司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

2026年7月

7月 21 2026

相続放棄と代襲相続 相続放棄㉕

司法書士の橋本剛太がお答えします。

Q 代襲相続とは何ですか?

A 被相続人よりも先に法定相続人が亡くなった時に、その相続権を子が相続することです。例えば親よりも先に子が亡くなった場合、親が亡くなった時に孫が相続人になります。他には法定相続人が兄弟姉妹の時に、兄弟姉妹が被相続人よりも先に亡くなっていた場合は甥姪(兄弟姉妹の子)が相続人になります。

Q 親が相続放棄をしたら代襲相続は発生するのですか?

A 基本的には発生しません。相続放棄をすると最初から相続人では無かったものとみなされます。この理屈で言うと、代襲相続も発生しないことになります。ですから借金を相続しないために親が相続放棄をした場合、子は相続放棄をする必要がありません。ただし注意すべき事例が、いくつかあります。

Q 父の借金の相続放棄をした後に、祖父の財産を相続できますか?

A 父Bが借金を残して亡くなり、子Cが父Bの相続放棄をしました。その後、祖父Aが亡くなった場合、祖父Aから見て孫であるCは、祖父Aの財産を代襲相続することができます。これはCが相続放棄したのはあくまで父Bの相続であり、祖父Aの相続については放棄していないからです。このように相続放棄とは特定の被相続人に対してのみ効果があるものなのです。

同じように、甥姪が兄弟姉妹(甥姪から見て親)の相続放棄をした後で叔父叔母が亡くなった時も、叔父叔母の財産を代襲相続できます。

Q 父の借金の相続放棄をした後に、祖父が亡くなり借金が見つかりました。相続放棄をする必要がありますか?

A はい、あります。最初にした相続放棄は父についての相続放棄であって祖父についてのものではありません。父が祖父よりも先に亡くなっているので代襲相続が発生しています。祖父の借金を相続しないためには祖父についての相続放棄をする必要があります。従って、この場合は相続放棄を2回(父の相続放棄と祖父の相続放棄)することになるので注意しましょう。

Q 祖父が亡くなった後、遺産分割協議をする前に父が亡くなった場合、相続放棄はどのようにすれば良いですか?

A まず祖父にも父にも借金があった場合、祖父の相続放棄と父の相続放棄を両方することは可能です。ただし実務的には父の相続放棄をすれば父が相続した祖父の相続権も同時に放棄することになります。

次に祖父にだけ借金があった場合、祖父の相続放棄をして父の財産だけ相続することは可能です。父に借金が無い場合は有効な手段なので覚えておきましょう。ただし父にだけ借金がある場合は、父の相続放棄をして祖父の財産だけ相続することはできません。なぜなら祖父が先に亡くなっているので祖父の財産は既に父が相続しているからです。この点、父が先に亡くなった場合の代襲相続とは結果が違いますので注意しましょう。

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相続放棄

7月 15 2026

遺留分放棄と相続放棄の違い 遺言㉜

司法書士の橋本剛太がお答えします。

Q 遺留分とは何ですか?

A 遺留分とは、例え遺言で相続人から除外されたとしても、最低限相続できる権利のことを言います。ただし兄弟姉妹や甥姪には認められていません。遺留分を無視した遺言を残してしまうと、遺言で渡した相続人が他の相続人から遺留分の請求を受けてしまう恐れがあり、相続争いの原因になる可能性があります。

Q 遺留分の請求を受けたら支払わなくてはならないのですか?

A 遺留分の請求のことを法律用語で「遺留分減殺請求」と言います。遺留分減殺請求を受けても支払わないと、訴訟を起こされる可能性が高いです。遺留分減殺請求訴訟は法律家の間でも割と良く行われる訴訟の一つになっていますので、甘く考えるのは危険です。

Q 遺留分を気にしないで遺言を残すには、どうしたら良いですか?

A 遺留分の放棄という制度を使う方法があります。遺言者の生前に遺留分の放棄をしてもらえば、気にしないで遺言を残すことができます。ただし遺留分の放棄を生前にするためには家庭裁判所の許可が必要になります。

Q 遺留分の放棄には、なぜ家庭裁判所の許可が必要なのですか?

A 遺留分の放棄は重大な権利の放棄なので慎重に判断する必要があるからです。そのため家庭裁判所の許可には、いくつかの要件があって、
①放棄する人が誰かに強制されていないこと(自分の意思で放棄していること)
②放棄するのに合理的な理由があること(家業を継がせるために財産を分散させないためなど)
③放棄と引き換えになるような代償を与えられていること
などです。

Q 放棄の引き換えの代償とは具体的には何ですか?

A 色々考えられますが、ストレートに生前に金銭を渡す場合や、不動産の一部を渡す場合、他には生命保険の受取人に指定する場合など様々な方法があります。

Q 遺留分の放棄をすると相続できなくなるのですか?

A これが間違えやすいポイントです。遺留分の放棄をしても通常の相続権は失いません。遺留分が請求できなくなるだけです。例えば「遺言書には不動産について書かれていたが、銀行預金については記載が無かった」ばあい、不動産の遺留分請求はできませんが、銀行預金は普通に相続人として遺産分割協議に参加できます。

Q 遺言者に借金があった場合は、遺留分を放棄したらどうなりますか?

A これが最も注意すべきポイントです。遺留分の放棄は相続権の放棄ではないので、借金は普通に相続します。知らないで遺留分放棄すると大変な損害を被る可能性がありますので、注意しましょう。

Q 遺留分放棄と相続放棄の違いは何ですか?

A 次のような違いがあります。
①遺留分放棄は生前に家裁の許可があればできるが、相続放棄は生前にはできない
②相続放棄は最初から相続人では無かったことになるので借金も含めて全て放棄できるが、遺留分放棄は遺留分以外の相続権は残る
③遺留分放棄は遺留分の無い兄弟姉妹や甥姪にはできないが、相続放棄は法定相続人全員ができる

などです。

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遺言

7月 10 2026

所有不動産記録証明制度 相続登記㊺

司法書士の橋本剛太がお答えします。

Q 相続人が相続不動産を探す方法はありますか?

A 令和8年2月から新設された所有不動産記録証明制度を利用すれば、相続した不動産を探すことは可能です。相続登記が義務化されたことに伴って、不動産を相続人が探しやすくするために設けられた制度です。

Q 所有不動産記録証明制度を使えば全ての不動産が分かるのですか?

A 名義人の住所や氏名が一致している不動産ならば全て検索できます。全国どこの不動産でも探せますので非常に便利です。申請の際に現在の住所氏名とともに過去の住所氏名も記載できるので、どちらかに一致していれば探せます。

Q 所有不動産記録証明制度は誰が申請できるのですか?

A 名義人が生存している時は名義人本人が、名義人が亡くなった時は相続人が申請できます。相続人の場合は相続関係を証明する書類(戸籍等)が必要です。

Q 所有不動産記録証明制度はどうやって申請するのですか?

A 書面またはオンラインで申請できます。書面の場合は法務局の窓口に提出する場合と、郵送申請する場合に分けられますから、3種類の申請方法があることになりますね。オンライン申請は登記専用の特殊なシステムを使うことになりますので、一般の方は少し難しいかもしれません。

Q 所有不動産記録証明制度を申請する法務局には管轄がありますか?

A ありません。全国どこの法務局でも申請が可能です。

Q 所有不動産記録証明制度の申請に手数料は必要ですか?

A 手数料として書面申請は1600円、オンライン申請は1500円となっています。書面による郵送申請の場合は返信用封筒と切手の提出が必要です。

Q 所有不動産記録証明制度を利用する時の注意点はありますか?

A 申請書の記載と登記された記載が一致していないと検索されない可能性があります。氏名の漢字が違うとか、旧姓で登記されていたりとか、土地区画整理で住所の表記が変わっていたりとか、ですね。

Q 所有不動産記録証明制度は良い制度ですか?

A 良い制度だと思います。今までは遠縁の親族が亡くなった場合、どこにどんな不動産があるか分からなくて、相続登記が漏れてしまうことがありました。この制度ができたことによって、登記漏れをかなりの割合で防ぐことができると期待されています。

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7月 07 2026

遺産分割前の預貯金の相続

司法書士の橋本剛太がお答えします。

Q 故人の預貯金を遺産分割前に引き出すことはできますか?

A 以前はできると考えられていましたが、今は法律が改正されて変わりました。以前は、預貯金は名義人が亡くなったのと同時に法定相続人に分割されると考えられていました。この考え方だと遺産分割前でも相続人は銀行で法定相続分を引き出せることになります。しかし銀行の実務の対応は違っていたので、度々問題になっていました。

Q 遺産分割前に相続人が引き出しに来た時の銀行の対応は、どうなっていたのですか?

A 多くの場合で銀行は拒否していました。遺産分割がどうなるか分からない段階で引き出しに応じてしまうと、相続争いに銀行が巻き込まれる恐れがあるからです。そこで最高裁判所が調整するために判決を出しました。

Q 遺産分割前の預貯金の相続について最高裁は、どんな判決を出したのですか?

A 遺産分割前に預貯金が法定相続分で分割されるという考え方を否定しました。この最高裁判決により銀行の実務対応が肯定されて、遺産分割前には相続人の個別の引き出しには法的にも応じる必要が無くなりました。しかし、そうなると新たな問題が起こってきました。

Q 遺産分割前の預貯金の相続で、最高裁判決が出た後の問題とは何ですか?

A 葬儀費用などに充てるために、遺産分割前の預貯金の引き出しが必要な時に対応できないという問題です。そこで法律の改正が行われました。改正後は「法定相続分の3分の1まで、ただし150万円を超えない額」までは引き出しが認められるようになりました。

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