司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

4月 10 2024

帰属権利者兼受託者の固有財産となった不動産の登記が、受託者単独申請可能になる 家族信託(民事信託)㉘

信託不動産の今までの登記手続

信託が終了した段階で、信託不動産の名義を帰属権利者兼受託者にする登記手続は、帰属権利者が相続人の一人である場合には、取り扱いが定まっていませんでした。

あいまいだったのは、「誰を登記申請の当事者にすべきか」という部分です。帰属権利者兼受託者が単独で申請できるのか、それとも受益者の相続人全員の協力が必要なのか、という二つの可能性があり、申請する法務局によって扱いが異なっているという状況でした。
(※帰属権利者兼受託者=信託が終了した後に、信託財産の権利を引き継ぐ人)

帰属権利者兼受託者の単独申請で決着

本来、登記申請の取り扱いが法務局によって異なるのは許されません。その位、異常な事態だったのです。ようやく令和6年1月10日に法務省民事局が決着を付けましたので、今回はその報告をしたいと思います。

ポイントは以下の4点です。

  1. 相続人のうち一人が帰属権利者兼受託者である場合は、受託者個人を受益者とする受益者変更登記の申請後、受託者の固有財産となった旨の登記及び信託抹消登記、を行う
  2. 受益者変更登記、受託者の固有財産となった旨の登記及び信託抹消登記、の2つの登記は、受託者による単独申請が可能である
  3. 受託者の固有財産となった旨の登記は、登録免許税法第7条第2項の要件を満たせば軽減措置の適用を受けることができる
  4. 受託者の固有財産となった旨の登記では登記識別情報が発行されない。従って、信託登記時の登記識別情報の保管が必要である

評価する点と問題点

まずは受益者の相続人全員の関与が不要になり、受託者の単独申請が可能になった点は評価すべきでしょう。法務省民事局の決定なので、今後は全国の法務局で統一された取り扱いになります。

また受託者の固有財産となった旨の登記の登録免許税が1000分の20なのか1000分の4なのかも見解が分かれていましたが、登録免許税法第7条第2項の要件を満たしている時は1000分の4と決められました。

唯一、不満があったのが新しく登記識別情報が発行されないという点です。これは登記識別情報が発行されるのは移転登記の時であって、変更登記には適用されないというルールのためです。信託登記などほとんど無かった時のルールなので、新しい仕組みに対応できていないという印象を受けます。

変更登記と言っても実質は受託者が新しい権利者になる訳ですから、発行する方が自然ではないかと私は思います。この決定によって、信託登記の時の登記識別情報を変更登記のものとして流用するということになりました。

このように一部不満な点はありますが、おおむね評価できる決定だと思います。少なくとも今後は、出して見ないと分からないということは無くなる訳ですから。

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3月 21 2024

数次相続の相続放棄 相続放棄㉓

数次相続とは

数次相続とは、相続が発生した時に遺産分割協議をせずに放置しておいたら、法定相続人が死亡してしまい次の相続が発生してしまったことを言います。

平均寿命が伸びて高齢で亡くなる人が増えたため、相続が発生した時には法定相続人も高齢になっている場合が多く、数次相続の機会は増えていると思われます。

数次相続の相続放棄のパターン

数次相続の相続放棄には、いくつかのパターンがあります。

分かり易くするために、祖父から父の相続を1次相続、父から子の相続を2次相続として、子が相続するかどうかを決めるという事例で説明しましょう。尚、放棄せずに相続することを単純承認と呼びます。

  1. 1次相続を放棄して、2次相続を単純承認する
  2. 1次相続を単純承認して、2次相続を放棄する
  3. 1次相続も2次相続も両方とも放棄する

これらのパターンごとに可能かどうかを見ていきましょう

1次相続を放棄して、2次相続を単純承認する場合

1次相続を放棄して、2次相続を単純承認することは可能です。事例で言うと祖父の相続は放棄して、父の相続を承認することはできるということになります。

ただしこの場合の注意点としては、1次相続はかなり前に発生しているケースが多いと考えられるので、相続放棄の熟慮期間を過ぎていないかどうかを検討する必要があります。ほとんどの場合で、「1次相続の事実を知ったのが最近だった」、または「借金があることを知ったのが最近だった」という理由で相続放棄をすることになるでしょう。

1次相続を単純承認して、2次相続を放棄する場合

1次相続を単純承認して、2次相続を放棄することはできません。2次相続を放棄することで1次相続の相続権も失うと考えられるからです。事例で言うと、父の相続を放棄したら、祖父の財産の相続はできないということになります。

1次相続も2次相続も両方とも放棄する場合

1次相続も2次相続も両方とも放棄することはできます。ただし、このパターンを実務上、利用する機会があるかどうかは疑問です。なぜなら、2次相続を放棄した時点で1次相続をする可能性はなくなるからです。少なくとも私は必要だと感じた事例は今のところありません。

実務で最も使われるパターン

実務で最も登場する機会があるのが、①の「1次相続を放棄して、2次相続を単純承認する」パターンでしょう。祖父母世代には借金があるが、父母世代には借金が無いので、祖父母の借金は相続放棄して、父母の財産は受け取りたいというケースです。
これが成功するには、「祖父母が亡くなったことを知った時から3ヶ月以内」であるか「祖父母に借金があることを知ってから3ヶ月以内」であることが条件になります。条件を満たしているならば、積極的に利用する価値はあるでしょう。

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相続放棄

3月 06 2024

遺言執行者の通知義務 遺言㉘

遺言執行者の通知

旧民法では遺言執行者が法定相続人に通知をすることは義務ではありませんでした。しかし、それでは法定相続人の知らないところで勝手に遺言執行が進んでしまうという懸念があり、改正民法では遺言執行者の通知は義務となりました。

就任承諾通知義務

遺言執行者は遺言書に記載されている場合が多いと思います。(家庭裁判所で選任される場合もある)。しかし遺言書に記載があれば自動的に就任するわけではありません。なぜなら遺言書に書く時に、就任の意向を確認する必要が無いからです。遺言書を開封して始めて、自分が遺言執行者にされていることを知ったというケースもあります。

ですから遺言執行者は遺言に記載されていても拒否する権利があります。裏を返せば、就任を承諾して始めて遺言執行者になるのです。故に、就任を承諾したかどうかは法定相続人にとって重要な情報になります。従って、就任を承諾したという事実を法定相続人に通知することが、改正民法では義務化されました。

遺言内容開示義務

また法定相続人は遺言書の内容を知る権利があると考えられ、遺言執行者には遺言書の内容を通知する義務も設けられました。
これは主に遺留分請求を迅速にするためというのが理由の一つだと考えられます。しかし改正民法では、遺留分の無い兄弟姉妹甥姪に対しても通知義務が課されています。通知の方法としては、遺言書の写しをそのまま添付すれば良いとされています。

財産目録開示義務

次に相続財産の開示義務があります。相続財産の目録を作って、それを法定相続人に通知する義務です。私が遺言執行者の実務をやっていて個人的に最も抵抗があるのが、この財産目録の通知義務です。しかし法律で義務付けられているので、やらない訳にはいきません。

なぜ抵抗があるかと言うと、送られた相続人から苦情が寄せられることがあるからです。遺言で指定されていない相続人の立場からすると、「自分がもらえない財産の詳細なんて見たくもない」というのが本音でしょう。

他には、予想よりも多い財産が書かれていた場合、「本当に本人が書いたのか」、「認知症になっていて誘導して書かせたんじゃないのか」などのクレームになり易く、弁護士に駆け込んで大掛かりな争いに発展してしまうこともあります。個人的には財産目録を通知することによって、争いの種をまいているのではないかと思うことがあります。

終了報告義務

遺言執行者は遺言の執行が終了したら終了報告をする義務があります。

このように改正民法では遺言執行者に対して様々な通知報告義務を課しています。一般の方で遺言執行者に指定された場合は、注意してください。もし通知義務に違反した場合、損害賠償責任を負わせられる可能性もありますので覚えておきましょう。

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遺言

2月 28 2024

いよいよ始まる相続登記の義務化 相続登記㉟

相続登記の義務化が始まる

今まで何度か取り上げてきた相続登記の義務化が、いよいよ4月1日から始まります。今後は相続登記を放置しているとペナルティが課せられるようになります。そこで内容について確認しておきましょう。

相続登記が義務化される理由

不動産の名義人が亡くなった時に、相続登記(名義変更)を放置することが許されなくなるのが義務化です。今まで相続税の申告には放置した場合のペナルティがありましたが、相続登記の申請にはペナルティがありませんでした。故に相続登記は放置されることが多く、特に価値が低い不動産の場合は大半が放置される傾向がありました。

これによって所有者が不明の不動産が全国で発生して大きな問題となりました。老朽化した建物を取り壊そうと思っても誰のものか分からない場合が増えてきたのです。所有者不明だと更地にすることも売却することも困難になります。これが義務化される大きな理由です。

相続登記の義務化の内容

    (1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
    (2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。

(1)と(2)のいずれについても、正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。

相続登記の義務化は4月1日以前に発生した相続に対しても適用される

ここで注意すべきなのは、既に発生している相続についても相続登記の義務化は適用されるということです。ようするに開始時期よりも前に発生した相続であっても漏れなく義務化の対象になるのです。相続登記をしなかった場合のペナルティも「10万円以下の過料」ですから無視できません。

やむを得ない場合の救済措置である相続人申告登記

例えば遺産分割協議をしたら法定相続人同士で揉めてしまい、なかなか決着が着かないという場合があります。そのため所有者が決まらないので相続登記ができないという場合には、相続人申告登記という制度が新たに作られました。注意すべきなのは、あくまで相続登記義務化の救済措置として設けられたものなので、正式な登記ではないということです。

相続人申告登記は通常の相続登記に比べると手間や費用を節約できるようになっています(登録免許税もかからない)。メリットは相続登記の義務を履行したとみなされることで、これをしておけば罰則(10万円以下の過料)は課されません。他の相続人に了解を得る必要もなく単独で申請できます。

ただし、第三者に対して不動産の所有権を主張できる権利は認められていないので、法定相続人同士の話し合いがついたら後から正式な相続登記をする必要はあります。
相続人申告登記については、改めてブログ記事を設けて詳しい説明をしたいと思っています。

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相続登記

2月 19 2024

法定相続情報一覧図の数次相続は分割して申請する 法定相続情報証明③

数次相続とは

相続が発生した後に相続手続をせずに放置していたら、法定相続人の一部または全部が亡くなってしまった場合、数次相続と呼びます。数次相続は、通常の相続を複数行うよりも手間がかかり費用も高くなる傾向があります。

法定相続情報一覧図には数次相続を同時に記載することはできない

数次相続が起こった時に法定相続情報一覧図を作成しようと思ったら、注意すべきことがあります。それは一度に申請することができないということです。

例えば、父と長男と長女の3人家族で先に父が亡くなり、その後、長男が亡くなったとします。長男は結婚して妻と子がいます。
この状況で法定相続情報一覧図を作成する場合、まずは父を被相続人とした一覧図を作成します。この時、既に亡くなっている長男はどうなるかと言うと、父の死亡時にはまだ生存していたので、父の一覧図では長男は生存しているものとして取り扱います。そして次に長男を被相続人とした一覧図を作成します。長男の法定相続人は全員生存しているので、通常通りに作成することになります。

相続関係説明図は同時に記載できる

このように数次相続の場合は、相続が発生した回数分だけ一覧図を作成しなければなりません。同時に記載することはできないのです。

一方、相続登記の添付書類である相続関係説明図は、一覧図とは異なりますので注意が必要です。相続関係説明図は数次相続の場合でも同時に1枚で記載することが可能です。すごく大きな図になってA4では収まりきらない場合は、大きな紙に記載して折りたたんで使用する場合もあります。

法定相続情報一覧図と相続関係説明図は似ているようで異なる部分もあるのです。覚えておきましょう。

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2月 13 2024

相続登記を放置したために売却ができなくなったケース 相続登記㉞

実際にあった事例

今回お話しするのは実際にあった事例です。まずは概要を説明します。
息子さんからの相続不動産の売却の相談です。

数年前に不動産の名義人である母親が既に亡くなっていましたが、その時は相続登記をせずに放置していました。その後、父親が亡くなって財産を調べたところ、父親名義の多額の借金があることが分かりました。

そこで借金を相続しないように父親の財産については相続放棄をされたそうです。その後で母親の名義の不動産を売却できないかという相談に来られました。

相続人不在の持分がある不動産

この事例の何が問題かと言うと、不動産の一部が相続人不在になってしまったことです。そうなった原因は以下のとおりです。

母親が亡くなった時に相続登記を放置していたため、不動産は法定相続分で父親と息子が共有している状態でした。この時までは遅れて遺産分割協議をすることは可能でした。

ところが父親が亡くなって2次相続が発生しました。しかも父親に借金があったために息子は相続放棄を選択しました。これにより不動産の一部が相続人不在になってしまったのです。

なぜ相続人不在になったのか

母親が亡くなった時点で、法定相続人は父親と息子の二人です。この状態で父親が亡くなると、父親の持っていた不動産共有持分の権利は通常は息子に相続されます。ところが息子が相続放棄してしまったので、父親の共有持分の権利が宙に浮いた状態になってしまったのです。

遺産分割協議が開けないので所有者が決まらない

父親に両親や兄弟姉妹などの他の相続人がいれば、その人と母親の不動産について遺産分割協議を開くことができますが、残念ながら他の相続人はいませんでした。そうすると通常の遺産分割協議を開くことができません。母親名義の不動産の所有者を決めることができないのです。

この場合に考えられる方法は、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらうことです。しかし相続財産管理人の選任には多額の費用と大きな手間がかかります。
※相続財産管理人の選任の際に裁判所に納める費用は数十万円と言われています。

相続財産管理人から持分を買い取る

しかも父親の不動産共有持分を手に入れるためには相続財産管理人から買い取る必要があります。タダでは手に入らないのです。

こうなる理由は相続財産管理人に借金の清算義務があるからです。相続財産管理人は父親の財産から借金を返さなくてはなりません。そのために父親が母親から相続した不動産持分を売却して換金する必要があります。この場合、もう一人の共有者が息子になりますから、息子が買いたいと言えば問題なく売ってくれるでしょう。相続財産管理人にとっても息子にとっても都合の良い結果ではあります。

ただし相場よりも安く買うことはできないと思った方が良いです。なぜなら相手は家庭裁判所から選任された相続財産管理人ですから、原理原則どおりに行動するからです。民間の不動産業者のような値引き交渉は通用しないと考えるべきです。

結果および結論

これらのことについて説明したところ、相続財産管理人選任の費用や、その後の共有持分の買取費用を考えるとメリットが少ないということで、売却はあきらめて放置という選択をされました。ただし今年の4月から相続登記が義務化されますので、ずっと放置しておくことはできなくなります。

今回の事例では、どうすれば良かったのかというと母親が亡くなった時点で速やかに遺産分割協議を開いて、不動産を全て息子さんが相続すると決めた上で、息子さん名義の相続登記をしておけば問題は無かったのです。

父親が亡くなった時には既に息子さんの名義になっているので、父親の相続放棄をしても問題なく不動産を売却することができました。相続登記を先延ばしにしたことで、手痛い失敗をしたという事例でした。

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相続登記

2月 07 2024

葬祭費、埋葬料は受け取っても相続放棄できる 相続放棄㉒

葬祭費と埋葬料の違い

いずれも遺族に支払われる費用ですが、葬祭費は個人事業主などが加入する国民健康保険加入者へ、埋葬料はサラリーマンなどの健康保険加入者への支払いになります。

葬祭費と埋葬料は相続財産になるのか

葬祭費と埋葬料は被相続人の財産ではなく、相続人の財産と考えられています。相続財産ではない以上、受け取っても相続放棄はできます。この相談は割と多いので覚えておくと良いでしょう。

未支給年金も受け取れる

以前のブログでも取り上げましたが、老齢年金や障害年金の未支給分も相続財産ではないとされています。

未支給年金を具体的に説明すると、例えば2月分と3月分の年金を4月15日に支給予定であったが、4月5日に死亡したとします。この時、本来は支給すべき2月分と3月分の年金が支給されていない状態となります。このような年金のことを未支給年金と呼びます。

被相続人は2月と3月は生きていたのですから、一見、未支給年金は相続財産であるかのように思えます(私も最初聞いた時は、そのように思いました)。

しかし、この問題については最高裁判所の判断が出ていて、「未支給年金は相続財産として扱わない」ということになっています。国税庁も「未支給年金は相続税の課税対象にならない」と発信しています。従って、未支給年金を受け取っても相続放棄はできます。

生命保険は受け取れるか

生命保険についても、よく質問されます。契約者と被保険者が被相続人で、受取人が相続人という一般的なパターンの場合、死亡保険金は相続財産ではなく受取人固有の財産とされます。従って、死亡保険金を受け取っても相続放棄は可能です。

この理屈だと保険金には相続税がかからないように思えますが、それだと相続税を逃れるために多額の生命保険を掛ける人が出てきてしまうので、税法では一定額を超える死亡保険金に対しては相続税をかけることにしています。

葬儀費用を相続財産から払えるのか

悩ましい問題として故人の葬儀費用を故人の財産から払っても良いのか、というのがあります。これについては裁判所は、「葬儀代が不相当な額ではなく、社会通念上相当な範囲であれば、相続放棄をすることは可能」と言っています。

しかし、「社会通念上相当な範囲」というのが具体的にどの程度の額なのかは、はっきりと明言されていないため、いくらまでなら許されるのかは判然としません。それこそ裁判官個人のその時の裁量(個人的な見解)で決められてしまう可能性が大きいです。

故に、あまり大丈夫とは思わない方が良いというのが専門家としての意見になります。
どうしても故人の財産から出すというのならば、その時の世間の相場よりも確実に安いと言い切れる額に留めておくべきでしょう。

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相続放棄

1月 30 2024

遺産分割協議書に「放棄する」と書いても相続放棄はできない 相続放棄㉑

遺産分割協議書についての大きな誤解

遺産分割協議書は、あくまでプラスの財産の分け方について記載するものです。ですからマイナスの財産について記載しても法的な効果はありません。

分かり易く言うと、借金を請求してきた債権者に遺産分割協議書を見せても、請求を止めることはできません。遺産分割協議で借金を免れることはできないのです。
これは多くの人が誤解していることなので、よく覚えておきましょう。

相続放棄は遺産分割協議書に書くことではない

相続放棄をしたいという相談を受けた時、放棄について書かれた遺産分割協議書を作って欲しいと言われることがあります。しかし、上記でも説明したとおり、遺産分割協議で相続放棄をすることはできません。相続放棄は家庭裁判所に申し立てて認めてもらうものです。このことについて説明すると驚かれる方もいます。

相続放棄は単独でできる

遺産分割協議は法定相続人全員が参加していなければ無効になります。従って、遺産分割協議書には法定相続人全員の署名と実印による押印と印鑑証明書の添付が必須となります。

一方、相続放棄は相続人の一人から単独で行うことができます。他の相続人に知らせる義務もありません(通常は知らせることが多いとは思いますが)。相続放棄をすると法定相続人ではなくなりますから、遺産分割協議の参加資格が無くなります。

ただし、預貯金や不動産の相続手続を行う時には、相続放棄をした相続人がいることを銀行や法務局に証明しなくてはならないので、家庭裁判所が発行する相続放棄申述受理通知書を添付する必要はあります。

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相続放棄

1月 19 2024

親族の死亡後に見つかった借金、消滅時効か相続放棄か 相続放棄⑳

死亡後に見つかった借金の請求書

親族が死亡した後に借金の請求書が見つかる、これは珍しいことではありません。このような相談を受けることは実際によくあります。その借金が、かなり前のものだった場合、時効で解決するか相続放棄にするか悩ましい選択になります。

まずは相続放棄を検討しよう

自分の借金ならば何社から借りていたかは把握している場合が多いでしょう。しかし、親族といえども他人の借金の場合、見つかった請求書で全部かどうかは分かりません。ひょっとしたら遅れて他の請求書が届くかもしれません。

この不安を解消するためには相続放棄の方が適していると言えるでしょう。相続放棄ならば1回認められれば、後から届いた借金にも通用します。ですからまずは相続放棄ができないかを検討するべきでしょう。

相続放棄では難しい場合

しかし相続放棄は難しい場合があります。代表的なのはプラスの財産が、そこそこある場合です。相続放棄はプラスの財産も含めて放棄しなければなりません。どうしても相続したい財産がある時は相続放棄は利用できないことになります。

もう一つは死亡してから3ヶ月以上経過している時です。相続放棄は3ヶ月という期限があるので、これを過ぎている場合は検討する必要があります。ただし3ヶ月を過ぎていても正当な理由があれば認められることも多いので、プラスの財産がある場合に比べれば利用できないとは言い切れません。判断が難しいケースなので相続放棄に詳しい専門家に相談した方が良いでしょう。

消滅時効で解決する場合

相続放棄が利用できない時は、次に消滅時効での解決を考えましょう。消滅時効は届いた業者ごとに通知を出す必要ありますので、他に借金が見つかった場合は、その都度手続をすることになります。この点は相続放棄よりも手間がかかりますね。あと全ての借金が時効になっているとは限りませんので、時効になっていない借金については支払わなくてはなりません。

他に重要な注意点としては、「時効援用通知は相続人の数だけ出す必要がある」という点です。例えば相続人が3人だったとすると、3人それぞれから通知を出さないと、出さなかった相続人には借金の請求が行くことになります。これは誤解されている方が多いので覚えておきましょう。

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相続放棄

12月 14 2023

相続登記における登録免許税の免税措置の変更 相続登記㉝

相続登記における登録免許税の免税措置

相続登記には登録免許税という税金がかかります。法務局に申請書類を提出する時にかかるので、払わないと受け付けてもらえません。相続登記における登録免許税の税率は固定資産評価額の0.4%です。

そして相続登記の登録免許税には評価額の低い土地には免税措置がありました。この免税措置が現在、内容が変更されているのでお知らせしたいと思います。

登録免許税の免税措置の変更

以前は免税措置の対象になる土地は、不動産評価額が10万円以下の土地でした。それが令和4年の税制改正により、免税対象の土地の評価額が10万円以下から100万円以下と大幅に上限が引き上げられ、恩恵を受けられる土地が一気に拡大しました。

増税が目立つ最近の政府ですが、これは珍しい減税事例ですね。その位、相続登記の放置問題は深刻で、相続登記の義務化と合わせて、政府はこの問題の解決に真剣だということでしょう。

不動産持分で計算すると100万円以下になる場合

不動産を共有で取得している場合、例えばAさんとBさんが2分の1ずつ共有している場合はどうなるのでしょうか。

このケースで不動産評価額が仮に180万円だったとすると、不動産単体では100万円を超えています。そして、Aさんに相続が発生したとします。Aさんの持分割合は90万円です。このような時、法律の規定によると、持分割合をかけた金額が100万円以下ならば免税の対象になるとされています。

つまりAさんのように、持分として取得している金額分が免税対象金額ならば、免税制度の適用を受けることができるのです。

申請書に条文の記載が必要

この免税制度は、規定に当てはまっている土地ならば何もしなくても免税になる訳ではありません。登記の申請書に適用条文を記載しなくてはなりません。

今回の適用条文は、租税特別措置法第84条の2の3第2項なので、申請書の該当箇所に「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」と記載する必要があります。

登録免許税の免税措置の期限

このお得な免税措置は期限があります。今のところ、令和7年3月末までということになっています。

ただし、所有者不明の土地を無くすという大きな目的があり、それがあと2年足らずで解決しているとは考えにくいので、期限がせまってきたら延長される可能性は高いと思っています(保証はできませんが)。

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