司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

4月 01 2020

法定相続情報証明のメリット 預貯金の相続④

法定相続情報証明とは?

法務局で取得できる家系図のようなものです。
相続が発生した人が誰で、相続人が誰なのか、相続人の立場はどうなのか(子供なのか孫なのか、兄弟姉妹なのか甥姪なのか)、などを表した書面になります。

法定相続情報は自分で作る

法定相続情報は、戸籍のように役所が勝手に作ってくれるものではありません。家系図自体は申請する人が自分で作らなくてはなりません。しかも法務局が指定した細かいルールがあり、そのルールどおりに作らないと却下されてしまいます。法務局の審査を通過する家系図を作るのは結構大変なので、専門家に作成を依頼する人も多いです。

審査が通ると、自分で作って出した家系図に法務局が証明印を押してくれます。この証明印が押されたものが法定相続情報証明と言われ、公的な書類として通用します。

法定相続情報証明は何に使うのか

法定相続情報証明が最も使われるのは銀行の相続手続きです。銀行の相続手続きは、複数の銀行に行くことが多いので、その度に戸籍や住民票を持参するのは非常に手間がかかります。なぜなら相続における戸籍は一般的に通数が多いからです。

また、銀行の相続手続きは非常に時間がかかり、だいたい1時間近く窓口で待たされるのが当たり前になっています。これは相続人が正確かどうかを調べるのには専門知識が必要で時間がかかるからです。

この時、法定相続情報証明を銀行に持っていくと、かなり時間の短縮になります。法定相続情報証明は事前に法務局が審査しているので、銀行が改めて相続人の審査をする必要が無いからです。戸籍を銀行に提出する必要もありません。

兄弟姉妹や甥姪の相続にも良く使われる

兄弟姉妹や甥姪の相続手続きは非常に大変です。取得しなければならない戸籍の数も多いですし、家系図も複雑になります。書類の数が多くなりますから銀行の待ち時間も、より長くなります。
このような場合、法定相続情報証明を使えば、持参する書類も少なくて済み、時間も大幅に短縮できます。

今のところ無料で利用できる

法定相続情報証明の取得は、今のところ無料になっています。法務局が利用を促進したい、という希望を持っているからです(将来は有料になるかもしれません)。
その代わり、家系図の作成には法務局は手を貸しません。あくまで自分で作って持ってきたものを審査して、ルール通りに作られていれば証明印を押すというやり方です。

法定相続情報証明のよくある使い方

法定相続情報証明は一度作ってしまえば全ての銀行の相続手続きで使えますので、その後の銀行の手続は自分でやるけど、法定相続情報証明だけは専門家に頼むという人も最近増えてきています。

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3月 27 2020

相続放棄の後に訴えられた 相続放棄⑭

相続放棄の後に訴えられることがある

家庭裁判所で相続放棄が認められても、それで請求が止まる訳ではありません。あなたが相続放棄をしたことを知らない債権者は当然請求をしてきます。それどころか裁判をしてくることも実際にあります。

裁判をされても放置してしまった

「例え裁判をされても自分は相続放棄したのだから大丈夫」、このように考えて放置してしまう人がいます。これは大変に危険な行為です。後で取り返しのつかないことになる恐れがあります。

放置したら、どうなるのか?

多くの人が誤解していますが、実は相続放棄が裁判でひっくり返ることがあります。相続放棄は、水戸黄門の印籠のように完璧ではないのです。通常の請求に対しては拒否することができますが、裁判に訴えられたらきちんと反論しないと負けることもありえます。

裁判では、放置して何も反論しなかったら負けを認めた、と判断されるというルールがあります。従って、放置したら裁判は必ず負けます。しばらくすると負け判決が郵送されてきます。

裁判に負けたら、どうなるのか?

相続放棄と裁判の判決を比べた場合、裁判の判決の方が法的な力は強いのです。従って、負け判決が出た場合、例え相続放棄をしていても、裁判で負けた請求については支払わなくてはなりません。

相続放棄の後に裁判されたら専門家に相談しよう

相続放棄は家庭裁判所が審査した結果ですから、きちんと反論すれば裁判で勝てる確率は高いです。ですから放置して負けてしまうのは非常にもったいないと言えます。
相続放棄の後に裁判されたら、勝つためにも早めに専門家に相談するのが得策です。

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3月 18 2020

不動産の遺産分割審判 遺産分割⑩

遺産分割審判とは

遺産分割協議が相続人の間でまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。しかし、遺産分割調停をしてもなお、話がまとまらない場合もあります。

このような時に裁判官が相続人の話を聞いて最終的な判断を下すことを審判と呼びます。

不動産の遺産分割がまとまらない場合

家庭裁判所で遺産分割調停を行っても分割方法が決まらない場合、遺産分割審判に移行しますが、不動産の場合は少し注意が必要です。なぜなら、不動産は換価分割されることが多いからです。

換価分割とは

不動産の場合、残したまま分割しようと思ったら共有持ち分にするしかありません。しかし、住むつもりが無い相続人にとっては共有持ち分でもらっても、あまり意味がありません。
そこで、不動産を売却してお金に換えて、そのお金を各相続人に分配するのが換価分割という方法です。

審判は換価分割になることが多い

不動産の遺産分割でもめている場合、特定の相続人がまとまったお金が欲しいというケースが多いです。

例えば、A、B、Cと相続人がいて、Aが自分が住むために不動産を相続したいという希望を持っていたとすると、調停の段階では、AがBとCに金銭を渡して調整するという方法が取られることが一般的です(この方法を代償分割と言います)。

しかし、AがBとCに渡せる金銭が無い場合、話し合いがまとまりません。このような時に審判になることが多いので、審判では換価分割になることが多いのです。

審判では不動産は競売になることが多い

審判になるということは調停で話し合いがつかなかった、ようするに喧嘩している状態が続いている、ということです。こうなると、不動産の任意売却は難しくなります。なぜなら任意売却は相続人全員の同意が無いとできないからです。

すると、残された手段は裁判所による競売しかなくなります。ただし不動産の競売は一般的に任意売却の7割くらいの評価でしか売れないと言われています。

不動産がある場合は、調停で決着をつけた方が得

「任意売却の方が得になるなら、相続人全員が同意するのが普通なのでは」と思った人も多いかもしれません。しかし、そのような合理的な判断で納得できるようならば調停の段階で話がまとまっているはずなのです。

遺産分割の争いというのは得てして感情的なもので、だからこそ長引いていることが多いのです。だから「一見、損になるのになぜ」と思われるのに審判では競売になってしまうケースが珍しくありません。

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3月 13 2020

遺言執行者の相続登記 相続登記⑲

遺言執行者は相続登記ができるのか(旧法の場合)

実は相続法改正前は遺言執行者が相続登記をすることはできませんでした。遺言による相続登記は、遺言で指定された相続人から申請するしか方法がなかったのです。
(指定された相続人が司法書士に委任することは可能です。しかし遺言執行者が司法書士に委任することはできませんでした)

遺言執行者は相続登記ができるのか(新法の場合)

令和元年7月1日に改正相続法が施行されました。これにより従来の取り扱いが変更になり、遺言執行者でも相続登記の申請をすることが可能になりました。これを受けて、遺言執行者が司法書士に委任することもできるようになりました。

旧法か新法かは、どうやって判断するのか

こうなると旧法で行うのか、新法で行うのかの判断が重要になります。
基準としては、遺言書作成の時期が令和元年7月1日以前であれば旧法の取り扱いになります。この場合は遺言執行者は相続登記を申請することができません。

一方、遺言書作成時期が令和元年7月1日以降であれば、新法の適用になります。この場合は遺言執行者が申請することが可能です。遺言執行者が司法書士に依頼することも、もちろん可能です。

このように遺言執行者の登記申請に関しては、旧法か新法かで取り扱いが大きく変わるので注意が必要です。

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3月 11 2020

遺産の使い込みを取り戻したいケース 遺産分割⑨


相続では割と良くあるトラブルです。
他の相続人が遺産を使い込んでしまったというものです。
「その分を返せ」と請求したところ、相手が聞く耳を持たなかったので、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるべきか、という相談を受けることがあります。

「遺産の使い込み」は遺産分割調停では解決しない

意外と思われる方も多いと思いますが、実は「財産の使い込みは遺産分割調停の範囲外である」、というのが家庭裁判所の見解です。
使い込みは遺産分割の前提条件についてのトラブルで、遺産分割そのもののトラブルではないと考えられているのです。

分かりやすく言うと、
「そもそも財産がどれだけあるかが決まってなければ遺産分割は始まらないのだから、財産の範囲を決めてから調停を申し立ててくれ。」

と裁判所は言っているのです。
遺産分割調停は決まっている財産の分け方を話し合う場所であって、財産の範囲を決める場所ではないということになります。

「遺産の使い込み」を解決する方法は?

遺産分割調停では解決しないとすると、遺産の使い込みを解決する方法は何があるのでしょうか。
もちろん、使い込んだ相続人が認めて自主的に返還してくれるなら問題ありません。しかし、多くの場合、素直には返還に応じないでしょう。

そのような時は、民事訴訟になります。
訴訟の種類は不当利得返還請求訴訟になる場合が多いようです。
使い込みをされた相続人が原告となり、使い込んだ相続人を被告として訴訟を起こす訳です。この訴訟で決着をつけて遺産の金額を確定させて、それから初めて遺産分割協議が始まることになります。

遺産分割のみを対象とした訴訟は無い

これも意外に思う人が多いかもしれませんが、実は遺産分割のみを対象にした訴訟というのは存在しません。遺産分割訴訟というのは無いのです。

相続人と相続財産が確定した後に分割方法で争いが起こった場合は、裁判としては家庭裁判所の遺産分割調停しかありません。いきなり遺産分割審判を申し立てることも制度上はできますが、現実の裁判所の対応では、例え審判を先に申し立てても裁判官の判断で調停にされてしまうケースがほとんどです。
この点は誤解されている方も多いので覚えておきましょう。

遺産分割審判の後に訴訟はできない

遺産分割調停でも話し合いがまとまらなかった場合は、遺産分割審判になります。審判は家庭裁判所の裁判官が最終的な分割方法の判断を下すものです。では審判で決まった後に改めて訴訟を起こすことはできるのでしょうか。

結論から言うとできません。離婚の裁判に詳しい方は意外に思うかもしれません。離婚の場合は離婚調停でまとまらない場合は離婚訴訟を起こすことは可能です。しかし遺産分割の場合は、このような仕組みにはなっていないのです。

従って遺産分割の争いは、遺産分割審判が確定してしまったら、それが最終決着となります。

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10月 23 2019

調停調書は自動的には相手方に送達されないので注意 遺産分割⑧

調停調書とは

遺産分割調停が決着すると、その内容を正式な書面に残すために、家庭裁判所が調停調書を作成します。これは、通常の訴訟が行われた時に、和解で決着した場合に和解調書が作られるのと状況は似ています。

調停調書は裁判所のお墨付きのある公的な書面で、大変に強力な効果を持っています。

調停調書の効果とは

調停調書の一番の効果は、相手方が調書の内容を守らなかった場合に、強制執行が出来るという点にあります。

強制執行とは差押のことです。相手方の財産を裁判所の力で強制的に差押えてもらえるのです。

ですから調停調書を甘く見てはいけません。裁判所で決着した以上、例え話し合いの結果だったとしても、訴訟における判決と同様の効果を持つのです。

強制執行の条件

もし相手方が調停の内容を守らなくて強制執行をする段階になったら、条件として調停調書が相手方に送達されていなければなりません(送達とは裁判所が郵送で送ることを言います)。

相手方が受け取っていなければ効果は発揮されないのです。
これは裁判全体に共通する重要なポイントです。

調停調書は自動的に送達されるのか

これは非常に誤解が多いのですが、調停調書は何もしないと送達してくれません。この辺り、裁判所にサービスを期待してはいけません。

送ってもらうためには送達申請が必要です。送達申請とは、申立人と相手方に郵送してもらうように裁判所に申請することです。

調停調書の送達申請は忘れないように

相手方に調停調書が送達されていないと、いざと言う時の強制執行が出来ません。
送達申請は後からでも可能ですが、もし相手方が引っ越して住所が変わっていたり、結婚して氏名が変わっていたりしたら、変更を証明するための手続が新たに必要となり、時間と費用が余分にかかります。

従って、送達申請は必ず調停調書が作成された直後にしておくようにしましょう。

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遺産分割

10月 21 2019

遺産分割調停の書類は相手方に送られるのか 遺産分割⑦

遺産分割調停における申立の実情

名古屋家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる場合、申立書とは別に「申立の実情」という書類を提出します。

これは、相続人間の争いの原因などを具体的に記載する書面です。
家裁が前もって、争いの内容が分かっていた方が、調停にスムーズに望めるという趣旨で提出を求められます。

申立の実情は相手方には送付されない

申立書は調停が始まる前に、家裁から相手方(申立人以外の相続人)に呼出状と一緒に送付されます。しかし、「申立の実情」は相手方に送付されません。

ですから、申立人は相手方のことを気にすることなく、正直に争いの原因や経緯を書きましょう。

ただし、ウソはいけません。どのみち調停が始まれば、相手方の意見も聞くことになりますので、明らかに矛盾していれば気付かれます。
間違っているのが申立人の方だと判断された場合、調停が不利に進むことになりますから注意しましょう。

不動産がある場合の書類

不動産が遺産に含まれている場合、登記事項証明書の原本と、固定資産評価証明書の原本を提出します。これらの書類は相手方には送付されません。遺産に何があるかは申立書類に記載され相手方に送付されるので、それで充分という判断なのでしょう。

この時、例えば相続登記の場合は、固定資産評価証明書の代わりに毎年送られてくる固定資産通知書を出しても、法務局は受け付けてくれますが、家庭裁判所は受け付けてくれないので注意しましょう。

内容としては同じことが書いてあり、発行元も同じなので、なぜ家裁でダメなのかは正直良く分かりません。個人的には理不尽な感じがしますが、従わないと調停が始まりませんので、仕方が無いでしょう。

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10月 18 2019

家裁に出す残高証明書は死亡時ではなく申立時 遺産分割⑥

遺産分割調停における必要書類

法定相続人の間で相続分の話し合いが難しくなった場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるのが、一般的な解決法です。

その時に家裁に提出する必要書類の中に、相続財産の証明書類があります。
不動産ならば固定資産評価証明書等、預貯金ならば残高証明書や通帳のコピーなどです。

相続税の申告に使う残高証明書とは異なる点に注意

相続税の基礎控除を超えていて、相続税の申告が必要な場合に添付する預貯金の残高証明書は、死亡時の金額が記載されているものです。相続税は死亡時の財産に対して、かかってくるものだからです。

しかし、遺産分割調停は現在ある相続財産の分け方を決めるものなので、残高証明書の金額は、家裁への申立直前の日付のものが求められます。
一般的に残高証明書というと死亡時の金額を記載したものが多いので、この点は注意が必要です。

なぜ遺産分割調停の残高証明書は申立時の金額なのか

遺産分割調停は、あくまで存在している相続財産の分け方を決める制度だからです。

このように説明すると、「それならば、調停になる前に先に引きだして使ってしまった相続人が有利になるのでは」と思う人がいるでしょう。しかし、それは誤解です。

遺産分割調停の席では、「先に引き出して使った人がいたら、そのことも含めてバランスを取るには、現在の預貯金をどのように分けるべきか」ということも考慮に入れて話し合うことは可能です。

遺産分割調停では、きちんと自分の意見を主張しよう

遺産分割調停が始まったら、調停委員は法定相続人全員の意見を聞きます。調停委員にとっては、参加者とは始めて会う訳ですから、話してくれない限り事情は分かりません。話さなかったことは、無かったこととして扱われます。

ですから調停委員には、きちんと情報を伝えなくてはいけません。もし先に余分に使ってしまった相続人がいるならば、はっきりと伝えましょう。
(ただし先に使われた財産が、亡くなられた人のために使われた正当なものならば、それは分け方に影響がありません。覚えておきましょう。)

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遺産分割

6月 07 2019

遺産分割調停の管轄と流れ 遺産分割⑤

遺産分割調停とは

相続人同士で争いがあり、遺産分割協議がどうしてもまとまらない場合は、最後の手段として家庭裁判所による遺産分割調停があります。
遺産分割調停は、家庭裁判所に相続人全員が出向いて調停委員を仲介役として話し合う手続のことです。
遺産分割調停でも話し合いがまとまらなかった場合は、審判と言う手続に移行します。

どこの家庭裁判所に申し立てるのか

どこの裁判所で手続を行うか、を管轄と言います。
遺産分割調停の管轄は、「申立人以外の相続人の住所地にある家庭裁判所」です。
例えば3人の子が相続人の場合、申立人が東京在住で、次男が大阪、長女が名古屋だったとしましょう。この場合、大阪か名古屋どちらかの家庭裁判所に申し立てる必要があります。

申立人の住所でやりたい場合は、どうする?

上記の例で、どうしても東京でやりたい場合は、「相続人全員が東京で良い」と合意できた時に限ります。しかし通常、遺産分割調停になる案件は相続人同士で揉めているケースなので、このような合意を取り付けるのは難しい場合が多いでしょう。

遠方で出席が難しい時は

相続人がバラバラに住んでいる時は、管轄裁判所が遠方で出席が難しい場合もあるでしょう。そのような時のために「電話会議」という制度があります。これは、遠方の相続人に限り電話で遺産分割調停に参加するやり方です。
この電話会議システムは大変便利なのですが、管轄の家庭裁判所の許可が必要です。家裁が許可してくれなかった場合は、利用することが出来ません。実際には、許可率はあまり高くないです。裁判所が、本人の直接参加にこだわっていることも一因です。ただ確率はゼロではありませんから、遠方ならば、とりあえず申請はしてみることをおすすめします。

調停に欠席したらどうなるのか

遺産分割調停に欠席した場合で電話会議も認められなかった場合、相続人全員参加の原則を満たしていませんので、遺産分割調停は不成立となります。
この場合、制度上は、自動的に遺産分割審判に移行することになっています。遺産分割審判は裁判のようなものなので、欠席すると、欠席した相続人に不利な状態になります。最終的に裁判官が全てを決めて審判と言う結論を出します。
審判は裁判官が法律に従って結論を決めるものなので、相続人の希望や満足度などはあまり考慮に入れられません。不満の出る結果になることも多いです。ですから、なるべく調停の段階で合意に至るようにした方が良いとは思います。

取下げを勧められることもある

遺産分割調停で相続人の一人が欠席すると、調停委員によっては「調停の取下げ」を強力にすすめてくる場合もあります。制度上は「調停が不成立の時は自動的に審判に移行する」のが原則ですが、これを調停委員の裁量で止めようとしてくる時があるのです(理由は良く分かりません)。
ただし、これは義務ではありませんので、続けて審判をやって欲しい時は、きっぱりと拒否しましょう。もし取下げてしまうと完全に振り出しに戻って、家裁に支払った費用も無駄になってしまいます。

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5月 31 2019

戸籍が廃棄されている場合の相続手続 遺産承継(遺産整理)⑯

戸籍の廃棄とは

戸籍には保存期間が定められています。平成22年に戸籍法施行規則が改正されるまでは80年でした。現在は150年となっています。ただし、保存期間を経過していても役所によっては保存している場合もあり、一律の取り扱いではありません。一般的に大量の戸籍を扱う都会の役所の方が、廃棄している確率が高いと言えそうです。

除籍とは

戸籍には種類があり、大きく分けて現在戸籍・除籍・改製原戸籍の3つがあります。現在戸籍とは最も新しい戸籍で、通常、戸籍と言うと現在戸籍のことです。
一方、除籍とは戸籍に記載されている家族が全員いなくなった場合のことです。
いなくなる原因としては以下のような理由があります。
①死亡
②結婚による新たな戸籍の作成
③転籍(本籍地の変更)
戦後の戸籍制度では結婚すると親の戸籍から抜けていきますので、死亡や結婚で徐々に戸籍の人数が減っていき、全員がいなくなると除籍となります。また、転籍すると前の役所の戸籍は閉鎖されて除籍となります。
前項の保存期間は除籍謄本が対象になります。

改製原戸籍とは

結婚や転籍以外でも戸籍が新しく作られることがあります。それは戸籍法が改正された時です。戸籍法の改正によって閉鎖された古い戸籍のことを改製原戸籍といいます。戦後だと昭和23年と平成6年に戸籍法が改正されています。戦前生まれの方が亡くなった場合、ずっと独身で一度も転籍していなくても戸籍は最低3つはあることになります。
相続手続における「出生までの戸籍をたどる」ということは、除籍謄本や改製原戸籍も含めて全てをそろえるということです。特に除籍謄本については保存期間があるので注意が必要になるのです。

戸籍が廃棄された場合の相続手続

保存期間が80年だった時に多くの戸籍が廃棄されたため、相続が発生して戸籍の収集を始めると戸籍(除籍謄本)が取れないという事態に直面する場合があります。
相続手続では、銀行や法務局から被相続人の出生から死亡までの戸籍が必ず求められます。戸籍が廃棄されていた場合、出生までたどれないということが起こるのです。

戸籍が廃棄されていた場合の解決法

この場合は、廃棄した役所から「廃棄済み証明書」という書面を発行してもらって、この書面を添付することで相続手続をすすめていくことが可能です。以前は廃棄済み証明書に加えて、相続人全員の同意書を添付する取り扱いが一般的で、かなり事務的に面倒な手続でした。
しかし、平成28年に法務局の取り扱いが変更になり、現在では廃棄済み証明書が添付されていれば、相続人全員の同意書は不要な取り扱いになりました。これは相続手続の負担軽減になり、非常に良い変更だったと思います。(銀行の場合は、法務局で法定相続情報証明を取得して持っていけば同様の取り扱いになります)

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遺産承継

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