司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

9月 18 2020

トラブルになり易い事例(3) 遺言(21)

最近、増えてきている事例で、同棲カップルで籍を入れていない場合、内縁の配偶者に財産を譲りたい時は遺言が絶対に必要です。

(マメ知識)内縁とは
同棲カップルのことを内縁関係と言います。籍を入れていないカップルのことですね。お互いのことを、「内縁の妻」「内縁の夫」と言うこともあります。法的には「特別縁故者」という呼び方をします。

日本の法律では、戸籍上の関係が無い場合、相続権はありません。どれだけ長期間一緒に暮らしていたとしても、考慮されることはありません。従って、内縁の妻(夫)に相続させようと思ったら、必ず遺言を残しておかなくてはなりません。

特に注意すべきなのは、片方の名義になっている家に同居して住んでいた場合です。もし遺言を残さずに名義人が亡くなってしまったら、名義人の相続人から「私が家を相続したから出て行ってくれ」と言われても、内縁の妻(夫)は拒否できないのです。

このようなことにならないように、同棲のカップルはある程度の年齢になったら必ず遺言を残すようにしましょう。どちらかに名義が集中している場合は片方だけでも構いませんが、名義が分散している場合はお互いに遺言を残した方が良いでしょう。

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遺言

9月 18 2020

トラブルになり易い事例(2) 遺言⑳

多くの相続トラブルを見てきて、絶対に遺言を残した方が良いと言える代表的な事例を紹介しましょう。
それは「子どもがいない場合」です。
子どもがいない状態で親が亡くなると、かなりの確率で相続トラブルになります。それは、相続人同士が面識があまり無い場合が多いからです。遺産分割協議をまとめるのが大変になります。

なぜそうなるかと言うと、最近は高齢で亡くなる方が多いので、亡くなった時には両親はだいたい先に亡くなっています。すると、相続人になるのが故人の兄弟姉妹になります。ところが、兄弟姉妹も既に高齢で何人かは亡くなっている場合が多く、その場合、故人の甥姪が相続人になるのです。

残された配偶者と故人の甥姪が頻繁に会っているというケースは、核家族の進んだ最近では珍しいでしょう。すると、あまり会ったことが無いもの同士が遺産分割協議をすることになるのです。想像しただけでも、まとめるのが難しそうですね。

実は、このケースで遺言を残した方が良い、もう一つの有力な理由があります。
それは、兄弟姉妹や甥姪には遺留分が無いからです。
遺留分が無ければ、遺言さえ残っていれば配偶者に全ての財産を引き継ぐことが可能です。遺言がある場合と無い場合の結果に大きな差が出るケースなのです。

「子どもがいない場合」は遺言を残すメリットが非常に大きいケースだと言えるでしょう。

(マメ知識)
遺留分とは、遺言で指定されていなかった場合でも最低限相続できる割合を法律で決められた制度です。
子どもや親には遺留分が認められていますが、兄弟姉妹や甥姪には認められていません。

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遺言

8月 26 2020

遺言書保管制度 遺言⑲

相続法改正前の自筆証書遺言の弱点

遺言には大きく分けて自筆証書遺言公正証書遺言があります。
その中でも自筆証書遺言は「自分で書ける」という手軽さもあって選択されることが多い傾向があります。しかし、自筆証書遺言には厳格なルールがあるため、遺言を残した人が亡くなった後に開けてみたら、ルールにあっていなくて無効になったというケースも多いという弱点があります(実際に私の事務所に遺言を持って相談に来られた相続人の中にも、何人か無効になった方がいました)。

家庭裁判所の検認

他にも自筆証書遺言の最大の弱点と言われていたのが、家庭裁判所の検認の手続です。
相続法が改正される前、自筆証書遺言は作成者が亡くなった後、家庭裁判所で検認を受けなければ、その後の預貯金や不動産の相続手続ができないというルールがあったのです。これがネックになって自筆証書遺言を選択しないというケースも結構ありました。

家裁の検認とは

家裁の検認とは、原則として開封前の自筆証書遺言を家裁に持ち込んで、家裁から法定相続人全員に遺言の存在を知らせた上で、家裁によって遺言を開封して中身を確認することです。確認後に家裁の検認済みという証明書を遺言に添付してくれます。検認済みの証明書が添付されていないと自筆証書遺言は相続手続に使うことができません。
この検認手続は結構な時間がかかります。1カ月くらい(法定相続人が多い場合はもっと)は相続手続が遅れることになります。

遺言書保管制度

相続法が改正されて自筆証書遺言の取り扱いが大きく変わりました。これは政府が相続手続をスムーズに進めるために遺言をもっと活用して欲しいという考え方があります。(遺言が無いと相続人同士でもめて、相続手続がなかなか進まないことが多くなってきたという事情があります)
そこで新設されたのが遺言書保管制度です。自筆証書遺言を法務局で預かって紛失や改ざんを防ごうという目的です。

遺言書保管制度のメリット

従来、自筆証書遺言の弱点として、

    ①せっかく書いたのに発見されない
    ②遺言のルール通りに書かれていないため無効になる
    ③紛失や破損の心配がある
    ④家裁の検認が必要

などがありました。

しかし、遺言書保管制度はこれらの弱点を改善する制度として作られたので以下のようなメリットがあります。

    ①相続人は法務局で検索することができるので発見がしやすい
    ②遺言の形式がルールどおりに書かれているかを法務局がチェックするので、形式不備は起こりにくい。(あくまで形式だけです。内容が法律にあっているかまではチェックされないと考えた方が良いでしょう)
    ③法務局に保管されているので紛失や破損の恐れが無い
    ④家裁の検認が不要。(大きなメリットです)

自筆証書遺言が利用しやすくなった

相続法改正前は自筆証書遺言には様々な弱点があったために、司法書士などの相続の専門家は公正証書遺言をすすめることが多かったのが事実です。私も以前は公正証書遺言をすすめていました。
しかし、相続法が改正されて遺言書保管制度ができて、自筆証書遺言の弱点は大幅に改善されました。特に大きかったのは家庭裁判所の検認が不要になった点です。
もともと自筆証書遺言は公正証書遺言よりも費用的に安いというメリットがありました。今回の遺言書保管制度により、専門家が自筆証書遺言をすすめるケースも増えてくると思われます。

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遺言

8月 24 2020

富山家裁は回答書が不要 相続放棄⑯

相続放棄の回答書とは

相続放棄の申立てをすると、一般的には申立て後しばらくすると回答書という書類が家庭裁判所から郵送されてきます。これは本人の最終意思を確認するという目的で送られるもので、本人が直筆で回答して署名押印してから家裁に返送するというスタイルになっています。

相続放棄の回答書が送られる理由

相続放棄はやり直しがきかない手続です。相続放棄をした後で「気が変わったので、やっぱりやめます」とは言えません。相続放棄の撤回は法律上、認められていないのです。
例外的に取り消しが認められる場合もありますが、極めてハードルが高く非常に難しいのが現実です。
ですから、回答書で再び本人の意思確認をして、「本当に相続放棄をして大丈夫ですね」と念を押しているのです。

回答書の内容

回答書の質問事項は家庭裁判所によって異なります。よくある質問としては以下のようなものがあります。

    「あなたは自分の意志で相続放棄の申立てをしたのか」
    誰かに強制されて相続放棄をしたのではないという確認ですね。
    「あなたが被相続人の死亡を知ったのはいつか」
    熟慮期間(3カ月)をいつから計算するかに関する質問です。この日付が死亡日から3カ月以上経っていた場合は、別途説明が求められます。
    「あなたは、どういう理由で相続放棄をしたのか」
    債務超過と言う理由が圧倒的に多いと思いますが、亡くなった親族と疎遠でもらうつもりが無いという回答もあります。

これらが代表的な質問ですが、家裁によって質問が多いところや少ないところ色々です。

(マメ知識)
債務超過とは、マイナスの財産(借金)の方がプラスの財産よりも多い状態のことを言います。相続放棄のほとんどの理由は債務超過でしょう。

ほとんどの家裁で回答書が届く

私の事務所でも全国色々な家庭裁判所に相続放棄の申立てをしましたが、ほとんどの家裁で回答書は郵送されてきます(質問の内容は異なりますが)。
しかし、富山家庭裁判所高岡支部に相続放棄の申立てをしたところ、回答書が郵送されずに、いきなり相続放棄申述受理通知書が届きました。ようするに他の家裁よりも短期間に手続が終了するのです。

(マメ知識)
相続放棄の申立(申述)は被相続人(故人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出しなければなりません。相続人の住所地ではないので注意しましょう。

富山家裁高岡支部は例外的だと思う

相続放棄の回答書は、後で撤回ができない手続なので最終の意思確認として送っているという理由があります。従って、「回答書を送らない」という富山家裁高岡支部の取り扱いは例外的で珍しいと言えます。
早くに手続が終了するというメリットはありますが、やり直しがきかない手続きであるため、より慎重になる必要があります。
しかし、どこの家裁に出すかは法律で決まっているので、富山家裁高岡支部管轄の地域で亡くなった方の相続人の相続放棄には、こういう特徴があると覚えておいた方が良いでしょう。

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相続放棄

8月 21 2020

農地の相続 相続登記(22)

農地とは

不動産の登記における農地とは、法務局で取得する登記事項証明書の「地目」の欄に「田」または「畑」と記載されている土地のことを言います。実際には耕作が行われていなくて農地として使われていなかったとしても、地目が田や畑になっていれば農地とみなされます。

農地は売買や贈与の時は農地法の許可が必要

国が定めたルールで、農地は勝手に他人に渡してはいけないことになっています。食料を生産する大事な土地なので、農業以外の目的で利用する人に自由に渡してしまうと、食料生産がどんどん減ってしまいます。

これを防ぐために農地法という法律が作られ、農地の売買や贈与には許可が必要と言うルールになっているのです。農地法の許可証は法務局で登記申請する時の必要書類になっていますので、添付しないと審査が通りません。

農地の相続には許可は不要です

ただし相続の場合は例外として、農地法の許可は不要という取り扱いになっています。
相続の場合は後を継いで農業を続ける確率も高いですし、法律上、亡くなった瞬間に相続人に所有権が移ると考えられているので、許可を条件にすることが難しいという理由もあります。

(マメ知識)
相続人が複数いる場合は遺産分割協議が済むまで相続人のものにならないように思うかもしれませんが、法的には、分割協議で決まった相続人に所有権が移る日付は故人の死亡日になります。分割協議が終了した日ではないのです。

農地を相続した後、売却したい時は許可が必要

最近は農家の相続でも相続人は都会にいて、農地を相続しても使いみちが無いから売却したいという相談も増えています。この時にネックになるのが農地法の許可です。

農地法の許可を取り扱うのは地元の役所の農業委員会ですが、基本的には農地として使ってくれる人が買主でないと、なかなか許可を出してもらえません。食料生産のための農地をできるだけ減らさないというのが農地法の趣旨だからです。

農地以外にして売却したい時は農地転用の許可

農地の地目を例えば「宅地」などに変更することを農地転用と言います。農地転用ができれば農家以外の人にも自由に売却することが可能です。しかし、農地転用するにも許可が必要なのです。
農地転用は比較的住宅街に近い農地などは認められやすい傾向がありますが、周りが全て農地のような環境では認められる可能性は低いです。

農地の移転の日付は許可された日

通常の不動産売買の場合、決済日が所有権移転の日付になることが多いです。しかし、農地の売買の場合は農地法の許可が降りないと所有権が移転しません。もし許可が降りた日が決済日よりも後だった場合は、所有権移転の日付は許可が降りた日になります。

(マメ知識)
よく名義変更と言う言葉を使いますが法的には正確ではありません。正式な用語は所有権移転と言います。登記事項証明書でも所有権移転と書かれています。法的には、所有権がAさんからBさんに移転したという考え方をするのです。

農地の相続は気を付けよう

農地を相続した場合、そのまま農家を続けるのならば問題ありませんが、不要だから売却したいと考えた場合、農地法の許可の問題があります。早めに専門家に相談した方が良いでしょう。

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相続登記

8月 21 2020

相続した不動産を売却した時の固定資産税の取り扱い 相続登記(21)

相続した不動産の売却

相続登記の相談の中で比較的多いのが、「相続した不動産を売却したいので、相続登記をして欲しい」というものです。故人の名義から買主の名義に直接移すことは法律上、認められていません。必ず相続人の名義に移してからでないと売却できないのです。

売却した時、固定資産税はどうなるのか

では不動産を売却した時、売主が支払った固定資産税はどうなるのでしょうか。
まずは原則から見ていきましょう。
原則では、「固定資産税はその年の1月1日時点の名義人に対してかかる」というルールになっています。従って、原則通りなら売主が全額支払うことになりそうです。

しかし、これは役所の都合で決められた原則なので(こうやって決めてしまった方が役所はやり易いから)、非常に不公平です。従って、一般的な商習慣ではより公平な取り扱いをすることになっています。

不動産取引の現場では、固定資産税は日割で分割する

より公平にするためには、買主に名義が移ってからは買主が支払う方が良いでしょう。そのため、不動産取引の現場では、売主が固定資産税を支払った後の場合、1年間を日割して買主分の金額を計算して、決済の時に買主から売主に支払ってもらうのが通常のやり方になります。

固定資産税の基準日は4月1日から3月31日

固定資産税は1月1日の名義人にかかるのですが、基準となるのは4月1日から3月31日までの1年間です(地域によっては1月1日から計算するところもあると聞いています。少なくとも愛知県周辺は4月1日からです)。
ですから日割計算する時も、4月1日から3月31日までで計算します。

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相続登記

8月 03 2020

養子は実の親の遺産も相続できる 相続登記⑳

2つの養子制度

養子には2種類の制度があります。一つは普通養子、もう一つは特別養子です。
普通養子は、養子に行った後も実の親との縁が切れません。一方、特別養子は実の親との縁が切れてしまいます。
特別養子は要件が厳しく簡単には認めてもらえません。実の親との縁を切った方が良いと思われるような事情(例えば虐待など)がある場合に特別に認められるものです。従って件数はあまり多くありません。
日本における養子のほとんどは普通養子になります。

普通養子の相続

普通養子の場合、親は実の親と養親の2組存在することになります。従って、相続の時も実の親からも、養親からも相続することができます。
一見、非常に得なように思えますが、そうとばかりも言えません。なぜなら、どちらかの親(あるいは両方)に借金がある場合も相続人になってしまうからです。

養子について良くある誤解

不動産の相続登記や遺産分割協議の相談を受けるとき、兄弟姉妹の一人は養子に行ったから今回の相続人にはならないと考えている方が珍しくありません。しかし、これは大きな間違いです。

普通養子の場合、実の親との戸籍上の縁は切れていません。従って、実の親が亡くなった時の遺産相続の相続人に養子に行った子は含まれます。当然に養子に行った子を除いた遺産分割協議は法的に無効となります。遺産分割協議ができなければ不動産の相続登記もできません。大事なことなので注意しましょう。

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6月 26 2020

アパートの家財道具の処分を大家に頼まれたら 相続放棄⑮

亡くなった親族が賃貸アパートに住んでいた場合、その親族が部屋に残してあった家財道具(専門用語で残置物と言います)の処分を大家さんに頼まれることがよくあります。
しかし、相続人が相続放棄を考えている時は処分について注意が必要です。詳しく説明しましょう。

相続放棄をするには、全ての財産について相続してはいけない

相続放棄は借金を相続しないための手段として使われることが多い手続です。そのため借金にばかり焦点があたりがちですが、プラスの財産も相続することができません。もしプラスの財産を相続してしまったら「単純承認」とみなされ、後で相続放棄をすることができなくなります。(単純承認とは、プラスもマイナスも含めた全ての財産を相続することです。)

一度、単純承認すると後から撤回できない

ここで重要なのが「一度、単純承認してしまうと後から撤回することができない」ということです。例えば、プラスの財産を一旦相続してから、後で相続した財産と同じ金額を返還したとしても、単純承認した事実は変わらないということです。
少しでも借金の方が多くなる可能性があるならば、単純承認しないように気を付ける必要があります。

家財道具(残置物)はプラスの財産になるのか

では亡くなった親族が賃貸アパートに残した家財道具はプラスの財産になるのか、という点が問題になります。これを判断するのに重要なのが、家財道具に価値があるのかどうかです。例え低額でも価値がある場合はプラスの財産になると考えられます。

交換価値がある家財道具(残置物)は処分できない

注意すべきポイントは、「捨ててしまうのなら相続にはならないんじゃないか」という思い込みについてです。非常に多くの人が誤解していますが、価値のあるものは相続しないと処分できません。つまり「捨てる(処分する)」という行為は、価値があるものについては相続したことと同じになってしまうのです。そうなれば単純承認とみなされ相続放棄ができなくなる可能性があります。

一括で廃品業者に引き取ってもらうのは危険

大家さんに「残った家財道具を片付けてくれ」と頼まれて、廃品業者に一括で引き取ってもらうというのは誰もが考える方法だと思いますが、相続放棄を検討している場合は気を付けなければなりません。もし、その中に低額でも価値があるものが含まれていた場合、処分行為イコール単純承認とみなされてしまうかもしれません。

これを防ぐためには、処分する前に全ての家財道具について、きちんと査定してもらって、「価値が無い」という証明書を取っておくことです。価値が無ければゴミと同じですから処分しても単純承認にはなりません。

価値があるものが含まれている場合

残された家財道具の中に価値があるものが含まれている場合は難しい対応になります。価値があるものは処分できませんから、相続人の家に引き取るか、倉庫でも借りて保管することになります。
相続放棄をしない相続人がいる場合は、その相続人に後の処理は全て任せるのが正解です。相続放棄をする相続人は、なるべくかかわらないようにするべきです。

相続財産管理人を選任してもらう

未払いの賃料がある時で、相続人が保管することもできないし、全ての相続人が相続放棄をする場合は、大家さんに「相続財産管理人を家庭裁判所で選任してもらってください」と言うしかないでしょう。
全ての相続人が相続放棄をして相続人がいなくなった場合、債権者(未払い賃料がある場合は大家さんも債権者の一人です)は家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらうことができます。
相続財産管理人に残された家財道具を処分してもらえば最も合法的な対応になります。

ただし、この方法にも欠点があります。それは費用と時間がものすごくかかるということです。この負担を大家さんが嫌がって話が進まないということは良くあります。

放置するしかない場合もある

相続人全員が相続放棄をして、誰も保管する人がいなくて、更に大家さんも「片付けてくれ」と言うだけで何もしない場合、放置するしかない時もあります。

もちろん心情的には「放置するのは悪い気がする」と感じる人は多いでしょう。しかし、下手にかかわることで相続放棄ができなくなったら、それこそ大変です。

相続放棄の法的効果は「最初から相続人ではなかったものとみなす」ですから、「私は相続放棄をする(あるいはした)ので、処分行為にあたる家財道具の片づけはできません」と断るしかないでしょう。大家さんとの関係は悪くなるかもしれませんが、法律で決められている以上、仕方がありません。

亡くなった親族の残された財産には気を付けよう

このように相続放棄を考えている場合は、亡くなった親族の残された財産には気を付ける必要があります。家財道具以外でも、例えば自動車があった場合は、勝手に廃車にするのは危険です。必ず事前に査定をして、値段が付くようならば家財道具と同様の選択になります。

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相続放棄

6月 08 2020

死亡届では終わらない銀行の相続手続

相続が発生すると、死亡届や火葬許可申請書の提出、水道光熱費の支払の変更または停止、通信料金の支払の変更または停止、葬儀の手配、健康保険の手続などをすることになります。

そのうち手続にも慣れてきて、「だいたい同じやり方で、この後の手続もできるだろう」と考えてしまう方が多いのですが、銀行の相続手続になると途端にストップしてしまいます。それはなぜでしょうか。

銀行の相続手続は、事実の報告ではなく法律行為

水道光熱費や通信費の手続などは、名義人が死亡したという事実の報告です。ですから簡単な手続きで済む場合がほとんどです。
しかし、銀行の相続手続は相続財産の継承という法律行為になりますので、手続の厳格さが全然違います。法律行為である以上、法律にのっとった手続が求められます。

以前、「死亡届を持っていけば銀行の相続はできますか」という相談がありましたが、実際にはものすごく多くの書類を集める必要があります。必要な書類について説明したら、「そんなに大変なんですか」と驚かれていました。

最も大変なのは出生までさかのぼった戸籍

銀行の相続で最も大変なのは、被相続人(亡くなった方)の出生までさかのぼった戸籍の収集です。これがなぜ大変なのかと言うと、相続以外で取得することが無いため、ほとんどの人にとって初めての経験になるからです。

まず「出生までさかのぼる」という意味が通常は分からないと思います(私も司法書士になる前は分かりませんでした)。具体的に説明しましょう。

戸籍は転籍・婚姻・家督相続・法律改正などで増える

戸籍は転籍・婚姻・家督相続・法律改正などで増えていきます。「出生までさかのぼる」とは、これらの原因で増えていった戸籍を1通ずつ全てそろえていく作業です。かなり手間がかかるので相当に根気がいる作業となります。

転籍の場合

転籍とは本籍を変更することです。本籍の変更が同じ役所の範囲内ならば戸籍の通数は増えません。しかし、異なる役所に変更した場合は通数が増えます。転籍を繰り返した場合は、その分だけ取得する戸籍の通数が増えていきます。

また、遠方の役所に転籍している場合は、戸籍を郵送で請求しなければなりません。戸籍の郵送請求の時の料金は、郵便局の定額小為替による支払しか認められていないため、申請書・定額小為替・返信用封筒・身分証明書を同封して郵送することになります。

相続の場合、申請する段階では戸籍が何通になるかは分かりませんので、定額小為替は多めに送ることになります。それでも足りなかった場合は役所から電話がかかってきて、追加の定額小為替を要求されます。余った場合は定額小為替で返送されてきます。一般の方は定額小為替で返送されても使いみちがないので、再び郵便局へ行って現金化する必要があります。

婚姻の場合

戦後の戸籍法改正で、結婚したら必ず新戸籍が編製されることになりました。従って、既婚者の場合は必ず結婚前と結婚後の戸籍が存在します。これも戸籍の通数が増える原因です。結婚と離婚を繰り返した場合は、その分だけ取得する戸籍の通数が増えることになります。

家督相続の場合

一方、高齢者の場合は出生が戦前になっているケースも珍しくありません。この場合、出生までさかのぼると戦前の戸籍も取得することになります。
戦前は今とは全く戸籍のルールが違いますので注意が必要です。戦前の戸籍は家督相続の時代なので、結婚では戸籍の通数は増えません。しかし、戸主が隠居したり死亡したりで家督が継承されると新戸籍が編製され通数が増えます。(戸主という言葉は戦後には無いので分かりにくいかもしれません。戦前は戸主が全ての財産を相続しました)

法律改正

戸籍法が改正されると新しい様式の戸籍に編製替えが行われるので通数が増えます。主な戸籍法の改正は以下のとおりです。
①明治19年
②明治31年
③大正4年
④昭和23年
⑤平成6年(現在の横書きの戸籍は平成6年式です)
戦前に生まれた方は少なくとも大正4年式の戸籍まではさかのぼることになります。

出生までさかのぼった戸籍についての誤解

よく誤解されるポイントとしては、「相続人は親が子どものころはよく知らない」ということに気付かないことです。
相続の相談があると、「親は転籍をしていないので、一つの役所で全ての戸籍は集まるはず」と言われる方が非常に多いのです。しかし、実際にさかのぼってみると遠方の役所に戸籍を取るというのは珍しくありません。

なぜ、このようなことが起こるのかというと、「親が子どものころは祖父母の戸籍に入っていた」ということを忘れてしまっているからです。
出生までさかのぼるということは、親が祖父母の戸籍に入っていた頃までさかのぼることになります。親が結婚した後に転籍をしていなかったとしても、結婚前に祖父母は転籍をしていたかもしれません。そもそも最初から祖父母の本籍は遠方かもしれません(このパターンは非常に多いです)。

被相続人以外の出生までさかのぼった戸籍

他にも注意点があります。大変手間のかかる「出生までさかのぼった戸籍」ですが、被相続人だけでは終わらない場合があるのです。
例えば、子どもが親よりも先に亡くなり孫がいた場合、代襲相続と言って孫も相続人になります。この時は先に亡くなった子どもについても「出生までさかのぼった戸籍」が必要になります。

また子どもがいなくて被相続人の両親も亡くなっている場合、兄弟姉妹が相続人になりますが、この時は被相続人の両親二人についても「出生までさかのぼった戸籍」が必要になります。
更に兄弟姉妹が被相続人よりも先に亡くなっていて甥姪がいた場合は、甥姪が代襲相続人になりますが、この時は兄弟姉妹についても「出生までさかのぼった戸籍」が必要になります。

ここまでくると、銀行に提出する戸籍だけで30通くらいになることも珍しくありません。(私の事務所の最高記録は100通を超えたケースもあります。その時の相続人は15名を超えました)
ゆえに子どもが先に亡くなって代襲相続が発生している場合や、兄弟姉妹や甥姪が相続人に含まれる場合は、一般の方が手続するにはハードルが高いと思います。専門家に依頼した方が良いケースです。

相続人全員からの委任状または遺産分割協議書

戸籍の収集だけでも、かなり大変だということは分かって頂けたかと思います。しかし、銀行の相続手続は戸籍の収集だけではありません。相続人全員からの委任状または遺産分割協議書が必要になります。

遺産分割協議の前に銀行預金を相続で解約しようとすると、銀行は「法定相続人全員の委任状と印鑑証明書」を要求します。解約申請人が法定相続人の一人である場合は、申請人以外の相続人全員分が必要です。印鑑証明書が必要ということは、委任状の押印は全員が実印でなければなりません。

銀行は相続争いに巻き込まれたくないので、相続人全員の実印による委任状を預かることで、「全員が納得している」という証拠にしたいのです。

一方、遺産分割協議が終了して遺産分割協議書があれば、全員分の委任状は不要です。遺産分割協議書には法定相続人全員が実印を押して印鑑証明書を添付していますので、委任状の代わりになるのです。

銀行の相続手続の真実

ここまで読んで頂いた方には、銀行の相続手続が想像よりも大変で手間がかかる、ということを実感して頂いたかと思います。自身で行われた方は、「こんなに大変だと思わなかった。最初から分かっていたら専門家に頼んだと思う」という感想を持たれる場合が非常に多いです。
銀行の相続手続は遺産の承継業務なので厳格なルールに基づいて行われます。死亡届や身分証明書の提示だけで済むような簡単な手続きではないのです。

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預貯金の相続

4月 14 2020

死後離縁で必要な書類 死後離縁②

死後離縁とは

死後離縁とは、養子縁組を行った養親または養子のうち、どちらか一方が亡くなったとき、生存している養子または養親が家庭裁判所の許可をもらって縁組を終了させることを言います。一般的には、亡くなった側の家族と縁を切りたい場合に使われることが多い制度です。

亡くなった後で、縁を切りたいという理由は様々ですが、お話を伺うと、「縁を切りたいのも、わかります。」という場合が多いです。
今回の記事では、死後離縁に必要な書類についてお話します。

死後離縁の審判書

家庭裁判所に死後離縁の申し立てをして審査で認められた場合、審判書という書類が家庭裁判所から届きます。これは家裁の裁判官が死後離縁の申立に問題が無いと認めてくれた証拠になります。

死後離縁の確定証明書

もう一つ重要な書類として、家庭裁判所が発行する確定証明書があります。これは審判書の内容が確定したこと(覆されないこと)を証明する書類になります。注意すべきなのは、確定証明書は自動的に届くものではないということです。
審判書を受け取った後に死後離縁の申請者自身が新たに確定証明書の申請を家庭裁判書にしなければなりません。

二つの書類を持参して役所に行く

審判書と確定証明書がそろっても、まだ終わりではありません。
次に本籍地のある役所に二つの書類と一緒に離縁したことを申請します。この申請が終わって初めて戸籍の記載が変更になり離縁が公式に記録されることになるのです。

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死後離縁①

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