司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

10月 18 2022

戸籍の附票とは? 相続登記(29)

戸籍の附票とは

戸籍は聞いたことがあるし実際に取得したことがあっても、戸籍の附票になると「何それ」「聞いたことが無い」という人が途端に増えます。一般の人には、あまりなじみがない書類かもしれません。

戸籍の附票を一言で言うと、「戸籍に記載されている人の住所を表したもの」です。

住民票と何が違うのか

通常は住所の証明がしたい時は住民票を取得するでしょう。住民票なら何度も取ったことがあるという人が多いと思います。では住所を表す戸籍の附票が、住民票と何が違うのかをご説明しましょう。

戸籍の附票とは、「本籍に入籍した時から除籍した時までの住所の移り変わりが全て記載されている証明書」なのです。例えば生まれてから一度も本籍を変えなかった場合、生まれてから亡くなるまでの住所が全て記載されていることになります。

一方、住民票は原則として現住所を証明する書類です。「従前の住所」という項目に一つ前の住所が載っていることも多いですが、そこまでです。それ以上前の住所になると住民票では調べることができません。

戸籍の附票の使いみち

では戸籍の附票は、どんな時に使うのかというと、不動産の登記事項証明書に記載された所有者(登記名義人と言います)の住所が現住所と異なっていた場合です。

相続でも売買でも贈与でも所有権の移転(名義人の変更)をする時には、登記名義人が間違いなくそこに住んでいたことがある、と証明しなければなりません。現住所と一致していれば簡単ですが、旧法では罰則がありませんでしたので、住所が変わっても放置していることが多く、かなり昔の住所のままになっていることが珍しくなかったのです。
※新しい法律では住所変更の際は住所変更登記をしないと罰則があります。

このような場合、登記されている住所が出てくるまで遡る必要があります。そのために戸籍の附票を取得して昔の住所を調べることが多くなります。

戸籍の附票の保存期間

以前は戸籍の附票の保存期間が非常に短く、除籍されてから5年でした。しかし、あまりにも期間が短いために、長期間登記されずに放置されているケースで住所が調査できないという事例が続出して問題になりました。それを受けて現在では保存期間が150年に延長されています(住民票も同様に延長されています)。

5年から150年とは随分と極端な延長ですが、150年という期間は戸籍の保存期間に合わせた改正となっています。今後は長い間、未登記で放置されている登記名義人の住所が調べやすくなるでしょう。
※既に廃棄されてしまったものは元には戻らないので、その影響は残るとは思います。

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相続登記

9月 20 2022

法定相続情報証明は法定相続人以外は記載しない 法定相続情報証明②

相続関係説明図との違い

不動産の相続登記の時に相続関係説明図という家系図のようなものを添付します(省略して「相関図」と呼ばれることが多いです)。この相関図と法定相続情報証明は似ているようで少し違います。最も大きな違いは「法定相続情報証明では、法定相続人以外は氏名の記載はしない」という部分だと思います。

「法定相続人以外は記載しない」の意味

法定相続情報証明は文字通り法定相続人が誰かを証明する書面なので、法定相続人でない親族については不要な情報とされるのです。従って、法定相続人が一目で分かるような記載になっています。

具体的には、例えば兄弟姉妹の相続なら、被相続人の両親は氏名ではなく「父」「母」と記載されるだけです。先に亡くなっている子どもがいる場合は何も記載されません。先に亡くなっている兄弟姉妹がいる場合も同様に何も記載されません。あくまで法定相続人になる生存している兄弟姉妹のみが記載されるのです。

相続関係説明図の場合

一方、相続登記に利用する相続関係説明図の場合は随分と異なります。
上記の兄弟姉妹の相続の例で言うと、先に亡くなった子どもや兄弟姉妹も死亡日とともに記載します。一般的に相関図の方が複雑で記載が多くなる傾向があります。

遺産分割の結果について

法定相続情報証明では、遺産分割の結果は記載されません。あくまで法定相続人が誰かを証明するだけの書面だからです。従って、法定相続情報証明を見ただけでは遺産分割があったのかどうか、あった場合は誰が最終的な相続人になったのかは分かりません。しかし、法定相続情報証明があれば、遺産分割に参加すべき法定相続人を確定することができるというメリットはあります。

一方、相関図の場合は、遺産分割の結果も、分割でもらった人は「相続人」、分割でもらわなかった人は「分割」と記載されます。相関図を見れば誰が最終的な相続人か分かるようになっているということです。

法定相続情報証明を利用する場合

では、どのような時に法定相続情報証明を利用すると良いでしょうか。私の経験で言うと、兄弟姉妹や甥姪の相続の場合は利用した方が良いと思います。理由は取得する戸籍の量が非常に多くなるので、金融機関に持ち込んだ時、審査にものすごく時間がかかり、かなりの時間待たされることになるからです(1時間半とか2時間とか)。複数の金融機関で手続する場合、毎回、その位の時間待たされることになります。

前もって法定相続情報証明を取得しておけば、金融機関は大量の戸籍を審査する必要がなくなりますから、大幅な時間の短縮になります。金融機関が複数ある場合は積み重なると相当に楽になります。

もちろん最も多いパターンの「配偶者と子ども」の相続の場合でも、法定相続情報証明を取得して構いません。兄弟姉妹の場合ほどではありませんが、金融機関の相続手続が楽になるのは間違いありません。

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8月 22 2022

法定相続情報証明と住民票の除票 法定相続情報証明①

法定相続情報証明とは

法定相続情報証明とは、法務局が確定した法定相続人の情報を公的に証明してくれる書類のことです。

最近では、かなり定着してきており、銀行・郵便局・証券会社などでも、相続の案内に法定相続情報証明がある場合について記載されていることが多くなっています。法定相続情報証明があった方が金融機関も相続人を確定する作業が省けて楽になるからでしょう。

相続における住民票の除票

家族が亡くなった場合、その人は住民票から除かれます。住民票は生存している家族を記載する書類だからです。

除かれた家族は一定期間、住民票の除票という書類に記載されることになります。除票に記載される期間は以前は5年でしたが、期間が短かすぎて放置されている相続手続に支障が出るという理由で150年に延長されました。

住民票の除票は不動産の相続登記には必要書類とされています。しかし、登記簿上の住所と本籍が一致している場合は不要という規定があります。他に銀行など金融機関の相続手続の場合は最初から住民票の除票は不要です。

法定相続情報証明における住民票の除票

法定相続情報証明も相続登記と同じ法務局が取り扱っている手続ですが、必要書類が異なっているので注意が必要です。法定相続情報証明の場合、例え登記簿上の住所と本籍が一致していても住民票の除票が必要書類になります。手続の違いに気を付ければ、法定相続情報証明はとても利用価値が高いので覚えておきましょう。

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6月 28 2022

信託銀行の株の相続手続 遺産承継(遺産整理)⑱

株主名簿管理人とは

株式会社に代わって株主名簿の作成および備置きその他の株主名簿に関する事務を行う者のことをいいます。

法律では株主名簿管理人の設置は自由ですが、上場企業の場合、証券取引所が設置を義務付けていますので、必ず設置されています。株主名簿管理人には信託銀行などが指定されていることが多いです。

※昔の商法では名義書換代理人と呼ばれていました

信託銀行と証券会社

信託銀行は株主名簿の事務代行をしている訳ですが、株式の売買取引には関与していません。売買取引を行うのは証券会社になります。
株は売買を前提に持っている人が多いので、ほとんどの場合は証券会社が取り扱い機関になっています。従って相続が発生した場合も、証券会社に対して相続手続を申請するのが通常のやり方です。

信託銀行が取り扱い機関になる場合

しかし中には株をずっと持ち続けて売却するつもりが無いという人も、たまにいらっしゃいます(かなりの少数派だとは思います)。そのような場合、証券会社ではなく信託銀行が取り扱い機関になっているケースもあります。このようなケースで相続が発生した場合は、相続手続の申請は信託銀行にすることになります。

信託銀行の相続手続

信託銀行の相続手続は非常に大変です。証券会社も銀行に比べれば大変なのですが、証券会社以上に大変なことが多いです。その理由は、信託銀行では株式の売却ができないからです。

相続した株の取り扱い機関が信託銀行だった場合、まずは、相続人がどこかの証券会社の口座を持っている必要があります。持っていなければ新しく証券口座を開かなければなりません。

信託銀行から証券会社に移す

証券会社が取り扱い機関ならば、同じ証券会社に相続人の口座を開けば書類も少なく手続きもスムーズに進みます。会社が同じなので情報が共有されるからです。

しかし、信託銀行が取り扱い機関の場合は、別の証券会社に相続人の口座を開き、そこに信託銀行の株を移さなければなりません。別会社ですから必要な情報も多くなり手続も複雑で時間もかかります。

証券会社で換金する

相続人の証券口座に株式の名義を移した後で、始めて相続した株の売却が可能になります。あくまで換金は証券会社でないとできないからです。

このように相続手続と換金を別の会社で進めていく必要があるので、手続のステップが増えて手間と時間が余計にかかることになります。
証券会社の相続と同様に、相続財産に株式が含まれている時は専門家に依頼した方が手間がかからないでしょう。

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遺産承継

6月 20 2022

證券会社の相続手続 遺産承継 (遺産整理)⑰

証券会社の相続手続の特徴

証券会社の株式の相続の場合、銀行預金の相続とは決定的に異なる点があります。それは、相続人または代理人の証券口座が必要になることです。

もし相続人または代理人が証券口座を持っていない場合は、別途、新たに口座を開設することになります。

相続用証券口座の開設

相続人または代理人が相続前から証券口座を持っていれば、それを使えば良いのですが(手続をする証券会社と同じ場合は更に便利)、日本ではまだ証券取引は一般的ではないので、証券口座を持っていないことの方が多い印象です。

その場合は相続専用口座を、手続をする証券会社で新たに開設することになります。

相続専用口座とは

相続専用口座とは相続手続のためだけに開設される口座で、手続終了と同時に口座が閉鎖されます。

そんな短期間なら、わざわざ開設しなくても良いのでは、と考える人もいると思いますが、これが無いと手続きができないので仕方がありません。

株式の相続

株式は被相続人名義のままでは換金することができません(この点、不動産と似ていますね)。まずは相続人または代理人の名義にしてから売却する必要があります。そのために相続専用口座が必要になる訳です。

一旦、相続専用口座で相続人または代理人名義の株式に移管してから換金します。換金が終わったら口座は閉鎖されます。もちろん口座を閉鎖せずに株式のまま持ち続けることも可能です。

口座開設の手間

相続専用口座を開設するのは結構な手間です。余分な書類も書かされますし、証券会社とのやり取りで時間も取られます。通常の相続手続に加えて行うことになるので、証券会社の相続手続は銀行よりも大変な場合が多いです。

株式の残高証明書

相続税の申告などがある場合、残高証明書が必要になるでしょう。銀行ならば死亡日を記入して申請すれば、手数料は取られますが比較的簡単に取得することができます。

しかし、株式の場合の残高証明書は、ずっと複雑です。なぜなら株式の相続税評価額は以下のような複雑な計算で算出されるからです。

①被相続人の死亡日が含まれる月の平均株価
②被相続人の死亡日が含まれる前月の平均株価
③被相続人の死亡日が含まれる前々月の平均株価
④死亡日の株価(終値)

上記①から④のうち最も低い株価が相続税評価額となります
※高く評価されすぎないように相続人に優しい評価方法になっています

このように残高証明書についても証券会社は銀行よりも手間がかかります。
相続財産に株式が含まれている場合は、相続手続は専門家に依頼した方が良いでしょう。

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遺産承継

3月 31 2022

相続登記の遺産分割協議書は登記簿のとおりに 相続登記(28)

評価証明書と登記事項証明書

不動産の情報を確認したい時に、まず思い浮かぶのは固定資産評価証明書と登記事項証明書の二つです。

評価証明書は市町村税事務所、登記事項証明書は法務局が発行する証明書になります。
評価証明書については、毎年春に届く固定資産税納付書に添付されている明細書でも代わりになります。
※登記事項証明書は登記簿と呼ばれることもあります。

不動産情報が異なる場合がある

評価証明書と登記事項証明書に記載されている不動産の情報は、一般的には同じと考えられていますが、実は異なる場合があります。

比較的多いのは、土地の地目、建物の構造や床面積などです。

なぜ異なる場合があるのか

登記事項証明書は、不動産情報に変更があったとしても、法務局が職権で修正することはありません。法律上、申請がない限り修正できない取り扱いになっています。

ですから、土地の地目・建物の構造や床面積などに変更があっても、古い情報がそのまま放置されているケースが多いのです。

一方、評価証明書は固定資産税の根拠となる書類ですから、古い情報のままで税金を課すのは問題が生じます。
従って、定期的に市町村税事務所が調査を行い、変更があれば逐一修正しているのです。

つまり、評価証明書の方が最新の情報になっている場合が多いということになります。

他には、マンションなどの集合住宅の床面積の測り方が評価証明書と登記事項証明書では違うということがあります。一般的には、登記事項証明書の床面積の方が狭くなる傾向があります。(通常は壁の真ん中から測るのに対して、登記では壁の内側から測るため)

遺産分割協議書には、どちらを書くべきか

では評価証明書と登記事項証明書で不動産の情報が異なっていた場合、遺産分割協議書には、どちらを書くべきなのでしょうか。
これは結構重要な問題です。

まず相続登記(名義変更)をする場合には、絶対に登記事項証明書のとおりに書かなくてはなりません。
例えば実際に建物が建っていて宅地として使っている土地で、評価証明書に宅地と記載されていても、登記事項証明書に雑種地と記載されていれば分割協議書には雑種地と記載しなくてはいけません。
※このようなことが起こる理由としては、更地の時は雑種地で、その後、建物を建てた時に土地の地目の変更登記を申請していなかったケースが考えられます。

一方、相続税の申告をする場合は、どちらでも構わないようです。税金の申告なので評価証明書のとおりと言うわけではないのですね。

他には遺言書に書く場合の不動産の情報は登記事項証明書のとおりに書くことが求められています。

結論

遺産分割協議書や遺言など、登記事項証明書のとおりに書かないといけない場合がある一方で、評価証明書のとおりでないといけない場合というのは少ないように思います。(私の知る範囲では、ありません)

ですから、重要な書類に不動産の情報を書く場合は、登記事項証明書のとおりに書いておけば間違いはないと考えて良いと思います。

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相続登記

2月 18 2022

遺言による「相続」と「遺贈」の違い 遺言(25)

遺贈とは

相続は聞いたことがあっても、遺贈は聞いたことが無いという人は珍しくないでしょう。まずは遺贈について簡単に説明しましょう。

遺言で渡す相手が法定相続人であった場合、「相続させる」と言う表記になります。しかし、この表記は法定相続人でなければ使うことができません。法定相続人でない人に相続させることはできないからです。

では法定相続人以外の相手に遺言で渡す時はどうするのかと言うと、この時に「遺贈する」という表記を使うのです。

※会社経営者などは、別の事情からあえて「遺贈する」を使うこともあります。

遺贈は税金面で不利になる

遺贈は相続に比べて、相続税や不動産の登録免許税などが高くなることが多いです。ですから、法定相続人に渡す場合は表記を「相続させる」と書くように気を付けましょう。

たまに相続の相談で自筆証書遺言を持ち込まれて、家裁で開いてみたら「〇〇に譲る」と書いてあって、トラブルになる場合があります。

「譲る」というのは一般的に遺贈と解釈されることが多いので、〇〇が法定相続人の場合に税金面で不利になる可能性があるからです。(法定相続人に遺贈するのも法的には有効です)

このようなことを防ぐためにも、遺言を書く時は専門家に相談するのが良いでしょう。

複雑な事例

以下のような相談がありました。
遺言希望者は80代の女性で、ご主人は既に亡くなられています。こちらの女性はとても80代には見えないほど、お元気な様子でした。

お話を聞くと、ちょっと複雑な相談で、子どもがいなくて兄弟姉妹がAさん、Bさん、Cさんの3人いるのですが、うちBさん、Cさん2人が既に亡くなられているようでした。Bさん、Cさんには、それぞれ2人と4人の甥姪がいて、法定相続人は合計で7人と言うことになります。(ご存命のAさんにも甥姪が4人います。)

複雑なのはここからで遺言で渡したいのは、存命しているAさんの甥姪4人と、亡くなられたBさんの甥姪2人ということでした。Cさんの4人の甥姪には疎遠なので渡したくないとの希望です。
一般の方が自力で書くと間違えやすい事例だと思います。

相続と遺贈が混じることになる

ここで注意すべきなのは渡したい相手に法定相続人と、法定相続人ではない人が混ざっているというところです。

亡くなられたご兄弟の甥姪2人は法定相続人ですから「相続」と言う表記になりますが、ご存命の兄弟の甥姪4人は現時点では法定相続人ではないので「遺贈」という表記になります。

更に予備的遺言を書いておくべき

気を付けたいのは、今回のような場合、もしご存命の兄弟が遺言者よりも先に亡くなった場合(年齢が近いので充分可能性があります)、その瞬間に甥姪が法定相続人になるということです。

遺言を書き直して「遺贈」を「相続」に修正するという方法もありますが、その時に遺言者が認知症になっていたら、書き直すことはできません。

このようなことを防ぐために予備的遺言を書いておく方法があります。
予備的遺言とは、「もし〇〇が先に亡くなったら、~する」という文言を遺言に入れておく方法です。

今回のケースだと「もし〇〇(存命の兄弟)が遺言者よりも先に亡くなったら、甥姪に相続させる」となるでしょうか。
このような方法を一般の方が気付くのは、なかなか難しいでしょう。遺言を正確に書くのは意外に大変なのです。

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遺言

9月 27 2021

認知症患者の口座からの親族による引き出し 成年後見⑨

認知症の最大の問題は口座の凍結

家族が認知症になった時、最も大きな問題は、認知症になった家族の名義の口座が凍結されてしまうことです。

凍結されると預貯金が全く引き出せなくなってしまいます。昨年(令和2年)までは認知症患者の親族であっても引き出せず大きな問題となっていました。どうしても引き出したい場合は、家庭裁判所で成年後見人を選任するしかないという状況でした。

しかし今年(令和3年)に入って、この仕組みが変わることになりました。この記事では何が今までと違うのかについて詳しく説明していきたいと思います。

成年後見人の問題点

実は成年後見制度には様々な問題点があり、利用をためらう親族が多いのが現状なのです。例えば以下のような問題点があります。

  1. 選任手続に費用と手間がかかる
  2. 家庭裁判所で成年後見人を選任してもらうのに費用と手間がかかります。手間を省くために専門家に選任手続を依頼した場合、追加費用がかかります。

  3. 親族が成年後見人になれないケースが多い
  4. 従来の取り扱いでは、候補者に親族の氏名を書いても専門家が選任されるケースが多かったです。ただし、この取り扱いが利用を妨げているという反省があり、今後は親族を積極的に成年後見人に選任するという方向に変えると最高裁判所から発表がありました。

  5. 選任後に専門家の報酬がかかる
  6. 誰を成年後見人に選任するかは裁判所が決めるので、親族が選任されない可能性は常にあります。その場合、専門家が選任されますが、そうなると毎月の専門家の報酬が発生します。
    専門家の報酬は認知症患者の財産から支払われますので、財産が毎月減っていくことになります。成年後見人の任期は認知症患者が亡くなるまで続きますので、合計すると相当な金額が財産から支払われる可能性があります。

  7. 一度決まった成年後見人は変更できない
  8. 成年後見人には変更の仕組みが基本的にありません。一度、家庭裁判所で決まったら、どれだけ親族が気に入らなくても変えてもらうことはできないのです。そして、認知症患者が亡くなるまで選任は続きます。最近は親族が選ばれる確率が高くはなりましたが、それでも100%ではありません。全然知らない専門家が選ばれるリスクは常にあるのです。

全国銀行協会の新たな指針

このように家族が認知症になってしまったが、様々な問題があるために成年後見制度は利用したくないという人が増えた結果、口座が凍結されたままになっているケースが増えてしまいました。銀行としても凍結されたままの口座が増加するのは好ましくありません。そこで全国銀行協会が今年(令和3年)2月に新たな指針を発表しました。これが画期的な内容だったので話題になったのです。

その内容とは「親族でも認知症患者の預貯金の引き出しを可能にする」というものです。ただし可能にするには、いくつかの条件があります。

また、条件ではありませんが、銀行としては前提として「親族に対して成年後見制度の利用を、まずはお願いする」というスタンスであることは知っておいてください。引き出しを希望する親族は、成年後見制度を使いたくない事情等を説明してから引き出しを依頼することになるでしょう。

親族が預金を引き出せる条件とは

  1. 医師の診断書の提出
  2. まずは口座名義人が認知症であることの公的な証明書として、医師の診断書が必要とされています。

  3. 使いみちが限定される
  4. どんな目的でも引き出せる訳ではありません。使いみちは「口座名義人の医療費・介護費・生活費など」に限定されます。名義人本人にとって必要な目的以外は認められないということです。

  5. 投資商品などの解約は難しい
  6. 投資信託などの金融商品の引き出し・解約については、より慎重な対応が必要とされています。銀行の預貯金口座に比べると、これらの口座の親族による引き出しは簡単ではないと考えた方が良いでしょう。

家族信託契約の利用

銀行から上記のような条件の審査を受けることなく、迅速に繰り返し預貯金の引き出しを行いたい場合は、前もって家族信託契約を結んでおく方法が考えられます。

家族信託契約とは、高齢者が認知症になる前に自分の財産の管理を任せたい人と信託契約を結んでおくことで、認知症になってしまった時に備えておく契約です(認知症になった後では信託契約を結ぶことはできません)。
公正証書で信託契約を結んでおけば、口座名義人が認知症になった後でも、任された人はスムーズに預貯金を引き出すことが可能になります。また、不動産の管理を任せたい場合にも信託契約は有効です。
特に不動産の処分(売ってお金に換える)を考えている場合は、信託契約を結んでおく必要性が高いでしょう。もし処分する前に認知症になってしまった場合、例え家庭裁判所で成年後見人を選任しても処分するのは難しいからです。

結論

親が認知症になってしまった場合、残された親族は介護費用や入院費用や施設入居費用などを調達しなければなりません。しかし、親の口座から現金を引き出すには前述したように様々な条件を満たした上で銀行の審査を受ける必要があります。しかも、引き出すたびに繰り返しです。他にも親の不動産を処分して介護費用や施設入居費用に充てようとしても、名義人が認知症である場合は売却が非常に困難であることに皆さん驚くことになります。

このようなことにならないためにも、親が認知症になる前に家族信託契約などを積極的に活用して対策を取っておくことが大切です。

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9月 09 2021

権利証を失くした時の本人確認証明 生前贈与⑨

権利証を失くしたら(相続の場合)

相続登記で権利証を失くしても通常の手続が可能です。なぜなら相続登記の場合、権利証は必要書類に含まれていないからです。理由は、相続は本人が既に亡くなっているため、本人確認の1つである権利証は必ずしも必要ではないからです。

ただし、亡くなってから長期間放置されていた相続登記の場合、本人の住民票の除票が保存期間が過ぎていて取得できない場合があり、その時は代わりに権利証が必要になることがあります。

権利証を失くしたら(生前贈与や売買の場合)

生前贈与や売買の登記では、登記義務者(不動産を渡す人のこと)の権利証は絶対に必要な書類です。理由は、権利証を持っていることが登記義務者本人であると推定される根拠の一つになっているからです。なぜなら権利証は再発行がされない書類なので、本人しか持っていないだろうと予想されるためです。

ですから我々司法書士は登記完了後に権利証を渡す時、「大切に保管してください。できれば金庫などに入れておくと良いと思います」と伝えます。
よって、もし権利証を失くした状態で生前贈与や売買の登記をしようとすると、通常の手続では行うことができません。

生前贈与や売買における本人確認証明

そこで登場するのが本人確認証明という書類です。本人確認証明とは司法書士が「登記義務者は本人に間違いない。更に不動産を渡す意思があるのも間違いない」ということを書類に細かく記載して、職印を押して保証する書面です。いわば司法書士が権利証が無い登記義務者に対して保証人になるようなものだ、と思って頂ければ分かり易いかと思います。本人確認証明は司法書士に重大な責任を負わせているのです。

本人確認証明は厳格な確認が必要です

権利証を失くしているということは登記義務者本人であるという推定が働かないケースと言えます。実際に他人が登記義務者になりすまして「権利証を失くした」と言って売買をして、代金を受け取ったら雲隠れしてしまったという事件が起こっています。
そのため法務局も権利証が無いケースには神経質になっていて、権利証がある場合に比べて相当に厳格な確認を義務付けています。

厳格な確認とは

例えば、

  1. テレビ電話によるリモート面談の禁止
  2. 2021年9月現在、本人確認証明では今流行のリモート面談は認められていません。必ず直接会わなくてはいけません。

  3. 身分証明は本人から提示
  4. 身分証明は面談の際に本人から提示を受けて、その場で本人と顔写真を比べて違和感が無いかを確認することになっています。

  5. 電気・ガス・電話などの明細の確認
  6. 最近数カ月の電気・ガス・電話などの請求明細の名義が本人になっているかを確認することになっています。ただし明細は家族の名義になっている場合もあるので、その時は別の方法を考えます。

本人確認証明以外の方法(事前通知制度)

権利証を失くした時の生前贈与や売買の登記で、本人確認証明以外の方法も存在します。それは以前のブログで説明したことのある事前通知制度です。
2回目なので詳しい内容の説明は省きますが、事前通知制度を使えば本人確認証明は不要になります。どうしても本人確認証明を使いたくない事情がある時は検討することになるでしょう。

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生前贈与
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事前通知制度

9月 06 2021

遠方の親族が亡くなった時の相続登記 相続登記(27)

必要書類の郵送申請

遠方の親族が不動産を持っていて亡くなった場合、相続登記はかなり大変です。まず必要書類を郵送申請で取得しなければなりません。郵送申請は窓口よりも手続にかなりの手間がかかります。また申請が間違っていた場合、窓口ならばその場で直せますが、郵送だと出し直しになり時間も費用も余分にかかります。

法務局への相続登記申請

必要書類がそろったら法務局への相続登記申請になります。
法務局への申請が間違っていた場合、それを直すことを専門用語で「補正」と呼んでいます。法務局は通常の役所とは違い、補正がかなり厳しいです。

法務局の補正は基本的に窓口に行ってすぐに直せる程度の間違いしか認めてくれません。時間がかかる修正の場合、「一旦、取り下げてから出し直してください」と言われることも珍しくありません。

相続登記の申請の取り下げ

申請を取り下げると提出した申請書類は全て返却されます。特に面倒なのが登録免許税の取り扱いです。

登録免許税は申請の際に収入印紙に代えて納めています。その収入印紙は取り下げても使用済みの記載がされているので利用できません。それでは再び支払うことになってしまうので、救済措置として収入印紙の再使用証明の手続が認められています。つまり再使用証明の手続を行う必要があるのです。このように余分な手続きが多く非常に手間がかかります。

遠方への申請の場合、間違えると大変

遠方の法務局へ申請した場合、例え簡単な間違いだったとしても窓口へ出かけることができませんので、取下げてからの出し直しになる可能性があります。これは一般の方が自分で行う場合は非常に大きなリスク要因になります。

なぜ、法務局がこのような対応になっているかというと、不動産登記申請の9割近くが司法書士による申請になっていることが一つの理由でしょう。つまり法務局の職員にとって正確な申請がなされることが当たり前になっているので、間違った申請に対する姿勢が厳しくなりがちなのだと思います。

できる限り司法書士に依頼するべき

病気になったら医者に行きますよね、裁判になったら弁護士に相談するでしょう。なぜか登記申請になると自分でやろうとする方が一部いらっしゃいます。しかし、登記申請は実はかなり専門的な手続です。司法書士と言う国家資格がそのために設けられているくらいですから。

私は近くの親族が亡くなった場合でも、思わぬ落とし穴にはまらないように司法書士に依頼すべきだと思いますが、特に遠方の親族が亡くなった場合は、よりリスクが大きくなるので絶対に司法書士に依頼した方が良いと思います。

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相続登記

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