司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

12月 26 2024

法定相続情報一覧図で被相続人の住民票除票が廃棄されていた場合 法定相続情報証明⑤

法定相続情報一覧図における住民票の除票

法定相続情報一覧図の必要書類の中に「被相続人の住民票の除票」があります。被相続人とは亡くなった人のことです。亡くなった人の住民票は生存者の住民票から除かれて別に保存されるため除票と呼ばれます。

住民票の除票には保存期間があって、この期間を過ぎると廃棄されてしまい提出できなくなることがあります。

住民票の除票の保存期間

令和元年6月に法律が改正されて、住民票の除票の保存期間が、それまでの5年から150年に延長されました。改正後は廃棄される可能性は当分ないでしょう。

しかし問題は改正前です。平成26年6月以前に亡くなられた場合は既に廃棄されているので発行されません。これ以前に亡くなられていて相続手続を放置してしまった場合は、法定相続情報一覧図の必要書類を出せないことになります。

法定相続情報一覧図の住民票除票が廃棄されていた場合

法定相続情報一覧図の住民票除票が廃棄されて出せない場合、一覧図に被相続人の住所を書くことができません。その代わりに被相続人の本籍を必ず記載することになります。本来、法定相続情報一覧図の本籍の記載は任意なのですが、住民票除票の廃棄の結果記載ができない時は必須となりますので覚えておきましょう。

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12月 23 2024

数次相続の場合の法定相続情報一覧図 法定相続情報証明④

数次相続とは

今回は数次相続と法定相続情報一覧図についての2回目となります。
数次相続とは、一度起こった相続の相続人の一人が、遺産分割協議を決着させる前に亡くなってしまった場合のことを言います。2回相続が発生しているので数次相続と呼ばれています。

この数次相続は手続が非常に大変です。手間は単純に2倍ではなく、3倍~4倍というのが経験からくる印象です。この数次相続を避けるために、最近では法律が改正され相続登記が義務付けられるようになりました。

法定相続情報証明とは

相続手続には銀行や証券会社や法務局などに大量の戸籍謄本を持参する必要があります(特に数次相続の場合は量が多くなります)。途中で1通だけ抜けて忘れたり、汚してしまったり、紛失してしまう可能性もあります。何よりも、持参された金融機関が大量の戸籍謄本をチェックしなければならないため、手続に非常に時間がかかってまいます。

解決するには、法定相続情報証明として「法廷相続情報一覧図」を発行してもらう方法があります。大量の戸籍と申出書と一覧図を法務局に1回持ち込んで審査が通れば、一覧図に登記官が認証文を付けて公的な書類として法定相続情報一覧図を発行してくれます。この公的な認証が付いた法定相続情報一覧図は銀行や法務局でそのまま相続手続に利用することができます。大量の戸籍謄本を持ち歩く必要がなくなるわけです。

また持ち込まれた金融機関にとっても一覧図の方がはるかに見やすくチェックも早くできるので時間の短縮につながるでしょう。

もちろん法務局の審査を通すためには書き方に注意すべきポイントがいくつかありますので、一覧図の作成と申請は司法書士に依頼した方が確実でしょう。

数次相続の場合は法定相続情報一覧図は2枚になる

数次相続の場合、法定相続情報一覧図は2枚作らなければなりません。この点、相続登記の際に添付する相続関係説明図とは異なります(相続関係説明図は通常1枚で作ります)。

法定相続情報一覧図において、1回目の相続が起こった時点では、まだ相続人全員が生きていたはずなので、1枚目はその状態を記載することになります。つまり、2回目の相続で亡くなっている相続人も生きているものとして記載されます。当然、2回目の相続の死亡日の記載はしてはいけません。

次に2回目の相続についてだけの法定相続情報一覧図を作ります。2枚目には後で亡くなった相続人の相続関係だけを記載します。従って、1枚目と2枚目を合わせなければ数次相続が起こっていることは分からないようになっています。

法定相続情報一覧図は相続人全員の生存を証明していない

法定相続情報一覧図は、このような仕組みで作られているので、記載されている相続人が現在生きているかどうかは証明されていないことになります。例え数次相続が起こっていても、法定相続情報一覧図の1枚目だけ提出されたら通常の相続に見えてしまいます。

ですから銀行や法務局では手続の際に、法定相続情報一覧図以外に相続人の印鑑証明書や住民票を要求します。こうすることで、既に死亡している相続人がいないかをチェックしているのです。

最初の相続の法定相続情報証明を2回目の相続の相続人が申請できる

2回目の相続が起こった時の新たな相続人は、1回目の相続の法定相続情報証明の申出(法務局では法定相続情報証明の申請のことを申出と呼びます)をすることができます。

2回目の相続の相続人は、1回目の相続の法定相続情報一覧図に出てきませんので、申出自体ができないように思えますが、2回目の相続で亡くなった相続人の地位を引き継いでいるので申出が可能なのです。

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12月 20 2024

自筆証書遺言を紛失してしまったら 遺言㉚

自筆証書遺言を紛失してしまった場合

実際にあった事例で、相続手続を一通り済ませたと思った数年後に故人の通帳が押し入れから見つかったということがありました。

ご主人の自筆証書遺言が残されていたケースで、家庭裁判所で検認をしてもらい、遺言の通りに相続手続を済ませていました。しかし、それから数年後に新たな通帳が見つかった時には、検認済みの自筆証書遺言は紛失していて見つからなかったのです。このような場合は、あきらめるしかないのでしょうか。

※自筆証書遺言は家庭裁判所で検認をしてもらわないと相続手続に使うことができません。(ただし法務局の遺言書保管制度を利用している場合は検認は不要です)

検認期日調書謄本とは

実は検認が済んでいれば自筆証書遺言の代わりになるものがあるのです。

それが検認期日調書謄本です。これは自筆証書遺言を家庭裁判所で検認すると、家庭裁判所に記録が残り、その記録の謄本をいつでも請求することができるのです。

そしてこの謄本は自筆証書遺言の原本と同じように相続手続に使うことができます。

検認期日調書謄本の内容

検認期日調書に記録されている内容は、「担当した裁判官の氏名、検認期日に出頭した相続人の氏名、裁判所で陳述した内容、遺言書の外観(封が空いていたとか、字がにじんでいたとか)」などです。

この検認期日調書と一緒に遺言書原本の写しも家庭裁判所に保管されます。

検認期日調書謄本で助かった事例

最初の事例ですが、相続人は故人の妻で自筆証書遺言の内容は「全財産を妻に相続させる」というものでした。子どもがいなかったので遺言が無ければ、妻と兄弟姉妹甥姪の遺産分割になります。兄弟姉妹甥姪の数が多かったので遺産分割がスムーズにいかない可能性がありました。ですから遺言による相続手続が必要だったのです。

検認期日調書謄本のおかげで自筆証書遺言を紛失しても、無事に後から見つかった通帳の口座の相続手続が済みました。本当に助かった事例でした。

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12月 05 2024

法定相続人の意思は必ず確認しよう 遺産分割⑭

最近多くなっている相続人トラブル

最近多くなっているトラブルに、法定相続人全員の同意があるかの確認が取れていないケースがあります。

例えば、夫が亡くなって妻と長男が同居していて実家を長男に相続させようとする場合を考えてみましょう。次男や長女などの他の兄弟姉妹にきちんと確認をとらずに、「同居しているんだから次男や長女も当然に同意するだろう」と思い込んで相談に来られる人が多いのです。

実際には次男や長女にもそれぞれの事情があって、手続を始めようとすると「長男の単独相続には同意できない」ということが発覚するというケースが増えています。

法定相続分での不動産の共有

不動産を法定相続分で複数の相続人が共有する場合は、法定相続人全員の同意は不要です。

ただしその場合、上記の例でいうと「妻6分の3、長男6分の1、次男6分の1、長女6分の1」で一つの不動産を共有することになります。

もし売却する時には共有者全員の同意が必要になり、極めて売りにくい不動産となります。こうなることを嫌って現実には共有にするケースは少ないです。

特定の相続人が不動産を単独相続するためには遺産分割協議書が必要

特定の相続人が不動産を単独で相続したい場合(今回の事例だと長男)、必ず遺産分割協議書が必要となります。

遺産分割協議書には法定相続人全員の署名押印が条件となっています。一人でも欠けてはいけません。また押印は必ず実印で印鑑証明書の添付も必須です。

このように厳しい条件が付けられていますので、同意していない相続人がいる限り単独相続は難しいことになります。

遺産分割協議書を不要にするには遺言書を書きましょう

法定相続分と異なる相続を希望する場合は、相続人全員が遺産分割協議で合意するか、それでなければ生前に遺言書を書いてもらうしかありません。遺産分割協議で揉めないためにも遺言書はできるだけ書いておいた方が良いと思います。

ただし相続人が配偶者や子の場合は遺留分がありますので、遺言書で特定の相続人に単独で渡せるかは分かりません(遺言で指定されていない相続人が遺留分請求をするかどうかは分からないので)。

一方、遺言者に子どもがいない場合は兄弟姉妹甥姪が相続人になるケースが多くなります。兄弟姉妹や甥姪には遺留分がありませんので、遺言に書かれたとおりに相続が実現する可能性が高くなります。子どもがいない人ほど遺言は絶対に残すべきだと言えます。

遺言が残されていない時は相続人全員に必ず意思確認しよう

現実には遺言を残さないまま亡くなられる方のほうが多いです。その場合は法定相続分どおりに分けるか、誰かに単独相続させたい時は相続人全員の同意を取るしかありません。
どうしても同意してくれない相続人がいる場合は、代償分割と言う方法をとるしかないでしょう。

代償分割とは

代償分割とは、「不動産の単独相続を認めてもらう代わりに金銭で支払う」という方法です。かなり広く行われている遺産分割の方法となります。

相続財産に預貯金が多くある場合は、不動産をもらわない相続人は預貯金の相続分を多くするという方が簡単でしょう。相続財産のほとんどが不動産の場合は(トラブルになり易いのはこの場合)、不動産を単独相続する相続人が自腹で他の相続人に金銭を支払うことになります。

換価分割

相続財産が不動産しかなく、単独相続したい相続人が金銭を自腹では支払えない場合、換価分割しか方法がなくなります。
換価分割は、不動産を売却して金銭に換えて売却代金を法定相続分で分ける方法です。法定相続分通りに分けることができるので法的なトラブルが起きにくい方法だと言えます。ただし元々住んでいた相続人が引っ越さなくてはならなくなりますので、感情的なトラブルになる恐れはあります。

遺産分割は甘くない

色々と説明しましたが、この仕事をしていると遺産分割で揉めるケースは驚くほど多いというのを痛感します。なぜか皆さんその時が訪れるまで甘く考える傾向があります。

裁判にまで持ち込まれるケースも非常に多く、そうなると時間と費用を多大に使い精神的にも負担が大きくなります。
トラブルを防ぐためには法定相続人との連絡はできるだけとり、相続についてはどのような考えを持っているかを把握しておくことが重要です。

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11月 25 2024

銀行の相続手続の最近の変化 遺産整理(遺産承継)㉔

昔の銀行の相続手続

以前の銀行の相続手続は、ほとんどが口座を開設した支店に行かなければなりませんでした。支店が遠方の場合は行くだけで大変でしたし、支店の中に相続に詳しい行員が少なく、かなりの時間待たされることも珍しくありませんでした。今でも地方の信用金庫や地方銀行には、このスタイルのところが残っています。

最近の銀行の相続手続1

最近は銀行の相続手続も変化してきています。一つは、どこの支店でも受け付けるところが増えていることです。メガバンクや大手の地方銀行には、このやり方が浸透してきています。ゆうちょ銀行は昔からこのスタイルでした。遠方の支店で口座開設をしていた場合には非常にありがたい変化です。

最近の銀行の相続手続2

二つ目は予約制の導入です。相続手続は他の手続に比べて非常に時間がかかります。待ち時間が加わると更に時間が長くなるので、予約制にすると時間の短縮につながってありがたいです。メガバンクはほとんどが予約制になりました。

最近の銀行の相続手続3

これは個人的にはあまりありがたくない変化ですが、手続が2段階になっている銀行が以前より増えました。2段階とはどういうことかと言うと、まずは受付をして基本的な相続情報を記入した受付表のようなものを提出します。これを提出してからでないと相続手続に必要な書類を受け取ることができないシステムのことを言います。

正直なところ面倒で手間がかかるので、私は評価していません。ゆうちょ銀行は昔からこのやり方でした。最近、他の銀行でもやり始めたところがありますが、まだ多数派ではありません。

最近の銀行の相続手続4

最近めっきり増えてきたのが相続センターを別に設けて、一ヵ所で全ての相続手続を処理するというやり方です。相続専門スタッフを集中的に配置して効率的に処理できるので賢い方法だと思います。

ただしこの方法だと手続は全て郵送でのやり取りになるので一つ難点があります。必要書類も郵送で送ってしまうので、返却されるまで他の銀行の手続ができないことです。ただ遠方の支店に行かなくても良い点や、手続の時間を待たなくても良い点などメリットもたくさんあるので、トータルでは評価できる変化だと思います。

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11月 15 2024

養子縁組前に出生した子に代襲相続を認めない 遺産分割⑬

養子縁組前に出生した子に相続権はあるか

被相続人に子がいなくて、両親も祖父母も先に亡くなっていた場合、兄弟姉妹甥姪が相続人となります。

その場合、養子縁組により兄弟姉妹になった相続人がいて、その人が亡くなっていた時、その人の子どもで縁組前に出生した人が代わりに相続人となれるかが裁判で争われていました。

最高裁判決は「相続権は無い」

今月12日に最高裁第三小法廷が判決を出しました。結論は「縁組前に出生した子に代襲相続権は無い」と決まりました。4人の裁判官が全員一致の判断で、その前に出た高等裁判所の判決が覆ることになりました。

最高裁の判決ですから最終判断で、今後のルールとなります。

二転三転した判決

1審の横浜地裁では「相続権が無い」との判断で、2審の東京高裁では一転して「相続権がある」と言う判断に変わりました。最高裁で1審の結論に戻ったと言えます。

個人的には、民法を素直に読むと1審と最高裁の判決の結論になるので、2審の東京高裁の判決が苦しい解釈だなと思いました。

孫の場合は結論が出ていた

被相続人の子が先に亡くなって孫が代襲相続をする場合は民法に規定があります。民法には「被相続人の直系卑属でない者は代襲相続人にはなれない」と規定されています。従って被相続人と子が養子縁組をする前に出生した孫は、被相続人の直系卑属にはならないので代襲相続人にはなりません。

今回の裁判では兄弟姉妹の子だったので判断が分かれたのでしょう。ただ最高裁の判断は民法の規定を素直に読んで、「民法の規定は、血族関係が生じない養子縁組前に生まれた子は、代襲相続人になれないと定めている」と指摘しています。孫のケースから応用したら、この結論になるのが妥当でしょう。東京高裁の判断は無理があると思いますね。

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遺産分割

9月 27 2024

ゆうちょ銀行の利息計算は残高証明に追加記載される 遺産整理(遺産承継)㉓

銀行の残高証明書と利息計算書

相続税の申告がある場合は、銀行の相続手続をする時に残高証明書も一緒に取得します(相続税申告に必要な書類だからです)。相続税申告が無い場合でも、他の相続人に財産がいくらあるかを証明しなければならない時は、やはり残高証明書を取ります。

残高証明書を取る時、証明すべき口座が定期預金の場合は利息計算書も取らなければなりません。死亡日までの経過利息を証明する必要があるからです。

ゆうちょ銀行は利息計算が残高証明書に追加記載される

通常の銀行だと定期預金の利息計算書を取得した場合、残高証明書とは別の用紙で出されることが多いです。
しかし、ゆうちょ銀行の場合は取り扱いが異なります。これまでも、ゆうちょ銀行の取り扱いが様々なケースで異なるという記事を書いてきましたが、利息計算書も異なるのです。

具体的には、ゆうちょ銀行の利息計算は残高証明書に追加記載される形になります。通常の銀行と取り扱いが異なり、なぜ、このようになっているのか不思議ですね。

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相続丸ごと代行サービス

9月 19 2024

遺言で取得した不動産でも相続登記をしなければ第三者に対抗できない 相続登記㉗

改正前の遺言による不動産の取得

相続法が改正される前は、遺言によって不動産を取得した相続人は例え相続登記をしていなくても、その権利を第三者に対抗することができました。

法定相続人がAとBの二人いて、遺言でAが不動産を単独で相続すると決められていた場合を具体的に考えてみましょう。Aが相続登記をする前に、Bが自身の法定相続分2分の1をCに売却した場合、Aは例え登記が無くてもCに対して2分の1を返せと言うことができました。

この権利を専門用語で対抗要件と言います。

相続法の改正により結論が変わった

最近改正された相続法では上記とは異なる取り扱いに変更されました。先ほどと同様のケースで説明しましょう。

法定相続人がAとBの二人いて、遺言でAが不動産を単独で相続すると決められていた時、Aが相続登記をする前に、Bが自身の法定相続分2分の1をCに売却した場合です。
結論を先に言うとCが先に登記をしてしまったら、AはCに対抗することができません。遺言があるのだから登記名義を返せとは言えなくなってしまったのです。

相続法改正で変わった対抗要件のルール

相続法改正により対抗要件のルールが変わりました。以前は遺言で指定されていれば登記という対抗要件は不要でした。

しかし改正法以降は、「例え遺言があっても自身の法定相続分を超えた分については対抗要件が必要である」と変更されたのです(不動産の対抗要件は登記です)。なぜなら買手にとっては遺言があるかどうかを事前に察知することは極めて困難だからです。

今後の相続登記の注意点

従って今後は遺言の有無にかかわらず、法定相続分を超えて取得した相続人は最優先で登記をする必要があります。もし登記をしなかった場合、先に登記をした第三者に名義を持っていかれる可能性があるということです。

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相続登記

7月 10 2024

定額小為替の手数料は高すぎる 相続登記㊱

遠方の役所から戸籍などを取り寄せる場合

相続に必要な戸籍謄本・戸籍の附票・住民票・住民票の除票・固定資産評価証明書などの書類を遠方の役所から郵送で取り寄せる時は、振り込みやクレジットや電子マネーなどは使えません。支払方法は一種類に限定されていて、それが定額小為替による支払いです。

定額小為替とは

定額小為替とは郵便局で発行される現金の代わりとなるものです。現金は現金書留で送らなければなりませんが、定額小為替ならば普通郵便でも送ることができます。受け取った相手は郵便局に持ち込んで換金することができます。

定額小為替は最も低い50円から、最も高い1000円まで12種類あります。これを戸籍や住民票の金額に応じて組み合わせて送ることになります。

定額小為替の欠点

定額小為替の最大の欠点は、発行するための手数料が高いことです。しかも最近になって、この手数料が更に値上げされました。以前は1枚100円だったのが、今は1枚200円になったのです(2倍の値上げって、すごいですよね)。

さらに驚いたことに200円という手数料は、小為替の額面の金額とは無関係なのです。つまり額面50円の小為替でも200円の手数料がかかるのです。この手数料の仕組みは非常識だと私は思います。

我々司法書士は仕事で使っていますから、額面最大の1000円の小為替を送ります。すると、おつりも小為替で返ってきます。おつりの小為替は他のお客様に使うことができますから、まだマシだと思います。
しかし、一般の方は定額小為替のおつりをもらっても使いみちが無いでしょう。ですから額面が小さい小為替でも1枚200円で作らざるを得ないでしょう。

定額小為替の将来

この定額小為替という制度は恐ろしく前時代的で、もはや遠方の役所に対する郵送請求くらいしか使われていない印象です。これほど高額な割に利便性のない仕組みは、いずれ消えていく運命ではないかと個人的には思います。

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相続登記

6月 25 2024

遺言執行者の不動産の売却 遺言㉙

相続財産に不動産がある場合

相続財産に不動産があると、複数の相続人が存在する時は相続が難しくなる場合があります。なぜなら不動産を相続人の共有にしたとしても、その不動産を利用しない相続人にとっては意味が無いからです。

このような時は通常は相続不動産を売却してから、売却代金を相続分で分配することになります。この方が公平に分配することができるからです。(その不動産に住み続ける相続人がいる場合は、この方法は選択できません)

相続不動産の売却には2段階の登記申請が必要

相続不動産を売却するためには、相続人の名義にしておく必要があります。これを相続登記と言います。たまに素人のサイトや動画で「相続登記をしないで売却した方が、登録免許税などの費用を節約できる。」などと説明しているものを見かけますが、これは法的に全くの間違いです。相続登記をしないで相続不動産を売却することはできません。

もしこれを真に受けて売買契約をしたら(まともな不動産業者ならば、そもそも契約を引き受けないと思いますが)、買主の名義にするために法務局に申請した時点で「相続登記がされていないので、この申請は受け付けられない」と言われて却下されるでしょう。

相続不動産の売却には通常は相続人全員の協力が必要

第一段階の相続登記は、法定相続分の登記ならば相続人のうちの一人から申請できます。しかし第二段階の売買の登記は、売主である相続人全員が参加しなくては出来ません。相続人のうち一人でも売却に協力しない人がいるできないのです。これを防ぐためには遺言が最も有効な解決手段です。

清算型遺言

遺言を残して、遺言の中で「売却して換金してから分配すること」を記載した上で、遺言執行者を指定しておくという方法があります。これを清算型遺言と言います。清算型遺言ならば、売却に協力しない相続人がいたとしても無視して売却を進めることができます。

清算型遺言が相続人の協力を必要としない根拠

なぜ通常はできないはずの不動産登記ができるのか、その根拠は以下の2つの先例の存在です。先例とは法務省民事局による通達や質疑応答のことを言います。先例は全国の法務局に対して効力を持ちます。

  1. 登記研究質疑応答822・189頁
  2. 「清算型遺贈の旨がある遺言に基づき、遺言執行が不動産を売却して、買主名義に所有権移転登記を申請する場合には、その前提となる相続登記については登記実務上、中間省略できないものであって遺言執行者は相続人の法定代理人として、単独で相続登記申請が可能である」

  3. 昭和52年2月5日民三第773号回答
  4. 遺言執行者の単独申請により被相続人名義から相続人名義に相続による所有権移転登記を経由した上で、遺言執行者と買主との共同申請により相続人名義から買主名義への所有権移転登記をすべきである」

先例により遺言執行者の単独申請が可能

上記の先例により清算型遺言の場合には、不動産登記に相続人の協力は不要で、相続登記は遺言執行者が単独で申請することができ、売買登記は遺言執行者と買主で申請することができます。

これは遺言の内容を実現することが遺言執行者の仕事であり、清算型遺言の場合は不動産を売却して分配するまでが仕事に含まれると考えられるからです。

相続不動産の売却についての結論

今回ご紹介したようなルールがある以上、不動産を売却して相続人に分配する時には、しっかりとその旨を遺言に残しておくことが重要です。よく覚えておきましょう。

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