった方法が規定されています。
信託宣言についても公正証書によって作成することが望ましいでしょう。
いずれにせよ、何を実現したいかによって、1番望ましい信託方法は違ってきます。
わからないときには、ぜひ専門家ご相談ください。
8月
22
2016
遺言
遺言は法的には単独行為と呼ばれ、遺言者本人が単独で行うことが可能です。
また、本人が途中で気に入らなくなったら、単独で書き換えることが可能です。
単独行為のプラス面としては、遺言を書いたこと、あるいは書き換えたことを本人以外には秘密にしておくことも出来ます。
マイナス面としては、単独行為なので、遺言、または書き換えた遺言が発見されないというリスクがあります。
家族信託
家族信託は本人(委託者)と受託者の契約によって行われます。
契約なので本人が単独で変更することは出来ません。
当事者が複数なので契約が発見されずに履行されないというリスクは低いと言えます。
他には、遺言は遺言者が死亡するまで効力を発生させることが出来ません。
一方、家族信託の場合、生前から財産の管理を受託者に任せることが出来ます。

遺言も家族信託も、それぞれに特徴がありますので、個々の実情に合った方法を見つけて頂くことが大切だと思います。