1月
20
2021
今回は、婚姻期間20年以上の夫婦の居住用不動産の生前贈与が相続法の改正によって行い易くなった、という話です。夫婦間の贈与を考えている方には朗報だと思います。
配偶者の住み慣れた家の相続の問題
相続が開始したら、「他に分配する財産が無いから配偶者が住み慣れた家を売らなくてはならないんじゃないか」とか、「家に住み続けるために遺産分割協議で配偶者が家を相続したら、老後の資金であてにしていた預貯金の相続分を配偶者が大幅に減らされてしまうんじゃないか」、という心配をされている方も多いと思います。
実はこの心配は当たっていて、配偶者が住み慣れた家を売却するために出て行かされたり、預貯金の相続分をかなり減らされたり、といったことは実際に相続の現場では起きています。
特別受益の持ち戻しとは?
このような心配を解消するために、配偶者に居住用の不動産を贈与してしまう、という方法は人気があり良く行われています。しかし、この贈与には重大な落とし穴がありますので注意が必要です。それが「特別受益の持ち戻し」です。
特別受益の持ち戻しとは、「生前に贈与された財産は遺産の前渡しに当たるので、相続の時の遺産分割の際に、贈与された財産を差し引いて遺産を計算しなければならない」というものです。そうしなければ、特定の相続人に集中して生前に贈与された場合、不公平になるから、というのが法律の考え方なのです。
特別受益の持ち戻しという制度があるために、実際には生前贈与がうまくいかなかったというケースが珍しくありません。最終的に相続財産を減らされてしまうからです。
特別受益の持ち戻しの免除
近年、相続法が改正されて、婚姻期間20年以上の夫婦の場合、生前贈与された居住用不動産については、特別受益の持ち戻しが免除されるという規定が新設されました。これは、高齢の配偶者が住み慣れた家を追い出されるのは問題だという考え方が以前からあって、この考え方を法律に適用したものです。高齢の配偶者にとっては大変有益な制度だと思います。
今後の夫婦間の生前贈与
この法律ができたことによって、婚姻期間20年以上の夫婦の場合、居住用不動産は積極的に生前贈与した方が良い、ということになるでしょう。
例え生前贈与しても、その分を相続の時に清算しなくても良くなったからです。
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生前贈与
1月
19
2021
今回は、民法の改正で新しく認められた「配偶者居住権」について解説します。
配偶者居住権とは?
配偶者居住権とは、民法の改正により令和2年4月1日以降に開始した相続から新しく認められるようになった権利のことです。法律の条文では以下のように書かれています。
「相続の際、被相続人の配偶者が被相続人の財産に属した建物について取得する権利であり、その配偶者が相続開始の時に当該建物に居住していた場合において、その全部について無償で使用および収益をすることができる権利(民法1028条1項)」(下線については筆者が記載しました)
ようするに、相続が開始した後に、配偶者が他の相続人から「その不動産を売却して分配したいから出て行ってくれ」と言われないために設けられた制度だと考えて頂ければ分かり易いかと思います。
配偶者居住権が成立するための条件
残された配偶者にとっては大変ありがたい配偶者居住権ですが、無条件に認められる訳ではありません。以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
- 遺言に書かれていること
配偶者居住権が認められる最も確実な方法は、被相続人(故人)が生前に遺言に書いておくことです。配偶者が住み慣れた家に住み続けられるように、遺言を残しておきましょう。
ちなみに、配偶者居住権を遺言に書く場合の書き方には、ちょっとした注意がいります。発生原因を「相続」ではなく「遺贈」にしなくてはいけません(このように法律で決められています)。この部分は専門的な話になりますので、遺言を書く時には専門家に相談されることをオススメします。
- 遺産分割協議で認められること
配偶者居住権の取得について遺言が残されていない場合、遺産分割協議によって認めてもらわなければなりません。遺言に比べると一気にハードルが上がります。
そもそも他の相続人から「売却したいから出て行ってくれ」と言われる可能性があるから新設された制度なので、売却したい相続人がいた場合、遺産分割協議が進まない恐れがあります。
- 家庭裁判所で認められること
遺言が残されていなくて、遺産分割協議もまとまらなかった場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。その結果、家庭裁判所で認めてもらえれば、配偶者居住権は成立します。ただし、これには時間と費用が余分にかかります。
これら3つの条件を比べた場合、やはり最も確実で手続が早いのは遺言が書かれていた場合です。残された配偶者のためにも、できるだけ遺言を残してあげたいものです。
配偶者居住権の特徴①「登記が第三者対抗要件」
配偶者居住権の取得が決まった場合、登記をしないと第三者に主張することができません。従って、登記は必ずした方が良いと言えます。その時の注意点として、配偶者居住権設定の登記の前には、相続登記がされている必要があります。覚えておきましょう。
配偶者居住権の特徴②「譲渡することはできない」
配偶者居住権は残された配偶者にのみ認められた権利です。従って、他の人に譲渡することはできません。
配偶者居住権の特徴③「賃貸に出すことができる」
配偶者居住権を持ったままで、その建物を賃貸に出して賃貸料をもらうことが可能です。
「建物に住み続けることが目的の権利なのに、それはおかしいのでは?」と思った方がいるかもしれません。しかし、次のような場合を考えてみてください。
「2階建ての家で、1階で夫婦で飲食店を営んでいて2階に住んでいた。夫が亡くなって1階の飲食店を止めてしまったが、スペースがもったいないので他に飲食店をやりたい人に貸して賃料をもらいたい」
というようなケースが考えられます。
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遺産分割
10月
06
2020
今回は、遺言が無いためにトラブルになりやすい事例の六つ目のお話です。
会社を経営している方が事業の承継を考えている場合、遺言が無いと承継がうまくいかない可能性があります。
会社経営者ならば、いつかは誰かに会社を継いでもらおうと考えていることでしょう。もし何も対策を取らずに亡くなった場合、株式などが法定相続分で相続されて分散してしまい、その後の経営に支障が出ることが考えられます。
遺言で指定しておくことで、後継者に株式を集中して相続させることが可能になります。スムーズに承継されるように、後継者には遺言についてある程度の情報は伝えておいた方が良いでしょう。
株式だけでなく会社で活用している不動産なども、後継者に相続されるように遺言に書いておくべきでしょう。
相続トラブルで会社の信用が落ちるようなことは絶対に避けるべきです。そのためにも、事業承継のための遺言は公正証書遺言で残した方が良いでしょう。会社の資産の承継ですから、より公的な証明力の強い形式で作成すべきです。
他にも注意点としては、遺言執行者は必ず決めておくべきです。会社の承継に関する遺言ですから、利害関係人が個人よりも多くなるので、第三者を遺言執行者に指定して公平さを出しておく方がトラブルが少なくなるでしょう。
会社の承継の場合、できれば遺言執行者は専門家を指定しておいた方が良いでしょう。利害関係人から遺言執行について質問を受けた時に法的な回答ができる方が望ましいからです。
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遺言
10月
06
2020
今回は、遺言が無いためにトラブルになりやすい事例の五つ目のお話です。
遺産分割で大変なことになるケースとして、特定の相続人が音信不通の場合があります。
例えば、兄弟が複数いて一人がとても素行が悪く、途中で家を飛び出してから音信不通でどこにいるかも分からない、というようなケースです。
この場合、遺言が残されていないと大変困ったことが起こります。
音信不通の子どもも法定相続人の一人なので、その子を抜きにして遺産分割協議を行うことはできません。仮にその子を除いた協議書を作っても相続手続には使えません。
従って、探し出す必要がでてきます。
仮に見つかっても、相当に相続人同士の仲が悪くなっていることが考えられます。飛び出した子が法定相続分の取得をきっちりと主張してきた場合、「今さら何を言ってるのか」と他の相続人は考えるでしょうから、遺産分割協議は相当に揉めるでしょう。家庭裁判所に持ち込まれるかもしれません。
(マメ知識)
このケースで家庭裁判所の遺産分割調停に持ち込まれた場合、音信不通だった子の法定相続分が認められる可能性が高いです。経験上、昔の素行不良や音信不通の経緯などは、あまり考慮されないことが多いです。理不尽だと思われるかもしれませんが、家庭裁判所はできる限り法定相続分で分けようとする傾向があるということは覚えておいた方が良いでしょう
探しても見つからなかった場合はもっと大変です。家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てなければなりません。申立てには費用も時間もかかります。
その後、選任された財産管理人を含めて遺産分割協議を行います。この時、財産管理人は法的に不在者の法定相続分を主張する義務がありますので、間違いなく音信不通の子の法定相続分を主張します。法定相続分が確保できなければ協議書に印鑑は押さないという態度に出るでしょう。
このように音信不通の子が見つかっても見つからなくても、遺産分割は非常に大変なことになります。ですから、このようなケースでは必ず遺言を残しておくべきです。遺言があれば、音信不通の子を除いた状態で相続手続を進めていくことができます。残された相続人のためにも遺言を書いておきましょう。
(マメ知識)失踪宣告
映画やドラマなどにたまに登場する失踪宣告という制度があります。生死不明で音信不通の状態が7年以上続いた場合、失踪宣告を使うことによって、法的に死亡したとみなされる制度です。
音信不通が7年以上ならば不在者財産管理人ではなく失踪宣告を利用するのが一般的です。
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遺言
10月
06
2020
今回は、遺言が無いためにトラブルになりやすい事例の四つ目のお話です。
割と良くあるケースで、持ち家があり、亡くなった人と同居していた相続人と別居の相続人がいる場合です。遺産分割で揉めることが多いケースです。
なぜ揉めることが多いかと言うと、同居の相続人は同じ家に住み続けたいが、別居の相続人は「家はいらないから相続分の金銭が欲しい」と言ってくる場合が多いからです。
特に不動産以外の預貯金財産があまり多くない場合には非常にトラブルになりやすいです。預貯金は簡単に分けられますが、不動産はそうはいかないからです。
預貯金が多ければ、不動産を誰か一人が相続しても、その分預貯金の相続を減らせば他の相続人は納得してくれるでしょう。しかし、遺産の大部分が不動産ということになると、不動産を売らない限り相続人全員に分配できないということが起こります。
こうなると今まで通り同じ家に住みたいという相続人と利害が対立しますので、なかなか遺産分割協議がまとまらなくなります。
同居している相続人に老後の介護などで世話になっている場合は、同居の相続人が同じ家に住み続けられるように遺言を残してあげるべきだと、私は個人的には思います。
一生懸命故人を介護していたのに、亡くなった途端に他の相続人から「家を売れ」と言われるのは、あまりにも可哀そうだと思うからです。
(マメ知識)配偶者居住権
相続法が改正されて新たに配偶者居住権という権利ができました。
これにより配偶者は相続が発生した後も住み慣れた家に住み続けられる可能性が高くなりました。ただし、この制度は配偶者だけに認められたものなので、同居の子については同様の問題が起こることになります。
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遺言
9月
18
2020
最近、増えてきている事例で、同棲カップルで籍を入れていない場合、内縁の配偶者に財産を譲りたい時は遺言が絶対に必要です。
(マメ知識)内縁とは
同棲カップルのことを内縁関係と言います。籍を入れていないカップルのことですね。お互いのことを、「内縁の妻」「内縁の夫」と言うこともあります。法的には「特別縁故者」という呼び方をします。
日本の法律では、戸籍上の関係が無い場合、相続権はありません。どれだけ長期間一緒に暮らしていたとしても、考慮されることはありません。従って、内縁の妻(夫)に相続させようと思ったら、必ず遺言を残しておかなくてはなりません。
特に注意すべきなのは、片方の名義になっている家に同居して住んでいた場合です。もし遺言を残さずに名義人が亡くなってしまったら、名義人の相続人から「私が家を相続したから出て行ってくれ」と言われても、内縁の妻(夫)は拒否できないのです。
このようなことにならないように、同棲のカップルはある程度の年齢になったら必ず遺言を残すようにしましょう。どちらかに名義が集中している場合は片方だけでも構いませんが、名義が分散している場合はお互いに遺言を残した方が良いでしょう。
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遺言
9月
18
2020
多くの相続トラブルを見てきて、絶対に遺言を残した方が良いと言える代表的な事例を紹介しましょう。
それは「子どもがいない場合」です。
子どもがいない状態で親が亡くなると、かなりの確率で相続トラブルになります。それは、相続人同士が面識があまり無い場合が多いからです。遺産分割協議をまとめるのが大変になります。
なぜそうなるかと言うと、最近は高齢で亡くなる方が多いので、亡くなった時には両親はだいたい先に亡くなっています。すると、相続人になるのが故人の兄弟姉妹になります。ところが、兄弟姉妹も既に高齢で何人かは亡くなっている場合が多く、その場合、故人の甥姪が相続人になるのです。
残された配偶者と故人の甥姪が頻繁に会っているというケースは、核家族の進んだ最近では珍しいでしょう。すると、あまり会ったことが無いもの同士が遺産分割協議をすることになるのです。想像しただけでも、まとめるのが難しそうですね。
実は、このケースで遺言を残した方が良い、もう一つの有力な理由があります。
それは、兄弟姉妹や甥姪には遺留分が無いからです。
遺留分が無ければ、遺言さえ残っていれば配偶者に全ての財産を引き継ぐことが可能です。遺言がある場合と無い場合の結果に大きな差が出るケースなのです。
「子どもがいない場合」は遺言を残すメリットが非常に大きいケースだと言えるでしょう。
(マメ知識)
遺留分とは、遺言で指定されていなかった場合でも最低限相続できる割合を法律で決められた制度です。
子どもや親には遺留分が認められていますが、兄弟姉妹や甥姪には認められていません。
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遺言
8月
26
2020
相続法改正前の自筆証書遺言の弱点
遺言には大きく分けて自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
その中でも自筆証書遺言は「自分で書ける」という手軽さもあって選択されることが多い傾向があります。しかし、自筆証書遺言には厳格なルールがあるため、遺言を残した人が亡くなった後に開けてみたら、ルールにあっていなくて無効になったというケースも多いという弱点があります(実際に私の事務所に遺言を持って相談に来られた相続人の中にも、何人か無効になった方がいました)。
家庭裁判所の検認
他にも自筆証書遺言の最大の弱点と言われていたのが、家庭裁判所の検認の手続です。
相続法が改正される前、自筆証書遺言は作成者が亡くなった後、家庭裁判所で検認を受けなければ、その後の預貯金や不動産の相続手続ができないというルールがあったのです。これがネックになって自筆証書遺言を選択しないというケースも結構ありました。
家裁の検認とは
家裁の検認とは、原則として開封前の自筆証書遺言を家裁に持ち込んで、家裁から法定相続人全員に遺言の存在を知らせた上で、家裁によって遺言を開封して中身を確認することです。確認後に家裁の検認済みという証明書を遺言に添付してくれます。検認済みの証明書が添付されていないと自筆証書遺言は相続手続に使うことができません。
この検認手続は結構な時間がかかります。1カ月くらい(法定相続人が多い場合はもっと)は相続手続が遅れることになります。
遺言書保管制度
相続法が改正されて自筆証書遺言の取り扱いが大きく変わりました。これは政府が相続手続をスムーズに進めるために遺言をもっと活用して欲しいという考え方があります。(遺言が無いと相続人同士でもめて、相続手続がなかなか進まないことが多くなってきたという事情があります)
そこで新設されたのが遺言書保管制度です。自筆証書遺言を法務局で預かって紛失や改ざんを防ごうという目的です。
遺言書保管制度のメリット
従来、自筆証書遺言の弱点として、
①せっかく書いたのに発見されない
②遺言のルール通りに書かれていないため無効になる
③紛失や破損の心配がある
④家裁の検認が必要
などがありました。
しかし、遺言書保管制度はこれらの弱点を改善する制度として作られたので以下のようなメリットがあります。
①相続人は法務局で検索することができるので発見がしやすい
②遺言の形式がルールどおりに書かれているかを法務局がチェックするので、形式不備は起こりにくい。(あくまで形式だけです。内容が法律にあっているかまではチェックされないと考えた方が良いでしょう)
③法務局に保管されているので紛失や破損の恐れが無い
④家裁の検認が不要。(大きなメリットです)
自筆証書遺言が利用しやすくなった
相続法改正前は自筆証書遺言には様々な弱点があったために、司法書士などの相続の専門家は公正証書遺言をすすめることが多かったのが事実です。私も以前は公正証書遺言をすすめていました。
しかし、相続法が改正されて遺言書保管制度ができて、自筆証書遺言の弱点は大幅に改善されました。特に大きかったのは家庭裁判所の検認が不要になった点です。
もともと自筆証書遺言は公正証書遺言よりも費用的に安いというメリットがありました。今回の遺言書保管制度により、専門家が自筆証書遺言をすすめるケースも増えてくると思われます。
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遺言
8月
24
2020
相続放棄の回答書とは
相続放棄の申立てをすると、一般的には申立て後しばらくすると回答書という書類が家庭裁判所から郵送されてきます。これは本人の最終意思を確認するという目的で送られるもので、本人が直筆で回答して署名押印してから家裁に返送するというスタイルになっています。
相続放棄の回答書が送られる理由
相続放棄はやり直しがきかない手続です。相続放棄をした後で「気が変わったので、やっぱりやめます」とは言えません。相続放棄の撤回は法律上、認められていないのです。
例外的に取り消しが認められる場合もありますが、極めてハードルが高く非常に難しいのが現実です。
ですから、回答書で再び本人の意思確認をして、「本当に相続放棄をして大丈夫ですね」と念を押しているのです。
回答書の内容
回答書の質問事項は家庭裁判所によって異なります。よくある質問としては以下のようなものがあります。
①「あなたは自分の意志で相続放棄の申立てをしたのか」
誰かに強制されて相続放棄をしたのではないという確認ですね。
②「あなたが被相続人の死亡を知ったのはいつか」
熟慮期間(3カ月)をいつから計算するかに関する質問です。この日付が死亡日から3カ月以上経っていた場合は、別途説明が求められます。
③「あなたは、どういう理由で相続放棄をしたのか」
債務超過と言う理由が圧倒的に多いと思いますが、亡くなった親族と疎遠でもらうつもりが無いという回答もあります。
これらが代表的な質問ですが、家裁によって質問が多いところや少ないところ色々です。
(マメ知識)
債務超過とは、マイナスの財産(借金)の方がプラスの財産よりも多い状態のことを言います。相続放棄のほとんどの理由は債務超過でしょう。
ほとんどの家裁で回答書が届く
私の事務所でも全国色々な家庭裁判所に相続放棄の申立てをしましたが、ほとんどの家裁で回答書は郵送されてきます(質問の内容は異なりますが)。
しかし、富山家庭裁判所高岡支部に相続放棄の申立てをしたところ、回答書が郵送されずに、いきなり相続放棄申述受理通知書が届きました。ようするに他の家裁よりも短期間に手続が終了するのです。
(マメ知識)
相続放棄の申立(申述)は被相続人(故人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出しなければなりません。相続人の住所地ではないので注意しましょう。
富山家裁高岡支部は例外的だと思う
相続放棄の回答書は、後で撤回ができない手続なので最終の意思確認として送っているという理由があります。従って、「回答書を送らない」という富山家裁高岡支部の取り扱いは例外的で珍しいと言えます。
早くに手続が終了するというメリットはありますが、やり直しがきかない手続きであるため、より慎重になる必要があります。
しかし、どこの家裁に出すかは法律で決まっているので、富山家裁高岡支部管轄の地域で亡くなった方の相続人の相続放棄には、こういう特徴があると覚えておいた方が良いでしょう。
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相続放棄
8月
21
2020
農地とは
不動産の登記における農地とは、法務局で取得する登記事項証明書の「地目」の欄に「田」または「畑」と記載されている土地のことを言います。実際には耕作が行われていなくて農地として使われていなかったとしても、地目が田や畑になっていれば農地とみなされます。
農地は売買や贈与の時は農地法の許可が必要
国が定めたルールで、農地は勝手に他人に渡してはいけないことになっています。食料を生産する大事な土地なので、農業以外の目的で利用する人に自由に渡してしまうと、食料生産がどんどん減ってしまいます。
これを防ぐために農地法という法律が作られ、農地の売買や贈与には許可が必要と言うルールになっているのです。農地法の許可証は法務局で登記申請する時の必要書類になっていますので、添付しないと審査が通りません。
農地の相続には許可は不要です
ただし相続の場合は例外として、農地法の許可は不要という取り扱いになっています。
相続の場合は後を継いで農業を続ける確率も高いですし、法律上、亡くなった瞬間に相続人に所有権が移ると考えられているので、許可を条件にすることが難しいという理由もあります。
(マメ知識)
相続人が複数いる場合は遺産分割協議が済むまで相続人のものにならないように思うかもしれませんが、法的には、分割協議で決まった相続人に所有権が移る日付は故人の死亡日になります。分割協議が終了した日ではないのです。
農地を相続した後、売却したい時は許可が必要
最近は農家の相続でも相続人は都会にいて、農地を相続しても使いみちが無いから売却したいという相談も増えています。この時にネックになるのが農地法の許可です。
農地法の許可を取り扱うのは地元の役所の農業委員会ですが、基本的には農地として使ってくれる人が買主でないと、なかなか許可を出してもらえません。食料生産のための農地をできるだけ減らさないというのが農地法の趣旨だからです。
農地以外にして売却したい時は農地転用の許可
農地の地目を例えば「宅地」などに変更することを農地転用と言います。農地転用ができれば農家以外の人にも自由に売却することが可能です。しかし、農地転用するにも許可が必要なのです。
農地転用は比較的住宅街に近い農地などは認められやすい傾向がありますが、周りが全て農地のような環境では認められる可能性は低いです。
農地の移転の日付は許可された日
通常の不動産売買の場合、決済日が所有権移転の日付になることが多いです。しかし、農地の売買の場合は農地法の許可が降りないと所有権が移転しません。もし許可が降りた日が決済日よりも後だった場合は、所有権移転の日付は許可が降りた日になります。
(マメ知識)
よく名義変更と言う言葉を使いますが法的には正確ではありません。正式な用語は所有権移転と言います。登記事項証明書でも所有権移転と書かれています。法的には、所有権がAさんからBさんに移転したという考え方をするのです。
農地の相続は気を付けよう
農地を相続した場合、そのまま農家を続けるのならば問題ありませんが、不要だから売却したいと考えた場合、農地法の許可の問題があります。早めに専門家に相談した方が良いでしょう。
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相続登記