司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

債務整理一般

8月 24 2011

臨時ニュース ホームページ更新

ホームページを大幅に追加・更新しましたので、お知らせします。より充実した内容になりましたので、どうぞ、ご覧下さい。細かい更新も加えると、ほぼ全てのページに渡っていますが、特に大きく更新されたのが、以下のページとなります。

1 Q&A

Q&Aの数を大幅に増加しました。債務整理に関することでは、かなりの疑問に答えていると思います。増加に伴って、分野別に目次を分けて検索しやすいようにしました。知りたい項目に、すぐにたどりつけるようになっていると思います。

2 最近の業者の状況

過払金返還請求における最近の業者の対応について新規にページを追加しました。過払金返還請求のページからボタンをクリックして参照して下さい。各業者の対応の違いは興味を持たれている人も多いのではないでしょうか。参考にして頂ければ幸いです。

3 ブラックリスト             

債務整理を考える時に、どうしても気になるのがブラックリストに関することだという人は多いと思います。こんな人達の疑問に答える為にブラックリストに関しても新規でページを設けました。トップページの上部のボタンで閲覧できます。ブラックリストに関しての知識を深めて下さい。

4 家計相談

不景気が長引いています。家計が厳しい家庭も多くなっていると思います。こんな時に必要なのが家計の管理です。健全な家計に近づけるには、どうしたら良いのか。そんな疑問に、お答えする為に新しく家計相談の業務を始めました。ファイナンシャルプランナーの資格を持った専門家が、あなたの家計を診断して解決方法を探ります。詳しい内容はトップページの上部のボタンをクリックして参照して下さい。

他にも細かい改定をしておりますので、一度、ご覧になったページでも、もう一度、読んで頂ければ、きっと新しい発見があるでしょう。                  

 

8月 17 2011

裁判所の特徴④ 名古屋地方裁判所

地方裁判所は訴額が140万円を超えた場合の第一審の裁判所ですが、他にも簡易裁判所の判決に不服な場合に第2審として裁判をするところでもあります。

名古屋地裁は大都市に置かれていますので、かなりの数の裁判官が配置されていて部署もたくさんあります。部署のことを名古屋簡裁では係と呼びましたが名古屋地裁では部と呼びます。この部が名古屋地裁の場合、民事だけで10部もあります。(民事2部は執行専門なので、通常訴訟は扱いません)

しかも簡裁と違うところは、この部が更にイ、ロ、ハなどと呼ばれる係に分かれており、それぞれに裁判官が違うのです。また、これらの係が更に担当する書記官によってA、B、Cと分かれています。ですから、名古屋地裁の係属先を表す場合は、民事3部イA係などと宛先を書くことになります。(とても、ややこしいですね)

これだけ部署や係が、たくさんあると簡裁以上に係属する部署によって取り扱いにばらつきがあります。特に最近、問題があると思えるのは過払調停に関してです。名古屋地裁の場合、係属する部署によって半強制的に過払金請求が調停に回されてしまうのです。(もちろん普通に通常訴訟で受けてくれる部署もあります。しかし、前にもお話したとおり、こちらで部署を選ぶことが出来ません)

過払調停は特定調停とは違います(読者の方は勘違いしないで下さい。特定調停では過払請求は出来ません)。これは訴訟をするつもりで過払金返還の訴状を出したにもかかわらず、裁判所の意向で半強制的に調停に回されてしまう制度のことです。この制度に関しては私の回りにいる法律家で評価している人は、ほとんどいません。みな早急に止めるべきだという意見が大半です。

何故、これほど評判が悪いのかというと、最近の業者の状況を全く反映していないからです。例えば、今やかなりの数の業者が判決を取らないと回収が困難になっています。だとすると、そのような業者相手では話し合いを前提にしている調停では全く解決することは出来ません。結局、調停が不成立に終わって通常訴訟に戻されることになります。それなら、調停を行う意味は全く無く、むしろ時間の無駄ということになります。

もっと深刻な問題も起こっていて、調停が不成立に終わることを嫌がる調停委員が一部いて、そのような調停委員に当たった場合、訴訟になったら回収できる想定金額よりも、かなり低い金額で調停を結ばされてしまうというケースも報告されています。

では何故こんな評判の悪い制度を続けているのかと言うと、過払金請求が増えすぎた為に裁判所の負担が大きくなり、少しでも裁判所の負担を減らす為、というのが表向きの理由です。(仮に、この理由が本当だったとしても、国家機関が忙しいからという理由で国民の意向を制限することが許されるのでしょうか。そんなことを言ったら警察が忙しいことを理由にして捜査をしないことが許されることになってしまいかねません)

私は、これ以外にも、調停委員の多くは弁護士がやっていますので、裁判所による弁護士の仕事の斡旋という側面があるのではないかと疑っています。(もし、そうだとしたら、過払金請求者の負担によって、仕事を斡旋していることになりますから許せませんね)

そもそも国民の裁判を受ける権利は憲法によって保障されている権利です。国民が訴訟でやってくれと訴状を出しているのに、裁判所が国民の意向を無視して半強制的に調停に回してしまうのは明らかに問題があるでしょう。この点、名古屋簡裁の方が、まだ良心的で、簡裁では事前に調停を拒否した場合は最初から通常訴訟で進めてくれます。しかし、考えてみれば、簡裁の取り扱いは、ある意味、当然で、訴状を出した人が通常訴訟で進めて欲しいと希望を出しても聞きもせずに強引に調停に回してしまう、一部の名古屋地裁の裁判官の方が常識に反しているのです。

こういう問題がありますから、名古屋地裁に過払訴状を出す場合は、どこの部署に係属するかで非常に大きな影響を受けることになります。このような差は、本来あってはならないことですから、一刻も早く、過払調停制度は廃止されるべきだと思います。少なくとも名古屋簡裁のように当事者が拒否した場合は通常訴訟で行われるように改めるべきでしょう。

 

 

 

 

8月 08 2011

臨時ニュース 武富士その後④

武富士の会社更生手続の中で最も注目を浴びていた弁済率が先月発表されました。何とたったの3.3%です。かなり低いだろうと噂はされていましたが、現実に発表されると各方面で衝撃を与えているようです。(もっとも衝撃を受けたのは過払金請求者ですが)

この発表を受けて先月末頃から弁護士事務所や司法書士事務所、または個人で請求された人は個人の住所宛てに、続々と投票用紙が郵送されてきています。

この投票用紙に武富士の会社更生に対して賛成か反対か(厳密には投票用紙の記載は同意か不同意)を書いて返送することになります。そして、金額ベースで反対(不同意)が過半数になると武富士の会社更生は失敗に終わることになります。(反対した人の頭数ではないようです)

もし失敗になった場合、武富士に残された選択は破産しかなくなります。ようは武富士という会社自体が解散により消滅するということです。武富士が会社更生を申し立てたのは会社を存続させる為ですから、破産になるのは何としても避けたいでしょう。

ということで、投票用紙が送られてきてから間髪いれずに、武富士から各事務所に(恐らく個人にも)電話攻勢がかけられています。中身は、「破産になったら3.3%も受け取れなくなりますから、賛成に(同意)投票して下さい」というものです。また、投票用紙と一緒に同封されている書き方の見本にも同意の方に丸がうってあるという念の入れようです。(もっとも、この見本については弁護士有志からもクレームがついているようですが)

私の事務所にも複数の投票用紙が送られてきて、それぞれ依頼人に対し、「少しでも良いから回収したいのであれば賛成に、こんな低い金額なら武富士を懲らしめてやらなくては気が済まないという考えなら反対に、というのが投票の目安ではないでしょうか」と説明しました。

私は依頼人の回答は賛成の方が多いのではないかと予想したところ、見事に予想ははずれて何と9割以上の人達は反対と回答してきたのです。いかに武富士という会社が顧客から嫌われていたのかが、今回の投票で明らかになったような気がします。顧客との信頼関係を維持するような経営をしていたら、これだけ反対する人が多くはならなかったでしょう。

もっとも会社更生が決まるかどうかは金額の過半数だそうですから、今頃、武富士は高額の過払請求者にターゲットを絞って集中的に電話を架けていることでしょう。個人で請求している人は武富士からの電話に説得されてしまう人もいるかもしれませんので、最終的な結果に関しては未知数です。

武富士の結果は他の消費者金融も固唾を呑んで観察しているものと思われます。もし、成功した場合は、こんな低い弁済率で会社が存続できるのならと、追随する業者が出てくる可能性が高いでしょう。業者の倒産ラッシュに拍車がかかる恐れがあります。

一方、反対多数により武富士が破産に移行した場合は、他の業者も倒産手続に対して慎重になることでしょう。今後の貸金業界の動向に大きな影響を与える武富士の会社更生ですが果たしてどうなりますか、決定は秋頃の予定です。

 

 

 

8月 01 2011

差押① 差押は何故、必要か?

過払金請求に限らず、貸金請求や売買代金請求などの金銭を請求する訴訟を起こして勝訴判決を得たとしても、残念ながら全ての債務者(この場合、判決で負けた方を債務者と言います)が、おとなしく支払ってくれる訳ではありません。

多くの人は判決で勝ったら負けた方は支払うのが当たり前だと思っています。もちろん理屈では、その通りです。しかし、ここでちょっと考えてみて下さい。そもそも裁判になったということは、請求された側に素直に支払う気持ちが無いからこそ裁判にまでなったのです。それが判決で負けたからと言って、とたんに心変わりして素直に支払うようになるでしょうか。実際には、かなりの人が判決で負けた後も支払わないのです。

では、負けた方が支払わない場合、どうしたら良いのでしょうか。残念ながら警察が犯人を取り締まるように裁判所が負けた人から、お金を取って勝った人に支払ってくれる訳ではありません。判決で勝っただけでは裁判所は何もしてくれないのです。このまま放っておいたら泣き寝入りをしてしまうことになります。それを防ぐ為に強制執行、いわゆる差押という制度が用意されています。

判決で負けた人が支払わなかった場合、勝った人は裁判所に対して差押を申し立てることが出来ます。もちろん訴訟とは別の手続ですから新しく申立書などを書いて裁判所に手数料も納めなくてはなりません。しかし、この手続をすることによって負けた人の財産を合法的に差し押さえることが出来るのです。

それなら全ての人が判決を取って差押をすれば良いではないかと思った人もいることでしょう。実は、ここで多くの人が勘違いをしている重要なポイントがあります。それは、何を差し押さえるのかは裁判所は一切、考えてくれないし、探してもくれないということです。

もし、負けた人の住所と氏名だけを書いて差押の申立書を裁判所に出したら、裁判所から次のように質問されます。「この人の何を差し押さえるのですか」と。

要するに相手の財産の調査は判決で勝った人が自分で行う必要がある訳です。(調査に費用がかかったとしても、それはもちろん自腹です)ということは相手が、どこに財産を持っているかが分からない場合は、差押が出来ないことになります。こういう場合は、予測を立てて(簡単に言えば勘で)成功するかどうかは、やってみなければ分からないという前提で差押をすることも、よくあります。

ですから差押の成功率は決して高いとは言えません。裁判の多くが判決までいかず、和解で決着する最大の理由がここにあるのです。例え勝訴判決を取っても相手から全額を取れるかどうか分からない、それなら多少なりとも減額しても和解で終わらせようと考える訳です。裏を返せば、相手の財産が確実に分かっていて、いざとなったら、そこを差し押さえれば絶対に回収できると分かっている場合は、判決を取りにいっても良いということです。

差押の中で、よく使われるのが給料、銀行口座、売掛金などの債権執行と呼ばれるものです。一方、あまり使われないのが不動産執行、動産執行です。何故、そうなのかの説明は次にいたしましょう。

7月 25 2011

裁判所の特徴③ 名古屋簡易裁判所

名古屋簡易裁判所は大規模簡裁と呼ばれています。簡易裁判所の、ほとんどは裁判官が一人ないし二人で全ての事件の処理をしている小規模な裁判所です。それに対して、東京・大阪・名古屋などの大都市の場合、事件数が多いので通常の規模では、とても処理が出来ません。それで特別に規模の大きい簡易裁判所が設置されている訳です。

名古屋簡裁の場合、民事裁判を担当する裁判官の数は8人です。それぞれ係に分かれていて、名古屋簡裁に訴状を出すと1係から8係までの、どれかの係に係属することになります。

よく依頼人に質問されることで、「先生の経験上、債務者有利の判決を書いてくれそうな係に出したいのですが」というのがあります。残念ながら、この質問の回答は「無理です。こちらから係を選ぶことは出来ません」となります。

私としても係を選ぶことが可能ならば、過去に有利な判決をもらったところに出したいのは、やまやまですが、どの係に係属するかは全くの運になります。(係属した係が分かった段階で、喜んだり、がっかりしたりということは法律家ならば誰でも経験があることでしょう)

また前にも書いたことがありますが、係によって違うのは法律的な判断だけではありません。何と細かい事務手続まで違っていることがあります。

例えば、過払訴訟の最中に和解が成立した場合、過払金の入金日が次回の弁論期日の後だった場合、弁論期日を入金日の後にずらしてもらう(これを期日の変更と言います)という手続があります。これを簡単に認めてくれる係と、入金日が離れていると認めてくれない係があったりします。

認めてくれない係に当たった場合は、裁判所に出掛けていって和解決定という手続を取らなければなりません。この辺の事情は完全に事務手続の問題なので統一してもらいたいというのが私の強い希望でもあります。(このような事務的なことが、同じ裁判所の中の係によって違っているというのは、一般人からすれば結構、驚きなのではないでしょうか)

しかも、面白いことに(我々、法律家からしたら大変なことに)、人事異動で係の担当裁判官が変わると、また事務手続の処理方針が変わったりするのです。

先ほどの例で言うと、今まで期日変更が出来なかった係が、裁判官が異動した途端に出来るようになったというようなことが珍しくないのです。(もちろん裁判官が異動になった後も方針が変わらないこともあります)

従って、法律家に負担がかかる処理方針の係の場合、法律家同士で酒を飲みながら、「早く、あの係の裁判官、異動にならないかな」などという話題で盛り上がることになります。

ここまで読んできて、読者の方にも裁判所における裁判官の影響力の強さというものが分かって頂けたかと思います。(言い方は悪いかもしれませんが、ほとんど独裁者と呼んでも、当たらずとも遠からずというほどの力を裁判所に対して持っているということです)

ただ実を言うと、名古屋のような大規模簡裁の管轄の場合は、まだマシなのです。これが裁判官が一人しかいない簡裁(ほとんどの簡裁が一人です)の場合、その管轄区域で訴状を出したら必ず、その裁判官に当たってしまう訳です。避けることは出来ません。ということは債務者に厳しい方針の裁判官がいた場合、その裁判官が異動になるまでは、その簡裁に出された訴訟は他の簡裁よりも不利になることが現実にありえるのです。これは非常に困った問題です。(逆に貸金業者にとっては喜ばしい裁判所ということになります)

名古屋の場合は裁判官が多勢いますので少なくとも、いつも必ず不利になるということはありません。この点は大規模簡裁の良いところだと思います。

7月 19 2011

臨時ニュース 平成23年7月14日最高裁判決

最近、取引の途中で空白期間のある場合で、新しい最高裁判決が出ましたので紹介したいと思います。

この判決は相手がプロミスだったのですが、途中に最短でも約1年6ヶ月の空白期間がある取引が対象になりました。そこで契約書に自動更新規定があるから、この取引は一連一体で計算すべきと債務者側は主張していて、この主張が退けられたのです(要は裁判に負けたのです)。

最高裁ですから、判決は確定して全国に影響を与えることになります。今後は契約書に自動更新規定があることを理由に取引の一連一体を主張することは出来なくなります。

それよりも、より大きな影響を与えそうなのは取引の空白期間の長さです。今後は、1年6ヶ月以上の空白期間のある取引は分断された別の取引だと判断されるケースが増えるだろうと予想されます。

実は、判決では1年6ヶ月以上の取引がダメだと言っている訳ではありません。契約書の自動更新規定だけで一連計算を認める訳にはいかないから、第一取引の長さとか、空白時の業者と債務者の接触状況とか、空白期間の長さとか、契約書の返還の有無とか、以前の判決でも指摘された色々な条件を吟味した上で判断しろと言っています。だから、厳密には、この判決で1年6ヶ月以上が一律に認められないと言っている訳ではないのです。

しかし、残念ながら、理屈どおりには受け取られないのが裁判です。恐らく今後の下級審(最高裁以外の裁判所のこと)の判断は、1年6ヶ月以上の空白期間に対しては非常に厳しいものになるでしょう。

7月 11 2011

裁判所の特徴② 簡易裁判所と地方裁判所

過払金請求訴訟などで最もよく登場するのが簡易裁判所です。でも、テレビや映画などの法廷シーンで良く見るのは地方裁判所の方でしょう。では、この違いはと言われた場合、一般の人は結構、知らないのではないでしょうか。今回は、この疑問にお答えする為、簡易裁判所と地方裁判所の違いについて取り上げます。(今回、取り上げるのは民事事件についてです)

最も簡単に言うと、簡易裁判所は金額の低い事件、地方裁判所は金額の高い事件を担当します。では、金額の高い低いは何を基準に決めるのかと言えば、一つの事件につき140万円が区分けのラインになっています。

140万円以内ならば簡易裁判所の事件、140万円を1円でも越えると地方裁判所の事件として扱われます。これは一事件あたりの金額なので、例えば過払金訴訟の場合は業者ごとに判断されます。Aさんが甲・乙・丙と3社から借りていて、3社とも過払いが発生していた場合、それぞれ3件の事件として裁判所に申し立てます。過払金が甲は50万円、乙が80万円、丙が150万円だった場合、甲と乙に対する訴訟は簡易裁判所に申し立て、丙に対する訴訟は地方裁判所に申し立てることになります。(たまに一部の弁護士が3社の合計額で判断するようなことを言っている場合がありますが、それは明らかにおかしいですね。そもそも裁判所が、そのような取り扱いをしていません)

地方裁判所は各都道府県に1箇所ずつ置かれています。支部も合わせると、もう少し多くなります。例えば、愛知県だと名古屋地方裁判所が一つあるだけですが、名古屋地裁の支部は、一宮支部、半田支部、岡崎支部、豊橋支部と4箇所ありますので、本庁と合わせると5箇所あることになります。

一方、簡易裁判所は全国に400箇所以上設置されており、非常に数が多いのが特徴です。これだけ数が多いと住んでいる場所の割と近くに一つは簡易裁判所がある計算になります。(ほとんどの人は、かかわりが無い為、近くにある簡易裁判所の存在を知らないでしょう)何故、これだけ数が多いのかと言うと、いわゆる業者事件と言われるものが、ほとんどが140万円以内だからです。

業者事件とは、裁判の中でダントツで数が多い事件で、消費者金融、クレジット会社、携帯電話会社などが滞納された未払いの貸金や商品の分割金、携帯の通話料などを請求する事件のことです。簡易裁判所に行って1日、傍聴席に座ってみれば分かりますが(傍聴は誰でも自由です)、びっくりするほど、入れ替わりたちかわり、金融業者の担当、クレジット会社の担当、携帯会社の担当が現れて原告席に座っています。

これらの業者訴訟は証拠も揃っていますし、滞納の事実も相手方が否定しませんので数は多いですが、もめることは余りありません。ただ数が多いので、事務手続きは膨大な量になるでしょう。

それに加えて最近、急激に増えてきたのが過払金訴訟です。過払金訴訟の8割から9割が簡易裁判所の管轄になりますから、地方裁判所に回る事件は少数派です。たまに過払金訴訟が増加して裁判所が人員不足で困っているということが言われますが、圧倒的に簡易裁判所に持ち込まれる数が多い訳ですから、地方裁判所が同じことを言うのは何だか違う気が私はします。

あと、債務整理に関して言えば、特定調停は簡易裁判所限定の制度です。ここは分かりにくい部分かもしれませんが、特定調停に関しては金額に関係なく簡易裁判所で行われます。300万円でも500万円でも特定調停ならば簡易裁判所になるのです。一方、過払金請求訴訟の場合は、先ほど説明したとおり、過払金の金額によって簡易裁判所か地方裁判所に分かれます。この場合の金額は過払金の元金のことで利息は含まれません。例えば、過払金元金が130万円で過払利息が20万円だとします。合計で150万円で140万円を超えてしまいますが、元金が140万円以内なので、この訴訟は簡易裁判所になります。

他には、自己破産と個人再生については金額に関係なく全て地方裁判所の扱いになります。ただし破産と再生を扱うのは地方裁判所と言っても過払金訴訟を扱うところとは違う部署になります。過払金訴訟を扱うのは民事部あるいは民事訴訟部というところですが、破産や再生は民事執行部というところが扱うのが一般的です。民事執行部は通常の民事部からは独立していることが多く(名古屋の場合は建物が別です)、専門部署のようなところです。ここは破産・再生の他、各種差押などの手続を行っています。判決を取っても過払金を支払わない業者に対して差押をしたい時なども、この部署のお世話になるわけです。

 

 

7月 04 2011

裁判所の特徴① 一般論

一般の人は同じ種類の事件ならば、全国どこの裁判所でも同じ判決が出るんだろうと思いがちですが(私も法律家になる前は、そう思っていました)、ところが実態は全く違います。裁判所とは極めて特殊な役所で同じ種類の事件でも裁判所によって、もっと正確に言うと一人一人の裁判官によって異なる判決が出ることが珍しくありません。(信じられないかもしれませんが同じ裁判所であっても、異なる裁判官に当たると違う判決が出たりする訳です)

裁判所の、この特徴が一般の人にはなかなか分かりにくいらしく相談の時に、「この事件の結果を保証できますか。」という質問になりやすいのです。

しかしながら、この質問には、法律的な争点(法律的な解釈において相手方と意見が違うこと。例えば「借金を完済しているかどうか」で争いになった場合は、事実が正しいかどうかという問題なので、法律的な争点とは言いません)のありそうな事件の場合は、「保証はできません」というのが真実なのです。何故なら、先ほども説明したように、裁判官によって判断が異なるのが珍しくないのが裁判というものだからです。

もっとも、極めて単純で法律的な争点があまりなく、証拠が完璧に揃っている場合は、どこの裁判所でも、だいたい同じ判決が出ると考えて良いでしょう。代表的なのは、借主の署名・押印のある借用証書が存在している場合の貸金請求訴訟などです。これはもう圧倒的に貸している側が勝ちます。(だからこそ、借金の時には貸主は借用書を作るのです)

では法律的な争点が存在する単純ではない事件にもかかわらず、割と結果が予測できる事件とは何かと言うと最高裁判所で争点について判決が出たものと同じ種類の事件ということになります。最高裁判所の判断には全国の裁判所が影響を受けますので、割と正確な回答ができます。

実は過払金請求事件も最高裁判所で判決が出るまでは必ず勝てるとは言えない裁判でした。「みなし弁済」が成立するか、しないかは大きな争点だったのです。従って、その頃は過払金請求などを行なう法律家は少数派だったのです。(私の事務所では、その頃から過払金請求を扱っていましたが、当時は扱っている事務所は本当に少なかったです)

ところが最高裁判所で貸金業法43条の「みなし弁済」を一切認めないという判決が出るや否や、過払金訴訟は出せば必ず勝てる裁判になり、その後、雨後のたけのこのように過払金を取り扱う事務所が増加していったのは、ご存知のとおりです。

ここで言いたいのは、最高裁判所の判断が出ていない法律的な争点がある事件に関しては、いかなる腕利きの弁護士や司法書士といえども、裁判の結果を保証することは出来ないということです。(もし保証している法律家がいたとしたら、それは非常に怪しいと考えて良いでしょう) この部分は一般の人には非常に理解しにくいようなので繰り返し伝えたいと思います。

また一つ一つの裁判所が独立事業体のようになっているのも他の役所と大きく異なっている部分です。要は、裁判所によって、いろいろな事務の取り扱いが異なっているのが珍しくないのです。事務の取り扱いなど統一した方が効率的ではないかと私などは思うのですが、実際には驚くほど独自のルールで運用されているのが実状です。それこそ、同じ過払金請求訴訟でありながら使用する切手の金額が裁判所によって違っていたりするのです。

従って、裁判所の特徴やクセのようなものが存在するので、そういうことに詳しい法律家に依頼することも選択する場合の重要な決め手になるでしょう。

6月 27 2011

過去の特定調停と過払請求

 現在は取引履歴の開示が義務化された為、特定調停で取引履歴が途中までしか出てこないということは、恐らくないでしょう。ところが、昔は(5、6年以上前)取引履歴が全て出るということの方が、むしろ珍しかったのです。

この頃に特定調停をされた人は、取引履歴が途中までしか開示されていない状態で支払計画を決められたケースが少なくありません。場合によっては、実は過払いになっているにもかかわらず、それが分からずに、分割払いをしていた人もいるのです。

このケースに該当する人は今まで諦めていましたが、最近では、過去に特定調停を行った業者に対して新たに取引履歴の開示を請求して、自分の本当の債務額を確かめる人が増えてきました。当然、その中には、開示請求してみたら過払いになっていたという人が存在します。

そこで問題ですが、果たして、一旦、特定調停を結んでしまった取引に対して過払請求を改めて出来るのかということです。

結論から言うと、最近、認められるケースが少しずつ増えてきています。この場合、裁判所が認める根拠は「錯誤」というものが多いです。簡単に言うと、「過去の特定調停は取引履歴が全部出ていなかったのだから実際の金額が分からないまま思い違いをして結んでしまったものであるから無効である。無効なんだから、もう一度、正確な金額を明らかにして、やり直せ」という理屈になります。過払いの場合は、この理屈で過払請求訴訟を争うことになります。

まあ、取引履歴を出さなかったのは業者側の責任ですし、その結果として金額が分からなくなって間違った特定調停になった訳ですから当然と言えば当然かもしれません。いずれにしても、このような請求が少しずつでも認められるようになったのは喜ばしいことでしょう。

しかし、何分、訴訟ですから100%勝てるとは限りません。裁判官によっては、特定調停の訂正を認めないケースもあります。

しかし、物は考えようです。特定調停は既に終了している訳ですし、一旦は、納得して支払っていた訳ですから、仮に裁判に勝てなくても現状より悪くなることはありません。今までどおりになるだけです。一方、裁判に勝った場合は過払金が戻ってくる訳ですから、これは大きなメリットです。

負けた時のリスクは無いと言ってよく(特定調停の結果が維持されるだけです)、勝った時のメリットは大きい訳ですから、これは、チャレンジする価値があるのではないでしょうか。該当する人は一度、考えてみるべきでしょう。

 

 

6月 22 2011

報酬規定

 現在、司法書士の報酬は弁護士と同様に自由化されています。ところが、一部の司法書士・弁護士と依頼人の間で債務整理に関する報酬のトラブルが増えていました。そこで、日本司法書士会連合会(日司連)という全国の司法書士を束ねている組織が「債務整理に関する報酬の上限規定」を発表しました。今後は定められた上限を破ったら規定違反ということになります。(もっとも内容を見ると、かなり余裕を持たせた規定になっていますので、今時、この上限を破っている事務所は少数派だとは思います)

私は個人的には報酬は自由である方が望ましいと思っています。依頼する側にとっても選択の自由はあった方がプラスになることが多いと考えています。しかし、日司連の規定として決まってしまった以上、司法書士は規定を守る必要があるでしょう。これから依頼を考えている人は頼もうとしている事務所が規定違反になっていないかどうかチェックした方が良いでしょう。以下、具体的に報酬基準を列挙します。(この報酬基準には消費税は含まれません。あと、印紙代や切手代などの実費も含まれません)

1 任意整理事件を受任したときは、定額報酬として債権者1社あたり5万円を超える額を請求し、または受領してはならない

2 減額報酬を受領するときは、減額され、または免れた債務を経済的利益として、その経済的利益に10%の割合を乗じた金額を超える金額を請求し、または受領してはならない

3 減額報酬における経済的利益とは、引き直し計算により算出された金額を債権者が認めた場合(その金額を債権者が積極的に争わない場合を含みます)は、その引き直し計算により算出された金額から減額され、または免れた債務の金額を指す。(この規定は大変に重要ですが、要するに専門家に相談に来る前に貸金業者から請求された金額から、利息制限法に引き直して減額したとしても、その減額分から報酬を取ってはいけないと解釈できます)

4 過払金を回収したときは、その回収した金額を経済的利益として、その経済的利益に次の割合を乗じた金額を超える額を過払金返還報酬として請求し、または受領してはならない。

(訴訟によらずに回収した場合) 20%

(訴訟により回収した場合) 25%

と主なものを挙げておきました。(一般の人に分かりやすく書いています)

先にも書きましたが、現在、上記の報酬規定を超える基準を設定している事務所は少ないと思われます。ただ、ゼロではありませんので、ひっかかる事務所は今後は報酬基準を下げる必要があります。

上記の規定の中で最もひっかかる事務所が多いだろうと思われるのが、3番です。この規定では利息制限法による引き直し計算による減額は今や、ほとんど全てと言っていい貸金業者が争いませんので、経済的利益には含まれなくなります。要は、債務整理で減額報酬を取っている事務所は報酬基準を変更せざるを得ないということになります。(変更しなければ今後は規定違反ですから、依頼人は変更するように要求することが出来ると考えて良いでしょう)

ちなみに上記の規定は債務整理限定です。債務整理以外の業務には適用されません。他の業務を依頼している時に、この規定を振りかざして注意したら恥をかくことになりますので注意して下さい。また、この規定には5年間という期限も付いています。いわゆる時限立法というもので、「報酬自由化という大枠の規定は変更していない。あくまでトラブルの増えている債務整理に限って、しかも5年間という期限も決めて限定的に運用するものである」ということです。

 

 

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